教育を考える/本・絵本 2020.4.24

「もっと頑張らなきゃ」と自己嫌悪に陥りがちな母親たちに、励ましをくれる絵本の存在

「もっと頑張らなきゃ」と自己嫌悪に陥りがちな母親たちに、励ましをくれる絵本の存在

共働き家庭が増加し、かつ教育熱も高まっているいま、「歴史上かつてないほど、お母さんが頑張っている時代」なんてこともいわれます。そういうお母さんたちに向けて、「すでに十分に頑張っている自分を認めることが大切」と語るのは、自身が母親になったことをきっかけに絵本の世界に飛び込んだ「絵本スタイリスト®」の景山聖子さん。景山さんがおすすめするお母さん向けの絵本の紹介と併せて、頑張っているお母さんに向けてメッセージを頂きました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカット)

とにかく「頑張りすぎている」いまのお母さんたち

いまのお母さんたちは、とにかく「頑張りすぎている」というのがわたしの印象です。というのも、いまはすぐに「比較」できてしまう時代だからです。

インターネットが浸透したいまは、いくらでも情報が手に入りますよね? とくにまだ幼い子どもがいる場合、自分のために外出することなどほとんどなく、家では基本的に子どもと過ごすことになるでしょう。そのためにインターネットでいろいろな情報に触れる機会も増えます。

すると、まずは他のお母さんと自分を比べてしまう。自分の子どもの成長や自分の子育てを、他の子どもの成長ぶりや他のお母さんの子育てと比べてしまうのです。そうして、「もっと頑張らなきゃ!」というふうに思ってしまうお母さんが多いのではないでしょうか。

また、その比較対象は他人ばかりではありません。自分の記憶にある、ワーキングウーマンとしてばりばり働いていた頃の自分といまの自分を比較することもあります。子育てや家事に疲れていて、仕事では勤務時間が限られていたりするためにむかしほど成果を挙げられないいまの自分とむかしの自分を比べて、「あの頃の自分は輝いていたな……」なんて考えてしまうこともあるのです。

景山聖子さんインタビュー_母親を励ます絵本02

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お母さん向けの絵本を読んで本当の自分の気持ちを知る

そんなときに大切なのは、すでに頑張っている自分を認めてあげること。そのための助けになるような、お母さん向けの絵本がたくさんあります。

たとえば、今日(福音館書店)という絵本もそのひとつ。

景山聖子さんインタビュー_母親を励ます絵本03

これは、ニュージーランドの子育て支援施設に伝わる詩を、詩人の伊藤比呂美さんが日本語訳したものです。登場人物のお母さんは、その日、皿洗いもしなければ窓ガラスも磨かなかったし、ベッドはぐちゃぐちゃのままにしていました。そうして「わたしは今日なにもしなかった」と自己嫌悪に陥ります。

でもその日、お母さんは子どもが眠るまでおっぱいをあげたり、泣きやむまで抱っこをしてあげたり、子どもとかくれんぼをして遊んであげたりしました。そうして、なにもやっていないどころか、「いちばん大切なことをしていたんだ」とお母さんは気づくのです。それこそ、共働きをしているような忙しい毎日を送っているお母さんには、ぜひ読んでほしい1冊です。

また、お母さん向けの絵本には、先にお伝えしたようなインターネットなどから入ってくる情報に振り回されることなく、自分自身の子育てができるようになるという効果もあります。たとえば、のんびりした雰囲気の絵本を読んだときに、「こういう生活がいいなあ」と感じるようなら、そのお母さんには詰め込み教育のような子育ては合わず、もっとのんびりした子育てが合っているのです。

たとえば、くまくまちゃん(ポプラ社)という絵本は、まさにそういうのんびりした雰囲気の絵本です。

景山聖子さんインタビュー_母親を励ます絵本04

内容としては、ただただお母さんがしたいことがいっぱい書かれているだけのもの(笑)。この絵本にぐっとくるようなら、もっとのんびりとした子育てができるようにすることを考えるのがいいかもしれませんね。

いずれにせよ、お母さんを対象にした絵本を読んで、そこから湧き上がる自分の感情をキャッチしてみましょう。そうすることで、自分がどんな子育てをしたり家庭を築いたりしたいのかということが見えてくるはずです。

夫を褒めると夫自ら子育てに協力的になる!

最後に、ご主人との関係についてわたしからお母さんたちにアドバイスをしておきます。多くのお母さんたちから、「夫との関係が修正できた」という感想が届いている方法です。共働き家庭が増えたとはいえ、やはり子育てや家事の中心を担うのはお母さんだという家庭が多いはず。そのため、「夫が協力してくれない」と悩んでいるお母さんも多いものです。

ここでも、まずは絵本を読んでほしい。わたしからおすすめするのは、みつけてん(クレヨンハウス)。

景山聖子さんインタビュー_母親を励ます絵本05

内容はちょっとシュールなのですが、夫婦が仲良くできていたときの愛情を思い出せて穏やかな気持ちになれるような内容です。

すると、普段は忘れていたようなご主人のいいところもまた思い出せるようになる。そうして自分の心を満たしてから、ご主人に対して文句をいったり要望を伝えたりするのではなく、その思い出したご主人のすてきなところを褒めてあげてみてください。そうすると、不思議なことに、ご主人が自分からどんどん子育てや家事に協力してくれるようになるはずです(笑)。わたしが講演などを通じて出会ったお母さんたちからは、「夫が自分から皿洗いをしてくれるようになった」といった声がたくさん届いていますよ。

一方で、不満は不満で吐き出すことも大切です。核家族化が進んだいま、子育てなどをめぐってご主人とぶつかっている状態では、家庭には不満を吐き出す場所がありません。ですから、ママ友同士のつながりが大切なのです。イライラしたり怒りを感じたりしてしまうのは、人間だから当然です。そういう自分を「駄目な自分」というふうに決めつけるのではなく、「人間とはそういうものだ」ととらえ、ママ友の集まりの場に積極的に参加してイライラなどを吐き出すようにしましょう。それが、結果的には家庭円満につながるのです。

景山聖子さんインタビュー_母親を励ます絵本06

子育ての悩みには“絵本”が効く!! ママが楽になる絵本レシピ31
景山聖子 著/小学館(2018)
景山聖子さん著書

■ 絵本スタイリスト®・景山聖子さん インタビュー記事一覧
第1回:「絵本の読み聞かせ」から、子どもが学ぶもの。そして、親が手に入れるもの。
第2回:「勉強が勉強でなくなる」のが絵本の魅力! でも「勉強のつもり」で読み聞かせてはダメ
第3回:「上手に読んであげて、感想を聞く」のは絶対に避けて。絵本の読み聞かせの鉄則です
第4回:「もっと頑張らなきゃ」と自己嫌悪に陥りがちな母親たちに、励ましをくれる絵本の存在

■景山聖子さん連載『絵本よみきかせコーチング』記事一覧

【プロフィール】
景山聖子(かげやま・せいこ)
群馬県出身。絵本スタイリスト®。群馬テレビアナウンサーを経て上京し、TBS、テレビ朝日、日本テレビ等で報道番組などのリポーターを務めたのち、ナレーターへ転身。NHKラジオの朗読番組『私の本棚』などを担当する。一児の母となると同時に、絵本の世界に魅せられ、2013年に(社)JAPAN絵本よみきかせ協会を設立し、代表理事に就任。ボランティア認定資格講座には全国から人が集まり、公共施設やカルチャーなどの「よみきかせ講師」も多数育成。現在は、絵本を介しての子育てに関する講演活動を行うほか、パナソニック読み聞かせ機能搭載ライトのアドバイザーやカルピス読み聞かせ隊のサポーターに就任。アカチャンホンポ・ピジョン保育士の全国社員研修なども担当。NHK総合テレビで絵本の朗読も行う。園や小学校での絵本の読み聞かせも続け、絵本の持つ力を広めるために精力的に活動している。主な著書に、『今日から使える読み聞かせテクニック』(ヤマハミュージックメディア)、(『子育ての悩みには“絵本”が効く!! ママが楽になる絵本レシピ31』(小学館)、『子どもが夢中になる 絵本の読み聞かせ方』(廣済堂出版)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。