教育を考える 2019.1.26

子どものやる気をグイっと引き出す、3つの「ご褒美」テクニック

編集部
子どものやる気をグイっと引き出す、3つの「ご褒美」テクニック

「今度のテストを頑張ったら、おもちゃを買ってあげるね」「お手伝いしてくれたら、お小遣いをあげるよ」——このような、“もので釣る”という行為をしたことのある方は少なくないと思います。

実は、こうした行為が「アンダーマイニング効果」という現象を引き起こし、子どものやる気を奪ってしまう可能性があることをご存知でしょうか。

今回は、子育て中の方にぜひ知っていただきたい、子どものやる気と「アンダーマイニング効果」の関係性について詳しく説明します。

どっちが大事? やる気には2種類ある

やる気(=動機づけ)には、2種類あります。ひとつは、達成感充足感行動そのものに対する喜びといった自分の内部から生み出される「内発的動機づけ」。もうひとつは、報酬評価賞賛といった外部からの刺激により生み出される「外発的動機づけ」です。

例えば、掃除をするとき、「部屋がきれいになるのが嬉しいからやる」というのは「内発的動機づけ」、「掃除をしたらお菓子がもらえる約束をしているからやる」というのは「外発的動機づけ」です。

やる気を持続させるためには「内発的動機づけ」が大事だといわれています。なぜなら、「外発的動機づけ」には物理的な限度があり、長続きしないからです。例えば、親が子どもに「掃除をしたらお菓子をあげる」と約束しても、掃除をするたびにずっとお菓子をあげ続けることはできません。

また、「外発的動機づけ」による行動の場合、次第に行動の質が落ちていくことがあります。例えば、「お菓子がもらえればいいや」と適当に掃除を終わらせたり、親が見ているときだけ掃除したりといった悪知恵が働くからです。

一方、「内発的動機づけ」によって掃除をする場合は、掃除そのものにやりがいを見出して行うため、やればやるほどもっと掃除が好きになったり、上達したりといったことも期待できます。子どもの成長を願うなら、「内発的動機づけ」を引き出してあげることが必要なのです。

やる気を奪う!? 「アンダーマイニング効果」

ところが、親が知らず知らずのうちに、子どもの「内発的動機づけ」を奪ってしまっていることがあります。それは、「アンダーマイニング効果」によるものです。

「アンダーマイニング効果」とは、もともと持っていた「内発的動機づけ」に対して、「外発的動機づけ」がマイナスの影響を与え、やる気を減少させてしまうことです。ウィキペディアでは、下記のとおり定義づけられています。

内発的に動機づけられた行為に対して、報酬を与えるなどの外発的動機づけを行うことによって、モチベーション(やる気)が低減する現象である。例えば、好きでプレイしていたゲームに金銭的な報酬を与えられると、やる気がなくなってしまうなど。抑制効果ともいう。

(引用元:ウィキペディア|アンダーマイニング効果

例えば、もともと勉強が好きな子どもに、もっと頑張ってほしいからと、親が「勉強を頑張れば、ご褒美をあげる」と約束するとします。そうすると、子どもはご褒美があるうちは頑張りますが、ご褒美がなくなると頑張らなくなってしまう――これが「アンダーマイニング効果」です。

もともと勉強が好き(内発的動機づけ)で、自ら進んで勉強をしていた子どもでも、ご褒美を与えられることにより、それをもらうこと(外発的動機づけ)を目的として勉強をするようになってしまうのです。そして残念なことに、一度そうなってしまった場合、「好きだから勉強する」という気持ちはどんどん薄れてしまい、もとに戻りにくくなってしまいます。

やる気を最大限に発揮してほしいという親心から与えたご褒美により、子どものやる気がなくなってしまうわけです。これでは、意味がありません。

やる気を育てる、3つの「ご褒美」テクニック

では、子どもにご褒美をあげることは、やめたほうがいいのでしょうか。これに関しては、必ずしもそうとは言いきれません。「アンダーマイニング効果」の特徴を生かし、うまく子育てに取り入れれば、良い効果をもたらすことも。そこで、3つのご褒美の活用例をご紹介します。

1. ご褒美を形のないものにする
ご褒美は、一時的なやる気を引き出すには強力な効果を発揮することがあります。ですから、「アンダーマイニング効果」さえ起こさなければ、ここぞというときには積極的に導入していきたいものです。

生活情報サイト「All About暮らし」子育てガイドの佐藤めぐみさんによれば、「アンダーマイニング効果」は、お金やおもちゃ、お菓子など目に見えるご褒美によって起こる現象だそうです。逆に、目に見えないご褒美では起こりにくいといわれています。

つまり、形のないものをご褒美にすればいいのです。例えば、子どもがお手伝いをしたらギュッと抱きしめる、宿題を早く終わらせたら「すごいね」と褒めてあげる——こうした形のないご褒美は、親子のコミュニケーションにもなるのでおすすめです。

2. ご褒美をポイントカード方式にする
すでに、子どもにご褒美を与え、「外発的動機づけ」によりやる気を引き出している場合は、そこから徐々に「内発的動機づけ」によるやる気に移行させていく必要があります。その手段の一つを、「All About暮らし」子育てガイドの福田由紀子さんが紹介してくださっています。

目標を達成できたらシールやスタンプを与えて、一定の数が集まったら、何かと交換できるというシステムです。(中略)また、達成するまでに、たくさんのほめ言葉をもらうことによって、目的が「モノと交換すること」から「認められること」に移行していきます。そして、ほめられることを繰り返すうちに、自分で自分をほめることができるようになっていきます。それが、内発的動機づけ(自発的なやる気)に繋がっていくのです。

(引用元:All About暮らし|やる気を育てる! 良いごほうびと悪いごほうびの違い

このように、急ではなく、徐々に移行していくことがポイントです。このやり方であれば、もともと「内発的動機づけ」がなく、ご褒美がなければ行動できなかった子どもも、徐々にご褒美なしで行動できるようになるかもしれません。

3. ご褒美を、好ましくない行為をやめさせるために使う
書評サイト「新刊JP」には、書籍『行動経済学漫画ヘンテコミクス』(佐藤雅彦、菅俊一、高橋秀明著、マガジンハウス刊)のこんな一コマが紹介されています。

ある日、子どもたちが落書きをしていると、いつもとは違って笑顔のおじいさん。
「こどもはいたずらするぐらいが元気があってよろしい」
そう言うと、なんとおこづかいを渡しはじめました。
次の日もその次の日も、おじいさんは落書きをした子どもにおこづかいをあげます。
しかし数日後、「すまんがもう今日からこづかいはやれなくなった」「もうお金がないんじゃよ」と急にあげるのをやめてしまいました。
すると子どもたちは、すっかり落書きをする意欲をなくしてしまったのです。

(引用元:新刊JP|行動経済学を使って「いたずら書き」をやめさせる? その驚きの方法とは

これは、「もともと持っていた『内発的動機づけ』に対して、『外発的動機づけ』がマイナスの影響を与え、やる気を減らしてしまう」という「アンダーマイニング効果」の特徴を逆手にとり、子どものいたずらに対するやる気を消滅させた例です。

子どもにやめさせたい行為があるなら、その行為に対してあえてご褒美を与えることで、やめさせることができるかもしれません。例えば、テレビゲームをやめさせたいなら、下記のようなプランを試してみてはいかがでしょうか。

(1) テレビゲームのステージを一つクリアするごとにシールをあげる
(2) 子どもはシールが欲しくて、ますますテレビゲームに熱中する
(3) しばらくしたら、「シールがなくなった」と言って、シールをあげるのをやめる
(4) 子どもはシールがもらえないから、テレビゲームをやらなくなる

このように、子どものゲームが好きという気持ち(内発的動機づけ)に対して、シールをもらうこと(外発的動機づけ)がマイナスに影響し、やる気をなくすという展開が期待できます。

***
“もので釣る”というと聞こえが悪いですが、ご褒美を与えるという行為も、我が子を愛する親の気持ちの表れです。「アンダーマイニング効果」の特徴を知り、ご褒美を上手に取り入れ、子どものやる気を引き出すことに役立ててくださいね!

(参考)
株式会社日立システムズ|人を活かす心理学【第17回】報酬はやる気を削ぐ? 内発的モチベーション
プレジデントオンライン|アドラー心理学で解明「やる気」の出し方
ウィキペディア|アンダーマイニング効果
URANARU|心理学のアンダーマイニング効果の例と逆の効果
All About暮らし|ご褒美を子供のやる気アップに使っていいの?
All About暮らし|やる気を育てる! 良いごほうびと悪いごほうびの違い
新刊JP|行動経済学を使って「いたずら書き」をやめさせる? その驚きの方法とは