ここ数年で、世のなかが一変するような大事件や、平凡な日常生活を送ることが困難になるような出来事がいくつも起きています。いまはなんと言っても、新型コロナウィルスによる影響が大きく響いていますよね。このような時代だからこそ、未来を生きる子どもたちには強くたくましく育ってほしいと願うばかりです。
今回は、「メンタルが強い子に育てるためにすべきこと」について考えていきましょう。
強いメンタルは楽しい人生を送る武器になる
「メンタルが弱い人」と聞いて思い浮かぶのは、次のような特徴があるのではないでしょうか。プレッシャーに弱い、傷つきやすい、すぐに落ち込む、自信がなくてまわりに流されやすい――。反対に、プレッシャーに強く、落ち込んでもすぐに立ち直ることができ、しなやかな精神力を兼ね備えている人は、「メンタルが強い人」に分類されます。
“メンタルを鍛える” と聞くと、スポーツ選手のように勝負の世界に生きている人が、大事な局面で最大限に実力を発揮するためのものだと思われがちです。しかし、普段の日常生活でも、メンタルの強さが求められる場面はたくさんあります。
それは小さな子どもでも同じです。たとえば、お友だちに話しかけたものの返事がなかったとします。ある子どもは、「きっと僕のことが嫌いなんだ。だから無視したんだ」と思い込んで泣いてしまうかもしれません。
一方で、「声が小さかったから聞こえなかったのかな?」「ほかの子と遊ぶのに夢中になっているから聞こえなかったのかな?」と思い、“次はこうしよう” と気持ちを切り替えられる子もいます。些細なことですが、前者よりも後者のほうが「メンタルが強い」ですよね。
受験や就職といった人生を決める大勝負はもちろん、社会に出てからの長い人生のなかでは、強い精神力で乗り越えなければならない場面は数えきれないほど出てくるでしょう。
もし自分の子どもが、入社直後に「先輩に注意された」「営業先の人に冷たくされた」という理由だけで、会社を辞めてしまったら? 落ち込んでも自分の力で立ち直ることができる強い心を育むために、私たち親がいまできることはなんなのでしょうか。
メンタルが弱い子とメンタルが強い子の違い
メンタルが弱い子とメンタルが強い子、具体的にはどのような特徴が見られるのでしょうか。
■メンタルが弱い子
- 自信がなく、何かに挑戦する前から諦める
- 少しでも壁にぶつかったら諦める
- 傷つくのを恐れるあまり、交友関係が広がらない
- 「自分はダメな人間だ」と思うことが多く、楽しいことよりもつらいことばかりを考える
■メンタルが強い子
- 自分に自信があるので、「まずは試してみよう」と挑戦する
- 多少の困難でも諦めず、最後までやり抜こうと努力する
- どんな相手とでもコミュニケーションがとれるので、よい交友関係が築ける
- 「自分ならできる」と自信にあふれ、毎日が刺激的で楽しく過ごすことができる
メンタルの弱さの根底には、低い自己肯定感があります。自己肯定感や「自分ならできる」という自己効力感は、新しいことや困難なことに挑戦する力を与え、落ち込んだ気持ちを立て直す力にもなります。メンタルを強くするためには、まずは「自己肯定感を高める」ことを心がけるべきなのかもしれません。
ただし、ひとつ気をつけなければならないのは、メンタルが弱い・強いというのは、生まれつきの気質も大きく関係しているということ。特に、「HSC(Highly Sensitive Child)」=「人一倍敏感な子」と呼ばれる子は5人に1人はいると言われ、ほかの子どもたちに比べて繊細で傷つきやすい傾向が強いのです。
当然、メンタルは弱いよりは強いほうがいいでしょう。しかし、引っ込み思案で繊細な子どもに対して、無理に「もっと自信をもちなさい」「どんどん新しいことにチャレンジしなさい」と無理強いするのはよくありません。大事なのは、わが子の特性を理解したうえで、「しなやかで折れない心」を育ててあげることです。
メンタルが強い子の親がしないこと3つ
幼児臨床心理学を専門としている臨床心理学者の深谷和子先生は、「子ども自身に困難を切り抜けてもらうためにも、困難な状態にあっても『折れない心』を持ち、しなやかに立ち直ることのできる子どもを育てることが、これからの日本の教育の大きな課題」と述べています。その「折れない心」を育てるには、どうしたらいいのでしょうか。
■子どもの感情を抑えようとしない
心理療法士で『メンタルが強い子どもに育てる13の習慣』(講談社+α新書)著者であるエイミー・モーリン氏は、子どものメンタルを鍛えるためには、親は次の点に注意しながら育てていくべきとアドバイスしています。
まず、「子どもの感情を抑えようとしない」こと。たとえば、子どもが怖がっていたり怯えていたりすると、親は良かれと思って「おおげさね」「たいしたことじゃないから大丈夫だよ」と安心させようとしますよね。しかし、これでは子どもは「自分は怖いと感じた。その気持ちは間違っているの?」と思い、これから先も感情を抑え込むようになりかねません。
この場合、まずは「怖いと感じているんだね」と子どもの素直な感情を受け止めてあげましょう。励ますのはそのあと、「でも○◯ちゃんならきっと乗り越えられるよ」「◯○くんが強いこと、お母さんはちゃんと知っているよ」といったひとことを添えて、子どもの背中を押してあげます。
■過保護にならない
「過保護であること」は、子どもメンタルを強くするにはマイナスでしかありません。毎日「宿題やったの?」「忘れ物ない?」としつこく聞いていませんか? 「子どもが失敗しないように」と先回りして世話を焼く親心は理解できますが、メンタルが強い子の親は、ある程度は子どもの行動を放任し、自然の成り行きに任せる傾向があります。それはたとえ間違った結果になっても、子どもが自分で気づき、考え、乗り越えるために努力できると信じているからです。
■親の意見を押しつけない
精神科の医師である中嶋泰憲先生は、「得意分野をつくる」ことも子どものメンタルを強くする方法だと述べています。たとえば、本当はバスケットボールが好きで上手なのに、親の希望で苦手なピアノを習わせている場合、ピアノのレッスンを続ければ続けるほど劣等感を抱くようになります。この劣等感が、子どもから自信を奪うのです。
得意な分野をぐんぐん伸ばしていける環境を用意してあげて、あとは見守ってあげるだけで、子どもは自分で自信を手に入れます。それはいずれ自己肯定感へとつながり、強いメンタルの素地となるのです。
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レジリエンス(折れない心)という言葉が注目を集めるように、近頃では子どもの精神力を強くするために頑張っている親御さんが増えてきています。しかし本当は、親が何かを “してあげる” ことではなく、“あえてしない” ことが重要なのかもしれませんね。
(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|5人に1人は「人一倍敏感」である。“すぐに傷つく心のメカニズム”と声かけのコツ
さぽナビ|特集 折れない心を育てる
BUSINESS INSIDER JAPAN|メンタルの強い子どもに育てたいなら、今すぐ止めるべき7つの子育て習慣
All About|メンタルを強くする方法 精神医学から考える育て方【メンタルヘルス】