教育を考える/知育 2018.5.16

「リアルな遊び」を体験させよう。子どもを “デジタルゲーム依存” から守るために大切なこと

中村桃子
「リアルな遊び」を体験させよう。子どもを “デジタルゲーム依存” から守るために大切なこと

こんにちは。日本知育玩具協会認定講師の中村桃子です。第2回目の今回は、「子どもをデジタルゲーム依存から守る」ということについてお話しましょう。

ゲーム依存は「病気」” という記事を目にされたことのある方も多いのではないでしょうか。WHOが、2018年中頃に「ゲーム症 / ゲーム障害」を正式に精神疾患として認める、という見通しを立てたのです。

「ゲーム症 / ゲーム障害」とは、“ゲームに没頭することへの優先順位が高まり、日常生活に支障をきたしてしまう状態” のこと。ゲームに没頭しすぎるあまり、食事もとらない、仕事にも行かない、お風呂にも入らない。そういった状態が一例として挙げられます。

最初は「ちょっとだけ」と思って始めたゲームに、気がついたらのめり込んでいて……。頭ではだめだとわかっていてもやめられない……。よくありそうなお話ですが、どうやら事態は思っているより深刻なようです。

デジタルと出合う時期の低年齢化

では、子どもの場合はどうでしょうか。子育て中の皆さんにとっても、我が子のデジタルとの付き合い方は他人事ではないはずです。「自分が忙しいとき、我が子についスマートフォンをわたしてしまうんです。本当はいけないなあと思うんですけれど……」と葛藤している親御さまもたくさんいらっしゃるでしょう。

今回のWHOの「ゲーム症 / ゲーム障害」の発表を受け、国が警鐘を鳴らしているのも、10~20代の高い依存傾向だけではありません。もっと幼い子どもたち、つまり乳幼児期にまで及ぶデジタル使用の低年齢化が懸念されているのです。お隣の韓国では、すでに年間400人以上の中高生が、国家予算のもとデジタル依存から抜け出すための療育を受けているそうです。

とはいえ、デジタルがあふれているこの世の中、避けようにも避けがたいのもまた事実。これからの時代、子育て中の親御さまは、どのようにしてデジタルと向き合っていけばよいのでしょうか?

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大切なのは “体験遊びを存分にさせてから” ということ

「リアル(=現実)」と「バーチャルリアリティ(=仮想現実)」という言葉があります。本来ならば、幼児期~学童期は、現実で体験したことをたくさん積み重ねていく時期。バーチャルの世界に入っていくのはその後です。デジタルがだめ、ネットゲームがだめというよりも、この順番を守ることが大切なのです。

インターネットやデジタル機器は、使いこなすことができれば有用なツールであり、現代社会を生きるうえでも絶対に欠かすことのできない存在となっています。しかしながら、これらを使いこなすための器が育っていなければ、かえってそれらツールに振り回されることになってしまうのです。

そして、その器は、デジタルやインターネットそのものでは育てることができません。だからこそ、幼児期や学童期に、ボタンひとつでリセットできない “リアル” な遊びをたっぷり経験させ、その器を育ててあげる必要があるのです。

知育玩具で育てるアタマとココロ第2回2

幼児期~学童期の子どもたちは、自分で納得するまで試します。たとえば積木遊びでも、さらに高く積むためにいろいろ試したり、倒れると思いながらもさまざまな積み方にチャレンジしたりします。時には失敗も付きものですが、実際に積木を積んでみて倒れてからでないと、子どもたちは「ああ、そうか」とは納得しないのです。

「無理じゃない?」とアドバイスをしても、子どもたちはそれを聞き入れずに自分の思いを試そうとします。そして、それこそが自主性・主体性であり健全な育ちであることを、大人たちは知っておかなければならないのです。

知育玩具で育てるアタマとココロ第2回3

デジタルゲーム時代の今だからこそ、“アナログゲーム=ドイツゲーム” の体験を

では、私たち大人は、子どもにどんな遊びを体験させるべきなのでしょうか?

おすすめしたい遊びのひとつが「アナログゲーム」です。その中でも特に、子どもたちの発達に応じて体系的に与えることができる「ドイツゲーム」を体験させてあげてください。日本の絵本のようにたくさんの種類があり、子どもたちと一緒に楽しめる知育玩具として、今ひそかにブームなのです。

幼児期~学童期にドイツゲームで遊ぶと、

  • ルールを守る、順番を守るなど、社会性が育っていく
  • 友だちや大人と顔を向き合わせながら、勝つ喜びを体験できる
  • コミュニケーション力が育っていく

 
といった効果が期待できます。

家族みんなで、お兄ちゃんお姉ちゃんに教えてもらい、時にはルールが守れなくて怒られながらも、ドイツゲームを楽しむ。勝って嬉しい、負けて悔しい、そしてもう1回挑戦したくなる。ドイツゲームのルールの中で一喜一憂しながら、子どもたちは人と関わり合うことの大切さを知っていきます。そして心が満たされていくのです。

知育玩具で育てるアタマとココロ第2回4

では、ドイツゲームってどんなものがあるのでしょうか。次の第3回では、遊びながら子どもの能力を育てるドイツゲームの選び方についてご紹介します。一緒にアナログゲームの世界を楽しみましょう!

※ICD-11(国際疾病分類第11版)における「ゲーム症 / ゲーム障害」とは、デジタルゲーム、テレビゲーム、そしてネットを介するオンラインゲームに依存している場合と、ネットに接続していないオフラインゲームに依存している場合の2つを指します。

監修:(社)日本知育玩具協会

(参考)
WHO|gaming-disorder