2019.5.7

東大・京大・司法試験・医師試験の合格者たちが、幼児期に共通してやっていたこと

東大・京大・司法試験・医師試験の合格者たちが、幼児期に共通してやっていたこと

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教育熱心な親御さんのなかには、「プレイフル・ラーニング」という言葉を耳にしたことがある人も多いかもしれません。いわゆる詰め込み型教育の対極にあるものとして、「遊びながら学ぶ」というイメージを持っているのではないでしょうか。でも、ちょっとだけ、そのとらえ方のニュアンスがちがうようです。

では、そもそもプレイフル・ラーニングとはなにか。そして、家庭教育に生かすための方法にはどんなものがあるのかを、発達心理学と認知心理学の専門家である十文字学園女子大学大宮明子先生に教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

楽しんでいるなかに学びがある

プレイフル・ラーニングとは、同志社女子大学の上田信行先生が提唱された概念で、一般には2000年代前半頃から認知度が高まってきました。「プレイ」という言葉から、「遊びながら学ぶ」教育手法だと思われがちですが、プレイフル・ラーニングの根底にあるのは楽しんでいるなかに、そもそも学びがあるという考え方です。

「楽しんでいるとき」ですから、いわゆる「遊び」でない場合もあります。ただ、子どもの場合、楽しんでいるときにしていることというと、基本的には遊びが多いですよね。ですから、必然的に子どもにとっては遊びから学ぶことが多くなるのです。

親御さんに意識しておいてほしいのは、大人と子どもの学び方はまったくちがうということ。決定的なちがいは、「目的や目標があるかどうか」という点です。大人が学ぶときには、ほとんどの場合はなにかのスキルを身につけたいといった目的や目標がありますよね。そして、その目的や目標を達成するために本を読んだり講座を受けたりするわけです。大人は、「学ぶこと」とはそういうものだと思っています。

でも、子どもの場合は多くの学びがある遊びをするにも、なにかを学びたいといった目的や目標を持っていません。ただ楽しくお人形さんごっこをやっていたら、いつの間にか自分の着替えもできるようになった。これも立派な学びですが、その子は「着替えができるようになりたい」と思っていたわけではないのです。

子どもの学び方は、あらかじめほしい結果があるのではなく、楽しく遊んでいたら、結果としてなにかを学んでいたというかたちだと思っていいでしょう。

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好きなことを追求していた難関突破経験者

幼いときのプレイフル・ラーニングは、将来的には学力を大きく伸ばすことにもつながります。以前、先の上田先生、お茶の水女子大学の内田伸子先生とわたしの3人でおこなった研究を紹介しましょう。

その研究では、東大や京大といった難関大学合格者、あるいは司法試験や医師試験の合格者という「難関突破経験者」とその親にウェブ調査をおこないました。調査内容は、幼児期になにをしていたことが難関突破につながったか、ということです。

結果は、見事にプレイフル・ラーニングでした。普通、そういうエリートと呼ばれる人たちなら、小さいときから塾に通って先取り学習をするなど一生懸命に勉強していたのではないかと考えるのが自然です。でも、実際にはそうではなかった。彼らが幼いときになにをしていたかというと、それぞれが好きなことをとことんやり続けた。そして親は、子どもが好きなことに一緒に取り組むなどして、子どもを応援していたのです。

たとえば、ある人は虫が大好きでひたすら網を持って虫取りばかりしていたそうです。他には、とことんサッカーをしていた、野球をしていたという人もいます。いわゆるお勉強からは程遠いことをしていた人たちばかりでした。

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それがなぜ知的なレベルの学習にもつながったのか? その部分にはみなさんも関心があるでしょう。その答えは、その人たちが幼いときにやっていたことは、親に強制されたものではなく、自分が好きなことだったということ。そして、親がそれを止めることなくやり続けさせた。そうして、持続力や集中力が身についたのだろうと推測できます。

また、好きなことを通じて、彼らは自分なりに学びに向かうための方略を身につけていきました。虫好きの子どもなら、知らない虫を捕まえてくれば自分で図鑑を開いて調べる。そして、単にバラバラの知識を頭に入れるのではなく、「この虫とこの虫はここが似ているから、きっとこういう似た場所にいるのだろう」というふうにも考えたりもする。

つまり、自ら学ぶ姿勢を身につけ、さらには自分で得た知識を体系立てる、構造化するということも、小学校に入る前からしていたというわけです。そんな学びの姿勢がある子どもの興味の対象が教科になったとしたらどうでしょうか? 学力が一気に伸びることは明白ではありませんか。

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ものを過剰に買い与えることも要注意!

大切なことは、子どもにとっては遊びのなかに学びがあるからといって、「はい、これで遊びなさい!」と強制してもなんの意味もないということ。子ども自身が「やりたいと思うこと」を思う存分やらせてあげることがポイントです。

すると、「なるべく選択肢が多いほうがいいだろう」と考えて、いろいろなものを買い与えようとする親御さんもいるようです。しかし、その考えは要注意。大人にとっては珍しくもなんともないものでも、子どもにとっては「これ、なんだろう?」と思うものが家のなかにはあふれているものです。それこそ、単なるテレビのリモコンだって、幼い子どもにとっては興味の対象になるのです。

それなのに、お店で少しでも子どもが興味を示したからと、あれやこれやと買い与えると、子ども部屋はものであふれかえります。すると、ものがあり過ぎるためにものが風景の一部になり、子どもはどこに注意を向けていいのかわからなくなり、かえってものに対して興味を示したり集中したりすることができなくなるのです。

意識的にものを与えなくても、子どもは子どもなりに周囲のものに必ず興味を示します。そして、その興味を邪魔することなく、子どもの行動、遊びを見守ることを心がけてください。

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幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究
大宮明子 著/風間書房(2013)
幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究

■ 十文字学園女子大学教授・大宮明子先生 インタビュー一覧
第1回:東大・京大・司法試験・医師試験の合格者たちが、幼児期に共通してやっていたこと
第2回:「ママがやって」と言われたら黄色信号。子どもの考える力を奪う親のNGワード
第3回:「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴
第4回:絵本の目的は学びにあらず。子どもの興味の芽を摘む、読み聞かせ後の「最悪の質問」

【プロフィール】
大宮明子(おおみや・あきこ)
6月5日生まれ、東京都出身。十文字学園女子大学人間生活学部幼児教育学科教授。1988年、中央大学法学部法律学科卒業。1997年、お茶の水女子大学教育学部教育学科心理学専攻3年次編入学。2001年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科発達社会科学専攻博士前期課程修了。2008年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達科学専攻博士後期課程修了。人文科学博士。発達心理学、認知心理学、とくに子どもの思考の発達、乳幼児期の親子の関わりを専門研究分野とする。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。