2021.6.8

“10歳までに” すべき4つのこと。なぜ「遊べていない人間」はダメなのか?

編集部
“10歳までに” すべき4つのこと。なぜ「遊べていない人間」はダメなのか?

子育てや教育にまつわる情報を探していると、10歳までに◯◯すべきという説をよく目にします。それはなぜでしょう?

どうやら「10歳までの子ども」は、親子の関わり方によってぐんと伸びる可能性を秘めているらしいのです。今回は、子どもの未来のために10歳までにしておきたいことについて考えていきます。

「10歳までに〇〇すべき」の科学的根拠

そもそも「10歳まで」という年齢に根拠はあるのでしょうか? 小学校高学年に差しかかる10歳の子どもは、大人に比べるとまだまだ幼稚な面が多いものの、子どもっぽさが抜けつつある過渡期です。ここでは、脳や心の成長と教育面における10歳までの変化を見ていきましょう。

■脳の発達における「10歳」とは

まずは脳科学の面から、10歳までの子どもの脳の成長について解説していきます。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家である加藤俊徳氏は、子どもの脳の成長には段階があり、その年齢に適した脳の発達を促すことが大切であると述べています。

具体的には、3~7歳くらいまでは体を動かすことを重視し、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)で脳に情報を取り入れることを意識するといいそう。目的は、右脳の成長を促すことです。「感性脳」と呼ばれる右脳の発達は、相手の気持ちを汲み取るなど、上手なコミュニケーションに欠かせません。

続いては、7歳以降。小学校に入ると教科書を使ってたくさん勉強するようになり、言葉の情報を理解する能力が鍛えられます。これにより「論理脳」と呼ばれる左脳が著しく成長し、自分自身を理解するのに役立ちます。

加藤氏によると、「10歳以降にぐんと伸びるのは、体験を言葉にしたり、文字情報を読んで深い理解につなげたりする能力。だからこそ、それまでに言葉以外の体験を十分にしておく必要があるとのこと。満点の星空を見上げる、炎天下でかき氷を食べる、虫の声に耳を傾けるなど、五感を通したさまざまな体験をさせてあげましょう。

■心の発達における「10歳」とは

よく「10歳の壁」という言葉を耳にしますが、発達心理学の観点からも、10歳は精神的な不安定さが顕著に現れる難しい時期だと言われています。

「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」(文部科学省)によると、10歳前後の子どもには自分のことを客観的にとらえられるようになる反面、自己に対する肯定的な意識をもてず、劣等感をもちやすくなるという特徴が見られるようになるそう。このような内面の変化は、親にとっても子ども本人にとっても深い悩みにつながる可能性がありますが、決して悪いことばかりではありません。

10歳は子どもにとって大きな飛躍の年と話すのは、発達心理学・学校心理学の専門家である渡辺弥生氏。この時期の子どもは大人に向かって急激に成長します。悩みの内容も大人と同じように複雑化するでしょう。それこそ、自分を客観視できるようになった証であり、将来をしっかりとイメージして考えられるほど成長した、ということなのです。

大きな変化の渦中にいる子どもは、親が考える以上に強いストレスを感じています。時には反抗的な態度をとってしまうこともありますが、将来大きく羽ばたくために必要な過程なのです。10歳前後の子どもの心は、急激に成長している最中と言えるでしょう。

■学力面における「10歳」とは

最後に、10歳を境にした変化について、教育における観点から解説します。花まる学習会代表の高濱正伸氏は、「子どもはおおむね10歳(小学4年生)くらいを境に、大きく変わります。親は小学校低学年と高学年では “生態がまったく違う” ことを認識すべきです」と述べています。

私の長年の観察によると、小学3年生(9歳)までが「オタマジャクシ」の時代で、小学5年生(11歳)から「カエル」の時代がはじまります。その間の小学4年生(10歳)は、「オタマジャクシ」から「カエル」に変わる転換期であり、「オタマジャクシに足が生えた状態」といえるでしょう(もちろん成長には個人差があります)。

(引用元:高濱正伸(2014),『本当に頭がいい子の育て方』, ダイヤモンド社.)

学力面において「10歳」は分岐点になります。高濱氏は、8、9歳くらいまでに “頭のよさ” の核心部分が育つと言い、「低学年で基礎力を完成させ、高学年以降にさらに発達させる、というプロセスが一般的なので、10歳までに基礎力が身についていないと、それ以降の “あと伸び” が難しくなると指摘しています。

このように、子どもにとって非常に重要な時期として「10歳」が挙げられるのには、それなりの理由があるのです。長い人生のなかでたった10年でも、その時期の経験や生活の基礎が人生の土台となることを考えると、「10歳までに」してあげたいこと・させてあげたいことが見えてくるはずです。

10歳までにすべきこと02

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10歳までにしたほうがいい4つのこと

では具体的に、10歳までに何をしたらいいのでしょうか? ここでは押さえておきたい4項目をピックアップしました。

■10歳までに「生活習慣を整える」

12年間、5万人以上の「勉強ができる子」の学習パターンを調査してきた朝日大学マーケティング研究所所長の中畑千弘氏は、勉強ができる、できない子の差は10歳までの生活習慣にあると断言します。中畑氏によると、いわゆる「勉強ができる子」は、「10歳までに机に向かって5分でも10分でも何かをするという習慣」が身についていることが多いそう。

また、勉強に限らず、同じ時間に起きる、同じ時間に食事をとる、同じ時間に寝る、など規則正しい生活習慣が身についていることも重要です。文部科学省による「全国学力・学習状況調査」(平成28年)では、朝食を毎日食べている子どものほうが、学力調査の平均正答率や体力合計点が高い傾向にあるという結果が出ました。朝起きて食欲が出ないなら、具だくさんのスープやフルーツなどを少量でも食べる習慣をつけましょう。

また、教育ジャーナリストの清水克彦氏は正しい生活習慣に加えて、お手伝いや整理整頓の習慣も身につけるべきと述べています。なぜなら、お手伝いや整理整頓が習慣づいている子どもほど、頭のなかの考えを整理しやすく、上手に感情のコントロールができたり、自分から率先して行動できたりと、学力では測れない能力が身につくからです。10歳までによい習慣を身につけさせたいですね。

■10歳までに「考える経験をさせる」

思春期になんらかの問題を起こすかどうかは10歳頃までの親子関係で決まると話すのは、青山渋谷メディカルクリニック名誉院長の鍋田泰孝氏です。10歳までの学童期は、子どもが精神的に安定していてまだ頭がやわらかい時期。それゆえ外界から多くのことを取り込みやすく、「基本的な性格が出来上がる時期」でもあるのです。

基本的な性格が出来上がるというのは、対人関係のスキルや物事のとらえ方、主体性といった「基本的なライフスタイル」が出来上がることでもあります。この時期に自分で考える経験をせず、すべて親に決めてもらっていたら、思春期にぶつかる壁を乗り越えるのは困難になるでしょう。

わが子が心配なあまり、つい過干渉になってしまう人も多いかもしれませんが、その弊害についてはよく知られるところ。そうならないように、「子どもをひとりの人間として尊重することが大切」と話すのは公認心理師の佐藤めぐみ氏です。親が意識すべきは質問をする」「相談をする」「意見を聞くの3つ。子どもの決断や判断の機会を奪わないよう、まずは子どもに「どうしたい?」「○○くんはどう思った?」と聞いてみてください。子ども自身が考え、自分の気持ちを正直に言えるようになるといいですね。

10歳までに「言語能力を伸ばす」

開成中学校・高等学校校長を経て現在は北鎌倉女子学園学園長を務める柳沢幸雄氏は、人間としての基本形が出来上がる10歳までに、幅広い経験をさせる必要があると話します。ただしそれは、習い事をたくさんさせるという意味ではありません。この時期に培いたいのは、学力や特定のスポーツの能力ではなく、「総合的な生活力」いわゆる「生きる力です。

なかでも言語能力を伸ばしてあげることを意識するといいそう。というのも、人から何かを教わるときにも、自分で物事を考えるときにも、人間は言語を使うから。つまり、「言語能力こそが学びの基礎」なのです。

子どもの言語能力を伸ばすには、「子どもの話をきちんと聞くこと」が基本です。成長過程にある子どもはボキャブラリーが少なく、話を組み立てることがまだ苦手。柳沢氏は、「話すのに時間がかかっても、親は辛抱強く待って、子どもに考える時間を与えてほしい」と述べています。子どもがしゃべる時間が2、親がしゃべる時間を1と意識しましょう。

10歳までに「思いきり遊ばせる」

10歳くらいまでに思いきり遊べていない人間は、将来的に伸びないと断言するのは、教育改革実践家の藤原和博氏。これからの時代に求められるのは、正確な答えをすばやく導き出す能力ではなく、「正解がない問題に対して多くの仮説を立てられる力」だと藤原氏は説きます。

その力は、遊びのなかで育まれるのだそう。遊びには決まった正解がなく、想定外のことも起こります。だからこそ、その場の状況をふまえ仮説を立てて乗り越えたり、みんなが楽しめるよう臨機応変にルールを変更したりする柔軟性が求められるのです。

実践教育ジャーナリストの矢萩邦彦氏も同様に、「小学2年生まではできるだけ外遊びをして、ものを観察したりつくったりする時間を確保する必要がある」と述べています。習い事に追われて遊ぶ時間がない子どもも多く見られますが、できるだけしっかりと外遊びをさせることが、その先の学びの基礎づくりになるのです。

どこか特別な場所や整備された遊び場へ連れて行かなくても、近所の公園でいつもとは違う遊びを取り入れたり、散歩コースを変えてみたりと、日常のなかで工夫して変化を楽しむことはできますよ。

10歳までにすべきこと03

10歳までに高めたい「自己肯定感」と「非認知能力」

最後に、STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ(編集)× おおたとしまさ氏(監修)の書籍、“10歳までに一生ものの土台ができる”『究極の子育て』をご紹介します。

本書は、変化の激しい現代社会において、必要とされる知識やスキルを不足なく身につけるためにどうするべきかを問う一冊。そのカギとなるのは、「自己肯定感」と「非認知能力」です。自己肯定感は、無条件に自分にOKを出せる感覚。非認知能力は、テストの点数では表せない幅広い力。どちらもこれからの時代に求められる力です。

「これだけは大切なこと」をぎゅっと絞ってまとめています。「育児や教育に悩んでいる」「子どもの未来への漠然とした不安を抱えている」といった保護者にこそ、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

 
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とはいえ、「10歳までに絶対に身につけさせなきゃ!」と焦る必要はありません。ひとりひとりのお子さんのペースに合わせて、無理なく能力を伸ばせるようにサポートしてあげましょう。たとえ10歳を過ぎてしまっても、親御さんの愛情と熱意があれば、いつでも軌道修正することは可能なのです。

(参考)
「3、7、10歳で思考力は、こう伸ばす!」, PHPのびのび子育て, 2020年8月特別増刊号, pp.36-45.
高濱正伸(2014),『本当に頭がいい子の育て方』, ダイヤモンド社.
文部科学省|3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「10歳の壁」ではなくて「10歳の飛躍」! 親が我が子の10歳をもっと面白がるべき理由
ダイヤモンド・オンライン|勉強ができる子を育てる「黄金の時間割」教えます!
「早寝早起き朝ごはん」全国協議会|「早寝早起き朝ごはん」運動について
清水克彦(2010),『頭のいい子が育つ10歳までの習慣』, PHP研究所.
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『AERA with Kids特別編集 自己肯定感を高める本』, 2020年2月, 朝日新聞出版.