教育を考える 2018.5.17

子どもの知的好奇心を刺激する、“学びに効果的な” 部屋づくり

長野真弓
子どもの知的好奇心を刺激する、“学びに効果的な” 部屋づくり

毎日を過ごす家。その環境が子どもたちに大きな影響を及ぼすことは言うまでもありません。

大人目線でお部屋のものやレイアウトを決めていませんか? 今回は子どもが健やかに育ち、そしてまなべるお部屋づくりのポイントをご紹介します。【最終更新日:2022年2月4日】

“子どものまなびに良くない部屋”とは

「どんな部屋が子どもに良くない影響を与えるのか」を考えるとき、思いつくのは「散らかった部屋」「狭い部屋」など誰もがマイナスと考える空間ではないでしょうか。しかし、数多くの小学生の家を訪れたことがあるカリスマ家庭教師であり現在は「塾ソムリエ」としてご活躍中の西村則康氏が良くないと考えるのは次のような部屋です。

  • 片付きすぎている(例:モノは定位置に、すっきりシンプルに整えられている)
  • こだわりが強すぎる(例:シャンデリアや高価な調度品が置かれている)
  • 風水に凝っている(例:風水に従って色が散在する部屋)

 
片付いていたらダメだなんて意外ですよね。それはなぜなのでしょうか。

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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“子どものための部屋づくり”に大切なこと

「断捨離」が話題になり皆が目指す“シンプルな暮らし”が、子どものまなびに良くないと言うのには理由があります。それは、空間から受ける刺激が少ないこと、それによりまなびの体験が減ってしまうことつまり好奇心を得難い部屋になってしまう恐れがあるのです

これまでの経験から、“デキる子”のお宅は散らかっている場合が多かったとか。リビングにモノが散らばってしまうのは子どもの好奇心の現れで、親が片付けても片付けても散らかってしまうくらいが子どもにはいい環境だそう

「地球儀にホコリがかぶっていない」「図鑑が床に置いてある」「オセロや将棋などのボードゲームが手の届く範囲にある」など、部屋に出しっぱなしになっているモノと、それが許される環境は、子どもたちがのびのび過ごせている証拠なのでしょうね。

学びに効果的な部屋づくり2

「子育ち」をうながす部屋

「子育て」とは大人目線で使う言葉ですが、「子育ち」とは子ども視点で“自分で育つ力”のこと、と定義しているのは積水ハウス総合住宅研究所の河崎由美子氏です。

こちらの研究所では、子どもの発達を「感性」「身体」「知性」「社会性」の4つに分けて研究されていて、その結果は子どもの成長を助ける空間の役割として家づくりに生かされています。

「子どものテリトリー」という大切な考え方があります。子どもが大きくなるにしたがってこのテリトリーは形を変え広がっていきます。どんな所で遊び、自分の持ち物をどこにしまい、どこで学ぶのか、という「子どものテリトリー」を住まいの中にちゃんとつくってあげることが、子どもの発達のうえで重要なのです。

(引用元:日経DUAL|子どもの頭が良くなる部屋づくり 特集(6)】場所別、子どもの成長を後押しするポイントとは

「子どものテリトリー」は、前出の西村氏がいう“興味があるものが出しっぱなしの空間”とも言えますね。そしてそのテリトリーは成長に伴って形を変え広がっていきますので、部屋の可変性も考える必要があるということです。

まなびに有効な部屋づくりのポイント

いくら良いからといっても、家の間取りや壁の色を変えるような大規模改装はなかなかできません。ここでは比較的簡単に取り入れられそうないくつかのポイントをご紹介します。秘訣はリビングです。

デスクをリビングに置く

最近推奨されているリビング学習。子供部屋ではなく皆が集まるリビングダイニングで勉強をすることですが、その効果には多くの教育者の方々も太鼓判を押しています。リビング学習のメリットには「子どもに目が届きやすい(学習過程の把握、小さい子なら面倒を見やすい)」「子どもは安心してリラックスできる」「適度な刺激がある環境が学習意欲増進につながる」などが挙げられます。

『頭のよい子が育つ家』の著者である四十万靖氏は実際に有名校に合格した家庭200世帯を6年以上にわたって調査した結果として「優秀な子に子ども部屋は必要ない」と言い切っています。特に小さいうちは自室の必要性は低いようです。

リビング学習ではダイニングテーブルを学習机として使うことが多いかもしれませんが、その場合、親の視線をダイレクトに受けることも多く緊張感が強くなるすぎる傾向があるため、できれば視線がぶつからない場所に学習机を置いてスタディスペースにすると、適度に集中力が増して良いとのこと。そのスペースがなければ、子どもが座る位置に気をつけると良いですね。

リビングに本棚を

西村氏が家庭教師で行った中にはリビングに本が溢れている家があり、そんな家庭のお子さんは勉強ができる子が多かったそうです。読書は語彙を増やすのに最適なまなびです。そのためすぐ手がとどくようにリビングに本棚を置くことを推奨されています。そして本の並べ方にもまなびのヒントが隠れています。

大人の本も子どもの本も一緒に収納する

子どもは大人の本にも興味津々。難しくても手に取れるように一緒に並べることで好奇心を育てます。

本棚紹介
※小学2年生(女子)の家のリビングにある本棚

本のサイズは揃えない

大人の感覚だと、見た目を考えて大きさを揃えて整えたくなりますよね。でも子ども目線を考えると、違う規則性を持たせる方が良いそうです。サイズよりもジャンルを揃えて並べること。

例えば、「恐竜」のテーマで図鑑も絵本も一緒に、大人の本の場合は「歴史もの」などのジャンルかまたは作者別に固めて収納します。片付け方を見ている子どもは親の真似をし、それが「記憶の中にモノをしまう」トレーニングとなり、結果として本棚の整理を通して頭の整理もできるようになるといいます

ジャンルによる規則性のメリットは子どもにつきものの忘れ物にも効果的。モノを探すとき記憶を辿りやすくなるので見つけるまでの時間が短くなり、忘れ物そのものが減るそうです。

知的好奇心をくすぐるレイアウト

家具のレイアウトを決めるとき、子どもの知的好奇心を刺激する工夫を考えてみましょう。子どもの目線を考えて、床に寝転んだ視線の先に本など興味をそそるものを置いてみてはどうでしょう。

家具も単にオープンに並べるのではなく、あえてのぞかないといけない位置(例えばソファの裏など)に収納を置いて、探検や発見が大好きな子どもの好奇心をくすぐってみるなど、遊び心を加えてみましょう。

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リビング学習を取り入れる場合、親はあくまで見守り役にまわり、監視にならないよう注意が必要です。それぞれが自分のやるべきことを同じ空間で並行してやりながら、コミュニケーションをとりあえるリビングは、家族間の良いバランスを保ち、子どもがリラックスしてまなべる最適な環境と言えるでしょう。

言ってみれば、「家全体が子ども部屋」。以前ご紹介したイエナプランが先生と生徒で話し合って教室を作り上げていたように、家庭でも、成長に合わせて子どもと話し合いながら部屋もアップデートしていけたらきっと楽しいですね。

(参考)
suumoジャーナル|リビングで勉強する子どもが伸びる理由。ポイントは刺激と発見、適度な雑音
ベネッセ教育情報サイト|陰山英男氏に聞く!子どもの学力を伸ばす勉強法・習慣とは
Crescasa|子どもが賢く育つ家とは?
LIFULL HOME’S|LIFULL HOME’S PRESS|【頭のよい子が育つ家①】未来の日本を担う人材に!子どもの学習効果と住環境のヒミツ
日経DUAL|【子どもの頭が良くなる部屋づくり 特集(1)】|カリスマ家庭教師・西村則康先生が教える「リビングに必要なもの・要らないもの」
日経DUAL|楽しくメリハリをつけて学ぶために、リビングにあった方がいいものは?
日経DUAL|【子どもの頭が良くなる部屋づくり 特集(6)】場所別、子どもの成長を後押しするポイントとは