教育を考える 2018.6.23

モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の違いは? 理念と方法論を徹底比較

編集部
モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の違いは? 理念と方法論を徹底比較

「モンテッソーリ」や「シュタイナー」といった言葉を耳にしたことがありますか? どちらも著名な教育家の名前で、その教育法は「モンテッソーリ教育」「シュタイナー教育」として世界中で知られています。幼児教育について調べた経験をお持ちなら、聞いたことがあるかもしれませんね。

では、モンテッソーリ教育およびシュタイナー教育の中身を具体的に説明することはできるでしょうか? それぞれの教育法は、何を目標に掲げていて、どのような教育を実践しているのでしょう。そして、日本で子どもを育てるにあたり、それらの教育法をどのように活かせるのでしょうか?
モンテッソーリ教育とシュタイナー教育を比較しつつ、それぞれの特徴を確認してみましょう。

モンテッソーリ教育・シュタイナー教育の発祥

モンテッソーリ教育は、イタリア出身のマリア・モンテッソーリ(1870~1952)によって生み出されました。モンテッソーリは、女性として初めてローマ大学の医学博士号を取得した才女。大学卒業後は、障害を持つ子どもの教育に取り組み、知的能力を向上させることに成功しました。そのときの方法論を、障害を持たない子どもの教育にも活かせると考えた彼女は、1907年に貧困層向けのアパート内で開設された保育施設「子どもの家」の監督・指導に従事します。そこから生まれた教育法が、モンテッソーリ教育なのです。モンテッソーリ教育は、大脳生理学や心理学などの観点からも効果的だといわれています。

一方のシュタイナー教育は、オーストリア出身のルドルフ・シュタイナー(1861~1925)が始めたものです。シュタイナーは哲学の博士号を持ち、「科学的・神秘体験を通じて精神世界を研究する」という「人智学(アントロポゾフィー)」を確立したことで知られています。彼が自身の教育理念を実現しようと1919年にドイツで創立したのが「自由ヴァルドルフ学校」です。この学校は、タバコ工場の労働者およびその子どもたちのために設立されたものですが、外部の子どもも生徒として受け入れていました。校名の「自由」には、「自由な人間を育てる」という決意が込められているそうです。

こうして比べてみると、両方とも20世紀初頭にヨーロッパで生まれたという共通点がありますね。ただ、モンテッソーリ教育は医師によって、シュタイナー教育は哲学者によって考案されたというのが大きな違いです。

モンテッソーリ教育・シュタイナー教育の理念

モンテッソーリ教育は、子どもに「自分を育てる力」――すなわち「自己教育力」が備わっていることを前提としています。この力を充分に発揮できる環境および自由を子どもに用意し、自発的な活動を促して成長させることがモンテッソーリ教育の基本理念です。「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことを目的にしています。

シュタイナーは学校について、「一切の偏見から自己を解放することができる、自由な人聞を育てる場所でなければならない」と考えていました。そのような人間を育成するため、シュタイナー教育では「教育そのものが芸術行為であるべき」だと考えられています。芸術的なものに触れると人間の感情は高まり、感情とともに取り入れた知識は定着しやすいからだそうです。

これらの考えを比べてみると、どちらの教育も「自由」を重視していることがわかりますね。しかし、モンテッソーリ教育は「子どもが自分を教育する環境」を用意する一方、シュタイナー教育は「子どもを学校でどう教育するか」に着目しているという点が大きな違いだといえるでしょう。

モンテッソーリ教育・シュタイナー教育の方法論

上記のような理念は、どのような方法論に落とし込まれているのでしょうか。

藤井聡太六段、Amazon共同創立者ジェフ・ベゾスが幼児期に受けていた『モンテッソーリ教育』とは?」でもお伝えしたように、モンテッソーリの教育施設「子どもの家」では、子どもが活動を自由に選ぶことができます。それぞれの興味や発達段階に応じて、パズルやカードなど多様な教材が用意されており、それらを通じて文化や算数が学べるのです。
異なる年齢の子どもたちで構成される「縦割りクラス編成」も、モンテッソーリ教育の特徴です。日本モンテッソーリ教育総合研究所に併設されている「子どもの家」(東京都大田区)では、2歳半から6歳の子どもたちが同じクラスで活動します。年下は年上を見習い、年上は年下の世話をすることで、社会性が育まれるのだそうです。

シュタイナー教育には、「フォルメン」「オイリュトミー」という独自の教授法があります。「フォルメン」とは、直線や曲線、幾何学模様の描画を通し、集中力をつけさせたり指先を訓練させたりする方法。さまざまな科目において少しずつ取り入れられており、数学や美術の基礎的学習という位置づけとのこと。「オイリュトミー」とは、音楽に合わせて体を動かし、図形や感情を表現する科目。「自然で美しい身ぶり」や、他者との調和が学べるそうです。
初等教育と中等教育を分断せず、12年間の一貫教育を重視することもシュタイナー教育の特徴です。特に1~8年生のあいだは、「学齢期の始まりから思春期にさしかかる子どもたちの成長の全体を見通し、長期的なまなざしで育てる」ため、原則的に同じ教師が担任を務めます。これによって、担任は責任を持って教育を行うことになり、子どもとともに成長することも可能です。詳しくは、「黒柳徹子さんが受けた、自らの意思によって行動できる『シュタイナー教育』」もご参照ください。

このように、モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の方法論は大きく異なります。モンテッソーリ教育は子どもの「自己教育力」を伸ばし、シュタイナー教育は教師の役割を重視していることが背景にあるといえるでしょう。

モンテッソーリ教育・シュタイナー教育を家庭で取り入れるには

モンテッソーリ教育やシュタイナー教育に興味を抱いても、それらの理論を本格的に導入した教育施設に子どもを通わせることはハードルが高い、と感じるかもしれません。では、それぞれのエッセンスを家庭で取り入れてみるのはどうでしょう? 手軽な方法をご紹介します。

モンテッソーリ教育の基本的な考え方は、「子どもを手伝わず、自分で作業できる環境を整えてあげる」こと。子どもが自発的に興味・関心を抱き、積極的に物事に取り組めるような家庭を作りましょう!
まず、「子どもを手伝わない」ことを意識してみてください。服を着たり、物を片づけたり。子どもがスムーズにできないと手出ししたくなるかもしれませんが、こらえてください。ですが、突き放すわけではありません。やり方がわからずに子どもが困っているようなら、親がゆっくりとお手本を見せてあげましょう。
また、「子どもの家」のように、子どもが活動できるコーナーを用意しましょう。「特別な環境がなくても大丈夫! 家庭で実践できるモンテッソーリ教育」でもお伝えしたように、子ども専用の「身支度コーナー」を作るのがおすすめ。鏡やくし、ヘアピンなどを並べ、楽しく身じたくできる場所にしましょう。

シュタイナー教育は、「自然の素朴さ ・温かさ」を大切にしています。そのため、シュタイナー学校の校具にはできるだけ自然素材が使われ、プラスチックやスチールは避けられているのです。自宅で使うインテリアや道具、おもちゃも、できるだけ自然素材のものを選んでみてはいかがでしょう? ポリエステルの布よりコットン、つるつるしたプラスチックより、温かみのある木製の家具。手作りであれば、なおよいですね。
美を感じ、洞察力や達成感を育む『シュタイナー教育』を家庭で取り入れる方法」でもご紹介したように、花を飾ることもおすすめです。一輪で構わないので、花屋で選んだ季節の花をリビングに置いてみましょう。生の花を飾る習慣は、子どもだけでなく家族全体によい影響を及ぼしますよ。

モンテッソーリ教育・シュタイナー教育を受けた有名人

モンテッソーリ教育を受けた有名人には、高校生棋士の藤井聡太さんがいます。藤井さんは中学生でプロデビューし、2017年に歴代最多の29連勝という記録を打ち立てたことで大きな注目を浴びました。藤井さんは、モンテッソーリ教育を取り入れている「雪の聖母幼稚園」(愛知県)で学んだ経験があります。そこで、2色の画用紙や布を切って袋状に編み込ませる「ハートバッグ」作りに夢中になったそう。棋士としての高い集中力は、この作業で養われたのかもしれませんね。
世界的大企業・AmazonのCEOであるジェフ・ベゾスさんも、モンテッソーリ・スクールに通っていました。その当時から、目の前の課題に全力で集中していたそう。ベゾスさんは現在でも、マルチタスクを好まず、課題ひとつひとつを集中してこなします。メールを読むことにすら「全身全霊を込める」のだそうです。モンテッソーリ教育を受けた人には、集中力の高い人が多いのかもしれません。

シュタイナー教育を受けた日本人として特に知られているのは、タレント・女優・ユニセフ親善大使の黒柳徹子さんです。自伝『窓ぎわのトットちゃん』(講談社、1981年)によると、黒柳さんは1945年まで存在した小学校「トモエ学園」に通っていました。黒柳さんは、授業中に机のフタの開閉を100回繰り返したり叫んだりといった行動のため、ほかの小学校から退学させられたあと、トモエ学園に移ったのです。トモエ学園は、日本で初めてシュタイナー教育を導入した学校だといわれており、生徒は好きな科目を選んで授業を受けたり、午後は皆で散歩したりできたそう。黒柳さんは、もしトモエ学園に入らなかったら「何をしても『悪い子』というレッテルを貼られ、コンプレックスにとらわれ、どうしていいかわからないままの大人になっていた」だろうと考えています。さまざまな分野で活動を続ける黒柳さんの才能は、シュタイナー教育によって伸ばされたといってもよいでしょう。
2017年に公開された映画『昼顔』でメインキャストを務めた俳優の斉藤工さんも、シュタイナー教育の経験者です。斉藤さんは、幼児クラスから小学校6年生まで「東京シュタイナーシューレ」(現・シュタイナー学園)に在籍していました。特に斎藤さんの印象に残ったのは、衣装を自作したり自分のテーマカラーを決めたりした「オイリュトミー」の授業。米を苗から育てて収穫・販売したことも、体が感覚的に覚えているそうです。斎藤さんは「卒業後の人生においてずっと必要な自分の生き方や理念、世界観を培うための基礎」が身につけられたと、シュタイナー教育を高く評価しています。

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モンテッソーリ教育とシュタイナー教育を比較することで、それぞれの特徴が分かりやすくなりましたね。共感できるアイディアがあれば、皆さんの教育にも取り入れてみてください。

(参考)
StudyHacker|モンテッソーリ教育
StudyHacker|シュタイナー教育
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|藤井聡太六段、Amazon共同創立者ジェフ・ベゾスが幼児期に受けていた「モンテッソーリ教育」とは?
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|特別な環境がなくても大丈夫! 家庭で実践できるモンテッソーリ教育
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|黒柳徹子さんが受けた、自らの意思によって行動できる「シュタイナー教育」
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|美を感じ、洞察力や達成感を育む「シュタイナー教育」を家庭で取り入れる方法
公益財団法人 日本モンテッソーリ教育綜合研究所|マリア・モンテッソーリについて
公益財団法人 日本モンテッソーリ教育綜合研究所|モンテッソーリ教育について
公益財団法人 日本モンテッソーリ教育綜合研究所|附属「子どもの家」幼児部
学校法人シュタイナー学園|シュタイナー教育Q&A
学校法人シュタイナー学園|シュタイナー学園の特徴的な科目
学校法人シュタイナー学園|卒業生インタビュー ◎ 斎藤工さん(2期生)
WELEDA公式サイト|ルドルフ・シュタイナー
WELEDA公式サイト|アントロポゾフィー(人智学)
北翔大学学術リポジトリ|シュタイナー教育を訪ねて : 自由ヴァルドルフ学校視察報告
名古屋市立大学学術機関リポジトリ|日本におけるシュタイナー教育の動向
日刊スポーツ|藤井四段の集中力育てた「モンテッソーリ教育」
TechCrunch Japan|ジェフ・ベゾスが語る人生の極意
朝日新聞デジタル|「トットちゃん」中国で1千万部 日本より大ヒットなぜ
ハフポスト|「トモエ学園」とは? 黒柳徹子の失われた母校の思い出、福山雅治が紅白で歌う
日本ユニセフ協会|黒柳徹子 日本ユニセフ協会大使