教育を考える 2018.7.4

受験や就職にも影響! IQや偏差値では測れない、幼児教育分野で大注目の “非認知能力”

長野真弓
受験や就職にも影響! IQや偏差値では測れない、幼児教育分野で大注目の “非認知能力”

米国スタンフォード大学教育学部にて教育学博士号を取得し、教育学博士としても活躍するアグネス・チャンさん。彼女が教育の中で最も重要視していたのが「非認知能力」です。日本でも近年注目されるようになったこのスキル、幼少期に育むことがとても大事で、人生に大きな影響を与えると言われています。

幼稚園や小学校の指導要領のみならず、2020年度に大きく変わる大学入試でも評価基準に盛り込まれるなど、これからますます重要視されそうな「非認知能力」について、2回に分けて詳しくご紹介します。

数値化しにくい「非認知能力」とは?

IQや偏差値向上のための知的教育で得られるのが「認知能力」です。読み書き、算数、英語など学習成果が目に見えやすい能力であり、IQなどで測ることができる能力です。

一方、「非認知能力」は社会で生きていくために必要な“生きる力”と言えます。認知能力と違って目に見えにくく数値化もしにくいもので、具体的には以下の9つの能力があげらます。

「自己認識」自分に対する自信がある、やり抜く力がある
「意欲」やる気がある、意欲的である
「忍耐力」忍耐強い、粘り強い、根気がある、気概がある
「自制心」意志力が強い、精神力が強い、自制心がある
「メタ認知ストラテジー」理解度を把握する、自分の状況を把握する
「社会的適正」リーダーシップがある、社会性がある
「回復力と対処能力」すぐに立ち直る、うまく対応する
「創造性」創造性に富む、工夫する
「性格的特性」神経質、外交的、好奇心が強い、協調性がある、誠実

(引用元:リクルートマネジメントソリューションズ|人生の成功を左右する「非認知能力」とは

つまり、「好奇心旺盛、誠実で協調性があって、決めたことをやり通せる」そんな人間力のことを、“非認知能力が高い”と言うのです。そしてその力は確実に豊かな人生に導いてくれるものであるとされています。

非認知能力教育の効果は、将来に大きな影響を及ぼす

1960年代にアメリカ・ミシガン州で行われた社会実験が「ペリー幼稚園プログラム」です。対象は3~4歳の恵まれない家庭の子ども達(123人)。子どもたちは「質の高い幼児教育を受けるグループ」と「受けないグループ」に分けられ、就学前の適切な教育が及ぼす将来への影響についての研究のため、約40年間にわたり人生を追跡調査されました。効果測定に携わったのは、ノーベル経済学賞受賞者であるジェームズ・ヘックマン教授(シカゴ大学)です。

その結果、IQに関しては教育を受けた当初は高くなるものの、8歳くらいからは教育を受けなかった子どもと変わらないレベルに落ち着いてしまい、その効果は長続きしない一過性のものでした。そして、「就学前の認知能力に対する早期教育はあまり意味がない」という結果になったのです。

一方、彼らのその後の人生での就学、就職、収入や犯罪率においては、教育の有無で差が現れ、教育を受けたグループは全てにおいていい結果が出ています。この社会的成功の要因は、幼児教育で得られた「非認知能力」向上の成果だと考えられ、就学前に受けた非認知能力教育の効果は薄れることなく、その後の人間形成に大きな影響を及ぼすことが証明されたのです。

「非認知能力」を育むのは早めが肝心!

『脳を鍛える大人のDSトレーニング』開発者である脳科学者の川島隆太教授や、前出のノーベル賞学者ヘックマン教授は、「非認知能力は5歳までに決まる」とおっしゃっています。その理由のひとつとして、「非認知能力は雪だるま式に大きくなる」という研究結果があるからです。育成開始が早ければ早いほど効率的に力が伸ばせるということです

一方、アグネス・チャンさんは、「脳の発育段階が変わる3、8、14歳が大きな節目」と考えているそう。体と脳の成長のスピードが早い3歳までに最も大切なのは愛情をたくさん注いで自己肯定感を育むことと、いろいろな体験を通して脳を刺激すること

そして、次段階の8歳までに脳のシナプス(神経細胞をつなぐもので多いほど脳の働きが良くなる)は最も多く作られると言われています。しかし、使われないシナプスは消滅してしまうので、この時期に多くの体験をしてシナプスをより多く複雑にしておくことが重要なのだそうです。得意・不得意がはっきりし始めるのもこのころ。活発な脳の回路をこの時期に確立することは、その後の充実した人生に直結していると言えそうです。

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「非認知能力」を育むことは、生きるための心と脳の土台作りです。育まれた力は一生消えることはありません。また、認知能力と非認知能力は互いに影響しあって伸びるため、幼少期に身についた非認知能力は小学校以降の学習(認知能力)にも効果的です。

例えば、興味を持ったことに意欲的に粘り強く取り組むことで、よく考え、工夫して結果を出そうとします(非認知能力)。その結果、いい成果が得られて(認知能力)喜びを感じ、「次も頑張ろう」と非認知能力がさらに強まるのです。この相乗効果スパイラルが出来上がれば最高ですね。

次回は、「非認知能力」を育むためにはどうすればいいのかについて、具体的にご紹介します。

(参考)
ベネッセ教育情報サイト|幼児期 幼児教育 非認知能力|幼児期に「非認知能力」を伸ばし始めた方がよい理由【中編】
ベネッセ教育情報サイト|「非認知能力」ってナニ?実は時期指導要領でも重視
ベネッセ教育総合研究所|第2特集 生涯の学びを支える「非認知能力」をどう育てるか
マイナビニュース|5歳がタイムリミット!?子供の将来を決める「非認知能力」の育て方
マイナビニュース|数字で測れない「非認知能力」って何?
マイナビニュース|子の非認知能力を伸ばす教育は3・8・14歳が重要?
リクルートマネジメントソリューションズ|人生の成功を左右する「非認知能力」とは
NHK すくすく子育て|教えて!「非認知能力」ってなに?
東洋経済ONLINE|「幼児教育」が人生を変える、これだけの証拠