あたまを使う/英語 2018.10.5

英語力アップに欠かせない「熟語・フレーズ」を身につけるには、その全体像を把握せよ。8つのタイプと活用方法

田中茂範
英語力アップに欠かせない「熟語・フレーズ」を身につけるには、その全体像を把握せよ。8つのタイプと活用方法

以前、ある出版社の編集者が英語の熟語帳を作成する際に、こう言いました。

どうせ熟語は、単語帳の「添え物」のようなものですから。

学校でも、熟語は覚えるしかないので、生徒に各自覚えさせているだけで、体系的な指導は行なっていないと報告する教師も少なくありません。

大学生に聞いても、その教師の発言を裏付ける結果が得られます。つまり、彼らは中高時代に「熟語帳」のようなものを利用しながら、ひたすら暗記したというのです。

中には、熟語は格好いいけど、なかなかうまく使えないという本音をもらす大学生もいます。せっかく覚えた熟語も丸覚えなので、いずれ記憶もあやふやになり、使えるどころではないというのが正直なところでしょう。

ここで2つの問いがあります。

1. 熟語は英語学習の副次的なものなのか?
2. 熟語は丸暗記するしかないのか?

どちらの問いについても、ぼくの答えは「否」です。慣用表現力を身につけることは英語力の要。今回は、慣用表現について探っていきましょう。

おはようも、ありがとうも! 慣用表現は大切な「表現のストック」

どの言語にも、おびただしい数の慣用表現があります。慣用表現は、まさに慣用化された表現であることから、言語のやりとりの中で、反復して使用されてきました。聞けば、意味が瞬時に理解できるもの。それが慣用表現です。

・おはよう
・こんにちは

これらは慣用表現の典型例。朝初めて出会った人には「おはよう」とあいさつをしますね。すると、相手も「おはよう」と応えてくれるでしょう。

・ありがとうございます
・よろしくお願いします
・いただきます

これらもすべて慣用表現です。日常的に大切だからこそ慣用化され、その言語を話す人によって自然に使われます慣用表現なくして言語活動は行なえないというぐらい、重要なものなのです。

デンマークの言語学者イエスペルセンは、こう述べています。

言語は自由表現慣用表現の両輪である

自由表現は、語彙と文法を使って創造的に作り出す表現のこと。一方、慣用表現は、そのままの形で日常的に反復使用される表現のことです。

いわば、日本語や英語といった言語文化が産出した「表現のストック」。そしてそのストックは何万もの数になるといわれています。

慣用表現を使いこなすには、正しい分類が欠かせない

しかし、慣用表現と一口にいっても、その種類は多様です。慣用表現力をつけるには、このおびただしい数の慣用表現をきちんと分類することが必要になります。

これまで「熟語」という決まり文句のもと、雑多な表現が単にリスト化されてきました。しかし、慣用表現の全体像を知らないまま、熟語を片っ端から丸暗記しようとしても、自分の立ち位置もわかりませんし、目標もたてられません

まずは慣用表現の分類を知ることが、慣用表現力を身につける第一歩になります。では、数多くの「慣用表現」をどう分類すればいいのでしょうか?

【1】そのまま使える便利なフレーズ! 「まるごと」決まり文句

「慣用表現」と聞くとすぐに思いつくのが、このような日常的な決まり文句です。

・ああ、そうか、わかった(Oh, I see.)
・あげるよ(You can keep it.)
・頭にきた(I’m mad.)
・あった!( I found it!)
・当ててごらんよ(Take a guess.)
・後にして(Not now.)

これらは日常的に、いたるところで使われます。海外に行った日本人のこどもがまず使えるようになるのも、こうした表現です。

例えば、探し物をしていて、見つけたときは「あった!」(I found it!)などのように、まるごと反復して使われます。幼いお子さんでもマスターしやすい表現だと言えます。

【2】言えるとかっこいい! 「ことわざ」や偉人の「格言」

さらに「ことわざ」「成句」の類の表現もたくさんあります。現代英語でもよく使う例を挙げてみましょう。

・壁に耳あり(Walls have ears.)
・もちつもたれつ(Give and take.)
・急いては事を損じる(Haste makes waste.)
・3人寄れば文殊の知恵(Four eyes see more than two.)
・金がモノをいう(Money talks.)
・金は天下の周り者(Money comes and goes.)

これらは状況をまとめ上げるときなどに効果的に使われます。

さらに「有名人のコトバ」も忘れてはなりません。例えば、トルーマン大統領の執務室には、座右の銘としてこんな言葉が飾られています。

The buck stops here.
(責任は俺がとる)

多くのアメリカ人が知っている表現です。

同様に、同時代を生きたマッカーサー元帥の言葉、

Old soldiers never die, they just fade way.
(老兵士死すことなく、ただ静かに去るのみ)

また平和主義者ガンジーの言葉、

You must be the change you wish to see in the world.
(世界でみてみたいと願う変化にあなた自身がならなければならない)

あるいは、銃弾に打たれたパキスタンの少女として有名なユフスザイの言葉

One pen can change the world.
(一本のペンがあれば世界を変えられる)

など、枚挙に暇がありません。会話の最中に引用できると、かっこいいですね。

【3】動詞・名詞・形容詞から生まれる! 「語固有の慣用表現」

動詞・名詞・形容詞を単独で取り上げると、多くの慣用表現が見つかります。例えば動詞 “run” が作り出す慣用表現をリスト化してみましょう。

・遅れている(be running late)
・堂々巡りをする(run around in circles)
・命からがら逃げる(run for your life)
・騒ぎまわる(run riot )
・燃料切れになる、元気がなくなる(run out of steam/gas)
・経営状態のいい(be well run)

個々の語から様々な慣用表現が派生しているので、全体で見るとものすごい数になります。

【4】プレゼンテーションにもってこい! 副詞的な慣用表現

慣用表現の中でも特に多いのがこちら。状況を説明するはたらきを持つ表現です。

・ついに(in the end)
・結果として(as a result)
・一般的に言えば(generally speaking)
・まずはじめに(to start with)
・まとめると(to wrap up)
・私の考えでは(in my opinion)

これらの表現を「要約する」「考えを示す」のように用途別に分類することは、英語力を高めるのにとても効果的です。

【5】どんな場面でも使える! 前置詞的な慣用表現

名詞の前に使う「前置詞句」も忘れてはなりません。

・に関して(in terms of)
・の理由で(because of)
・に加えて(on top of)

会話やプレゼンテーションなどで使える表現がたくさんあります。

【6】モノの数や量を伝える! 「数量詞」の慣用表現

さらに、数や量を示す慣用表現も加える必要があるでしょう。

・多くの(a lot of)
・何百万もの(millions of)
・1つの(a piece of)

一杯のお茶(a cup of tea)、魚の群れ(a school of fish)など、数えるものによって表現の幅は広がります。

【7】会話をスムーズに! 機能的慣用表現

慣用表現の「大物」がこちら。「依頼・約束・提案・同意・反論する」などを表現します。これらの行為を「言語機能」と呼びますが、その多くは慣用化されたものです。

・話題の導入
ねえ、知ってる?(You know what?)
ねえ、聞いて!(Guess what.)

・話題を変える提案
これはどう?(How about this?)
あのね。(Tell you what.)

・途中で話題を変更
ところで、(Oh, by the way,)
思い出した。(That reminds me of something.)

・一度脱線した話を元に戻す
本題に戻ると、(To get back to the point,)
何の話してたっけ?(Where was I?)

このように「機能的慣用表現」は言語を使う目的とつながっており、慣用表現の中でもその重要度は高いといえるでしょう。

【8】なつかしい? 学校で習う「文法的慣用表現」

最後に、学校で英文法の時間に覚えたことのある構文たちが登場します。

・~だったらいいのにな(I wish I were)
・~するだろう(I’m going to)
・~したい(I’d like to)
・~するべきだったのに(should’ve done)
・~のようだ(it seems to me that)

「多くて大変」だと思ったことのある方もいるかもしれませんが、一度覚えてしまえば使いやすい、便利なフレーズです。

勝つための戦略を立てるには、相手が何者かを知ることから

もちろん、これだけではありませんが、主だった慣用表現を分類するには有用な分類基準だろうと思います。

相手が何者かを知らなければ、勝つための戦略も立てられませんまずは慣用表現とは何かを知ること。次に、慣用表現の攻略法を探ること。この順番が有効なのです。お子さんとも、さまざまな慣用表現について、親子で話し合える時間があるといいですね。

次回は、慣用表現の学び方をご紹介します。一緒に慣用表現の攻略法を探っていきましょう。