2020.3.2

ただの音楽教育じゃなかった! リトミックの効果とレッスン内容を詳しく解説。

ただの音楽教育じゃなかった! リトミックの効果とレッスン内容を詳しく解説。

音楽系の習い事のひとつとして注目されている「リトミック」。子どもの教育によいと評判で、全国にはさまざまな教室がありますが、そもそもリトミックとはどんなもので、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか?

ここでは、リトミックに期待できる教育効果や、リトミック教室でのレッスンの一例(年齢別)を紹介します。

そもそも、リトミックとは?

リトミックとは、スイスの作曲家・音楽教育家であるエミール・ジャック=ダルクローズ(1865~1950)が提唱した音楽教育です。リトミックを英語で表記すると「Eu Rythmics」。「よいリズム」を意味します。言葉の意味からわかる通り、リトミックの特徴は、音楽のリズムに合わせて体を動かし、表現することにあります。

そんなリトミックには、「音楽教育」としての側面だけでなく、「人間教育」としての側面もあります。国際幼児教育学会常任理事でユリ・リトミック教室主宰の石丸由理氏は、幼児期にリトミックを習うことの教育効果として以下の点を挙げています。

リトミックで学べること:音楽教育の面

  • 音楽の始まりと終わりの感覚
  • 基本的なリズム
  • ダイナミクス(音の強弱)
  • ピッチ(音の高低)
  • サイレンス(音のない時間)
  • いろいろなリズムパターン
  • リズムフレーズ
  • 拍子
  • いろいろな音色、ニュアンス
  • 感覚を通して音楽を感じ、表現する力

リトミックで学べること:人間教育の面

  • 自分から耳を傾けて聴き、どうしたらよいかを判断する力
  • 音に対してすぐに反応できる力
  • 記憶力や集中力
  • 緊張とリラックスの使い分けができる適応力
  • 学んだことをほかの場面でも使える力
  • 人との上手な関わりを通しての社会性、協調性
  • 人のアイディアを受け入れる力
  • 自分のアイディアを創造する力
  • 心の中で聴く力

リトミックが人間教育にもつながる理由は、ただ音楽を聴くだけでなく、全身を使って表現したり、コミュニケーションを通して音楽を体感したりするためです。また、子どもによっては、レッスンの中でうまくできないことにも出合います。その際に「自分の力でどうしたらよいかを考え、解決する」経験が、子どもを人間的にも成長させるのだと石丸氏はいいます。

リトミックの効果02

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年齢別(0~5歳)リトミックのレッスン内容

楽しく音楽を学びつつ、注意力や集中力などさまざまな能力を高めることができるリトミック。実際の教室では、どのようなレッスンが行なわれているのでしょう。

0歳から5歳までの年齢別に、リトミック教室で行なわれているレッスン内容の例を紹介します。子どもの発達段階に合わせて、各年齢の子どもたちが楽しめるようなレッスンが行なわれているようですよ。

■0歳児のリトミック

0歳児を対象としたレッスンを実施しているリトミック教室は限られていますが、もし近くに教室がない場合でも、保護者主導で自宅にて行なうことが可能です。芸術教育研究所(現・芸術と遊び創造協会)が提案する0歳児向けのリトミックは次のようなもの。

  1. 授乳後のリトミック
    授乳後、げっぷを促すときに、ゆったりと子どもの体を立て、だっこして歌を歌ってあげながら背中をやさしくたたいてリズムを伝える。
  2. 目が見え始めたころのリトミック
    紙テープや色のはっきりした色紙を50cmくらい離した場所につるす。紙テープが不規則に揺れたり、カサカサを音を立てたりする様子を眺めるだけでも、リトミックのレッスンになる。
  3. 首がしっかりしてきたころのリトミック
    子どもを膝の上に座らせて首の後ろに片手をそえて支え、歌を歌いながらゆっくり前後にゆすってリズムを伝える。子どもが慣れてきたら、首を支えるのをやめて、背中や腰をささえて同様にゆする。一人座りができるようになったら、向かい合って床に座り、手をつないでゆする。

■1歳児のリトミック

多くのリトミック教室で、1歳からを対象としたレッスンが行なわれています。2歳ごろまでは、保護者と一緒にレッスンに参加するスタイルが一般的です。

たとえばカワイ音楽教室では、保護者と一緒に、手遊びや体を使った遊びを通してリズム活動を行ないます。このほか、童謡に合わせて大きな身振り手振りつきで講師と一緒に歌うレッスンもあるそう。

音楽教育学・リトミックを専門とする、京都女子大学教授の神原雅之氏によると、1歳児になると全身運動を伴うリトミックができるようになるとのこと。床を転がりながら回転時の緊張と体を止めたときのリラックス状態を体験するレッスンは、その一例です。

この時期の子どもはまだ歌を上手に歌える段階ではないので、レッスン中は保護者がやさしく、一語一語はっきりとわかるように語りかけます。また、リズムに合わせることもまだ難しいもの。ですから、1歳児のリトミックでは、親子で一緒に音やリズムを「楽しむ」ことがなにより大切になります。

リトミックの効果03

■2歳児のリトミック

神原氏によると、2歳になれば、音楽の休止に対する反応や、ボールなどの道具を使いながらのリトミックなどができるようになるそう。また、ほかの子どもと一緒にリトミックを楽しめるのも2歳児の特徴です。

そこで神原氏がすすめるレッスンのひとつが、「ゴー&ストップで遊ぶリトミック」です。音楽に合わせて自由に体を動かし、音楽が止まったらピタリと止まります。止まるときにポーズをとるようにすると、よりいっそう楽しめるとのこと。慣れるまでは、音楽の停止と同時に、講師が「ポーズ」と声をかけます。

「ボールを使ったリトミック」では、音楽のリズムに合わせて、保護者や友達とボールを渡しあいます。渡すときに「どうぞ」、もらうときに「ありがとう」ということで、言葉のリズムを体感できます。

■3歳児のリトミック

3歳になるとコミュニケーション能力が発達し、グループでのリトミックができるようになると神原氏はいいます。たとえば、3~4人のグループを作り、曲を聴きながら先頭の子についていくように並んで歩くリトミックなどを実践するのだそう。曲の終わりに“ポーン”と低い音を鳴らして合図をしたら列の向きを変える……といった変化をつけると、音の高低を聴き分けられるようになるといった効果も期待できます。

なお、3歳になると、子どもたちだけでレッスンに参加するケースが増えるようです。国立音楽院の幼児リトミック教室でも、3歳クラスでは保護者から離れて子どもたちだけでレッスンを楽しむようになるとのこと。自分で判断して自分で行動する、ひとり立ちのトレーニングの始まりです。

リトミックの効果04

■4歳児のリトミック

4歳になったら、音の強弱や音階を意識したリトミックが取り入れられます。神原氏が提案する「音階に親しむリトミック」では、音階に合わせて“ドレミファソ”と歌いながら体を動かすことで、音階に親しみつつ、音の高低の変化を感じ取る力を身けられるのだそう。

また、石丸氏によれば、精神面での変化として、4歳以降はレッスン中に「負けず嫌い」や「好き嫌い」といった気持ちが芽生えるのだそう。「こういう動きは苦手」とか「速いテンポについていけない」などという子も出てきます。ですが、そんな様子の友だちを見て「もうすぐジャンプだよ」と声をかけてあげるなどの思いやりを持てる時期でもあり、そうした経験が人間的な成長につながっていくのです。

■5歳児のリトミック

5歳になると、遊具を何かに見立てた動作をしたり、手足を同時に動かすフォークダンスを取り入れたりできるようになるそう。リズミカルに体を動かすことで、表現力や想像力を身につけられるようになります。

神原氏が提案するレッスンの一例に、「ボードを使ったリトミック」があります。段ボールや厚手の色画用紙を直径20cmくらいに丸く切ったものを使用して、車のハンドルに見立てて走ったり、帽子のように頭にのせて歩いたりとさまざまな動きをするのです。このとき、伴奏に合わせてただ自由に動くのではなく、「八分音符の拍子に合わせて足を動かす」といったルールを決めると、より高度な音楽教育につながるのだとか。

また、石丸氏は、5歳ごろからはグループの中でもリーダーやそれぞれの役割を決めることができるようになるといいます。自分がリーダーになったりリーダーに従ったりして、さまざまな立場になることで、考える力や協力する力が身につくそうですよ。

リトミックの効果05

リトミックを始める前の注意点

楽しそうなリトミックのレッスン内容に、すっかり心惹かれた親御さんもいるのではないでしょうか。ですが、子どもに無理にリトミックをさせてはいけません

石丸氏いわく、保護者の心の準備として「無理やりにやり方を押しつけない」ことを心得ておくべきなのだそう。リトミックは、決められた動きを練習したり、決められた活動したりするものではありません。また、良い・悪いの評価をするものでもありません。「音楽と一緒に動いていたら、自然とできるようになっていた」と子どもが感じられることが理想なのです。

リトミックの提唱者であるダルクローズは、精神的・肉体的に不安を感じているときは、心と体の統一や調整に欠けており、リズムに反応できないといいます。子どもに無理にリトミックをさせることは、こうした不安につながるので、本来の目的を達成できない意味でもおすすめできません。

リトミックは幼児教育とはいえ、あくまで大切なのは、子どもに「音楽で動く楽しさや友だちと一緒に動く楽しさ」を経験させることです。子どもが笑顔でリトミックを楽しめるよう、見守ってあげましょう。

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「動くのが楽しい」「音楽を聴くのが好き」な、好奇心旺盛な幼少期の子どもたちにとって、リトミックを習うことにはたくさんのメリットがあります。

0歳から始められるリトミック。親子のコミュニケーションが増えるきっかけにもなりますので、ぜひ楽しみながら始めてみてくださいね。

文/かのえかな

(参考)
芸術教育研究所おもちゃ美術館(2001),『0~5歳児のリトミック指導』,黎明書房.
石丸由理(2003),『リトミック百科 年齢別の基本レッスンから発表会まで』,ひかりのくに.
石丸由理(2017),『基礎からわかる リトミック! リトミック!』,ひかりのくに.
神原雅之(2019),『こころとからだを育む1~5歳のたのしいリトミック』,ナツメ社.
カワイ音楽教室|クーちゃんランド
カワイ音楽教室|くるくるクラブ
国立音楽院|幼児リトミックの効果とねらいとは?レッスン例を用いて簡単にご説明!