2021.6.2

小学生の読解力を伸ばす方法3選! 国語以外でも必須の能力を鍛えよう

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小学生の読解力を伸ばす方法3選! 国語以外でも必須の能力を鍛えよう

「どうしたら、小学生の読解力を伸ばせるのだろう……」とお悩みではありませんか? 2018年のPISA(OECD生徒の学習到達度調査)で、日本の生徒の読解力が過去最低の15位に下がったことが報じられて以来、読解力低下がますます問題視されていますよね。

あなたも、「うちの子の読解力は大丈夫かな……」と心配していませんか? そんなあなたに、小学生に必要な読解力、読解力低下で生じる問題、読解力を向上させる方法をご説明します。

読解力とは何か

現代の小学生が身につけるべき読解力とは、具体的にどのようなものでしょう? 国際社会で必要とされ、日本の教育にも大きく影響している「PISA型読解力」について説明します。

PISAとは、2000年から3年ごとにOECD(経済協力開発機構)が実施している、学習到達度の国際的調査です。分野は「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3つ。実施年により異なる「中心分野」を設定し、詳しく調査します。読解力が中心分野となったのは、2000年、2009年、2018年です。なお、日本でのPISAは高校1年生を対象に行なわれます。

PISAにおける読解力の定義は、以下のとおりです。

自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと

(引用元:国立教育政策研究所|OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント 太字による強調は編集部が施した)

教育学の専門家・田中博之教授(早稲田大学)によると、PISA型読解力は4つの項目で構成されます。

  1. 情報の取り出し
  2. 解釈
  3. 熟考
  4. 評価

 
PISA型読解力は、「物語文・説明文を読んで正しく理解する」だけの能力とは異なるのです。現代の小学生が磨くべき読解力とは、総合的な学力だと言えるでしょう。

読解力とは何か

子どもの読解力は低下しているのか

PISAで測定された読解力は、高校1年生のものとはいえ、小学生の読解力と無関係ではないはず。日本の子どもたちの読解力がどう変化しているのか、PISAの結果を詳しく見てみましょう。

国立教育政策研究所の報告書では、2000年~2018年における読解力の平均点について、日本では「統計的に有意な変化がない」とする分析が紹介されました。とはいえ、順位および平均点は以下のように低下しており、2018年の平均点減少は統計学的に「有意」だそうです。

2012年  3位(65ヶ国・地域中)/538点
2015年  8位(72ヶ国・地域中)/516点
2018年 15位(79ヶ国・地域中)/504点

PISAが読解力について測定する能力は、「情報を探し出す力」「理解する力」「評価し、熟考する力」の3つ。2009年と2018年の結果を比べると、「理解する力」の平均点は高いものの、「情報を探し出す力」および「評価し、熟考する力」が低下したそうです。特に、以下の正解率が低かったとのこと。

  • 情報の質と信憑性を評価する問題
  • テキスト内の矛盾を見つけて対処する問題

 
日本の子どもは、与えられた情報の理解は得意でも、自分で情報を見つけたり判断したりすることが苦手になりつつあるようですね。報告書は、読解力の平均点低下に関する要素を以下のように分析しています。

  • 自由記述の問題で、根拠をもとに自分の考えを説明できていない
  • コンピューターで長文を読むことに慣れていない
  • 問題テーマに関する知識が少ない

 
自身の考えをわかりやすく説明する能力や、さまざまなテーマに関する知識は、高校生になったら自動的に身につくわけではありません。小学生のときから、少しずつ読解力を育てていくべきなのです。

子どもの読解力は低下しているのか

子どもの読解力が伸びない背景

小学生の読解力を伸ばすには、「なぜ伸びないのか」という背景を理解することが必要です。PISAの結果に見られる読解力の伸び悩みには、どのような原因があるのでしょうか。

デジタルでの学習に不慣れ

2015年以来、PISAの試験はコンピューターで行なわれています。コンピューターの操作に慣れない子にとって不利な条件です。

国立教育政策研究所の報告書によると、OECD加盟国のうち、授業でデジタル機器を使う機会が最も少ないのは日本だそう。その一方、インターネットでチャットやゲームを頻繁に利用する子の割合が大きいとのこと。日本の子どもは、遊び以外でデジタル機器を使うことに慣れていないのです。

このような分析をもとに、文部科学省は「情報活用能力の確実な育成」や「学校のICT環境の加速化に向けた取り組みの推進」を実施しています。たとえば、ひとり1台の端末を使えるようにし、通信環境を整える「GIGAスクール構想」。小学生のうちからデジタル機器での学習に慣れることで、PISAの平均点が回復していくかもしれません。

本・新聞離れ

国立教育政策研究所の報告書では、読解力と本・新聞の関係が以下のように説明されています。

読書を肯定的にとらえる生徒や本を読む頻度が高い生徒の方が、読解力の得点が高い。中でも、フィクション、ノンフィクション、新聞をよく読む生徒の読解力の得点が高い。

(引用元:同上)

つまり、本や新聞を読むことで、読解力を高められるのです。北里大学の専任講師で、教育心理学などを専門とする猪原敬介氏の研究でも、読書によって小学生の語彙力・文章理解力が伸びるとわかっています。

しかし、学研教育総合研究所が2021年8月、小学1~6年生1,200人を対象に実施した調査によると、「1ヶ月にどれくらい本を読みますか」という質問への回答平均は、わずか3.0冊。1989年の調査では9.1冊だったので、約30年で3分の1に激減したわけです。

また、日本新聞協会の調査によると、1世帯当たりの新聞発行部数は、2000年~2020年でほぼ半減しています。読書量が減り、家庭で新聞を目にする機会が減ったことも、小学生の読解力低下に影響しているのです。

家庭環境の変化

ジャーナリストの池上彰氏によると、子どもが読解力をつけるには、価値観の違う人間が家族内にいるほうがよいそう。祖父母や兄弟姉妹と暮らしていると、世代特有の言葉遣いや未知の表現が自然と耳に入るだけでなく、会話の機会も多いですよね。

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の著者で数学者の新井紀子氏(国立情報学研究所教授)も、特に小学校低学年くらいまでの語彙量は家庭に強く影響されると話しています。語彙量の格差を学校教育だけで埋めるのは難しいそうです。小学生の読解力には、核家族化や少子化など家庭環境の変化も影響していると言えるでしょう。

子どもの読解力が伸びない背景

小学生の読解力を伸ばす必要性

そもそもの話ですが、なぜ小学生のうちから読解力を気にする必要があるのでしょうか? それは、読解力が生涯に渡って必要な能力だからです。

前出の池上氏によると、読解力とは「国語の授業中だけではなく、生きていくうえで常に必要となる力」。文章を読むときだけでなく、会話にも重要だそうです。

読解力が低いと相手の意図を理解できず、誤解を招いたり、コミュニケーションがとれなかったりします。もちろん、社会人になって仕事をするうえでも悪影響があります。OECDが2011年~2012年、24の国と地域を対象に行なった「国際成人力調査」によると、管理職や技術職に就いている人は事務職や単純労働に就く人より読解力が高かったそうです。

株式会社横浜国語研究所の代表取締役・福嶋隆史氏も、読解力はビジネスに不可欠だと述べています。資料の要点を理解したり、クライアントのニーズを把握したりできるためです。

子どもたちが人間関係に恵まれ、将来の仕事で成功できるようにするため、小学生のうちから読解力を伸ばしてあげたいですね。次の章からは、小学生の読解力を向上させるのに親ができる方法をご紹介していきます。

小学生の読解力を伸ばす必要性

小学生の読解力を向上させる方法1:読書を趣味にする

小学生の読解力を向上するには、読書が有効です。お子さんがあまり本を読まないなら、あなた自身が読書を趣味にしましょう。厚生労働省が2009年に行なった「第8回21世紀出生児縦断調査」では、親の読書数が多いと子どもの読書数も増えることがわかっているのです。どんな本を読めばいいかわからなければ、これからご紹介する本の選び方・買い方を参考にしてください。

本の選び方

本を選ぶとき、背伸びをする必要はありません。趣味に関するものなど、無理なく読める本を選びましょう。これといった趣味がないなら、以下のように、たくさんの人から評価されている本を手に取ってみては? 馴染みのない分野でも、読めば世間の流行がわかり、語彙が増え、視野が広がりますよ。

  • Amazonで売上ランキングに入っている本
  • 書店でおすすめされている本
  • 図書館での貸出数が多い本

 
書店に足を運び、本の表紙や帯、店員さんによる手書きPOPなどを見て直感的に選ぶのもいいですね。気になる本があればパラパラめくり、文字の大きさはちょうどいいか、重要な部分は太字になっているか、最初の1ページをスラスラ読めるかなどを確認しましょう。

本の買い方

本を買うなら、リアル書店とオンラインのどちらがいいのでしょうか? それぞれ異なるメリットがあります。

【リアル書店】

  • 実物に触れ、中身を確認できる
  • さまざまな本を眺め、興味を広げられる
  • すぐに入手できる
  • 現金で購入できる

【オンライン】

  • 自宅にいながら購入できる
  • 売上ランキングやレビューをチェックできる
  • 自宅で受け取れる

オンラインで本を買えるサービスには、Amazonだけでなく、株式会社トーハンの「e-hon」や日本出版販売株式会社の「ホンヤクラブ」など、取次大手によるものもあります。「e-hon」および「ホンヤクラブ」なら、注文した本を加盟書店で受け取れば送料無料で、現金払いが可能です。送料を節約したい人や、クレジットカードを使いたくない人は、チェックしてみてください。

小学生のお子さんの読解力を伸ばすため、まずは親が読書を趣味にしてみませんか?

小学生の読解力を向上させる方法1:読書を趣味にする

小学生の読解力を向上させる方法2:子どもへの語りかけを増やす

小学生の読解力を向上させるには、語彙力を伸ばすことが有効です。子どもの語彙を増やすには、親からの語りかけを増やしましょう。

1994年に発表された、カンザス大学のベティ・ハート氏とトッド・リズリー氏による有名な研究があります。子どもの語彙と家庭環境の関係を調査したところ、語彙の多い子どもが家庭で耳にする語数の平均は1時間に約2,100、語彙の少ない子どもは約600だったそう。つまり、家庭での会話が多いほど、子どもの語彙が増えやすいのです。

『自己肯定感を高める最強の子育て』(PHP研究所、2019年)など多数の著書がある大坪信之氏によると、語りかけの際は、以下のようなポイントを意識するといいそうですよ。

単語ではなく文で

単語を並べるよりは、内容を膨らませて文をつくりましょう。
【例】「雨だね」→「雨が降っているね。6月は梅雨の時期だからよく雨が降るし、梅の実が熟す頃でもあるんだよ」

常に語りかける

話しかけられる回数が多い子は、脳が活性化するのだとか。いろいろな場所に出かけ、目に入るものを説明しつつこまめに語りかけましょう。

質問に答える

子どもが質問を投げかけてくることは、物事に対する興味関心の表れ。何か質問されたら、難しいと感じても真剣に答えましょう。

小学生のうちから読解力をアップさせるため、上記の方法を参考に、お子さんへの語りかけを実践してみてください。

小学生の読解力を向上させる方法2:子どもへの語りかけを増やす

小学生の読解力を向上させる方法3:新聞を購読する

新聞を購読することも、小学生の読解力を向上させる方法としておすすめです。日本新聞協会の関口修司氏は、PISAにおける読解力の平均点低下に関して、日本の子どもには論理的な文章・実用的な文章を読む機会が少ないと指摘しています。そして、さまざまなタイプの文章が掲載されている新聞を家庭で日常的に読み、家族で意見を交換するのが大切とのことです。

反論トレーニング

新聞を使った意見交換には、「反論トレーニング」が有効です。文章論を研究する樋口裕一氏(多摩大学名誉教授)によると、投書欄を見せて「この意見、どう思う?」「小学生なのに立派だよね」などと声をかけるのがいいそう。説得力のある反論を思いついた子どもは、どんどん発言するそうです。

PISAにおける読解力の平均点が低下した要因として、「根拠をもとに自分の考えを説明できない」ことが挙がっていましたね。反論トレーニングなら、自分の考えを他人に伝わるよう説明できる力が身につきます。新聞の投書欄には、多くの「論拠」が示されているそうです。根拠をもって投書に反論するトレーニングを繰り返すことで、自分の意見を説明できる能力が育っていくでしょう。

小学生におすすめの新聞

お子さんと反論トレーニングをするなら、子ども向け新聞の投書コーナーがおすすめです。筆者は「朝日小学生新聞」を購読しており、時事問題の記事が多く、多様な文化を学べるコーナーが充実しているところにメリットを感じています。

たとえば、1週間分の時事問題がコンパクトにまとめられた「ニュースまとめてジャンケンポン」は、幅広い知識や語彙力をつけるのに最適です。また、「ぼくが出会った世界の子どもたち」では、外国で暮らす子が家族や学校、趣味や夢について語ってくれます。自分と異なる世界に生きる子どもたちの姿を介し、多様な文化に目が開かれていくのではないでしょうか。さらに、「天声こども語」を書き写したり要約したりすれば、記述力を鍛えられますよ。

「朝日小学生新聞」は、税込2,100円/月で毎日届きます。新聞を毎日読む習慣をつけるのにぴったりです。全8ページで、カラー写真やイラストが多く、漢字にはふりがながついているので、低学年の子でも無理なく全体をチェックできます。試しに、無料での購読を申し込んでみてはいかがでしょうか?

ご紹介した方法で、小学生のうちから、お子さんの読解力を育ててあげてみてくださいね。

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小学生のお子さんの読解力が気になる方に向け、読解力低下の原因・読解力を伸ばす方法を説明し、おすすめの新聞を紹介しました。池上彰氏が「生きていくうえで常に必要となる力」と称したように、読解力は、子どもたちがこれからの社会で生き抜くため、とても重要な能力です。この記事を参考に、お子さんが読解力を身につけられるようサポートしてあげてくださいね。

文/上川万葉

(参考)
文部科学省|1 PISA調査における読解力の定義, 特徴等
EL BORDE|【国語力特集:前編】仕事ができる人は読解力も高かった! 仕事力と国語力の関係は?
田中博之(2018),「読解力とはどのような力か」, 情報の科学と技術, 68巻, 1号, pp.390-394.
国立教育政策研究所|OECD生徒の学習到達度調査(PISA)
国立教育政策研究所|OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント
日本経済新聞|日本の15歳、デジタル読解力不足に3つの背景
学研教育総合研究所|2020年8月調査
東洋経済オンライン|「PISA読解力低下」は子どもたちからのSOS
博報堂教育財団|小学校低学年児童における読書量、語彙力、文章理解力の関係
現代ビジネス|池上彰が語る「日本人の読解力急落」の衝撃ーなぜ、読解力が必要なのか?
厚生労働省|第8回21世紀出生児縦断調査結果の概況
日本新聞協会|新聞の発行部数と世帯数の推移
朝日新聞EduA|日本の15歳、読解力低下 「論理」を学び、「文学」も楽しめる教材とは
朝日新聞EduA|投書欄を活用、親子で「反論トレーニング」 意見文で磨く考える力 小論文学習のポイント
池上彰(2020),『社会に出るあなたに伝えたい なぜ、読解力が必要なのか?』, 講談社.
新井紀子(2018),『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』, 東洋経済新報社.
ポー・ブロンソン 著, アシュリー・メリーマン 著, 小松淳子 訳(2011),『間違いだらけの子育て 子育ての常識を変える10の最新ルール』, インターシフト.
幻冬舎ゴールドオンライン|子どもの語彙を増やすための適切な「語りかけ方」のコツ