教育を考える 2020.4.17

子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」! 甘えさせてもらえない子は将来こうなる

子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」! 甘えさせてもらえない子は将来こうなる

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「甘えさせる」と「甘やかす」――。同じ「甘」という文字が使われているために、つい混同してしまいがちです。でも、子どもの成長にとっては、甘えさせてもらえることと甘やかされることは大違いだというのは、欧米で学んだ心理学を子育てに生かし、母親たちをサポートしている公認心理師の佐藤めぐみさん。そこにあるちがいとはどんなものなのでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

「甘えさせる」と「甘やかす」とは、それぞれどんな行為?

甘えさせるとは、子どもが求めてくる愛着行動に対し、温かみを持って受け止める行動を指します。たとえば、「抱っこして」「お膝に乗っていい?」というふうに子どもが甘えてくることがありますよね? そういった欲求を満たしてあげることが、「甘えさせる」ことです。

あるいは、子どもの「負の感情」を受け止めることも「甘えさせる」ことに含まれます。子どもが悔しい思いをした、悲しい思いをしたというときに、それらの感情を受け止めて寄り添ってあげることです。大きくは、このふたつのことが「甘えさせる」というものです。

一方の甘やかすには、大きく3つの行為が含まれます。ひとつは子どもの物質的な要求を無条件に受け入れること。少子化であるいまの時代にはよくある話ですが、子どものおじいちゃんやおばあちゃんが、子どもに求められるままにおもちゃを買い与えるようなことです。

ふたつ目の「甘やかす」は、年齢相応に子どもが身につけておかなければならない行動まで親がやってあげてしまうこと。子どもが自分で靴下を履ける年齢になっているにもかかわらず、親が靴下を履かせるようなことです。

最後の3つ目の「甘やかす」は、いわゆる「先回り」で、子どもが失敗をしないようにと我が子が通る道をあらかじめ平坦に整えることです。ふたつ目の「甘やかす」とも通じるところがありますが、たとえば荷物の準備などが含まれます。未就学児や小学低学年であれば、幼稚園や小学校に持っていく荷物の準備を親が行ったり、手伝ったりするのはよくあることですが、小学高学年や中学生になってもそうしているようなケースがあてはまります。

佐藤めぐみさんインタビュー_甘えさせると甘やかすの違い02

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甘えさせてもらえなかった子どもは、人間関係の壁にぶつかる

ここまでの話を総括すると、「甘えさせる」ことは大切で、「甘やかす」ことはNGです。「甘えさせる」こととは、「絶対的な愛情で子どもを包み、親子の絆を深める」ことといえます。子どもはそのなかで、良好な人間関係の在り方を知っていくことができる。どういうふうに人とかかわればいいのかを学ぶのです。

この学びが少ないと将来的に大きな問題を生んでしまうこともあります。他人と親密な対人関係をうまく築けないために、恋人とどのようにかかわればいいかわからなかったり、結婚して子どもが生まれたとしても、今度は自分の子どもとどうかかわればいいのか難しく感じたり……ということが起こり得ます。

また、その問題は「他人に助けを求める」という場面にも出てきます。きちんと親に甘えさせてもらった子どもは基本的に人を信頼していますから、大人になってなにか困ったことがあったときに、素直にまわりに助けを求めることができます。もちろん、それは怠慢などではありません。そういう人は、今度は他人が困っているときには自ら助けてあげようと動けるでしょう。そうして、良好な人間関係を築けるのです。

一方、親に十分に甘えさせてもらえなかった子どもは、人を心から信頼することがなかなかできないため、他人にうまく助けを求められず、他人を助けることもできない大人になってしまうことがあります。

佐藤めぐみさんインタビュー_甘えさせると甘やかすの違い03

「手」を差し出すか、「気持ち」を差し出すか

こんな話をすると、すべての親御さんが「我が子にはきちんと甘えさせて、甘やかさないようにしたいな」と思ったことでしょう。でも、先に「甘えさせる」と「甘やかす」がどういったものかは解説しましたが、自分ごととして考えると、なかなか見わけがつかないという人もいます。

そこで、なにが「甘えさせる」で、なにが「甘やかす」なのか、その判断基準をお伝えしたいと思います。それは、親が子どもに対して提供しているもののちがいです。「甘えさせる」場合、親は「気持ち」を差し出していて、「甘やかす」場合は、親は「手」を差し出しているのです。

子どもの要求に応じておもちゃなどを与えるにも、自分で靴下を履ける子どもに靴下を履かせるにも、子どもの荷物の準備を親がするにも、「甘やかす」ときには手を差し出していますよね? 一方、「甘えさせる」場合、抱っこをするときにはたしかに手を差し出しているかもしれませんが、子どもを膝に乗せたり子どもの負の感情に寄り添ったりするにも、主に差し出しているのは親の「気持ち」、愛情であるはずです。

あとは、共働き世帯が多いいまだからこそ、以下のことにも注意してほしいと思います。毎日、両親ともに忙しく働いていることで、「子どもに寂しい思いをさせている」という罪悪感を持っている親御さんが多くいます。そして、その罪悪感を、子どもが欲しがっていたおもちゃを与えるなどして解消しようとするケースが多いのです。

でも、そういう物質的なものは一時的な満足をもらえるだけで、子どもが本当に求めている「甘えたい気持ち」を満たすことはできません。忙しく働き子どもと過ごせる時間が限られているからこそ、その貴重な時間を、子どもたちが真に欲するかたちで満たしてあげてください。

佐藤めぐみさんインタビュー_甘えさせると甘やかすの違い04

子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣
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■ 公認心理師・佐藤めぐみさん インタビュー記事一覧
第1回:「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!
第2回:子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり
第3回:子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」! 甘えさせてもらえない子は将来こうなる
第4回:「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?

【プロフィール】
佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)
1969年生まれ、東京都出身。公認心理師。オランダ心理学会認定心理士。イギリス・レスター大学大学院修士号取得。欧米で学んだ心理学を日本のお母さんが取り入れやすいかたちにしたポジティブ育児メソッドを考案。現在は公認心理師として、ポジティブ育児研究所でのオンライン子育て心理学講座、育児相談室ポジカフェでのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動等を通じ、子育て心理学を活用した育児支援を行っている。HP:megumi-sato.com

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。