教育を考える 2019.4.3

【子どものストレス原因・症状・対処法】不安な気持ちを表現できない幼少期のSOSサインに注意

編集部
【子どものストレス原因・症状・対処法】不安な気持ちを表現できない幼少期のSOSサインに注意

入園・入学、進級などで環境が大きく変わるこの時期。新しい出会いにワクワクする反面、不安や心配を抱えて心が不安定になることもあるでしょう。

大人であれば、長年の経験からうまく気持ちを切り替えたり、ストレスを溜めないように気をつけたりすることもできます。しかし、まだ幼い子どもたちは、たとえストレスを抱えていても対処法がわからずに溜め込んでしまうことが多いのです。

子どもだからといってストレスを感じにくいわけではありません。今回は、もし我が子がストレスを感じて不安定になってしまったらどう対処すべきか、考えていきましょう。

どんなときに子どもはストレスを感じる?

入園なら親と、入学なら幼稚園の先生や仲の良かったお友だちと離れますよね。つまり、新生活は、子どもにとって安心できる人がいない環境なのです。これが不安とストレスを生む大きな要因です」そう語るのは、大阪市の谷町こどもセンターで所長を務める臨床心理士の日下紀子さんです。

さらに環境が変わってしばらくしても、子どもは先生や同級生など周りの人が安心できる存在かどうかを無意識に探っているそう。そしてそのような心理状態が毎日続くことが、さらなるストレスを生み出しているらしいのです。せめてゴールデンウィークの時期までは、子どもの様子を注意深く観察する必要がありそうですね。

それ以外には、子どもにとってどのようなことがストレスポイントになるのでしょうか。日下さんは「入園と入学ではストレスの原因が微妙に異なる」といいます。

入園によって引き起こされるストレス

まず、おもちゃや遊具をたくさんの子どもと分け合うことがストレスになります。それまでは全部 “自分のもの” だったのが “みんなのもの” に変わるため、戸惑いを覚える子どもが多いのです。

また、おもちゃを取り合うとき、フォローしてくれる親がそばにいません。先生との信頼関係がまだできていない入園直後の時期などは、悲しい気持ちを誰に伝えればいいかわからなくて不安になるのです。

入学によって引き起こされるストレス

長い時間じっと椅子に座って授業を聞かなくてはならないことがストレスになります。また、周りと自分を比べ始める年齢なので、「お友だちはできているのに自分はできない」と、勉強や体育での成績を比べて落ち込む子も。

そして、親の不安な気持ちも少なからず影響しているといいます。子どもが幼稚園や小学校に馴染めないでいると、私の育て方が間違っていたのかな」と自分自身を責めてしまう保護者の方も多いのではないでしょうか。それが強いストレスとなり子どもが敏感に感じ取ってしまうと、子ども自身のストレスにもつながるというわけです。

ストレスに対して必要以上に不安を感じたり、ネガティブな思考にとらわれたりすると、ますます悪循環にはまっていくため注意が必要です。

ストレスが引き起こす心と身体のトラブル

ストレスを感じることで、子どもの心と身体にはどのような変化が表れるのでしょうか。

ストレスによって表れるSOSのサイン

<心の変化>
・イライラしやすくなる
・怒りっぽくなる
・急に落ち込む
・感情の起伏が激しくなる

<身体の変化>
・食欲がなくなる
・便秘、下痢
・熱が出る
・寝つきが悪くなる
・朝起きられなくなる

洗足ストレスコーピング・サポートオフィスの伊藤絵美先生は、「大人に比べて子どものストレス反応は『身体化』『行動化』しやすい」と述べています。

身体化とは、「お腹が痛い」「眠れない」「おしっこがしたくなる」などの状態を指します。低学年くらいまでの子どもは言語化する能力が未熟なため、身体的な不調として表に出やすくなるのです。

行動化とは、「動物をいじめる」「妹や弟をいじめる」「ものに当たる」「友だちに手を出す」といった様子を指します。低学年~中学年くらいでは、自分よりも弱いものに苛立ちをぶつける傾向があります。

いずれも意識的ではなく、心のモヤモヤを表面化して自分なりにバランスを取ろうとしているため、親がただ言い聞かせるだけでは根本的な解決にはつながりません。

「お腹が痛い」には要注意!

子どものストレス反応としてもっとも多いのが「お腹が痛い」と訴えることです。もちろん病気の可能性も否定できないので、まずは医師の診察が第一。そして医学的に明確な問題が確定できなかった場合に、ストレスに由来するものかもしれないと考えましょう。

腸内の免疫の働きに詳しい理化学研究所の大野博司氏は、「新しい環境の変化へのストレス、また食べ慣れた家庭での食事から給食に切り替わるような変化で腹痛を引き起こすことがある」といいます。

慣れない環境での生活が続き、ストレスが溜まることや食事がこれまでと変わることで、胃酸の分泌が増えて粘膜を傷つけたり、腸内細菌のバランスが崩れたりすることがあるらしいのです。その結果、一時的な腹痛や下痢を引き起こしますが、身体が環境に適応していくと治るケースが多いようです。とはいえ、「小さな子どもでもストレスがお腹に影響する」ということは肝に銘じておきましょう。

NPO法人「子育てひろばほわほわ」の顧問・永瀬春美さんは、「慣れない新生活に加えて、『不安な気持ちを表現できないこと』が重なって腹痛の症状ができることもあります」と述べています。

ここで見直すべきは親子の日常でのやり取りです。普段から「ちょっとしたことでグズグズ言わないの」「平気平気、そんなの大したことじゃないでしょう」と言ってしまいがちなら要注意! 一見良い対応にも思えますが、子どもは自分の気持ちが否定されたと感じます。そして、このような経験の積み重ねが、感情を素直に表現できなくしてしまうことにつながるのです。つまり、新生活の不安にそのジレンマが加わって、腹痛を引き起こすというわけです。

子どもが「お腹が痛い」と訴えるようなら「不安だよね」「何に困っているの?」と、子どもの目線に立って不安な気持ちに寄り添ってあげましょう。

子どものストレスに親はどう対処する?

では実際に、我が子がストレスを感じていると知ったとき、親としてどのように対処すればよいのでしょうか。

ストレスマネジメントの第一人者である教育心理カウンセラーの田中純先生は、「日頃の親子関係が重要」といいます。些細なことでも親子であれこれ語り合う習慣ができていれば、子どもの心の変化を敏感に感じ取ることができます。また、家庭は子どもにとって心から安心できる場所でなければなりません。親に話すことで気持ちがスーッと楽になると子ども自身が気づくことで、親子の関係はさらに風通しの良いものとなります。

そのうえで具体的な対処法を見ていきましょう。

「そんなの大したことじゃないよ」「他の子だって同じような経験をしてるよ」はNG!
悩みの重さは人それぞれであり、他の人と比べるのは良い解決法ではありません。「あなたにしかわからない辛さがあるよね」と、その問題が子どもにとってどれだけ重大なのかを理解してあげましょう。また、我が子自身の成長を認め、「今できていること」に焦点を当てて褒めてあげると自信につながります。

話すことを強要するのはNG!
無理やり聞き出そうとすると恐怖心を煽ります。「今でなくてもいいから話したくなったらいつでも話してね」と、いつでも寄り添う準備ができていることを知らせましょう。安心感を与えます。

子どもの代わりに親が問題を解決してしまうのはNG!
子ども自身の力で立ち直るきっかけを奪ってしまうと、「何かあればお母さんに解決してもらえばいいや」と甘えるようになります。余計なお節介はせずに、自分から行動してやり抜くことを待ちましょう。

田中先生が提唱するストレスマネジメント術 “ゴジラはリスさ” を覚えておくと、いざというときに落ち着いて対処できますよ。

「ゴ」合理的に考える
「ジ」自分のことは自分でする
「ラ」ライフスタイルを改善する
「は」発散・表現する・楽しむ
「リ」リラックスする
「ス」スキルを磨く
「さ」サポートを確保・活用する

まずは親自身が落ち着き、子どもにとって安心できる“居場所”となってあげることが重要です。そしてあまり感情的にならず、おおらかな気持ちで受け止めてあげましょう。

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親が子どものためを思ってストレスの元を排除しても、根本的な問題は解決しません。集団生活は自分の思い通りにならないことばかり。一つひとつの問題を乗り越えてこそ、生きるうえで欠かせない能力を育みます。親としてできるのは、ストレスを和らげるようサポートしてあげることなのです。

(参考)
いこーよ|新生活こそ要注意! 子どものストレス原因&親の対処法
さぽナビ|子どものストレス対処法(1)
NHK生活情報ブログ|おなか痛いをわかってほしい
低学年保護者のための情報誌『キッズレーダー』(2019 春),日能研.