教育を考える 2020.4.14

子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり

子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり

(この記事はアフィリエイトを含みます)

スーパーに買い物に行くたびに、子どもがお菓子をねだって駄々をこねてしまう……。いわゆる、「泣き落とし」の行為です。親として大いに悩まされることのひとつかもしれません。欧米で学んだ心理学を子育てに生かし、母親たちをサポートしている公認心理師の佐藤めぐみさんは、子どもの泣き落としを収めるには、「子どもがねだっているものとは『別のよろこび』に目を向けさせることが大切」だといいます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

「泣き落とし」の最大の要因は、子ども自身の「気質」にある

子どもの「泣き落とし」のピークは、大体が2歳くらいです。ただ、その頃は、まわりの同年代の子どもも泣き落としをしていることが多いので、「うちの子も一緒、イヤイヤ期だからだよね」と、一時的なものとしてとらえていることが多いものです。

ところが、一般的に泣き落としが収まりはじめる5、6歳になっても泣き落としをしていると年齢的にも目立つため、親が悩みはじめることになります。なかには、「自分の育て方が悪かったのかな……」と、自分を責めてしまう人もいるでしょう。でも、子どもが泣き落としをするかどうかの原因は、一概に育て方にあるとはいえません

子どもが泣き落としをするもっとも大きな要因は、子ども自身が持っている気質です。もともと、自分の意志を押し通そうという気持ちが強い子どもがいるのです。見方を変えれば、粘り強さがある子どもだといういい方もできます。粘り強さというといい意味でとらえられることが多いですが、それがマイナスの方向に出たのが泣き落としといえるでしょう。

もちろん、育て方に原因があるケースもあります。単純な話ですが、子どもに泣き落としをされると、親が根負けしてしまうということを繰り返すケースです。すると子どもは、「泣けば思いどおりになる」と学んでしまいます。この流れになってしまうと、どんなに口では「スーパーではお菓子は買わないよ!」といったとしても、そのルールは子どもに伝わりません。その子にとってのルールは、「泣けば買ってもらえる」というものだからです。

佐藤めぐみさんインタビュー_子どもの泣き落としを収める方法02

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「親子が互いになんとか守れるルール」を決める

そう考えると、子どもの気質にかかわらずに、親が「一貫した姿勢を示す」ことが子どもの泣き落としを収めるためのポイントになります。昨日は「いいよ」といってもらえたことが、今日は「駄目」だといわれると、子どもは混乱するからです。それに、子どもは自分に都合がいいほうを優先しますから、「いいよ」といわれたことだけを学んでしまうのです。

ただ、「一貫した姿勢を示す」とはいっても、ひたすら厳しいルールを課せばいいというわけではありません。ここで大事なことは、親子が互いになんとか守れるルール」にすること。スーパーでお菓子をねだって泣き落としをするケースなら、「平日にママとスーパーに行くときはお菓子を買わないけど、週末にパパとスーパーに行くときにはひとつだけお菓子を買っていいよ!」といったようなルールにするのです。そうすれば、子どもにとっても目指すものがあるので取り組みやすく、平日の買い物をスムーズにできるようにもなります。

そういった過程を経て、「泣かなくてもいいんだ」ということを子どもに学んでもらうことが大切です。つまり、ゲーム感覚でプログラムを遂行させていくようなイメージですよね。きちんとおねだりを我慢できたら、「よく我慢できたね!」とたくさん褒めてあげてください。もちろん、お菓子を食べること自体を禁止しているわけではありませんから、帰宅したらおやつタイムにします。すると子どもからすれば、泣かなくても結局はお菓子を食べられたし、ママは機嫌がいいし、しかも、褒めてくれたということになります。このようにして、子どもがねだっているそのものとは別の視点でのよろこびに目を向けられるようにしていくのがおすすめです。

ゲームや漫画などについても、すべて取り上げてしまうというような家庭もあるかもしれません。しかしながら、ゼロでは子どもは満足できませんし、一方で、遊び放題では親も困ってしまいます。ゼロか100かではなく、互いが折り合えるルールを考える方が現実的であり、実行しやすくなります。

佐藤めぐみさんインタビュー_子どもの泣き落としを収める方法03

泣き落としをする子どもの「粘り強さ」を生かす

話は少し本筋からそれますが、先にお伝えした泣き落としをする子どもの「粘り強さ」をいい方向に出せるように導いてあげてほしいですね。粘り強さがある、自分の意思を押し通そうとする子どもの思考のベースには、「疑問を持つ」という姿勢があります。スーパーでお菓子をねだる例なら、「ママはダメだといっているけれど、それは本当なのか?」という疑問が最初にあるのです。

その思考をうまく生かすことができれば、これからの時代に必要な強い力となるでしょう。これまで、学校で「いい子」といわれてきた子どもは、先生や親にいわれたことに素直に従っていた子どもたちです。しかし、学習指導要領も変わり、これからの子どもには自分で疑問を持って、自分で考えることが求められます。そんな時代にあって、さまざまなことに「疑問を持つ」思考を持っている粘り強い子どもは、うまく導いてあげれば力を発揮できるはずです。

そういう子どもは、ひとつのことにこだわって夢中になる傾向もあります。持ち前の粘り強さをいい方向に発揮できるよう、その子がなにかに夢中になって繰り返しチャレンジしていたら、温かく見守ってしっかりと褒めてあげましょう。子どもの気質は、親の接し方次第でプラスにも向かうこともあればマイナスにも向かうこともあります。きちんとプラスの方向に発揮できるよう、親がしっかり導いてあげたいものですね。

佐藤めぐみさんインタビュー_子どもの泣き落としを収める方法04

子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣
佐藤めぐみ 著/あさ出版(2012)
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■ 公認心理師・佐藤めぐみさん インタビュー記事一覧
第1回:「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!
第2回:子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり
第3回:子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」! 甘えさせてもらえない子は将来こうなる
第4回:「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?

【プロフィール】
佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)
1969年生まれ、東京都出身。公認心理師。オランダ心理学会認定心理士。イギリス・レスター大学大学院修士号取得。欧米で学んだ心理学を日本のお母さんが取り入れやすいかたちにしたポジティブ育児メソッドを考案。現在は公認心理師として、ポジティブ育児研究所でのオンライン子育て心理学講座、育児相談室ポジカフェでのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動等を通じ、子育て心理学を活用した育児支援を行っている。HP:megumi-sato.com

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。