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言語教育情報学修士・TOEIC990点・TESOL(英語教育の国際資格)をもつ田畑翔子さんに、大学入学共通テストに向けての対策や効率的な練習法についてお話を伺うシリーズの第3回めをお届けします。
第2回では、大学入学共通テストに向けた正しい英語リーディング対策と練習法についてお話しいただきました。最終回である今回は、大学入学共通テストに効果的な英語リスニング対策と練習法を探ります。
2021年度大学入学共通テスト(英語リスニング)の概要
2021年度大学入学共通テスト(英語リスニング)の試験時間は、前年度までと変わらず解答時間30分を含む60分。平均点は56.16点と、前年度(57.56点、100点満点換算)と比べ微減しました。
2021年度の問題形式と配点は次のとおりです。
- 第1問A 短い発話の聞き取り(内容一致問題):各4点×4問=16点
- 第1問B 短い発話の聞き取り(イラスト選択問題):各3点×3問=9点
- 第2問 短い対話の聞き取り(イラスト選択問題):各4点×4問=16点
- 第3問 短い対話の聞き取り(質問解答選択問題):各3点×6問=18点
- 第4問A 長い発話の聞き取り(図表完成問題):4点×1問+各1点×4問=8点
- 第4問B 複数の発話の聞き取り(内容一致問題):4点×1問=4点
- 第5問 講義の聞き取り(図表完成問題・内容一致問題):3点×1問+各2点×2問+各4点×2問=15点
- 第6問A 対話の聞き取り(内容一致問題):各3点×2問=6点
- 第6問B 対話の聞き取り(意見選択問題・図表選択問題):各4点×2問=8点
2021年度大学入学共通テスト(英語リスニング)の問題はこちら、答えはこちら、音源はこちら、スクリプトはこちらからアクセスしてください。
2021年度共通テスト(英語リーディング)の難易度と、特に注目すべき問題は何か、田畑さんに解説いただきました。
2021年度大学入学共通テスト(英語リスニング)の難易度と特に注目すべき問題
ーー共通テスト(英語リスニング)は、1回しか音声が流れない問題や、アメリカ英語以外の多様な英語を聞き取る問題が出題され、旧センター試験と比べて難易度が上がったように思えますが、田畑さんはどのようにお考えでしょうか。
田畑さん:
やはり難易度は格段に上がった印象がありますね。
読み上げスピード自体は、140-160wpmと、これまでのセンター試験とさほど変わりはありません。ですが、これまですべて2回読まれていたものが、配点でいうと59%相当、マーク数でいうと70%相当が1回のみの読み上げになりました。この影響は大きいと思います。
これまでであれば、1回めですべて聞き取れなかったとしても、2回めで聞き落としたところのみに特に注意を払って聞く、という方略が可能だったのに、それができなくなるわけですからね。
しかも、講義形式のものや、複数人がディスカッションを繰り広げるようなまとまった長さのものも、1度で理解できなければなりません。当然すべての内容を記憶しておくというのはなかなか難しいので、こういった問題については、すばやくメモをとりながら聞く必要があります。
「なんとかギリギリ聞き取れる」というレベルだと、聞きながら同時に別の作業を行なう、というのはかなり脳内での処理にかかる負担が大きくなります。少なくとも、英語音声の9割程度は余裕をもって聞き取り、理解できるというレベルにもっていけないと、高得点は難しくなるでしょう。
ーー共通テスト(英語リスニング)で特に注目すべき問題はありますか。
田畑さん:
第1問〜第6問のうち、第3問〜第6問が1回読み上げの問題となりました。
第3問は、会話を聞いて、その内容についての問いに対し、正しい選択肢を選ぶというものです。センター試験でも似たような問題は出題されていましたし、1回読みであっても、基本的には会話の内容にだけ集中していれば、あとから選択肢を見て正しいものを選ぶことはそこまで難しくありません。
ですが、第4問〜第6問については、1回しか聞けないうえに、表やグラフなどの資料と英文を照らし合わせたり、適切にメモをとりながら聞いたり、全体の流れから話者の伝えたい要点を判断したりと、同時に複数のことを行なう必要がある問題ばかりです。
ただ「聞いて理解する」以上のスキルが求められるわけですね。
大学入学共通テスト(英語リスニング)に必要な対策とは
ーー共通テストのリスニング対策は、旧センター試験のリスニング対策と同じような解き方のテクニックが通用すると思いますか。
田畑さん:
こういった共通テストの問題に対応するために、たとえば問題を先に読む、とかメモのとり方はこういうふうにしよう、といった解き方のテクニックのようなことを調べて、身につけようとされる方も多いかもしれません。
もちろん、こういった問題形式への慣れというものも、ある程度は必要になってきますので、対策としては間違っていません。
ただ、そもそも英語を「余裕をもって聞き取り、かつすばやく理解できる」というスキル部分を早い段階からトレーニングしておかないと、こういったテクニックも有効に活用することは難しいものです。
人間の脳内には、ワーキングメモリとよばれる脳の作業容量が存在しており、一度に処理できる情報には限りがあると言われています。
リスニングをするときの脳内では、ざっくり分けると「音声知覚」→「理解」という処理が行なわれています。この2ステップがスムーズに進めば、話全体の内容理解ができる、ということです。
「音声知覚」というのは、音声を聞き取って、知覚するステップ。単語が認識できるような状態で、音がキャッチできている、ということです。それができれば、自分の長期記憶にある知識と照らし合わせて、単語の意味を特定したり、文法知識を用いて構文を理解したり、文脈や背景知識も活用して話の全体像を理解したりできるわけです。
ちなみに母語であれば、この最初のステップである音声知覚というのは限りなく自動化され、無意識に処理できており、ワーキングメモリを消費する割合は通常低く抑えられます。
それに対して外国語となると、音声知覚自体に大きな負荷がかかりがちです。「音声がただの呪文のように聞こえてそもそも単語が認識できない」、「個々の単語は聞き取れたのに、理解が追いつかない」、「その場では理解までできたのに、話が終わったあとには内容を忘れている」などといった場合には、程度の差はあれど「音声知覚」に脳内のリソースが多く使われて「理解」の処理や内容を覚えておくことに回す余裕がなくなっている可能性があります。
そのような状態で、メモをとったり、複数の情報から判断したりといったことを並行して行なうのは至難の業です。
ですから、まずはそれぞれのプロセスをいかに自動化するか、ということがポイントです。解き方のテクニックはそのあとですね。
ーーリスニングスキルを効率よく身につけるためにはどのようにするとよいでしょうか。
田畑さん:
やはりそのためにはトレーニングが重要です。言語を運用するというのは、運動技能に似たところがありますから、一定の知識を身につけたあとは、繰り返しの練習によって知識をうまく運用できるスキルにしていく必要があります。
先ほども申し上げたとおり、リスニングスキルを鍛えるには、ふたつの要素を意識するとよいです。耳から入った音声が英語のどの音か聞き分けるスキル(音声知覚)と、聞き取った英語の意味を理解するスキル(理解)ですね。
音声知覚が弱点になっている場合には、正しい英語の音声知識をインプットし、瞬時に聞き取れるスキルを身につけていく必要があります。
これはたとえば、「音声で聞いただけだと聞き取れないのに、同じ英文を文字で読むと意味がちゃんとわかる」(=語彙の意味や文法の知識は定着している)というような人が当てはまります。
対して、短い英文であれば英語の音は聞き取れて、理解もできるものの、まとまった長い話になると内容の理解が追いつかない、という課題をもつ受験生は「理解」の処理を効率化する必要があります。
これには、前回ご説明したリーディングスピードを上げるためのトレーニングが有効ですし、さらに理解の処理スピードを早めるために、もっと負荷をかけたトレーニングを行なうことも可能です。
「音声知覚」と「理解」には効果的な鍛え方があります。これから「音声知覚」と「理解」の正しい鍛え方をご紹介しましょう。
大学入学共通テスト(英語リスニング)対策になる「音声知覚」の正しい鍛え方
共通テスト(英語リスニング)において、「音声知覚」を効率的に鍛えるステップは以下のとおり。
- 単語の発音練習
- 音声変化のルール学習
- ディクテーション・発音練習
- オーバーラッピング
- プロソディー・シャドーイング
順を追って、田畑さんに解説していただきました。
単語の発音練習
ーー単語の発音練習で意識すべきことはなんでしょうか。
田畑さん:
脳内で音と意味を正確に結びつけられるまで、音声を聞きながら、単語を繰り返し発音練習することです。語彙力の鍛え方の箇所でお話ししたとおり、個々の単語の正確な発音というのは、リスニングの土台となる必須知識です。
音声変化のルール学習
ーー「音声変化」とはなんでしょうか。
田畑さん:
「音声変化」とは、ネイティブが自然に話すときに、もともとの単語の発音が変化する現象のことです。話し言葉では、言いやすさの面で、一部の音が脱落したり、弱くなったり、つなげて発音されたりといったことが起こりやすくなります。共通テストのリスニングにおいても、自然な音声変化がたびたび登場します。
個々の単語の発音を正しく覚えていたとしても、音声変化のせいで聞き取れない、ということは多々あります。ネイティブが実際に発音しているのが、自分の想定している音と違うわけですから、聞き取れなくて当たり前ですよね。
音声変化にはじつは一定のルールが存在するのですが、体系的に習うことは少ないので、知らない人が多いようです。音声変化のルールを身につけ、無意識に音声変化を再現できるようになれば、細部まで聞き取りやすくなりますよ。
ディクテーション・発音練習
ーー「ディクテーション」はどのようなトレーニングでしょうか。
田畑さん:
「ディクテーション」は、聞いた英語を紙に書き取るトレーニングです。
この活動の利点は、自分が聞き取れない箇所がどこかを特定できることです。
すべて書き出したうえで、スクリプトと照らし合わせて答え合わせをすれば、「単語を知らなくて聞き取れなかった」のか、「音声変化のせいで聞き取れなかった」のか、など自分の弱点を把握することができます。
ただし、答え合わせをしただけで終わらせていてはもったいないです!
自分の弱点を克服するために、書き取れなかった箇所を中心に、よく音声を聞き直してみて、自分でも正しく発音できるように練習まで行ないましょう。
オーバーラッピング
ーー「オーバーラッピング」はどのようなトレーニングでしょうか。
田畑さん:
「オーバーラッピング」は、流れてくる英語の音声に始めから終わりまで、ピッタリ重ねて英文を読み上げるトレーニングです。音声変化まで自分で再現できていないと、ネイティブと同じタイミングで発音し終わることができないので、音声変化を定着させるために効果的です。
先ほどのディクテーションのあとに、聞き取れない箇所を中心に行なうと特に効果的ですね。
また、次に説明するシャドーイングの前段階として行なっても効果があります。
オーバーラッピングはスクリプトを見ながら行ないましょう。
プロソディー・シャドーイング
ーー「プロソディー・シャドーイング」はどのようなトレーニングでしょうか。
田畑さん:
流れてきた音声に続いて、1、2語遅れでまねして発音していくのがシャドーイングです。そのうち、特に「音声」だけを意識して行なうシャドーイングが、「プロソディー・シャドーイング」です。
英文の内容まで思い浮かべようとするとかなり高負荷になってしまうので、最初のうちは「音声」をなるべく正確に再現することのみに意識を払うようにしてください。
最初は英文を見ながらでもかまいませんが、最終的には何も見ずにシャドーイングができるように繰り返しトレーニングを行ないましょう。これによって音声知覚を効率的に鍛えることができます。
大学入学共通テスト(英語リスニング)対策になる「理解」の正しい鍛え方
ーー英語の音の聞き分けはできるものの、聞いた英文の内容理解が追いつかないという受験生の場合、どのように対策させるべきでしょうか。
田畑さん:
そもそも、リーディングスピードが遅い状態であれば、リスニング時の理解のスピードは上がっていきませんので、まずは前回ご説明したチャンクリーディングがきちんと身についている必要があります。
そのうえでさらに有効なのは、「音声」「内容」両方を意識して行なう「コンテンツ・シャドーイング」です。スクリプトを見ずに「プロソディー・シャドーイング」ができたら、音声だけでなく、内容もイメージしながらシャドーイングしてみましょう。
「コンテンツ・シャドーイング」を繰り返すことで、聞き取った英語の意味処理が徐々にすばやく、正確にでき、共通テストに対応できる英語のリスニングスキルが身につけられるでしょう。
大学入学共通テスト(英語リスニング)対策におすすめの参考書・問題集
ーーリスニングの学習におすすめの参考書や問題集は何かありますか。
田畑さん:
音声変化の学習であれば、『5つの音声変化がわかれば英語はみるみる聞き取れる』(マイナビ出版)がおすすめです。ドリル形式で、ディクテーションや発音練習を効果的な順序で行ないながら、10日間で音声変化の基本が身につきます。
参考書ではありませんが、スタディーハッカーが制作した無料のアプリ『Listening Hacker』(iOS/Android)もおすすめです。こちらは塾などでも導入いただいている実績があり、高校生でもゲーム感覚で音声変化について学習してもらえます。
シャドーイングを行なう場合は、英文の内容がきちんと理解できているものを使用することがポイントです。ですので、自分の英語力よりもやさしめのレベルの素材を使って始めるのがよいでしょう。
『キクタン リーディング』(アルク)のシリーズなら、中学程度から大学受験までレベル別にそろっていますし、本文にはスラッシュが入っていてチャンクを意識しやすいので、おすすめです。
大学入学共通テスト(英語リスニング)の必須スキルを効率よく鍛えるには
共通テスト(英語リスニング)はセンター試験よりもレベルアップした対策が必要です。ただ英文を聞き流したり、問題演習したりするだけでは非効率的なのです。
共通テストで必要なのは、勉強というよりはむしろ、リスニングスキルを鍛える「トレーニング」。今回ご紹介したトレーニングはリスニングスキルを鍛えるのに効果的ですが、お子さんが自力でできるかどうか不安という方もいるかもしれません。
そこで、共通テストに必要なリスニングのトレーニングを提供してくれる場が、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」から生まれた「ENGLISH COMPANY大学受験部」! 「ENGLISH COMPANY大学受験部」では正しいトレーニングを通して、共通テストに必要な受験生の「リスニングスキル」を効率よく伸ばすことができます。
「ENGLISH COMPANY大学受験部」は、ただリスニングスキルを伸ばすだけではありません。英語教育の専門家が、受験生に合ったリスニングの課題を発見する「課題発見」を、毎回のトレーニングで実施します。なぜなら、英語の音の聞き取りに苦戦するのか、英語の音はわかるものの内容理解が追いつかないのか、あるいはそもそも単語・文法の知識が足りないのかによって、異なるアプローチをしなくてはならないためです。
受験生が抱えるリスニングの課題を直接的に解決するトレーニングを続けさせることで、共通テストに必要なリスニングスキルを身につけさせられます。
田畑さんは、「ENGLISH COMPANY大学受験部」でリスニング対策を行なうメリットを以下のように述べました。
田畑さん:
やはり専門家による高精度な弱点診断が受けられること、そしてそれに対する適切な解決策を教えてもらえることです。シャドーイングひとつをとっても、個々の弱点に応じて効果的な取り組み方、意識すべきことなどは異なりますからね。
また、日々トレーニングを継続していくなかで、みなさんどんどんできることが増えていきますから、その時々で「いま優先的に取り組むべきこと」というのも微妙に移り変わっていきます。それを専属のトレーナーが日々チェックして、適切な負荷をかけたメニューを考えているので、短期間で大きな成果を上げることが可能になっています。
「ENGLISH COMPANY大学受験部」で、共通テストに必要な受験生の「リスニングスキル」を最短距離で伸ばしませんか。
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大学入学共通テスト(英語)でこれから求められる対策と、効率的な練習法を3回にわたってお届けしました。スキルを効率よく伸ばしていく練習法を継続させることで、お子さんが自信をもって共通テストに臨むことができるはずです。受験生の課題に合った科学的トレーニングで、共通テスト攻略の最短ルートを通っていきませんか。
(※「ENGLISH COMPANY大学受験部」については、こちらの記事でも詳しく紹介されています)
■ 大学入学共通テスト(英語)対策について インタビュー一覧
第1回:大学入学共通テスト(英語)で新たに必要な対策とは
第2回:共通テスト(英語)に必要なリーディング対策と効果的な練習法
第3回:共通テスト(英語)に必要なリスニング対策と効果的な練習法
【プロフィール】
田畑翔子(たばた・しょうこ)
京都府出身。米国留学を経て、立命館大学言語教育情報研究科にて英語教育を専門に研究。言語教育情報学修士・TESOL(英語教育の国際資格)を保持。株式会社スタディーハッカー常務取締役、コンテンツ戦略企画部 部長
(参考)
独立行政法人大学入試センター|令和3年度大学入学共通テスト実施結果の概要