教育を考える/親の関わり 2025.5.19
更新日 2025.6.16

子どもの「チャレンジ精神」を育てる7つの方法|挑戦する力が身につく親の関わり方【専門家アドバイス】

編集部
子どもの「チャレンジ精神」を育てる7つの方法|挑戦する力が身につく親の関わり方【専門家アドバイス】

「うちの子、新しいことに挑戦しようとしない」「失敗を怖がって何もやりたがらない」――そんな悩みを抱える保護者は少なくありません。
子どもの “チャレンジ精神” を育てるには、どんな関わり方をすればいいのでしょうか?

本記事では、筑波大学附属小学校元副校長の田中博史氏をはじめとする7人の専門家のアドバイスをもとに、「挑戦力」を育てる実践的な方法をご紹介します。

なぜ「チャレンジ精神」を育む必要があるの?

急速に変化する現代社会では、子どもたちに「正解のない問い」に向き合う力がますます求められています。そんな時代に必要なのが、失敗を恐れずに一歩踏み出す「チャレンジ精神=挑戦力」です。

この力は、学びや成長のエンジンとなるだけでなく、未来を切り開くための土台として、教育現場でも注目されています。ところが実際には、「どうせムリ」「失敗したら恥ずかしい」と考え、挑戦を避けてしまう子どもも少なくありません。

挑戦することで得られる「達成感」や「自己肯定感」は、子どもの自信を育て、将来の選択肢を広げる重要な要素です。では、家庭や学校でどのようにしてチャレンジ精神を育てればよいのでしょうか?

次項では、教育や発達心理学の専門家によるアドバイスをもとに、そのヒントをご紹介します。

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子どものチャレンジ精神を育てる7つの方法

1. 「過度な干渉」をしない【田中博史氏/筑波大学附属小学校 元副校長】

子どもが自ら何かに挑戦するためには、親の関わり方が重要です。筑波大学附属小学校で副校長を務めた田中博史氏は、「子どものチャレンジ精神を育てるには、親がどれだけ適切な距離感で接するかがカギ」と語ります。

結果を重視される風潮が強い現代において、子どもたちは「失敗してはいけない」というプレッシャーを感じやすく、新しいことに挑戦するよりも失敗しない選択をしがちです。

しかし、挑戦と失敗を経験してこそ、子どもは大きく成長します。親は先回りせず、見守る姿勢でいることを心がけましょう。たとえうまくいかなくても、「大丈夫、次があるよ」「もう一回チャレンジしたらうまくいくかも!」と前向きな声かけを。結果を重視するのではなく、挑戦したことをほめてあげることが大切です。

心配だからといって過度に干渉するのではなく、わが子を信じて任せること。これが子どもの「やってみよう!」という気持ちを引き出し、自ら考え行動する力を育てることにもつながります。

【チャレンジ精神の育て方】

  • 子どもが失敗したときには「大丈夫、次があるよ」と声をかけ、結果よりも挑戦を肯定する
  • 家庭では「間違えてもいい」と思える雰囲気をつくり、安心して挑戦できる空気を大切にする
  • 子どもがひとりで考える時間を尊重し、「手や口を出しすぎない距離感」で見守る

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2. まずは「自己肯定感」を育む【おおたとしまさ氏/教育ジャーナリスト】

「子どもが前向きに挑戦するためには、自分を信じる力、つまり自己肯定感を育てることが必要だ」と、教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が指摘するように、チャレンジ精神の有無は自己肯定感の高さと密接に関係しています。

多くの親は子どもを「ほめる」ことで自己肯定感を高めようとしますが、大切なのは「認める」こと。たとえば、結果がふるわなくても「よく頑張ったね」「面白いところに気づいたね!」とプロセスに目を向けることで、子どもは「挑戦した自分」を肯定できるようになります。

また、「なんとなく自信がある」という“根拠のない自信”があることも大事。たとえ根拠や裏づけがなくても、「自分ならできるかもしれない」と思える気持ちは、大きな挑戦への原動力となります。家庭での関わり方次第で、子どもは思い切って挑戦できるようになりますよ。

【チャレンジ精神の育て方】

  • テストの点や結果だけで評価せず、「どうやって取り組んだか」に目を向けてフィードバックする
  • 子どもが取り組んだ過程に注目し、「頑張って工夫してたね」と具体的に認める
  • 何かに挑戦する前に「〇〇くんならきっとできると思うよ!」と、“根拠のない自信”を育む言葉を伝える

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3. 「失敗しても大丈夫」と意識させる【井戸ゆかり氏/東京都市大学教授】

東京都市大学教授の井戸ゆかり氏も同様に、「子どもが『どうせ無理』とあきらめてしまう背景には、自己肯定感の低さがある」と指摘します。井戸氏によると、自己肯定感が下がることで、子どもが挑戦意欲を失ってしまう傾向にあるのだそう。

その原因として、小さな失敗を過剰に責められた経験や、期待に応えられなかった過去の体験などから、「失敗=ダメなこと」と刷り込まれてしまったことが考えられます。それにより、新しいことに挑戦すること自体を避けるようになってしまっているのです。

そんなときは、「失敗しても大丈夫」と子どもが心から思える環境づくりを意識してください。親子の信頼関係がしっかりしていれば、子どもは安心して挑戦することができます。

さらに、親自身の失敗談を伝えるのも、子どもにとって心強いメッセージになりますよ。子どもが自分の失敗を過度に気にしているようなら、「お父さんも子どもの頃、お皿を割っちゃったことがあるよ」など、笑い話として伝えるのも手です。子どもは親の姿を通して、「失敗してもいいんだ」と理解でき、挑戦への第一歩を踏み出すことができるでしょう。

【チャレンジ精神の育て方】

  • 子どもが「無理」と言ったときは、「試してみてから考えよう」と背中を押す声かけを意識する
  • 日常のなかで「あなたがやってくれて助かったよ」と信頼を伝え、自己肯定感を育む
  • 普段から親自身の失敗談を共有し、「失敗しても大丈夫なんだ」と思える価値観を育てる

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4. 「無条件の愛情」を伝える【熊野英一氏/株式会社子育て支援代表取締役】

株式会社子育て支援代表取締役の熊野英一氏は、「子どもが安心してチャレンジできるのは、親から愛されていると感じられるから」と述べています。親はつい、「テストでいい点を取ったらほめる」「お手伝いをしてくれたからほめる」と条件つきでほめたり、理由をつけて愛情を伝えたりしがちです。しかし、それが続くと子どもは「できなかったら愛されない」と感じ、挑戦すること自体を避けてしまうようになります。

大事なのは、結果がどうであれ「〇〇くんが一生懸命頑張っているところを見てうれしかったな」など、わが子の存在自体を肯定してあげること。「失敗しても受け入れられる」という実感があると、子どもはのびのびと力を発揮できるようになるでしょう。

つまり、「挑戦できる子」を育てるうえで重要なのは、親からの“無条件の愛情”であるということ。努力の過程を認め、結果に左右されないまなざしをもつことが、子どもにとっての「安心の土台」になります。この土台があればこそ、失敗を恐れずチャレンジし続ける力が育まれていくのです。

【チャレンジ精神の育て方】

  • 結果にかかわらず、「頑張っている姿を見てうれしかった」と子どもの存在自体を肯定する
  • 条件つきのごほうびや評価ばかりでなく、普段からスキンシップや感謝を通じて愛情を伝える
  • 失敗して落ち込んでいるときは、「大丈夫、何があっても味方だよ」と安心感を与える

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5. 「いい先回り」をする【岩立京子氏/東京家政大学教授】

子どもが本来もっている学びの力やチャレンジ精神は、親の関わり方によって大きく左右されます。東京家政大学子ども支援学部教授の岩立京子氏は、「子どもの挑戦を妨げる最大の要因は、大人による“悪い先回り”」だと指摘します。

たとえば「失敗しないように」と先に手を出してしまうと、子どもは自らの力で考えて行動する機会を失ってしまうでしょう。挑戦する経験を重ねることが自己効力感につながり、「次もやってみよう」という意欲が育まれます。

とはいえ、毎回うまくいかない経験ばかりでは、やる気を失ってしまうことも。そんなときは、挑戦を後押ししながらも、絶妙なタイミングで“いい先回り”をする親のサポートが必要です。

ポイントは、答えを出すのではなく「どうやったらできるようになるか考えてごらん」「ほかの方法も試してみる?」など、さりげなくヒントを与えること。手を出しすぎず、でも放任でもない、「ちょうどいい支援」が子どもの挑戦心を支えるのです。

【チャレンジ精神の育て方】

  • 挑戦の結果にかかわらず、「やってみたこと」を肯定的に受け止める
  • 子どもが考え込んでいるときはすぐに口出しせず、「どうしたらできるかな?」と問いかけて見守る
  • 失敗が続くときは、ヒントや選択肢をさりげなく示し、再挑戦のハードルを下げる

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6. 日常的に「運動」をさせる【高橋宏文氏/東京学芸大学教授】

東京学芸大学教育学部教授の高橋宏文氏は、「日常的に体を動かしている子は、挑戦を恐れず前向きな傾向がある」と指摘します。

運動は体力づくりだけでなく、脳を活性化し、思考や感情を前向きに整える働きがあります。特に、運動を通して得られる成功体験や、できなかったことができるようになる過程は、自己効力感を高める貴重な経験に。たとえば、逆上がりができたときの達成感や、転んでも立ち上がる姿勢は、運動能力向上以上の効果をもたらします。

たとえ失敗したとしても、「チャレンジしたことがすごい!」「次はきっとできるようになるよ」と前向きな声かけで後押ししてあげると、想像以上の力を発揮できることも。「昨日よりもタイムが縮んだね」「先週に比べて多く飛べるようになったね」など、過去の自分と比べて成長した点を強調してあげるのも効果的です。

運動により得られた自信や粘り強さ、困難を乗り越えようとする力は、勉強や人間関係など、あらゆる挑戦に対する“心の筋力”にもつながっていくでしょう。

【チャレンジ精神の育て方】

  • 公園や校庭で体を使った遊び(鬼ごっこ、かけっこ、ボール遊びなど)を親子で楽しむ習慣をつくる
  • 「昨日より速く走れたね」など、成長のプロセスに着目して言葉で伝える
  • 難しい運動に挑戦したときは、失敗しても「やってみたこと」をねぎらい、次の挑戦意欲を引き出す

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7. 「料理」をさせる【松島悦子氏/社会科学者】

食育や家族社会学を専門とする松島悦子氏は、「料理をする子は、しない子に比べてチャレンジ精神が高いという調査結果がある」と述べています。その要因として、包丁を使う、火を扱うなど、料理には小さなハードルがいくつも存在することが挙げられます。

これらのハードルはほんの些細なものばかりですが、乗り越えるたびに「できた!」という喜びをもたらします。それが子どもの自己肯定感や、挑戦への意欲を後押しするのです。難しいレシピに挑戦することも、「楽しみながら挑む力」を自然に育ててくれるでしょう。

また、自分で作ったものを家族にふるまう経験は、子どもに「自分には役に立てる力がある」と気づかせてくれます。たとえ上手にできなかったとしても、「家族のためにつくってくれてうれしいな」「頑張ってつくってくれてありがとう」とねぎらいの言葉をかけてあげることで、子どもの自信は育まれます。

このように、料理という日常的な体験は、最も身近な挑戦の場であるとともに、親子のコミュニケーションを深めるきっかけにもなります。「危ないからまだダメ」「汚されたら後片付けが面倒」とキッチンから遠ざけるのではなく、積極的にチャレンジさせてあげたいですね。

【チャレンジ精神の育て方】

  • 週に1回、子どもが「切る・まぜる・盛りつける」などの工程を担当する“お手伝いの日”を設ける
  • 初めての料理がうまくいかなくても、「やってみてくれてうれしい」と伝えて自信を育む
  • 作った料理を家族で「おいしいね」と囲む時間を大切にし、達成感を感じてもらう

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よくある質問(FAQ)|チャレンジ精神の育て方

Q1. チャレンジ精神って何?子どもにとってなぜ大切なの?

💡 A. チャレンジ精神とは、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する前向きな姿勢のことです。この力は、これからの社会で求められる「自ら考え行動する力」の土台になります。

💡 ポイント:
・成功体験だけでなく「失敗してもいい」と思える環境が重要
・大人の価値観で「できる・できない」を決めつけないことがカギ

Q2. 何歳くらいからチャレンジ精神は育てられる?

💡 A. 幼児期から少しずつ育てましょう。年齢に合わせた関わり方をすることで、自然とチャレンジ精神が芽生えていきます。

🧒 年齢別の例:
【0~3歳】積み木や水遊びなど、「やってみたい!」を引き出す遊び
【4~6歳】ルールのある遊びや、ちょっと難しいお手伝いへの挑戦
【小学生】習い事・自由研究・工作など、成功も失敗も経験する機会を用意

Q3. 「口出ししすぎ」はNG? 親が気をつけたいことは?

💡 A. 過度な口出しや指示は、子どもの「自分で考えて挑戦する力」を奪ってしまいます。子どものペースや意思を尊重する “見守る姿勢” が大切です。

👪 親の関わり方のポイント:
・結果ではなく「挑戦したこと自体」を認めて声をかける
・失敗したときは「何が楽しかった?」「次はどうする?」と問いかけてみる

Q4. どんな習い事や遊びがチャレンジ精神を育てるの?

💡 A. 正解がひとつではない遊びや、失敗しても再挑戦できる習い事が効果的です。

🎯 具体例:
【遊び】ブロック、工作、自然遊び、冒険ごっこ
【習い事】体操、スポーツクライミング、プログラミング、ロボット教室など

Q5. 子どもがチャレンジしないのは性格? それとも環境?

💡 A. どちらの要因もありますが、環境の影響はとても大きい。親の関わり方や日常の声かけ次第で、子どもは変わっていきます。

🌱 心がけたいこと:
・「失敗しても大丈夫」と伝え、安心感をつくる
・親自身もチャレンジする姿勢を見せる(子どもはまねします!)

***
子どもが自ら挑戦し、失敗を恐れずに前へ進むためには、家庭での関わり方が重要です。親の距離感や声かけ、日常での体験が、チャレンジ精神を育てる土台となります。子どもの小さな挑戦を見守り、支え、時には一緒に喜ぶことで、「やってみたい!」という気持ちは自然と育まれていくでしょう。

文/野口燈

(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもを大きく成長させる、人間関係における失敗。親が知るべき「子どもとの距離感」
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|心が折れて立ち上がれなくなってしまう、自信家なのに自己肯定感が低い人
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「失敗を恐れない力」の育て方。子どもに「挑戦したい!」と思わせる、効果抜群な言葉かけ
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