教育を考える/芸術にふれる/アート/デザイン 2018.9.29

【クリエイターと地域が協力】子どもの創造力を育てる「ちびっこうべ」

【クリエイターと地域が協力】子どもの創造力を育てる「ちびっこうべ」

私の暮らすまち神戸には「ちびっこうべ」という、小・中学生を対象とした体験プログラムがあります。

プロのクリエイターたちと一緒に、夢のまちをつくるワークショップで、2012年から2年に一度開催しています。

子どもの創造力を育てる「ちびっこうべ」2
プロから本物を学び、みんなと協力して
子どものクリエイティブを育てる夢のまち。
クリエイティブとは「知る、考える、つくる、伝える」
というプロセスで育める力のこと。
ちびっこうべでは、プロから本物を学ぶ体験や、
子どもたち自身で夢のまちをつくること、
まちでの仕事を通して
じぶんのクリエイティブを育てていきます。

ちびっこうべについて

ちびっこうべの様子については、こちらをご覧ください。

子どもたちは「シェフ」「建築家」「デザイナー」という3つの職業チームにわかれ、それぞれのプロから専門知識や技術を学びます。そして、夏から秋にかけて行われるたくさんのワークショップを経て、夢の食べ物屋「ユメミセ」を完成させます。

およそ3ヶ月かけて完成させたユメミセが一堂に会し、夢のまちがオープンします。そこは子どもたちだけしか入ることができない(大人は入場できない)世界です。

参加者はまず市民登録をし、仕事を探して報酬を得ます。その稼いだお金でユメミセで食事をしたり、まちで遊んだり、自分で好きなように使ったりすることができます。

その仕組みは実際の社会さながらです。職不足が起こったり、お金が余りすぎてインフレ状態になったり、いろいろなことが起こります

子どもの創造力を育てる「ちびっこうべ」3

大人(親)の目の届かないところでとにかく思いっきりやりたいように遊び、学べるこのプログラム。

子どもの創造を大人がサポートするだけではなく、クリエイターである大人と子どもがお互いの良さを出し合って未来の街づくりを行うことに力点が置かれているというところが評価され、2017年にはグッドデザイン賞やキッズデザイン賞を受賞しました。

「子育て費用」の総額は22年間でいくらになる? 調査結果をもとに計算してみた。
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子どもたちから教えられること

私はこのプログラムに初年度から、シンボルマークやポスターなどのイラスト制作のお仕事で関わらせていただいているのですが、それとは別に、ボランティアメンバーとして子どもたちのワークショップ(デザイナーチーム)を担当、お手伝いをしています。

子どもの創造力を育てる「ちびっこうべ」4

子どものまちづくりのイベントは全国にもたくさんありますが、ここまでクリエイターが関わるプログラムは珍しいのではないでしょうか。

まちづくり、社会にはクリエイティブが必要不可欠です。このことを体験を通して学んだ子どもたちが成長したとき、社会にどんな変化が生まれるでしょうか? 長い目で見続ける必要があることですが、今からそれが楽しみでなりません。

また、これはクリエイティブに限ったことではないですが、子どもたちとのワークショップでは教えることよりもむしろこちらが教えられたり、気付かされる、そんな学びが多くあります。

例えば、制作の中で出てしまう廃材(紙の切れ端や使い終わったテープの芯など)も、彼らの手にかかればたちまち「くじ引き箱」に変身。人を喜ばせるための楽しいものづくりを見せてくれました。

子どもの創造力を育てる「ちびっこうべ」5

大人にとっては不要なものでも、子どもにとっては魅力ある素材なのですね、大いに見習いたいところです。

「教える」と「寄り添う」

「ちびっこうべ」には教育理念があります。このプログラムに関わる人すべてにそれを知ってもらうために「ちびっこうべ憲章」というものをつくりました。

子どものクリエイティブを育むうえでとても大切なことが詰め込まれていますのでここで紹介させてください。

  1. 子どもたちの考えをなにより尊重し、みずから進んで取りくむための、ほんの手助けをする。
  2. クリエイティブな活動をするいろいろな人との出会いを大切にし、その知識や技にじかに触れてもらう。
  3. 「知る」「考える」「つくる」「伝える」という、じぶんで創造するための4つのプロセスを体験してもらう。
  4. つくるという行為を通じて、子どもたちの好奇心や情熱をさらに引きだし、育てていく。
  5. 年齢、性別の違う子どもたちとの関わりの中から、チームワークの大切さをしぜんと学んでもらう。

子どもに「教える」だけではなくどのように「寄り添う」かが大切。これはこのプログラムに限らず、普段の生活の中でも心がけたいことです。

この「ちびっこうべ」を通してクリエイティブに触れた子どもたちが大きくなったとき、クリエイターとして一緒に何かできたらいいなぁ、というのが今の私の夢のひとつでもあります

こんな素敵なプログラムが、僕のこどもの頃にあったならどんなに良かったでしょうか。神戸で活動するクリエイターとしても、子を持つ親の立場としても、この活動を続けて行かねばいけないという使命感に近い気持ちでいます。

きっと同じ気持ちで関わってくださっているすべてのクリエイターさん、サポーターさん、そしてスタッフのみなさん。その全部が本当に好きで、心から関わり続けたい思えるプログラムです。

子どもの創造力を育てる「ちびっこうべ」6

次回は最終回、「こどものクリエイティビティを伸ばすことの大切さとは」について書きます。

■ イラストレーター・サタケシュンスケさん 連載一覧
第1回:【絵の世界は自由】子どもの視点や考えを尊重し寄り添う事が大切
第2回:【つくる喜びを知る】子どものちからを伸ばせるときとは?
第3回:【クリエイターと地域が協力】子どもの創造力を育てる「ちびっこうべ」
第4回:【プラス クリエイティブな生き方】 多様化のすすむ世の中で自分らしさを感じる大切さとは

【プロフィール】
サタケシュンスケ(さたけ・しゅんすけ)
イラストレーター。京都造形芸術大学 非常勤講師。
1981年 大阪府生まれ 兵庫県在住
広告制作会社勤務を経て2007年に独立、以後フリーランスのイラストレーターとして活動を続ける。
主な仕事は広告、書籍等で使用するイラストレーションおよび
キャラクターの制作、モチーフは人物や動物が中心。
得意とするジャンルは子育てや教育、ファミリー向け。ライフワークとして子どもから大人まで楽しめるワークショップ活動も行う。
2014年度、2017年度 グッドデザイン賞受賞
Shunsuke Satake Illustration website https://naturalpermanent.com/