StudyHackerこどもまなび☆ラボの人気連載『絵本よみきかせコーチング』でおなじみ、絵本スタイリスト®景山聖子さんによる夏休み特別講座が、8月4日(日)に開催されました。
幼児の部(午前)は、最初から最後まで大盛り上がりでにぎやかな講座に。そして小学生の部(午後)は、「漢字ゲーム」を取り入れたり、読み聞かせの基礎ルールを学んだりと、かなり中身の濃い講座となりました。
幼児の部、小学生の部ともに、景山先生ならではの “国語力アップ” のポイントがちりばめられた、実際の講座の様子をレポートします!
【幼児の部】読み聞かせ体験で絵本の世界が大好きになる!
<挨拶ゲーム>
まずは、数多くの読み聞かせ指導経験を持つ景山先生ならではの「挨拶ゲーム」で心の準備運動を。ジャンケンしながら「はじめまして」の挨拶です。たくさんのお友だちと挨拶をするうちに、最初はぎこちなかった挨拶が、どんどん楽しそうな声に変わっていきました。
<読み聞かせ(1)>
そして緊張がほぐれたところで、「さあ、始まるよー!」と、読み聞かせがスタート。1冊目は『へんしんトンネル』(あきやまただし、金の星社)ですよ。約半分の子が「知ってる~」とのことでしたが、読んだことのある子も初めて読む子も、全員が興味津々!
こちらの絵本はふしぎな言葉遊びになっていて、かっぱが「かっぱかっぱ……」とつぶやきながらトンネルをくぐると、「……ぱっかぱっか」と馬になって出てきちゃうというストーリー。景山先生の優しくて聞き取りやすい声に合わせて、いろいろなものが変身します。
「ぱっかぱっかぱっかぱっか!」と先生と一緒に読む子もいれば、「今度はなにかなー?」なんて心の声が出てしまう子も。そして絵本を見つめる子どもたちの目はとにかくキラキラ! 次はなにが起こるのかと期待しながら絵本にくぎづけになっていました。こんなときに集中力が育まれるのですね。
トンネルをくぐってなにかに変身するたびに大きなリアクションをとってくれていました。
<親子レクリエーション>
次はリアル『へんしんトンネル』体験です。お父さんお母さんが作る、長いトンネルを抜けると……なりたいものに変身できる! という夢のあるレッスン。子どもたちは、少し恥ずかしそうにしながらトンネルをくぐって、「消防士」になったり、「アリエル」になったり、「うさぎさん」になったりしていました。
絵本の中の世界と、現実の世界がこんなふうにリンクすると、子どもたちにとって印象に残りますし、ますます絵本が大好きになりますね。
<読み聞かせ(2)>
ここで一回、景山先生より読み聞かせについてのアドバイスが入りまして、ついにメインの絵本『てじな』(土屋富士夫、福音館書店)の読み聞かせです。怪しげな手品師が呪文を唱えると、アッと驚く展開が待っています。手品の前には必ず「あんどら、いんどら、うんどら!」という呪文が入るのですが、3回目の呪文では、みんな大きな声で唱えていました!
そして、この呪文を唱えたら次はどんなものが出てくるのかな……と、子どもたちはワクワクドキドキが隠せないといった表情で、半分も読まないうちに、すっかり絵本の世界へワープしている様子。つい前へ前へ、先生と絵本に近づいてしまう子が続出でした(笑)。
<記念撮影>
呪文を唱えながらの写真撮影です。絵本に出てくる帽子やアラビアンな衣装を身につけてハイチーズ♪
――最後に、今回のレクリエーションの意味を先生に教えていただきました。
「絵本を読んだあと、親はつい『どう思った?』などと感想を聞いてしまいがちですが、幼児に絵本の感想を聞くことは、あまりおすすめしていません。なぜならば、子どもは大人と同じくらい絵本に感動しています。でも、まだその気持ちを言葉に変えるという作業が苦手なのです。感想を聞かなければ、感じたものを自分の中で何倍、何十倍にも膨らませることができます。ですから、トンネルを実際にくぐる遊び、自分が手品師になる遊びを、読み聞かせとセットにしているんです。これは単なる楽しい遊びのように思われますが、実は子どもの想像力・感受性を大きく育ている瞬間なのです」
参加してくれた子どもたちは、どんな想像をして、なにを感じていたのでしょう? いつか……聞いてみたいものですね!
【小学生の部】本を読む楽しさを知るために効果的なこと
<挨拶ゲーム>
小学生は少しレベルアップして、「名前」と「夏休みに楽しみにしていること」をセットにした自己紹介です。なんと、学校で読み聞かせ係をしているという子や、読み聞かせのボランティアをしているというお母さまもいらっしゃいましたよ。
<発声練習>
上を向いたり、下を向いたり、胸を開いたりしながら「あー」と発声。同じ「あー」でも、体の向きや姿勢で声の出方が全然違うのです。最後はみんな“いい声”が出ていましたね。
<読み聞かせレッスン>
声の準備ができたところで『ピカゴロウ』(ひろただいさく・ひろたみどり、講談社)の読み聞かせ。まずは先生が読みます。登場人物である「ひなちゃん」とカミナリの子ども「ピカゴロウ」の声色を変えたり、感情をぐっと込めたりしながら読んでくれるので、子どもも大人も引き込まれてしまいました。
そしていよいよレッスンです。本の持ち方や、擬音語の効果的な読み方など、読み聞かせのコツを学びます。また、登場人物はどんな子なのか、なにを考えているのか、というのを想像しながら読むことがポイントになってくるとのことです。
そして一番大切なことは……「うまく読もうとしないこと!」ですって。なぜならば、「あなたにしかできない読み聞かせをすればいい」のだから。それには、自分の魅力に気がつくことが大事なのだと景山先生は熱く語っていました。
- 人前で堂々と発表できている。
- 感情がこもった読み方だった。
- 優しい読み方、丁寧なところが良い。
- 声がきれい。
- 表現を自分なりに工夫している。
- ひとつひとつの表現を大切にできていた。
上記は、参加してくれた子どもたちの「魅力」です。これを本人にしっかり伝えることで、子どもたちは自分の魅力に気づくことができ、自信がつくのだそう。実際に自分の魅力を聞いたときのみんなの顔はとても嬉しそうでした!
また、お子さまの魅力を本人に伝えるときのポイントを景山先生に教えていただきましたよ。
「間違えずに読めたね、などの褒め方をすると、次も間違えないようにというプレッシャーを与えてしまいます。褒めるときは常に、その過程での素敵な部分を認めるという方法を取ることで、お子さまの意欲を高めることができますよ」
登場人物の気持ちがこもった読み聞かせでした……! ひなちゃんとピカゴロウの会話が涙を誘います。
このほかにも、親子対抗漢字ゲームや読み聞かせ体験撮影、景山先生による親御さま向けレクチャーなども行いました。
まだ習っていない漢字がするすると頭に入る「漢字ゲーム」。親子対決は、2対1で小学生チームの勝利でした。
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幼児の部、小学生の部をとおして感じたことは、子どものころはみんな絵本が大好きだということ。絵本の魅力を知った子どもたちは、小学校に入って本が大好きになり、物語の世界に入り込むことができるのだと思います。もしかしたら「本を読まない子」は、「本の楽しさを知らない子」なのかもしれません。今回参加してくれた子どもたちは、絵本の世界の楽しさを存分に味わってくれたように感じます。
そして小学生の部での読み聞かせは、それぞれが本当に魅力的で、心の奥に響くものがあり、つい涙が……。景山先生がおっしゃっていた、その子にしか出せない魅力が満載でした。またみんなの読み聞かせが聞きたいです。
【講座内にて使用した絵本】
ひろただいさく, ひろたみどり(2016), 『ピカゴロウ』, 講談社.
土屋富士夫(2007), 『てじな』, 福音館書店.
あきやまただし(2002),『へんしんトンネル』,金の星社.