「宇宙が好き!」「宇宙飛行士になりたい!」
そんな言葉をお子さんから聞いたとき、あなたはどう感じますか?
「素敵な夢だけど、宇宙で働くなんて難しそう……」「一部の特別な人しかなれないんだから」「もっと現実的な夢を見つけたほうが…」そう思ってしまうのは自然なこと。
でも、ちょっと待ってください。じつは、宇宙での仕事は思ったより近い未来の「普通の選択肢」になるかもしれません。10年後、20年後。あなたのお子さんが大人になる頃には——朝起きて火星の基地でオンラインミーティングに参加し、月面ホテルの予約状況を確認し、宇宙エレベーターで地球と宇宙ステーションを行き来する……そんな日常が、特別なことではなくなる可能性があります。
宇宙のお仕事は宇宙飛行士だけではありません。子どもの「宇宙が好き!」という気持ちを大切に、一緒に未来の宇宙のお仕事を見てみませんか。どんなワクワクするお仕事があるでしょうか? ぜひお子さんと一緒に読んでくださいね。
※本稿は、林公代氏の 『未来が楽しみになる 宇宙のおしごと図鑑』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。
宇宙のおしごと診断チャート
まずは、君に合うおしごとはなにかな? しつもんに答えてみよう!
君のタイプはどれだった?
A. 宇宙飛行士タイプ
どんな状況でも楽しむ心と、仲間となにかをやりとげるチームワークの精神をもつ君!
ぴったりなのは…宇宙飛行士、フライトディレクタ。
B. 宇宙社長タイプ
新しいアイデアで世界を変える力と唯一無二のリーダーシップをもっている君!
ぴったりなのは…宇宙社長。
C. 研究者・エンジニアタイプ
真実を追い求める探究心とむずかしい問題を乗りこえる力をもっている君!
ぴったりなのは…天文学者、ロケットエンジニア、火星生物学者など。
D スペースロイヤー(宇宙弁護士)タイプ
こまっている人やがんばっている人の力になりたいやさしい心と正義感をもった君!
ぴったりなのは…スペースロイヤー、フライトサージャン、スペースデブリハンター、宇宙天気予報士など。
E 宇宙食シェフタイプ
みんなを笑顔にする力やばつぐんの表現センスをもった君! ぴったりなのは…宇宙食シェフ、プラネタリアン、宇宙建築家、宇宙アイドルなど。
自分の得意を知れば未来が楽しみになるね! こたえはひとつの例なので、こだわりすぎず、しごとを考えるきっかけにしてね。
夢が広がる宇宙のおしごとは50種類以上!
では、どんな宇宙のおしごとがあるか見てみよう!
A. 宇宙で働く人類代表! 「宇宙飛行士」
人類がいままで行ったことのない宇宙に行き、しごとをするのが宇宙飛行士です。最初に宇宙に行った宇宙飛行士は、ソビエト連邦(いまのロシア)のユーリ・ガガーリンでした。1961年、地球のまわりを1周して「地球は青かった」という名言を残しています。
現在の宇宙飛行士のおもな活躍の場は、地球のまわりをまわる国際宇宙ステーション(ISS)です。世界の宇宙飛行士が協力して、長く生活しながらさまざまなしごとをしています。地球の生活に役立つような実験や研究を行ったり、より遠い宇宙に行くために新しい装置の試験をしたり、宇宙船の外に出る船外活動で、建設や修理の作業を行ったりします。
B. 宇宙ビジネスで世界を変える! 「宇宙社長」
「たくさんの人が宇宙を旅行できるようにしたい」「宇宙の技術で環境問題を解決したい」と思ったらどうしたらよいでしょう? これまで宇宙のしごとをするには、JAXAなど国の機関に入るのが一般的だと思われていました。でもいまは、会社をつくるという手段があります。会社が中心となって進める宇宙開発を「宇宙ビジネス」とよびます。
たとえばアメリカの「スペースX」という会社は、ひんぱんにロケットを打ち上げることに成功しています。それまで打ち上げ後は海に落下し捨てていたロケットの1段目を地上に着陸させ、何度も使えるようにすることなどでロケットの値段を下げました。
C. 望遠鏡で宇宙のなぞに迫る「観測天文学者」
宇宙はなぞがいっぱいです。宇宙のなかで人間がわかっている物質はたった4%。たくさんある宇宙のなぞをとくのが天文学者のしごとです。天文学者のなかでも、「観測天文学者」は天体望遠鏡を使って観測することで、宇宙の理解を深めていきます。
さまざまな望遠鏡を使うと、宇宙のことなるすがたが見えてきます。たとえば光や赤外線の望遠鏡は宇宙のはて近くの生まれたての星や銀河、未知の惑星などを、電波望遠鏡はブラックホールのようにはげしく活動している天体や、星が生まれる前の「星の卵」のような天体を見せてくれます。
D. 宇宙開発のルールをつくる「スペースロイヤー」
宇宙ビジネス分野で活躍する弁護士、それがスペースロイヤーです。たとえば人工衛星をロケットで打ち上げたい企業と、ロケット会社とのあいだでむすぶ契約書をつくったり、人工衛星がこわれてしまったときのもめごとを解決したり、さまざまな交渉をサポートしたりします。
宇宙ビジネスは新しい分野なので、前例のないことが起こります。スペースロイヤーは国や企業と協力しながら、ルールづくりを進めることもあります。たとえば、安全な宇宙船をつくりさえすれば、だれでも宇宙旅行に行けるようになるのでしょうか? 答えはNOです。技術と同じくらい法律が必要なのです。
E. 宇宙でおいしいごはんを「宇宙食シェフ」
おいしいごはんを食べると元気になるのは、宇宙でも同じ。宇宙でいそがしく働く宇宙飛行士にとって、宇宙食は体の栄養だけでなく心の栄養にもなります。おいしい宇宙食を食べることで、ストレスがやわらぎ、やる気を出すことができるのです。
現在、国際宇宙ステーション(ISS)にある宇宙食メニューは300種類以上。アメリカ、ロシアの宇宙食が中心で、ステーキや照り焼きチキン、デザートもあります。宇宙日本食も人気です。カレーやラーメン、焼き鳥、きんぴらごぼうなど、日本の家庭の味が海外の宇宙飛行士にも好まれています。
※文字の装飾は編集部で施しました。
林公代(はやし・きみよ)
神戸大学文学部英米文学科卒業。日本宇宙少年団の情報誌編集長を経てフリーライターに。宇宙・天文分野を中心に取材・執筆。NASA・ロシア・日本のロケット打ち上げ、ハワイや南米チリの望遠鏡など宇宙関連の取材歴は約30年。『さばの缶づめ、宇宙へいく 鯖街道を宇宙へつなげた高校生たち』(小坂康之氏と共著)、『宇宙に行くことは地球を知ること「宇宙新時代」を生きる』(野口聡一宇宙飛行士、矢野顕子氏と共著)、『星宙の飛行士』(油井亀美也宇宙飛行士、JAXAと共著)、『るるぶ宇宙』(監修)など著書多数。
◆『未来が楽しみになる 宇宙のおしごと図鑑』著者からのメッセージ◆
最後に、『未来が楽しみになる 宇宙のおしごと図鑑』著者である林公代さんのメッセージを紹介します。
この本のためにたくさんの方にお話を聞きました。私が宇宙の取材をはじめたころは想像できなかったほど、宇宙のしごとが増えていて、いまは本当におもしろい「宇宙時代」だと感じました。この本を読んでいるみなさんが大人になるころ、宇宙はどうなっているでしょう? この本で宇宙食シェフや弁護士などを紹介しましたが、もっといろいろなしごとができるでしょうし、自分の得意なことや好きなことを組み合わせて新しい宇宙のしごとをつくってほしい。宇宙でしごとをするみなさんをいつか取材したいです!
林公代
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子どもたちが大きくなる頃には、いまはまだ知らない宇宙の仕事がどんどん生まれているかもしれません。自分の得意なことや好きなことを宇宙を掛け合わせて、自分ならどんな仕事をしたいか、どんな仕事ができるか、想像を膨らませながら読むととても面白いですね。