あたまを使う/国語 2019.4.10

たった5歳の子どもにも国語辞典を与えるべき理由。“辞書を引く”ことの莫大なメリット

松嶋 有香
たった5歳の子どもにも国語辞典を与えるべき理由。“辞書を引く”ことの莫大なメリット

春です。新学期が始まりました。書店では、かなり目立つ場所に国語辞典が山のように積まれています。『辞書フェア』なども開催されます。中学や高校ともなると、新1年生に対して指定の辞書を買うように指示がある学校も。

しかし、積まれている辞書、圧倒的に種類や量が多いのは、小学生向けの辞書です。

そういえば、うちの子の小学校ではどうしているんだろう?
買わなくていいのかな?
よその家ではどのようにしているのかしら?
そもそも辞書って、何歳くらいに引けるようになるものなの?
辞書の引き方って小学校で教えてくれるのかしら?

そんな不安にかられる保護者の方、いらっしゃいませんか?

新しい探究型の授業でスタートラインに立てない子ども

こんにちは。ゆか先生です。

インターネット上で、国語塾「かきまくれっ!こくごトレーニングペーパー」を開いています。私の講座では、小学1年生から辞書を使うように薦めています。言葉に関心を持ち、ひらがなが読めるようになる。とても良いタイミングです。辞書を引けるようになると、ズバリ、いいことしかありません

先日、高校の先生方と一緒に、今年度入学の高校1年生から新科目となる「探究」についての勉強会に参加しました。新しい授業の方法と評価の仕方を知る必要があるので、どの先生も熱心でした。しかし、いざ問題点を書き出してみると「そもそもディベートやアクティブラーニング型授業の際、スタートラインにさえ立てない生徒たちがいる」ということが分かりました。そしてそれは小学校でも同じなのです。

今の小学校は、昔のように教師が一方的に知識を与える「講義型」の授業ではなくなってきています。グループに分かれ、自分たちで問題を探し、解決するスタイルが増えてきています。そこでは、次のような能力が求められます。

1. 課題を設定する力
2. 情報を収集する力
3. 整理・分析する力
4. まとめ・表現する力

つまり、子どもが、自分で課題を設定し、情報を収集し、整理分析し、まとめて表現するということが求められるのです。親の代が経験した、机の前に座り、先生が板書することをノートに写していた授業形態とは大きく異なります。

さて、その時、先ほど挙げたような力が必要になるのですが、その下地となる力、基礎となる力が、「辞書」で身につけられる。私はそのように確信しています。

もともとアクティブラーニングとは、大学のために用意された言葉です。大学では一方的な講義が主流だから、そこを改善しようとしたわけです。小学校では以前から「調べ学習」を取り扱っていました。それが、アクティブラーニングという言葉が大学から下りてきたせいで、その時間を確保するため、辞書で意味調べをするような時間が減ったそうで、そのことを小学校教諭の友人が嘆いていました。それはまるで、基礎トレーニングを積まないまま、スポーツの大会に出るような感じだと思います。

ボーっと生きてんじゃねーよ!

辞書が引ける子とそうでない子では何が違ってくるのでしょう?

分からない、知らないことに出会った時、なぜなのか調べもせずに生きていると、チコちゃんに叱られます(笑)。チコちゃんの番組でも色々取り上げられますが、大人でも「そういえばなんでだろうね?」ということがありますよね。まして、子どもにとっては、世の中全体が分からないことだらけなのです。

知らなくてもいい。分からなくてもいい。それは思考停止、思考放棄の状態であり、私はとても危険だと感じます。分からないこと、あいまいなことを、きちんと調べて自分の知識とする習慣がほとんどない子が増えてきていると、小学校教諭の友人から聞いています。

辞書を引くとは「分からないことをどうやって調べるか」の基本動作を身につけることです。辞書が上手に引ける子は、調べ学習の基本動作が身につくのです。この動作が慣れてくると、辞書を引くことがおっくうだと思わなくなり、むしろ楽しむようになってきます。私の生徒の中にも、授業の途中で何回も辞書を引く子がいます。

インターネット検索が気軽にできない子どもの場合、辞書は力強い友達です。そして、「分からないことをそのままにしない」という基本姿勢は、何物にも代えがたい「生きる力」を子どもに与えます。分からないことをそのままにしないということは、自分の知識を増やすという結果だけではなく、姿勢そのものが大切なのです。

例えば、身近な社会問題に対して、
「よく分からないけど、ま、いいか」
という姿勢と
「よく分からないから調べてみよう。そうか。そういうことなのか。じゃあ、今度こうしてみよう!」
という姿勢との差。1回1回でこの差があるとしたら、どれだけ未来が違うか想像がつくでしょう。

私は、国語辞典で、この時代を生きぬくための基本動作が身につくと言っても言い過ぎではないと思います。

学校では3年生から。でもそれでは遅い!

さて、小学校では3年生から国語辞典の使い方を教えます。小学校教諭の友人に聞いてみたところ「集団学習では小3からが限界」とのことでした。そうです。学校は集団学習ですからね。一人一人どのように辞書と友達になるのか、見ている環境ではないのです。私だって仮に40人の子どもの面倒をいっぺんに見なくちゃいけないとしたら、一人一人辞書引きに付き合ってなんていられません(笑)。それはいたしかたないことです。だとしたら、できない部分は家庭が担う方が良いのではありませんか?

もっと小さい子に目を向けてみましょう。3才から5才くらいの子どもは何でも分からないことを聞いてきますよね。
「ママ、○○ってなあに?」「ママ、○○ってどういうこと?」
そんなふうに聞いてくるのは「言葉」に興味がある証拠です。私はこんなチャンスはないと思っています。

もちろん、パッと答えそのものを教えるのは簡単ですが、時々辞書を一緒に引いてみてはどうでしょう? という提案です。辞書は、子どもの知りたいという気持ちに答えてくれます。そして、5、6才になると、子どもはひらがなが読めるようになっています。この時期こそ、チャンス!

これから、全6回にわたり、国語辞典について、一緒に考えていきましょう。
そして、この連載が終わる頃、国語辞典を前にして、わくわくしているお子さんの顔がありますように。

■ 連載『ゆか先生の 国語辞典の世界へようこそ』各回の内容
第1回:国語辞典でこの時代を生きぬくための基本動作が身につく
第2回:子どもにぴったりの国語辞典を選ぼう!  電子辞書ってどうなの?
第3回:初めての国語辞典。カバーは? 置き場所は? どんなふうに引くの?
第4回:ゲーム感覚でやる気をアップ! 付箋紙やノートで記録する方法など
第5回:漢字辞典、百科事典、ことわざ辞典、四字熟語辞典、語源辞典など、子どもの世界の辞典いろいろ
第6回:まとめ 国語辞典を使えるようになった子どもたちのその後