子どもは、幼年期から児童期、思春期と成長する過程で、変化する環境のなか、たくさんの人と関わるようになります。
特に、園生活や学校生活では、友だちとの関係、先生との関係、学習面のことで、不安や悩みを抱えたりストレスを感じたりしてしまうこともあるでしょう。
そのようなときに、私たち親はどのような対応ができるのでしょうか。親ができる3つのポイントをご紹介しましょう。
不安の感じ方には個人差がある!
集団生活が始まるまで、毎日お父さんお母さんと一緒に過ごしていた日常が、ある日を境にがらりと変わり、お友だちや先生との日々が始まります。また、小学校に就学すると、これまで遊び中心だった幼稚園・保育園の生活から、机に向かって勉強をする「学習」が始まります。このような環境の変化は、子どもにとって楽しみでもありますが、同時に不安を感じる原因になることも。
不安に感じるかどうかは、個人差があります。同じ場面であっても、子どもによっては不安に感じる子もいれば、そう感じない子もいるでしょう。このように、不安や悩み、ストレスの感じ方はひとりひとり異なるので、親御さんは自分のお子さんがどんなときに不安を感じやすいかをよく観察してみましょう。
具体的に、子どもが不安を感じやすいシチュエーションはどんなものが考えられるでしょうか。
<幼年期>
- 母親と離れて、はじめての幼稚園や保育園での生活
- 園生活や、児童館・プレ幼稚園での集団生活に馴染めない
- お友だちとの関係性での不安
- トイレで失敗してしまった、失敗してしまうかもという不安
<児童期>
- じっと座って授業を受けなければいけない
- 学校の授業中に発言を求められる
- 苦手な食べ物でも、給食で食べなくてはいけない
- 勉強や体育などで、友だちができることが自分はできない
- クラス替えなどのタイミングなど、友だち関係の不安
このように、幼年期や児童期は、園生活や学校生活の中での不安や悩みを抱える場合が多いようです。特に、新生活が始まるタイミングなどは、お子さんの様子を見守っていくことが大切です。
子どもの不安やストレスをキャッチする
また、子どもは不安を感じても、大人のように上手に言葉にできないことも。そこで、親御さんがその気持ちを汲み取ってあげたり、体に現れる変化などに気づいてあげたりする必要があります。
不安やストレスを感じている子どものタイプは大きく4つに分類できます。
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- 頭に現れるタイプ
不安になる、落ち着きがなくなる、悩んでいる様子を見せる
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- 気分や感情に現れるタイプ
イライラしている、憂鬱そうに見える、無口になる、表情がない
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- 身体に現れるタイプ
お腹を痛がる、胃を痛がる、眠れない、おしっこがしたくなる
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- 行動に現れるタイプ
兄弟などをいじめる、物にあたる、お友達に手を出す、泣く、引きこもる、怒る、抱きつく、指をしゃぶる、甘え行動が増える
子どもが不安を抱えている状態では、このような反応を見せる場合が多いと言われています。
また、低学年から中学年ぐらいまでの子どもは悩みを言葉にするのは難しいため、「お腹が痛い」など、身体的な不調を訴えるケースが多いのだそう。一方、高学年になると、頭に現れるタイプが優勢になり、頭を抱えて悶々と悩んだり考え込んだりするようになります。
どんなことで不安を感じるかに個人差があるように、不安を感じているときの子どもの反応もその子それぞれ。直接不安を口にする子もいれば、口にせず不安な様子を見せる子、身体的なストレス反応で出てくる子などさまざまです。
親御さんは、お子さんがどのようなタイプなのかを把握したり、年齢によって反応の現れ方に変化があることを知っておきましょう。
子どもが不安を感じていたら、親がすべき3つのこと
お子さんがいつもと違う様子だったり、不安を口にすることがあったとき、親御さんはどのようなことをすべきなのでしょうか。親御さんがすべき3つのことをご紹介します。
<その1>不安やストレスか、病気なのかを判断する
NPO法人 子育てひろばほわほわの顧問である永瀬春美さんは、「“おなか痛い”には病気の可能性もあるので、診察を受けることが大事。そのうえで、慣れない新生活に加え、不安な気持ちを表現できないことなどが重なって、腹痛の症状が出ることがあります」と言います。
このように、「お腹が痛い」「頭痛がする」など、身体的な不調として訴えてきた場合は、まずは病気かどうかの判断をすることが必要です。毎日一緒に過ごしているご両親であれば、その様子からある程度は判断できると思いますが、やはり小児科へ行って医師の診察を受けることが大切です。医学的に明確な病気や原因が確定できなかった場合に、ストレスを疑ってみるのがいいかもしれません。
<その2>子どもの話をじっくり聞いてみる
身体的な不調がストレスや不安感からくるものだとわかったら、次は子どもの話をよく聞いてあげましょう。声をかけるときは、困っていることを前提とした声かけをするといいと言います。たとえば「最近〇〇していることが多いけど、大丈夫?」や「何か学校で困っていることはある?」などのように、子どもが困っているのだと訴えやすいように話しかけてみましょう。
また、話を聞くときは、子どもの話が終わるまで「聞き役に徹する」ことが重要。子どもの話を聞いている最中、親御さんとしてはさまざまな感情や考えが湧き出てくると思いますが、とにかくまずは聞き役に徹しましょう。子どもの話を遮って、自分の思いを言い出すのは最悪の対応なのだとか。子どもの感情をそのまま受け止めて、「そうだったんだね」と頷いてあげるといいでしょう。
教育ジャーナリストのおおたとしまささんも、子どもの気持ちを受け止めることについて以下のように言っています。
気持ちが凹んでいるとき、「自分の気持ちをわかってもらえた」と思うだけで、ひとは前に進む意欲を復活させることができます。そういう経験を繰り返すことで「自分は一人じゃない」「やるだけやってみよう」「なんとかなるさ」と思える心の強さが育まれます。
(引用元:日経DUAL|子どもの「折れにくい心」を育てるマジックワード)
大切なのは、「お母さん(お父さん)はいつでも、あなたの話を聞いてあげるよ」という姿勢を見せること。何か不安なことがあれば、「いつでもお母さん(お父さん)が聞いてくれる」という安心感があるだけで、子どもは勇気を持って不安を乗り越えられるかもしれません。
<その3>解決策は子どもに決めさせる
「聞く」ことができたら、今度はこれからどうするのかの「相談」をします。子どもがどうしたいのかを聞いて、どのように問題解決をしていくか話し合いましょう。そのときに、親御さんのアドバイスを踏まえたうえで、子どもに今後の方向を選択させます。解決策は子ども自身に決めさせるのがポイントです。
谷町こどもセンター(大阪市)で所長を務める、臨床心理士の日下紀子さんも次のように話しています。
小学生の場合は、「スモールステップを用意する」「がんばりを認める」ことが大切なのだそう。「勉強や体育で遅れをとっていることがストレスにつながっているのなら、少し頑張れば乗り越えられそうな目標を一緒に立ててあげるのがいいでしょう」
(引用元:いこーよ|新生活こそ要注意!)
不安を抱くことは、決して悪いことではありません。不安というのは、人間が自己防衛するための本能であり、そのおかげでいろいろなトラブルを回避できたり、乗り越えられたりするのだそう。
ですから、無理に不安を取り除いたり回避するのではなく、不安な気持ちが少しでも改善するにはどんなことをしたらいいのか、その方法を親子で一緒に考えましょう。不安や悩みを抱えることは、成長過程において自然なことなのです。
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子どもが不安になりやすい時期は、4月の新学期が始まった直後、ゴールデンウィークなど大型連休前後、夏休み明けと言われています。せっかく整って慣れてきた学校生活のリズムが崩れてしまう時期でもあり、子どもは不安やストレスを抱えやすくなりますので、このような時期はとくに注意が必要です。ご家庭では、子どもがサインを出しやすい、不安や悩みを言葉にしやすい環境を作ったり、普段からお子さんの言葉に耳を傾けるようにすることも大切ですね。
文/内田あり
(参考)
Z-SQUARE|子どものストレス対処法(1)
Z-SQUARE|子どものストレス対処法(2)
仙台市教育委員会|子供の不安・変化を見逃さないための生徒指導ハンドブック
いこーよ|新生活こそ要注意! 子どものストレス原因&親の対処法
NHK生活情報ブログ|おなか痛いをわかってほしい
日経DUAL|子どもの「折れにくい心」を育てるマジックワード