お手伝いはどんどんさせたほうがいい、と頭ではわかっているものの、子どもにやらせると失敗して逆に時間がかかったり、教える手間が惜しかったりと「面倒だな」という気持ちが先に立ってしまいませんか? 忙しい日々のなか、時間的にも精神的にも余裕がなくて、つい「今度ね」と言ってしまっていませんか?
今回は、お手伝いがもたらす想像以上のメリットについて、詳しくご説明します。
“お手伝い” こそが、いま子どもに与えるべき「学びの機会」
「やりたい!」気持ちが芽生えたときがチャンス
NGO「ピースボート」の船上にあるモンテッソーリ保育園「ピースボート子どもの家」の代表を務める小野寺愛さんは、「子どもが「やりたい!」と言ったときを逃してはいけません」と力説します。
お手伝いと言っても、子どもが小さいうちは、かえって手がかかります。でもそこで『こぼすからママがやるよ』とか、『あぶないから、あっちへ行ってて』と遠ざけてしまうと、実際にちゃんとできるようになる頃には、『面倒くさい』『やりたくない』と、なってしまう。
子どもが『やりたい!』と言ったときに、一緒にやってみる。また、どうしたらできるのかを考えて、環境を整える。そして、『できたね』『たのしいね』という体験を積み重ねることが、こころも成長させるし、自分のことは自分でやる習慣につながります。
(引用元:『できる子になる!0歳からのお手伝い』クーヨンBOOKS12,2015年6月,クレヨンハウス.)
子どもの「やりたい!」気持ちを大切に。誰だって最初からうまくできないのだから、親としてまず一番に心がけることは、“長い目で見守ってあげること” なのかもしれませんね。しかも、お手伝いには「自立心」を育むだけではなく、教育的効果も存分に期待できることがわかっています。
生活習慣と学力の深い関係
国立青少年教育振興機構の鈴木みゆき理事長は、「お手伝い」についてインタビューで次のように言及しています。
- 子どもの自己肯定感を高める
- マナーを学ぶことにつながる
- 「時間の感覚」を身につけられる
より良い人生を歩むためにはどれも重要ですね。また、生活習慣が身についている子どもほど学力が高い、というデータから、次の結果を導き出しています。
「お手伝い」が「時間の感覚」を身につけさせ、「時間の感覚」が「生活習慣」を身につけさせ、「生活習慣」が「高い学力」をもたらすというわけです。
(引用元:Study Hacker こどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリットーーお手伝いの習慣が高い学力につながる理由)
お手伝いが子どもの “生きる力” に直結する!
『お手伝い至上主義』の著者であり東大卒MBA教授の三谷宏治氏は、「家庭での仕事を自分が責任をもってやるという “お手伝い” は、生きていくうえでもっとも大切なことのひとつ」だと述べます。そして、幼少期にお手伝いをしてきたかどうかで、就職や仕事への向き合い方に大きな違いが出ると断言しています。
三谷氏によると、お手伝いをしてきた人たちには次のような特長が見られるそうです。
- 段取りがいい
- 指示をされなくても自分で仕事をつくることができる
- 自分で考えてトラブルに対応しようとする
- 自分の意思で決定することができる
- 思いやりの気持ちを持ち、よく気が利く
- 感謝を忘れない
つまり、「コミュニケーションスキル」や「問題解決スキル」といった『生きる力』が身についているのです。
生活習慣やマナーがが身につく、学力が高くなる、生きる力が育まれる……お手伝いっていいことだらけ! 面倒がらずにどんどんお手伝いをさせれば、いずれ必ず、お子さんにとっても親御さんにとっても、良い結果をもたらすはずです。
では続いて、それぞれの “お手伝い” にどんな教育的効果があるのか、詳しく見ていきましょう。
マルチタスクが必要とされる『料理』は小さいうちから!
以前コラム(Study Hacker こどもまなび☆ラボ|小学校の「国語・算数・理科・社会」につながっていく! 子どもが料理をするメリット)でご紹介したように、子どもがが料理を手伝うことは国語や算数の力にも直結します。
【国語】
料理は五感を磨きます。その磨かれた五感は、作文や日記で表現する力を豊かにしてくれます。また、レシピを読み、作業工程を理解する力も、広い意味では“国語力”と呼べるでしょう。
【算数】
料理は、ただ「作るだけ」ではありませんよね。材料の準備から片付けまで、必要な段取りを順序立てて考える力=ロジカルシンキングを養います。また、2人分のレシピを4人分に計算し直したり、大さじ1(15cc)と小さじ1(5cc)の関係性を理解したりと、頭の中でパッと計算する訓練にもなるでしょう。
【理科】
野菜のどの部分を料理に使うのかを知ることは、植物の勉強になります。また、水を火にかけて沸騰させると蒸発して水の量が減るということを実際に目で見て体験すれば、理科の勉強にもつながります。
さらに、料理を手伝って得られることは、長い目で見ると、子どもたちの将来にも大きな影響を及ぼします。以前ご紹介したコラム(Study Hacker こどもまなび☆ラボ|五感が鍛えられるだけじゃない! 集中力や思考力も高まるメリットだらけの「親子料理」)では、次の3つの能力が料理によって発達すると説明しています。
【能力1】豊かな表現力
料理をお手伝いすることで「自分の考えをわかりやすく説明できる」「感情コントロールがうまくできる」「率先して行動できる」といった能力につながることが、内閣府の調査結果でも証明されています。
【能力2】高い集中力、忍耐強さ
料理中の集中力は達成感につながり、さらに次への意欲や頑張る気力と忍耐力が育まれるプラスのループを引き起こします。「ひとつのことに集中して取り組む」というルーティンは、家庭での学習習慣にも好影響をあたえることがわかっています。
【能力3】創造力と思考力
料理とは、クリエイティビティと論理性が必要な知的作業です。完成形を想像しながら、食材の組み合わせを考えて計画的に作業することは、実はとても難易度が高いのです。
自己肯定感が育まれる『掃除・片づけ』
掃除や片づけは、どうしても大人がパッとやってしまいがちです。ではなぜ子どもに掃除させようとするともたついてしまうのでしょうか? それはきっと「道具」が合っていないのかもしれません。
前出の「ピースボート子どもの家」代表の小野寺さんは、娘さんが2歳のときに「子どもの小さな手でも使いやすいように」と、モンテッソーリ園にあったものを真似て小さなミトン型のふきんを作ったそうです。すると、手を入れてしっかりと拭けるようになったとのこと。
また、そのふきんをしまいこまずに、子どもの手が届く『いつもの場所』に置くことがポイントだと言います。
(中略)それからは、たとえば牛乳をこぼしても、子どもを叱ったり責めたりせず、『あのふきんで拭こうよ!』と前向きなことばをかけられるようになったこともよかったです。
(引用元:『できる子になる!0歳からのお手伝い』クーヨンBOOKS12,2015年6月,クレヨンハウス.)
まずは、子どもの手に馴染む道具を用意してあげましょう。そして、いつでも取り出せる場所に置くだけで、「汚したら自分できれいにする」習慣が身につきます。
また、調布市にあるシュタイナー教育を実践する「ぎんのいずみ子ども園」の山本ひさの園長は「片づけは食事や掃除と同様に大人になってもやるべき当たり前のこと」と述べます。
きれいに片づくと、周囲が「気持ち良い」と感じ、自分の行為が「役立った」という感覚が生まれるそう。そのとき『できた!』という自己肯定感が育つのです。
一般社団法人「親・子の片づけ教育研究所」代表理事である澁川真希さんによると、「収納を工夫することで想像力が養われたり、元の場所に戻すことで習慣力もついてきます。また、自分にとって必要なもの、必要でないものがわかるようになります」と、片づけがもたらす効果は数え切れないとのこと。
整理整頓の習慣がしっかりと身についていれば、自然と学習環境を整えるという動作にもつながっていきます。効率よく学習に取り組むためにも、まずは机周りやお部屋の環境を整えるクセをつけたいものですね。
目の前の課題に挑戦し、問題解決能力を磨くことができる『洗濯』
毎日洗濯をしている親御さんにとっては、あまりにも当たり前すぎて気づかないことがあります。
たとえば、大人は無意識のうちにバランスをとって、洗濯物をまっすぐに干すことができますよね。しかし子どもにやらせてみると、片方は重たいズボンで反対側はなぜか靴下だけ……と、明らかに傾いてしまうことはありませんか? そこで、「どのバランスだと傾かずに洗濯物が干せるかな?」ということを考えさせましょう。重さを均等にして、より効率的に乾かす、という “重さの原理” が学べます。
また同様に、
「お日さまが当たるところに干すと乾きやすいよ」
「シワを伸ばすと、きれいに干せるね」
と、干し方のコツを理由を添えて説明してあげることで、太陽の光の動きと温度・湿度の関係などを経験から学ぶことができるでしょう。
さらに、洗濯物が乾いてからも学びのチャンスです。
洗濯物の分類、整頓、収納までの流れを自分の頭で考えながら同時に手を動かすということは、最初のうちは意外と難しいものです。しかし、回数をこなしていくうちに、必ず手際よく作業ができるようになるでしょう。もしくは子ども自身が試行錯誤して、「もっとやりやすいやり方がある!」と新しい方法を見つけるかもしれませんね。
毎日の洗濯を手伝うことが時間的に難しければ、週に一回、持ち帰った上履きを自分で洗わせてもいいでしょう。「どうすればもっと汚れが落ちるかな?」「どこに干したらよく乾くかな?」と、考察と挑戦を繰り返すことで、課題をクリアする達成感を得ることができるはずです。
『買い物・おつかい』で判断力・決断力・自己管理能力の総合的な力が鍛えられる
最後に、お買い物のお手伝いやひとりでおつかいに行くことも、ある程度の年齢になったら必ず経験させたいことです。
一緒に買い物へ行くことは、普段食べている料理にはどのような食材が使われているのか、調理する前はどのような形で売られているのか、お菓子とお野菜ってどっちが高いのかな? など、子どもに知っておいてもらいたい「食育」の知識をたっぷりと吸収することができるからです。
また、「この予算内で○○と△△を買ってきてね。お金が残ったら好きなお菓子を1つだけ買ってもいいよ」と、おつかいに行かせるとします。すると、子どもは頭をフル回転させて、品物を選び、お金を計算し、判断力と決断力を駆使してその課題をやり遂げるでしょう。
お買い物は、瞬時の計算力と判断力、そして何より “自己管理能力” を鍛えることができます。失敗を繰り返しながらも経験を重ねることで「生きた勉強」にもなり、国語や算数などの教科にも確実に活かされるのではないでしょうか。
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せっかく子どもが「お手伝いしたい!」と言っているのに、させないなんてもったいないと思いませんか? 時間と心に少し余裕を持って、親御さんがゆったりとした気持ちでお手伝いをさせてあげることで、思わぬ教育的効果をもたらすかもしれませんよ。
(参考)
『できる子になる!0歳からのお手伝い』クーヨンBOOKS12,2015年6月,クレヨンハウス.
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