教育を考える 2019.12.24

デンマークの小学校には試験も通知表も存在しない!? 知れば驚く “世界の通知表事情”

編集部
デンマークの小学校には試験も通知表も存在しない!? 知れば驚く “世界の通知表事情”

国が変われば教育制度も変わり、通知表も異なります。結果よりも努力を評価したり、人間力を重視したり、積極性を称えたり、そもそも評価しなかったり……!?

そこで今回は、いろんな国の「通知表」にフォーカスして、各国の評価基準やユニークな点を紹介します。まずは、日本の通知表事情から。

進化する日本の通知表

教育研究家で、家庭教師歴が40年を超える西村則康さんによれば、現在(2019年時点)の日本の小学校の通知表には、次の傾向があるそうです。

  • 1年生の1学期差をつけない
  • 1年生の2学期から「よくできる・できる・もう少し」の3段階
  • 段階評価はせず、児童のいい部分を書きこむ場合もある

西村さんいわく、以前は「テストの点数が成績に直結」していましたが、今では児童の行動を先生が観察したうえで、評価をつけるかたちに変わってきているとのこと。

また、熊本県熊本市立白川小学校教諭の大久保弘子さんによれば、日本の小学校1年生の通知表の狙いや評価法は次のようなものです。

【通知表の目的】
目標をどれだけ達成できたか知ってもらう(今後の成長へとつなげる)こと。

【評価の方法】
多面的に評価(発言・行動・意欲・ノート・思い・工夫・表現・テスト・家庭学習への取り組みなど)。他者との比較ではなく、ひとりひとりの達成状況を評価(※)。

そして大久保さんは、保護者が通知表を見る際は、「子どもができるようになったことや頑張ったことは褒め、改善点は励ます材料にするとよい」といいます。

(※)文部科学省の資料によると、2000年以降は児童生徒の評価が「集団に準拠した評価(相対評価・集団のなかでどう位置づけられるか)」から、「目標に準拠した評価(絶対評価・設定された目標を達成できたかどうか)」に改められている。

世界の通知表事情02

日本も、昔の1~5段階評価からだいぶ様子が変わりましたが、世界にはまだまだ驚くような通知表があります。

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ニュージーランドの通知表:努力を評価

オンライン英会話レッスンを手がける「ほうかごEnglish」代表で、ニュージーランド・オークランド在住の奥村優子さんによれば、ニュージーランドの小学校1年生の科目は、「Reading(読む)」「Writing(書く)」「Maths(算数)」の3つだけ。通知表には、各科目ごとに、次の3段階で評価が記されています。

  • Of Concern(懸念される)
  • On track to meet standard(標準を満たすべく順調に進んでいる)
  • Already meeting standard(すでに標準を満たしている)

なかには、学びのヒントや注意点のほか、たとえば子どもが日常生活で楽しく算数と接することができるよう、「一緒に買いものをして値段を見てみましょう」などと、保護者にアドバイスを書いてくれる先生もいるそう。

また、いかに「Effort(努力)」したかを、各科目ごとに以下5段階で評価する欄もあります。

  • Of Concern(懸念される)
  • Needs More(もっと頑張ろう)
  • Satisfactory(良好)
  • Very Good(とても良い)
  • Out Standing(とびぬけている)

子育ち研究家でライターの長岡真意子さんも、結果に注目するより、子どもの努力を認めてあげるほうが「次はがんばろう!」という気持ちにつながると説いています。

ニュージーランドの通知表は、親と子ども両方の意欲を高めてくれそうですね。

世界の通知表事情03

オランダの通知表:人間力を評価

『世界一幸せな子どもに親がしていること』の共著者であるミッシェル・ハッチソンさんは、モンテッソーリ教育(自発的な活動を促して成長させる教育)を行なうオランダの小学校に息子を入学させたそうです。そこで初めて通知表をもらったとき、大きなショックを受けたのだとか。

通知表のなかに、イギリス生まれのハッチソンさんがよく知る「10段階評価」や「ABC評価」がなく、自分の子どもがクラスのなかで優秀なのか下位なのか明確にされていなかったからです。記されていたのは、社交能力や個性に重きを置いた、以下5項目に対する評価だったそう。

  1. 一般的な態度
  2. 環境に対する配慮
  3. 先生との関係性
  4. ほかの子どもとの関係性
  5. 勉強に対する態度

ハッチソンさんによれば、モンテッソーリ教育の学校のみならず、オランダの主な学校では、こうした人間力を評価するような項目を使っているとのことです。

ただし、4歳の最年少学年(Groep1)やすぐ上(Groep2)の場合は、評価項目自体がない場合もあるようです。

そう述べるのは、オランダ企業でクリエイティブディレクションなどを行なう吉田和充さん。吉田さんによれば、オランダの小学校の通知表は、4歳で小学校に入学してからの記録がずっと残されている分厚いバインダーなのだとか。

そのなかには、担任の先生からの細やかな総評のほか、子ども自身のコメントも書かれているそうです。子どものコメントは、仲の良い友だち、コミュニケーション、好きな活動や遊びなどについて。

また、評価は「何段階」と表現しない絶対評価で行なわれ、個々に設定された目標(基準)に対して上であったか下であったか(※吉田さんは“平均”と表現)、前回からどのくらい伸びたか、といった内容が記されているそうです。

つまりオランダの小学校は、学業的に優れた子どもというよりも、人間力の高い子ども、かつ自律的に成長しようとする子どもを育てようとしているわけです。

ユニセフが2013年に発表した「子どもの幸福度調査」では、オランダが第1位となりました。なんだかその結果に納得してしまう、心の知能指数(EQ)が高まりそうなオランダの通知表です。

世界の通知表事情04

アメリカの通知表:積極性が評価される

アメリカ在住の日本人の子どもたちへ教育サポートを行なう在米現地教育コンサルタント、高橋純子さんによると、アメリカの通知表はレポートカードと呼ばれるもので、地域や学校によってフォーマットが異なるそうです。

評価対象となるのは、国語や算数といった教科だけでなく、

  • 協調性
  • ルール
  • 取り組む姿勢
  • 解決力
  • 持続力
  • 応用力

――などもあるそう。

それらに対し、1~5(もしくは4)、A~Fの文字、あるいは Excellent、Good、Satisfactory、Needs improvement、Unsatisfactory の頭文字をとって評価をつけます。

加えて先生が、子どもの良い部分や努力が必要な部分などを書いてくれるそうです。ちなみに、開成学園の校長・柳沢幸雄さんによれば、アメリカの小学校で通知表に「He is quiet in the class(彼はクラスで静かです)」と書かれていたら要注意なのだそう。

日本人の感覚だと「大人しくていい子だと褒められている」と思ってしまいそうですが、じつは「知的刺激に反応していない」ことを意味しているのだとか。

柳沢さんはアメリカで子育てをした際に、意見を言ったら加点、レポートを頑張ったら加点といった、アメリカの加点主義を実感したといいます。これが、チャンスさえあれば自分の意見を述べるアメリカ人の根源だと同氏は述べています。

通知表の評価項目からもわかるように、アメリカでは、小学校から自分で考え行動できているかどうか、しっかりと自己主張できているかどうかが重視されているようです。

世界の通知表事情05

デンマークの通知表:評価してはいけない!?

最後は、北欧の代表的な福祉国家として知られるデンマークの通知表です。文教大学教授の太田和敬さんによれば、デンマークの義務教育は9年間。一般的には小学校と中学校が一緒になっている学校で行なわれますが、子どもを就学させずに家庭で教育することも認められています。

もちろん児童の学力などはその都度先生らによって確認され、教育に生かされているとのことですが、じつは法律によって7年生までは試験を行なうことが禁じられており、通知表も存在しないそうです。

8年生からやっと13段階の絶対評価で、成績がつけられるようになるとのこと。ただし、それも点数化された通知表ではないのだとか。

しかし、9年間の義務教育を終える時点で、就学・家庭教育関係なく学力テストを受け、義務教育修了の認定を獲得しなければならないのだそう。つまり、試験がなくても、点数化された通知表がなくても、学びを蓄積していく必要があるわけです。

太田さんは、日本の受験体制や評価制度が、日本の子どもを「勉強嫌い」にしていると述べます。一方で、受験や評価がほとんどないデンマーク人は、国際的に見てもかなりの勉強好きなのだとか。

2019年版の「世界競争力ランキング」では、日本が30位であるのに対し、デンマークは8位。「政治汚職度調査(クリーンな政治が行なわれているかどうか)」や「生活満足度調査」においても、日本とは違いデンマークは常にトップか上位です。

評価制度がある日本の世界的な評価が低く、評価制度をおおむね排除したデンマークの世界的な評価が高い――何とも興味深く、皮肉な事実です。

世界の通知表事情06

***
ニュージーランド、オランダ、アメリカ、デンマークの通知表事情を紹介しました。

個人の力で教育制度を変えることはできませんが、各国の “いいとこどり” はできるはず。子どもが通知表を持ち帰ったとき、「そういえばあの国は、努力を評価していたな……」などと思い出し、子どもに声をかけてみてくださいね。

(参考)
Forbes JAPAN|小学校の評価、親はどう受け止めたらいいのか ベテラン家庭教師に聞く
みんなの教育技術(小学館)|1年生 はじめての通知表 子どもと保護者が喜び合えるものにしよう!
文部科学省|教育課程部会 総則・評価特別部会|資料6-2 学習評価に関する資料
Glolea![グローリア]|子連れニュージーランド移住日記 子どもの通知表
All About|子供の褒め方5つのNG例とは?
リナ・マエ・アコスタ著, ミッシェル・ハッチソン著, 吉見・ホフストラ・真紀子訳(2018),『世界一幸せな子どもに親がしていること』,日経BP.
日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)|先進国における子どもの幸福度 日本との比較
特別編集版 2013年12月
こどもまなび☆ラボ|モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の違いは? 理念と方法論を徹底比較
FINDERS|「通知表」が変われば教育が変わる?オランダの通知表に見る世界一子どもが幸せな理由【連載】オランダ発スロージャーナリズム(11)
リダックくらぶ|第3回「成績表の評価の捉え方について」
浜田宏一著(2015),『日米の教育の違いから見えた グローバル・エリートの条件 何が「本物の人材」を生むのか?』,PHP研究所.
新興出版社啓林館|CS研レポート Vol.52 諸外国の教育評価
Sustainable Japan|【国際】IMD世界競争力ランキング2019、首位シンガポール。日本は30位で凋落止まらず