「都道府県名がなかなか覚えられない」と悩む子は少なくないはず。すぐに記憶できて忘れにくい都道府県の覚え方があったら、知りたいですよね。
2020年度より実施されている新学習要領には、「第3学年及び第4学年の県の様子に関する学習において47都道府県の名称と位置を指導すること」とあります。都道府県名だけでなく、都道府県の位置まで覚えなければならないのです。小学校中学年にはなかなか根気のいる学習になるかもしれません。
でも大丈夫。覚え方を工夫すれば、簡単に47都道府県を覚えられますよ。【最終更新日:2022年3月4日】
都道府県の覚え方にコツはある?
都道府県の覚え方のコツは、「脳が覚えやすい方法で記憶すること」です。
では、脳が覚えやすい方法とはどんな覚え方なのでしょう。日本記憶力選手権大会で6度の優勝経験がある池田義博氏は、「記憶が苦手だという人は、そう思いこんでいるだけ。脳にまかせておけば、きちんと記憶してくれる」と言っています。覚えるべき情報を、脳が理解しやすいかたちに加工することで、脳がしっかり覚えてくれるのだそう。
まずは、脳が理解しやすい記憶の仕方を知ることがとても大切です。脳科学者の篠原菊紀氏は、著書『子供が勉強にハマる脳の作り方』のなかで、「脳が理解しやすい覚え方」はタイプによって異なると説明しています。
→歌を聴いて覚える、語呂合わせで覚える
【視覚派】目からの情報が理解しやすい
→アプリで覚える、本を読んで覚える
【身体感覚派】身体感覚と理解が結びつきやすい
→ゲームで覚える、歌を歌って覚える
みなさんのお子さまはどのタイプでしょうか。これから紹介する都道府県の覚え方をいくつか試してみて、ぴったりの覚え方を見つけてみてくださいね。
篠原氏によると、脳は「感動なしの記憶」が苦手なのだそう。だから、何かを覚えるときはワクワクするような「快」の気持ちで覚えることが重要です。「おもしろい!」など、覚えたいことに感動することで、記憶効率が高まっていきますよ。
次項からは、子どもたちが「おもしろい!」「楽しい!」と思えるような、47都道府県の覚え方を紹介しましょう。
都道府県 覚え方1:歌で覚える
最初に紹介する覚え方は、歌を聴いたり歌ったりして都道府県を覚える方法です。
名古屋大学教授の清河幸子氏らの研究発表(2014年)によると、「メロディつきの情報」は、ただ「見るだけ・読み上げただけの情報」よりも記憶しやすいのだそう。また、ウォータールー大学教授のコリン・マクラウド氏は、「覚えたい内容を声に出すことで、その内容が忘れにくくなる」と言っています。たとえば、「私はドアの鍵をかけた」と声に出すことで、戸締まりしたことを忘れにくくなるのだそうです。
ということは、都道府県名が入った歌を何度も歌えば、効率よく都道府県が覚えられると言えるでしょう。都道府県が簡単に覚えられる曲を紹介しますね。
◆名産品や観光名所も覚えられる曲
4人組ガールズユニット・ももいろクローバーZが歌う『ももクロの令和ニッポン万歳!』は、都道府県名だけでなく、名産品や観光名所、イベントなど、その土地の特徴まで覚えられる歌です。また、「北海道地方・東北地方・関東地方・中部地方・近畿地方・中国地方・四国地方・九州地方」の地方区分も歌詞に入っています。「茶畑と両親に育てられました 静岡県」「どんどんどんどんどんうどん 香川県」「渦潮みれなかった 徳島」など、歌詞がユニークなので、つい何度も聴いてしまいそうです。
◆県庁所在地も覚えられる曲
シンガーソングライターとして活躍する森高千里さんが1992年にリリースした『ロックンロール県庁所在地』は、47都道府県すべての県庁所在地が歌詞に入っている曲です。県名と県庁所在地が異なる場合のみ、「福島 山形 宮城は仙台」のように「県名+県庁所在地」となっています。都道府県名も県庁所在地もどちらも覚えられるお得な曲です。ちなみに、1992年の発表当時は「浦和」だった埼玉の県庁所在地は、2001年に歌詞が「さいたま」と変更されています。
◆都道府県の位置が覚えられる替え歌
兵庫県川西市が運営する「川西市公式チャンネル」で公開された『小学4~6年生【社会】都道府県の歌』は、童謡『雪やこんこ』や『むすんでひらいて』などの替え歌です。都道府県を覚えるための替え歌は、数多く存在しますが、ほとんどの替え歌は短いメロディーを何度も繰り返したり、1曲のなかに47都道府県名が入っていたりするもの。もしかしたら、1番と2番の歌詞を歌い間違えてしまうかもしれません。しかし、この『小学4~6年生【社会】都道府県の歌』は、地方ごとに違うメロディーになっているので、歌詞を間違うことは少ないはずですよ。
【北海道地方・東北地方】『雪やこんこ』
北海道の下にあるのは 東北地方でございます
青森、岩手、秋田県
宮城、山形、福島県【関東地方】『かたつむり』
関東地方は都会だよ
茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉、東京、神奈川県【中部地方】『アルプス一万尺』
中部地方は、
新潟、富山、石川、福井、岐阜、山梨、静岡、愛知県【近畿地方】『ゆかいな牧場』
近畿地方は2府5県
滋賀県 京都府 兵庫県 三重 奈良 大阪 和歌山県【中国地方・四国地方】『むすんでひらいて』
中国地方、鳥取、島根、岡山、広島、山口県
四国地方、香川、愛媛、徳島、高知【九州地方】『春が来た』
九州地方、大分、福岡、佐賀、長崎、宮崎、熊本、鹿児島県、沖縄県
1都、1道、2府、43県
(引用元:YouTube|小学4~6年生【社会】都道府県の歌)
実際に歌ってみるとわかるのですが、この替え歌メドレーは歌いやすくて覚えやすい。それもそのはず、この曲の作成者は、子どもの頃、47都道府県を覚えるのにかなり苦労したそうなのです。だからこそ、覚えやすい替え歌ができあがったのでしょう。『小学4~6年生【社会】都道府県の歌』作成者からのメッセージをお伝えしますね。
私は小学生の頃、都道府県名を機械的に覚えようとしましたが、東北地方しか覚えられませんでした。子どもたちにはもっと楽しく、確実に覚えさせてあげたいなと思い、替え歌に目をつけました。都道府県の歌はいろいろ出回っていますが、同じメロディーを何度も繰り返しながら歌うものが多いです。しかし、それだと一番の歌詞と二番の歌詞を間違えて歌ってしまうことがあります。そこで、地方別に違う曲で歌っている都道府県の歌はないものかと探してみましたが、ありませんでした。ないなら自分でつくってしまおうと思い、この替え歌をつくりました。ちなみに、出てくる都道府県の順番は、東から西へ、北から南へと規則正しい順番になっています。せっかく歌を覚えても地図上の位置がわからないというのではかわいそうなので、順番にもこだわりました。この歌で都道府県を覚えた児童のなかには、都道府県のテスト中に「先生、歌ってもいい?」と鼻歌を歌いながら解く子もいました。子どもになじみのある童謡をメドレー形式にしたので、楽しく歌って覚えてくれたらいいなと思っています。
地図帳とにらめっこをしていても、47つもある都道府県名を覚えるのはなかなか難しい……。でも、「歌」を取り入れた覚え方であれば、かなり効率的に都道府県を覚えられるのではないでしょうか。
都道府県 覚え方2:語呂合わせで覚える
次は、都道府県を語呂合わせで記憶する覚え方です。
『記憶のふしぎがわかる心理学』『記憶力の正体』などの著書をもつ教育心理学者・高橋雅延氏は、「暗記のコツは『覚えるのではなく理解すること』、つまり意味のないものに意味をつける “語呂合わせ” 」だと言っています。子どもの頃、「白紙(894)に戻そう遣唐使」など、歴史年号を語呂合わせで覚えた親御さんも少なくないのではないでしょうか。
語呂合わせを使うと暗記がラクになるのは、「記憶の精緻化(せいちか)リハーサル」が行なわれるからです。精緻化リハーサルとは、「覚えたい情報」と「別の情報」とを関連づけて覚えやすくすること。たとえば、「遣唐使、894年」を覚えたい情報とするならば、「白紙(894)に戻そう」という別の情報を関連づけるのです。記憶に「別の情報」という “何らかの手がかり” を残すことで、もし忘れてしまったとしても、記憶の糸をたぐり寄せて思い出すことができます。
また、語呂合わせは自作がおすすめです。脳に関する著書が多い、脳研究者・池谷裕二氏によると、記憶には「知識記憶(頭で覚えた情報などの記憶)」と「経験記憶(過去の体験などに関連した記憶)」があり、「知識記憶」のほうは、きっかけがないとうまく思い出せないのだそう。しかし、「経験記憶」は自分自身が経験していることなので、記憶を簡単に引っ張り出すことができるのです。
自作の語呂合わせは、「自分でつくった」という経験がそのまま「経験記憶」に結びつくので、記憶しやすく忘れにくい。たとえば、以下のようなイメージでつくってみましょう。
「中国にある、取り残された島は広い。しかし山はない」(中国地方)
中国→中国地方
とりのこされた→鳥取県
島→島根県
広い→広島県
山→山口県
「エイ姫様は、高そうな香りがするなあ。姫様がいるなんて、四国はお得だね!」(四国地方)
エイ姫様→愛媛
高そう→高知
香り→香川
得→徳島
親子で一緒に「語呂合わせ」をつくってみてはいかがでしょう。都道府県の覚え方としても、もちろん効果的ですが、親子コミュニケーション術としても効果がありそうです。
都道府県 覚え方3:アプリで覚える
ゲーム感覚で、楽しく都道府県を覚えたいというお子さまには、アプリを利用した覚え方もいいでしょう。レベル別に3つのアプリをご紹介します。
【レベル1:初めて都道府県を学ぶ子】
「はじめての地図タッチ-47都道府県を覚えよう!」(iOS)は、初めて「地図」や「都道府県」を学ぶお子さまにぴったりな知育アプリです。都道府県をタッチすると、「千葉」「大分」など、アプリの音声が読み上げてくれます。都道府県名は、すべてひらがな表示なので、漢字が読めないお子さまでも遊ぶことができますよ。
【レベル2:都道府県名を完璧に覚えたい子】
「すいすい都道府県クイズ – 都道府県名パズル」(iOS/Android)は、都道府県の位置をパズル形式で学ぶアプリ。地方別に出題されるので、都道府県を少しずつ覚えることができるでしょう。また、県ごとに「過去5回分」の正誤記録が表示されます。覚えにくい都道府県が把握できるので、回数を重ねるごとに正解数が増えていくはずです。
【レベル3:日本の地理をとことん極めたい子】
「【令和】全市区町村パズルまぷすた!」(iOS/Android)も、都道府県パズルができる教育アプリ。しかし、このアプリで学べるのは「都道府県」だけではないのです。「県庁所在地」のほかに、「山脈、山地、高地」や「河川」まで学べます。「もっと学びたい!」というお子さまは、日本全国にある1,724(2020年8月時点)の市区町村がピースになったパズルに挑戦してみてください。
アプリを利用した覚え方なら、楽しく遊んでいるうちに、47都道府県を覚えてしまうかもしれませんね。
都道府県 覚え方4:ボードゲームで覚える
次に紹介するのは、ボードゲームを使った都道府県の覚え方です。
「教育へのボードゲームの応用」を研究している、名古屋大学教授の有田隆也氏によると、ボードゲームには「考える喜びを知り、思考の基盤のトレーニングになる」という教育効果があるそうです。また、世界で活躍するポジティブ心理学エキスパートであるキャロライン・アダムス・ミラー氏も、ボードゲームの教育効果を認めているひとり。著書『実践版GRIT やり抜く力を手に入れる』では、ボードゲームで以下の力が鍛えられるとしています。
- 高い集中力
- 想像する力
- 忍耐力
- 注意力
- 計画性
都道府県名を覚えるだけでなく、集中力や忍耐力といったさまざまな力が育まれるのであれば、親として嬉しいかぎり。さっそく3つのボードゲームを紹介しますね。
【『ドラえもん』のすごろくボードゲーム】
日本の地名や名物が楽しく覚えられる、『ドラえもん』のすごろくボードゲームです。北海道からスタートして、ゴールの沖縄を目指しましょう。すごろくゲーム上では、飛行機や船、新幹線での移動もあるので、空港名なども頭に入ります。ひみつ道具やお金を上手にやりくりしながら日本全国を旅行しましょう。
【旅行気分で日本と世界の地理を学べるボードゲーム】
日本全国や世界の国々を旅行しながら、世界遺産や特産品、各地の見所など、地理の基礎知識を身につけることができるボードゲームです。付録の「日本学習地図」「世界学習地図」は、ポスターとして壁に貼って使えます。
【各都道府県No.1のゆるキャラで日本を学ぶボードゲーム】
「ゆるキャラグランプリ」で選ばれた各都道府県No.1のゆるキャラが勢ぞろい。47のゆるキャラを通して、愉快に日本地図を学べます。また「名産品カード」もあるので、各地の名産品にも詳しくなれますよ。
「お父さんとお母さんに勝つには、どう進めればいいのか」と考えたり、「お兄ちゃんに負けた!」と悔しい気持ちになったり――紹介した3つのボードゲームには、地理の勉強以上の学びがありそうですね。「もう1回やろう!」と何度も繰り返すうちに、都道府県がすっかり頭に入ってしまいそうな覚え方です。
都道府県 覚え方5:本で覚える
本から学ぶ、都道府県の覚え方もおすすめです。小さなお子さまであれば、まずは読みやすい絵本から取り入れてみるのはいかがでしょう。
【“にっぽんを知る” 図鑑絵本で楽しく学ぶ】
3~6歳の「なぜなぜ期」に湧き出る好奇心をぐんぐん伸ばす図鑑です。地図・行事・文化など、日本に関する「なんで?」をわかりやすく解説しています。監修は、初等社会科授業研究会常任理事であり、筑波大学附属小学校教諭の由井薗健氏。
【日本地図デビューに最適な絵本】
子どもが大好きな「めくるしかけ」がたくさん詰まった地図絵本です。日本全国の特産品やお祭り、建物などの情報は、すべてひらがなで書かれているので、漢字を習っていないお子さまでも読みやすいでしょう。遊びながら日本の地理が学べる一冊。
【1日10分! 絵本で47都道府県を覚えよう】
「えびのかたちは あおもりけん」「うさぎのかたちはかながわけん」など、47都道府県を “形” で楽しく覚える地図絵本です。なんと、「うちの3歳の子が本当に47都道府県を覚えました」という声も。日本地図の入り口として最適です。
【情報量が多いので「調べ学習」にぴったり】
魔法学校の生徒3人が、卒業レポートのために日本をリサーチ。「人口」や「農業生産量」、「1日の降水量の最多記録」など、情報量がかなり多いので、学校の調べ学習にも使えます。ご当地グルメや名産品にもページが多く割かれていて、読んでいるだけで旅行気分を味わえるでしょう。
【鉄道好きの子どもにおすすめな1冊】
都道府県ごとにJR線・私鉄を全線収録した、鉄道好きの子どもにはたまらない一冊。「路線から知る地域・産業・文化・歴史」がテーマなので、各路線ごとにさまざまな切り口のコラムが書かれています。漢字にはすべてフリガナがふってあり、小学生でもひとりで読むことができますよ。路線と都道府県は関連性が高いので、覚え方としてかなり効率的なはずです。
都道府県 覚え方6:情報量を減らして覚える
最後に、30校以上の教育現場で指導を続ける教育者・須貝誠氏がおすすめする、「あっという間に都道府県が頭に入る覚え方」を紹介します。
須貝氏は、「位置」や「特産物」など、一度に多くの情報を関連づけるような都道府県の覚え方では、肝心の都道府県名を覚えるまでに時間がかかってしまうと言います。まずは、「都道府県名」を正しく覚えることが大切で、関連づけるのはそのあとでよいのだそう。それでは、須貝氏がおすすめする都道府県の覚え方を説明しましょう。
- 都道府県名を漢字で書けるようにする。
- 簡単な図に都道府県名を書き、「山口県」「広島県」……と、図に書いてある県名を声に出す。
- 「県」の文字を消す。今度は、「山口」「広島」という文字だけを見て、「山口県」「広島県」と県名を声に出す。
- 後ろの文字から一文字ずつ消していき、そのたびに「山口県」「広島県」……と声に出す。
- 何も書いていない状態の図を見ながら、「山口県」「広島県」……と声に出す。最終的には、何も書いていない図を見て「山口県」「広島県」と言えるようにする。
持ち運びができる、小さいホワイトボードなどであれば、書いたり消したりが簡単にできていいですね。都道府県の覚え方をいくつか紹介しましたが、一文字ずつ消して覚える方法は、かなり効率的と言えるでしょう。
***
6つの都道府県の覚え方を紹介しました。脳科学者の篠原氏は、「もっと知りたい」「おもしろい」という “快” の気持ちで記憶することが大切だと言っていましたよね。お子さまが楽しいと思えるような、都道府県の覚え方が見つかりますように。
(参考)
篠原菊紀(2010),『子供が勉強にハマる脳の作り方』, フォレスト出版.
池谷裕二(2011),『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法』, 新潮社.
キャロライン・アダムス・ミラー著, 宇野カオリ監, 藤原弘美訳(2018),『実践版GRIT やり抜く力を手に入れる』, すばる舎.
STUDY HACKER|“記憶が苦手” はただの思い込み。記憶力日本一の男は無理せず「脳にまかせている」
CBC|Canadian researchers say you can improve memory with this one weird trick
J-STAGE|替え歌記憶法は有効か?(2)―メロディが記憶に及ぼす影響の検討―
J-STAGE|メロディが記憶に及ぼす影響
聖心女子大学|聖心女子大学の奥行きを知る
note|【教える技術】#06 記憶するには精緻化、体制化、二重符号化
J-STAGE|ドイツボードゲームの教育利用の試み―考える喜びを知り生きる力に結びつける―