教育を考える/食育 2019.6.7

学校給食は学びの宝庫! 食を通して身につける「自ら考え、判断する力」とは

宍戸 洲美
学校給食は学びの宝庫! 食を通して身につける「自ら考え、判断する力」とは

成長期の子どもたちにとって、1日3回の食事はとても大切なものです。その目的は、ただ単に「成長に必要な栄養を取る」ことだけではありません。子どもたちは3度の食事を通して、「食べ物の栄養」「食べる時のマナー」「食べ物の流通や加工」そして何よりも「家族そろって楽しく食べるという心の栄養」など、人間としての成長に欠かせない学習をするのです。

今月は子どもと食事について、皆さんと一緒に学んでいきましょう!

子どもに「朝ごはん」はなぜ必要か

お父さんもお母さんも忙しいのか、最近は、家族全員が「朝ごはんを食べる習慣がない」という家庭もあるようですね。大人は空腹でなければそれで大丈夫ですが、子どもは違います。

子どもにとっての朝ごはんには、2つの大きな役割があります。1つは、を元気に動かすエネルギー源としての役割。そしてもう1つは、体が成長していくための栄養やエネルギーとしての役割です。

特に脳はブドウ糖を必要としますので、朝、しっかり食べているかどうかは学習に影響します。下のグラフをご覧ください。文部科学省の「平成29年度全国学力・学習状況調査」でも、朝ご飯を食べる子どものほうが学力が高いという結果が出ています。棒グラフの色は、各科目とも左から順に「毎日食べている」「どちらかといえば、食べている」「あまり食べていない」「全く食べていない」です。


(Aは主として「知識」に関する問題、Bは主として「活用」に関する問題)
(画像引用元:千葉県|千葉県教育委員会|文部科学省「平成29年度全国学力・学習状況調査」及び、スポーツ庁「平成28年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果から見える相関関係

また、『平成28~29年度 児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書(日本学校保健会)』を見ると、朝ごはんを「毎日食べる・食べる日の方が多い」子どもの割合は、小学校低学年・中学年・高学年のいずれも95%を超えており、1・2年生では約98%という高さでした。

しかしここで注目したいのが、子どもたちが「何をどのように食べているか」です。下のグラフから分かるように、主食しか食べていない子の割合は、低学年で29.9%。主菜のみ・副菜のみの子も含めて、約3割の子どもが朝ごはんを単品で済ませているのです。食べているだけまだ良いように思うかもしれませんが、子どもたちの様子を見ていると決してそうとは言い切れないと感じます。具合が悪くて保健室に来室する子どもたちに、「朝ごはん食べた?」と聞くと「はい」と言うのですが、「何を食べたの?」と聞くと、ヨーグルトとかクッキーと水、あるいはお菓子と答えるような子どもたちがいたのです。


(公益財団法人日本学校保健会(2018),『平成28~29年度 児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書』,p67 図5-11-1を参照して作図。男女別のデータを合わせて平均を出したグラフに変更。数値は一部四捨五入)

子どもには「しっかり朝ごはん」が必要ですから、主食(ご飯かパン)と、主菜(卵焼きやハム)、副菜(みそ汁やサラダ)などが揃った朝ごはんが理想です。特に主食・主菜は必須ですよ。

中には、「準備しても食欲がなくて食べてくれない」という親御さんの声を聞くこともありますが、それにはいくつかの原因が考えられます。例えば、前日の夕食の時間や睡眠時間に問題があるのかもしれません。また、「子どもだけで食べなさい」という状態だと、子どもはなかなか食べないことが多いもの。たとえお味噌汁1杯やコーヒーだけでも、親も子どもと一緒に食卓に座り「頂きます!」をいって食べると、子どもの食欲も出てきますよ。また、起きた直後で体が目覚めていない状態では、食べられないのも当然のこと。朝は子どもにも朝食の準備を手伝わせるなど、起床後に体を動かす時間と機会が作れたら最高ですね。

朝ごはんを食べているかどうかで、子どもの集中力意欲、そして学力にまで、大きな差が出ます。ご家庭の朝ごはんの習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

子どもが「学校給食」から学ぶもの

最近の学校給食は、単に栄養を補給するだけでなく、食を通して多様な学びができるような工夫がたくさんされています。「食育」が学校教育の中で重視され、栄養教諭の配置も進んで、子どもに「食に関する力を育てていく」取り組みが広がっています。

例えば、「今日の食材は、地元農家の○○さんが育てた大根を使っています」のような地産・地消を推進したり、地域の伝統的な食事を取り入れたりしている学校は珍しくありません。また、バイキング給食お誕生日給食などによって子どもたちの食への関心を高め、内容や食べられる量を自分で考え、選んで食べる力を育てる工夫もされているのですよ。

一方で、子どもたちの「偏食」「食物アレルギー」の問題は、まだまだ対策が必要です。子どもの偏食にも様々なものがあります。「食べたことがないから食べない」というのは分かりやすい偏食の例ですね。他には、ご飯の中に異物が入っていたことがあり、それ以後「白いご飯しか食べられなくなった」というような、心理的な理由による偏食も出てきました。親御さんが「わが子は何でも食べる」と思っていても、それは「“家で作られるものなら”何でも食べる」ということである場合も。親御さんは学校の献立表を見て、おうちのメニューのレパートリーを広げるといいですね。

食物アレルギーの問題は、丁寧な学校とのやり取りや、子ども自身に「食べてはいけないものが入っていないかどうか」を見極める力をつけさせることが大切です。人に頼っていると、どこかで間違いが起きる可能性は出てきますので。

いずれにしても、学校給食の中で子どもたちは多くの学びを獲得していきます。保護者向けの試食会なども行われていますので、我が子がどのような給食を食べているのかを知る機会として、ぜひ参加してみてください。

給食の時間が「楽しみ!」なら問題ない

子どもと食事に関する親御さんからのご質問にお答えしましょう。

【親御さんからの質問 1】

子どもに聞いた話から「給食は毎日完食」だと思い込んでいたのに、家庭訪問で先生から「わりと残しています」と言われ、びっくりしてしまいました。給食を残したことを隠すなんて……と、ちょっと戸惑っています。子どもには給食を完食させたほうがいいですよね? どうしたらいいでしょうか。

子どもが給食を残す理由は一律ではありません。単純に量が多すぎるとか、時間が足りなかったとか、嫌いなものがあったなどです。

子どもたちの食べる量は、かなり個人差があります。全員に同じ量が配られれば、中には残してしまう子がいるのも当然のことです。また低学年だと、牛乳を1本飲むとそれでおなかがかなりいっぱいになり、他の物を残してしまう場合もあります。牛乳は多くの学校で全学年同じ量になっていますので、ここは改めてほしいところです。大切なことは、徐々に「自分が食べられる量」を自分で判断できる力を育てること。そして、「多いから減らして」「もう少し食べられそうだから増やして」などと言える力をつけるといいですね。

また、食べる時間は学年により違いますが、おおよそ15~20分ぐらいで食べ終わるのが目安です。小学校では、「嫌いなものでも食べなさい」と強くすすめる先生もいれば、嫌いなものを無理強いしない先生もいるというように、先生によって指導が違う場合も皆無ではありません。担任の先生によって給食指導の方法はいろいろなので、もし戸惑う場合には先生に相談してみてはいかがでしょうか。

ただし、嫌いなものが出たからといっておなかが空いていても食べずに残し、家に帰ってから菓子パンやおにぎり、カップ麺を食べるのは問題です。こういう子を見ると、「好きな時に、好きなものを、好きなだけ食べられる」豊かさの弊害が出ていることを実感させられます。

いずれにせよ、食べ方には個人差があることを考えると、親御さんはお子さんが「どれだけ食べたか」をあまり気にする必要はなく、お子さんが給食の時間を楽しみにしているようであれば心配はいりません。「嫌いなものが多いから、楽しみじゃない」などとお子さんが言った場合は、一緒に献立表を見ながら「お家でも同じようなものを作って食べてみようか」と声をかけて、親子で一緒に作って食べてみるといいですね。親が美味しそうに食べると子どももつられて食べる、なんてことも意外によくありますよ。

三角食べは高学年からでOK

親御さんからの質問 2

醤油や塩、ケチャップやマヨネーズなどの調味料を多くかけがちです。三角食べができず白いご飯だけが最後に残ってしまうため、味を付けたがって鰹節やふりかけを必ずかけて食べています。また、デザートやおやつも味のしっかりしたものでないと満足できない様子。このままでは子どもの味覚がおかしくならないかと心配です。

子どもは濃い味に慣れてしまうといろいろな調味料を使いたがります。給食では一般的に薄味です。家庭では、食材の旨味を味わえるような調理を工夫してみると良いでしょう。一般的に売られているお惣菜は味付けが濃いので要注意。ふりかけなどはいつも準備してあると使ってしまいますので、食卓に常備しないことも1つの方法ですよ。

子どもの味覚は、成長につれ発達していきます。赤ちゃんが分かるのは、「うま味(甘味)・苦味・酸味」だけ。昔から苦味や酸味のある食べ物には有害なものが多く、それを判別する味覚が発達した人類だけが、今日まで生き残ってきました。したがって、私たちは生まれた時から苦味や酸味を感じる遺伝子をもっているのです。子どもが苦い食べ物を嫌がるのは、至極当然だと言えます。

しかし今では、「苦味や酸味があっても食べてよいもの」が分かっています。人間はこうしたものを食べ続けることで味覚を発達させ、ピーマンやトマトもおいしく感じられるようになりました。子どものうちほど味覚は発達しやすいので、ニンジンでもピーマンでも少しづつ舌に味を覚えさせていく学習をすると食べられるようになりますよ。でも、嫌いなものがいくつかあっても、それはそれでいいと思います。

それから、三角食べは日本食の文化です。世界中の食べ物が日常的に食べられる今の時代、子どもが三角食べをしないのも不思議ではありません。小さいうちは三角食べの意義を理解するのは難しいですが、小学校の高学年になって食の文化が理解できるようになったら、日本食の時は三角食べがマナーだと知っていればいいかと思います。最近の学校給食では食べ方を強制することはあまりありません。ご家庭で、親が食べ方の見本を見せることが大切ではないでしょうか。

楽しい食卓の基本は「家族そろって」

親御さんからの質問 3

子どもには嫌いな食材を克服してほしいし、量もたくさん食べてほしい。だから、子どもがあまり食べないとつい「ちゃんと食べなさい」と言ってしまい、子どもが機嫌を損ねることも。でも、本当は「食べること」=「楽しいこと」のはずですよね。食卓が楽しくなるヒントが知りたいです。

食卓はどうしたら楽しくなるのでしょうか? 以前勤めていた学校で、子どもの偏食の克服を目的として、学校で野菜を育てて調理して食べるまでを子どもたちが主体的に行なう活動に取り組みました。トマトやキュウリやナスが嫌いと言っていた子どもたちが、なんと自分が育てた野菜は「おいしい」と言って食べるようになったのです。

一方家庭では、親御さんに「1週間に一度、家族そろって素材から調理して食べよう」という取り組みをしていただきました。家族そろって献立を考え、買い物に行き、みんなで手分けして料理して食べる。これに一番はまったのはお父さんだったというご家庭も多かったのですが、子どもたちの偏食が減り家族の関係も良くなったという報告をたくさん聞きました。子どもたちも、「昨日の夕ご飯はね」とおいしく食べた様子をたくさん話してくれました。

コンビニや惣菜屋さんで手軽に食べ物が手に入り、後片付けも簡単で忙しい大人にはありがたいですが、子育てにおける食事の基本は「家庭で料理して家族そろって食べる」こと。そのプロセスが大事なのです。子どもに克服してほしい食べ物があるなら、家族で献立を考える時に、親からその食材をメニューに盛り込むことを提案するといいですね。

そしてこの食事づくりの時間を家族でコミュニケーションを取る時間にすると、子どもがいろいろ話せるのではないでしょうか。ただし、話の内容には要注意。ここぞとばかり、食事中にテストや宿題の話などをされたら、子どもは嫌な時間だと思ってしまいますから。

日本人らしい食のプロセスを大切に

最後に少し興味深いエピソードを紹介しましょう。かつて上野動物園の園長を務めておられた中川志郎先生から伺った話です。1970年代のこと、上野動物園ではじめて飼育されたゴリラの発育が良くなく、アメリカから輸入した栄養たっぷりのゴリラケーキを与えたそうです。すると、体重は順調に増えたものの、1か月後にはストレスが溜まって抜毛するようになってしまいました。その原因は、食形態の変化。本来、野生のゴリラは7~8時間かけて餌を探し食べるのですが、ゴリラケーキは15分で食べ終わってしまうのです。そこで、野生のゴリラに近い食形態に戻したところ、抜毛が治ったのだと言います。動物本来の食のプロセスを大切にしないとゴリラでもストレスになる。まして人間は……? どうでしょう、考えてみてください。

日本人は農耕民族です。大昔から、農作物を育ててそれを調理して家族そろって食事をしてきました。素材から調理して家族そろって食べるという、日本人らしい食のプロセスを大切にしたいですね。

農作物を育てることが奪われ、家庭での調理も奪われ、家族そろって食事をすることも奪われている子どもたち。これでは、おかしくなるのは当たり前です。これまでお話してきたように、子どもは「食べる」ことを通して、人間社会で楽しく逞しく生きていく力をつけていきます。それぞれのご家庭で、もう一度我が家の食事を見直し、「これならできる!」を1つでも2つでも取り入れていただけると嬉しいです。

(参考)
千葉県|千葉県教育委員会|文部科学省「平成29年度全国学力・学習状況調査」及び、スポーツ庁「平成28年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果から見える相関関係
公益財団法人日本学校保健会(2018),『平成28~29年度 児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書』.
中川志郎(2006),「基調講演:動物の一生からみた人間の発達を考える」,神戸大学発達科学部研究紀要,13(3),pp.2-17.