教育を考える/食育 2019.12.7

「家族で食事」がものすごく大切な理由。子どもの学力を伸ばすのは親子の対話です

編集部
「家族で食事」がものすごく大切な理由。子どもの学力を伸ばすのは親子の対話です

家族の食事の時間は、子どもとコミュニケーションをとる貴重な時間でもあります。しかし今、親も子も毎日忙しく、なかなか一緒に食卓を囲むことができない、とお悩みの親御さんも多いのではないでしょか。

ここでは、社会問題にもなっている子どもの「孤食」について、そのデメリットと対策をお教えします。

『孤食』にならざるを得ない多様化するライフスタイル

いわゆる『孤食』とは、ひとりで食事をとることです。よく混同されますが、大人が自分の意志で、ひとりで食べることを選ぶのとは少し意味合いが違います。ここで問題になっている『孤食』は、自らの意志に反してひとりで食事をする状態」「本当は家族や親しい人と一緒に食事をしたいのにできない状態です。また、親は家の中にいるのに用事などで忙しく、子どもをひとり食卓に座らせて食事をさせることも『孤食』に含まれます。

みなさんも実感しているように、現代の社会ではライフスタイルの多様化が進み、昔のように朝晩家族そろって食卓を囲む回数が激減しました。厚生労働省による全国家庭児童調査(平成21年度)では、1週間のうち家族そろって一緒に夕食を食べる日数は「2~3日(36.2%)」が最も多く、朝食にいたっては「ほとんどない(32.0%)」が最も多いという結果に。

その背景としては、核家族や共働き家庭の増加、また子ども自身も塾や習い事で忙しく、家族みんなのスケジュールがバラバラになっていることが挙げられます。もちろん親御さんたちはみんな、「できれば家族一緒に食事をする回数を増やしたい」と考えているはずです。しかし現状では、社会構造を抜本的に見直す必要があるため改善は難しく、各家庭で試行錯誤しながら調整していかなければなりません。このように現代の『孤食』問題は根が深く、親御さん自身にも大きな悩みのタネになっているのです。

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『孤食』がもたらす子どもへの影響

では実際に、『孤食』は子どもにどのような影響を及ぼすのでしょうか。相模女子大学名誉教授の河上睦子先生は、次のような弊害をもたらすと指摘します。

  • 好きなものばかり食べて栄養がかたよる
  • 肥満の原因になる
  • 健康や身体の成長に影響する
  • 家族のコミュニケーションが欠如することで、社会性や協調性の育成がなされなくなる
  • 寂しさからイライラして情緒不安定になり、心の病気を誘発しやすい

 
もちろん、『孤食』だけが原因となりこのような問題を引き起こすわけではありません。しかし、『孤食』が習慣になることは、子どもにとって決して良い状況とは言えないでしょう。

子どもの孤食習慣はQOLを低下させる!

平成26年度より、文部科学省は「スーパー食育スクール事業」をスタートしました。スーパー食育スクール事業は、地域、教育委員会、学校、大学など他職種を連携させて、児童・生徒の食行動・生活習慣・健康改善を目指す取り組みです。

スーパー食育スクール事業の一環として行なわれた研究では、次のことがわかりました。

  • 親の食意識が高いほど、子どもの食生活もよい
  • 親と一緒に食事をする「共食」が多いほど、子どもの食行動がよい
  • 親と一緒に食事をする「共食」が多いほど、生活習慣が良好でQOLも高い※QOL(quality of life)=人生の内容の質や社会的に見た生活の質のこと

 
具体的には、孤食する子どもは朝食の欠食や間食が多いこと、睡眠時間が少ないなど生活習慣が不良であることから、共食は子どもの食行動に正の影響、孤食は負の影響を与えていることが確認されたのです。

また、農林水産省が発行した食育のパンフレットによると、孤食が習慣化している子どもに比べて、親と一緒に食べる習慣がある子どもは、朝の疲労感や身体の不調がなく、健康に関する自己評価が高いことが報告されています。健康的で規則正しい食生活を育む「共食」は、正しい生活リズムをつくることの一助にもなっているのです。

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大人と一緒に食事をする子どもはお手伝いが好き

奈良女子大学共生科学研究センターの佐々尚美先生らの研究によると、子どもだけの食事のほうが、大人と一緒の食事よりも体調不良を訴える割合が高かったことが報告されています。この研究では、大人と一緒に食事をする子どもは食事中の会話量が多く、また食事を「楽しい」「とても満足」「待ち遠しい」と感じる割合が高かったことから、食事中の会話量と食意識との関連も認められました。

さらには、大人と一緒に食事をする子どものほうが、「朝しっかり食べる」「野菜をたくさん食べる」「好き嫌いをしない」などを心がけており、食事にかかわる手伝いの参加状況が高い傾向があることもわかったのです。メニュー決めから食材の買い出し、調理や盛りつけ、後片づけといった食関連のお手伝いをする子どもは、当然食知識が高まります。

これらの結果をまとめると、大人と一緒に食事をすることは、子どもたちの食生活全般に良い影響を及ぼすのはもちろん、食意識・食態度・食知識にまつわる「食教育」にもつながっているのです。

家族での食事回数が多いほど「将来働くことが楽しみ」に!?

株式会社アイデムの調査によると、家族そろっての食事回数が多い家庭は、子どもが将来働くことにポジティブなイメージをもつことがわかりました。具体的には、調査によって次のような結果が出たそうです。

家族そろっての食事回数が多いほど……

  • 親との会話の満足度が高い傾向がある
  • 働く親を「楽しそう」とポジティブに捉える子どもが多い傾向がある
  • 親への憧れが高くなる
  • 将来「働くこと」に対してポジティブな傾向にある

 
家族で食卓を囲んでコミュニケーションを図ることは、親の仕事やお互いの考えを知る絶好の機会です。大人は仕事や家事、子どもは学校や習い事などでそれぞれが忙しく、ゆっくり会話する機会が減りつつある現代では、食事の時間が唯一のコミュニケーションの時間になっているのですね。

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頻度より中身。一緒に食事ができる時間をもっと充実させて

お茶の水女子大学生活科学部非常勤講師の松島悦子先生は、「孤食は時代の流れによる必然のことであり、『いい、悪い』の問題ではない」と述べています。そして、子どもに孤食をさせることに対して、親が必要以上に罪悪感を抱いたり、プレッシャーを感じることこそが問題とも。松島先生は大事なのは、共食の頻度よりも“中身”だといいます。

いつも家族全員がそろって食事をしたとしても、誰かがスマホをいじっていれば共食とはいえません。会話がなければ家族関係が良くなることも子どものコミュニケーション能力が育つこともないでしょう。つまり、共食の頻度が減っているいまだからこそ、週末など家族が集まれるときの食事をいかに楽しい場にするかということを意識してほしいのです。

(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「家族で食べたい」と素直に言えない子どもたちに、親がすべき“食事の場”づくり

夕食の時間に家族がそろうのは難しくても、朝なら、家族それぞれが準備の時間をずらして調整することもできるのではないでしょうか。栄養士の笠井奈津子さんによると、ご飯とお味噌汁程度の簡単メニューでもいいので、家族でおしゃべりをしながら朝ご飯を食べる習慣をつけるといいそう。朝、声を出しておしゃべりすることで体温が上がり、ご飯を食べて脳にエネルギーが補給できれば、1日を元気に過ごすことができます。

『頭のいい子が育つパパの習慣』(PHP研究所)の著者である清水克彦さんは、「子どもの学力を伸ばすには、家族との対話が不可欠」と言い、そのためにも親子できちんと対話の時間を確保する必要があると述べています。清水さんによると、毎日は難しくても、たとえ週に一度でも夕食を一緒に食べる時間を作ることで、子どもの学力は伸びるそうです。その際には、うまく相づちを打って、子どもに長く話してもらうことを心がけましょう。

また清水さんは、親子で一緒に料理をするなど、共同作業の機会をたくさん作ることもすすめています。普段は忙しくても、休日に一緒に買い物をしたり料理をしたりすることで、親子の絆を深めることができるだけでなく、学びのチャンスにもなるそう。

共同作業で対話が増えると思考力や創造性が育まれ、火や包丁を使うときには注意力や集中力が鍛えられます。さらに、料理を作り上げた達成感を得られると、「また一緒に作りたい」「もっと上手に作れるようになりたい」という意欲にもつながるでしょう。

このように、今できる範囲で一緒に食事をする時間を捻出するだけでも、子どもにとって楽しく充実した時間を生み出せるはずです。朝食・夕食・休日のいずれかで一緒に食事をとれるタイミングがないかどうか、ご家庭のスケジュールと照らし合わせて調整してみましょう。

***
忙しい毎日、親も子も孤食になってしまうのは仕方ありません。大事なのは、一緒に食べるときにどれだけ充実した時間を過ごせるか。そして、子どもが食事に対する意識を高められるように、日頃から親子で食にまつわるコミュニケーションを深めていくことを心がけましょう。

(参考)
厚生労働省|平成21年度結果の全国家庭児童調査結果の概要
現代の理論|「孤食」という問題?
J-stage|子どもの食行動・生活習慣・健康と家庭環境との関連:文部科学省スーパー食育スクール事業の結果から
Wikipedia|クオリティ・オブ・ライフ
農林水産省|「食育」ってどんないいことがあるの?|~エビデンス(根拠)に基づいて分かったこと~総合版(令和元年10月)
J-stage|大人と一緒の食事が子どもの食意識・食態度・食知識に及ぼす影響
株式会社アイデム|【中学生のキャリア観に関する意識調査】家族揃っての食事回数が多い子供は、将来「働くこと」にポジティブな傾向に
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「家族で食べたい」と素直に言えない子どもたちに、親がすべき“食事の場”づくり
笠井奈津子(2010),『子どもの「できない」を「できる」に変える 子育て食事セラピー』,河出書房新社.
清水克彦(2014年),『頭のいい子が育つパパの習慣』,PHP研究所.