「すごいね、えらいね、ってほめてるのに、なんだか自信がなさそう」「『どうせ僕なんて』って言い出した」「小さい頃はあんなに素直だったのに」――お子さんを見て、こんな言葉が浮かんだことのある親御さんは少なくないでしょう。
じつは、その声かけが「悪い言葉」だからではありません。子どもの年齢と、声かけの中身がズレているのです。6歳に効いた「できたね」も、12歳には子ども扱いに聞こえることがあります。
4つの年齢帯で、「いま効く声かけ」は3つずつ違います。NG例とあわせて、全部で12。場面別の言葉は、こどもまなびラボの「アファメーション」20選にまとまっています。*1 親がやらないことなら、同じくこどもまなびラボの「絶対にやらない」5つのことが参考になります。*2 年齢で切ると、同じ言葉でも「効く時期」と「効きにくい時期」があることが見えてきます。
目次
自己肯定感は、年齢ごとに「育つ場所」が移っていく
心理学者エリク・H・エリクソンは、人の一生を8つの発達段階に分け、段階ごとに乗り越えるべき課題があるとしました。1歳半〜3歳頃は「自主性 対 羞恥心」、3〜5歳頃は「自発性 対 罪悪感」、5〜12歳頃は「勤勉さ 対 劣等感」、12〜18歳頃は「アイデンティティー 対 アイデンティティーの混乱」。3歳は「自分でやる」が盛んになる頃、6歳は小学校で「やり遂げる」経験が本格化する頃、9歳は「比べられる生活」が本格化する頃、12歳は「自分は何者か」を考えはじめる頃です。年齢が変わると、子どもが自分を測る物差しが変わるのです。各段階の詳しい内容は、こどもまなびラボの「エリクソンの発達段階」の記事にまとめています。*3
そして、どの年齢でも物差しの目盛りを打っているのは親です。小児精神科医で、青山学院大学教授を務めた古荘純一氏によると、子どもは「親が自分をどう見ているのか」を基準に、自分の価値を決めているのだそう。*4 「自己肯定感」という言葉の生みの親とされる臨床心理学者・高垣忠一郎氏は、自己肯定感を「自分が自分であって大丈夫」という感覚だとしています。子どもはその感覚を、親の言葉から読み取っているのです。

3歳は「自分でやりたい」を守る3つの声かけ
「自分で!」と靴に手を伸ばし、「どうして?」を繰り返す頃です。エリクソンによれば、親が先回りしてなんでもしてあげたり、失敗を過度に叱ったりすると、子どもは自主性のかわりに羞恥心を覚えます。そうなると、挑戦する意欲が生まれにくくなります。3歳の自己肯定感は、「やってみた」を邪魔されないことで育つのです。
1. 「自分でやりたいんだね。どこまでやる?」
靴下を裏返しにはこうとする子に「ママがやるから待ってて」。東京都市大学人間科学部特任教授の井戸ゆかり氏は、心配しすぎによる親の「先回り」が子どもの自己肯定感を下げていると指摘しています。井戸氏は、 “簡単ではないけどなんとかできるレベル” のお手伝いを任せると、子どもの自己肯定感が上がるとも話しています。「どこまでやる?」と聞くと、子どもは「ここまで」と自分で線を引きます。そのレベルを子ども自身に選ばせる声かけです。
2. 「それ、気になったんだね」
「どうして空は青いの?」に「あとでね」「いま忙しいの」。エリクソンは、遊戯期の子どもが質問を連発する様子に親がうっとうしがる態度を見せると、子どもは罪悪感を覚えると述べています。答えを知らなくてかまいません。「それ、気になったんだね」と、質問したこと自体を受け取る。3歳では、答えより「聞いてもらえた」が残るのです。
3. 「靴、自分ではけたね」
「すごい!」「天才!」。じつは、この時期でも能力ほめは裏目に出ることがあります。
だから3歳には、評価ではなく事実を。「靴、自分ではけたね」と、できたことをそのまま言葉にするだけで十分なのです。
| 3歳のNG | 3歳に効く声かけ |
|---|---|
| 「ママがやるから待ってて」 | 「自分でやりたいんだね。どこまでやる?」 |
| 「あとでね」「いま忙しいの」 | 「それ、気になったんだね」 |
| 「すごい! 天才!」 | 「靴、自分ではけたね」 |
6歳は「ここまでできた」を積む3つの声かけ
小学校に上がり、「計画的に課題を仕上げて提出する」ことを初めて経験する頃です。エリクソンのいう学童期の課題「勤勉さ 対 劣等感」が本格化します。やり遂げる経験は「自分には能力がある」につながり、叱られるだけの経験は「自分にはできない」につながりやすい時期です。6歳の自己肯定感は、「終わった」より「ここまでできた」の積み重ねで育つのです。
1. 「ここまでできたね」
「まだ終わってないの?」。親が否定的な言葉をかけ続けると、子どもは「私はだめな人間なんだ」と自信をもてなくなるといいます。たとえば、くり上がりの足し算ができないなら、1桁の足し算はできるか、とひとつずつ確かめ、「ここまでできたね」と一緒に確認します。「まったくできない」が「ここまではできている」に変わり、次の一段を乗り越える自信になるのです。
2. 「宿題、何時から始める?」
「宿題やりなさい!」。命令口調は、6歳が覚えはじめたばかりの「自分で計画する」を奪います。かわりに具体的な問いを置きます。「7時からご飯だよ。宿題は何時から始めるのかな?」と聞くと、子どもは自分で「6時」と決める。決めた時間に始められたら「できたね」「ありがとう」。この小さな成功体験が、「勤勉さ」の最初の一段になるのです。こどもまなびラボの「子どもの自己肯定感を下げる『〇〇な親』」でも、この声かけを紹介しています。
3. 「練習したから、跳べるようになったね」
「100点とってすごいね」。注意したいのが、この「条件つきのほめ方」です。「〇〇ができるからすごい」という根拠のある自信は、〇〇ができなくなったとたんに消えてしまうからです。結果ではなく、努力と過程を言葉にします。「頑張って練習したから、なわとびが10回も跳べるようになったね」。できなかったことができるようになった「達成経験」が、6歳の自己肯定感を底から支えるのです。
| 6歳のNG | 6歳に効く声かけ |
|---|---|
| 「まだ終わってないの?」 | 「ここまでできたね」 |
| 「宿題やりなさい!」 | 「宿題、何時から始める?」 |
| 「100点とってすごいね」 | 「練習したから、跳べるようになったね」 |

9歳は「比べられる毎日」から守る3つの声かけ
「〇〇ちゃんのほうが上手」。「勤勉さ 対 劣等感」の天秤が、周りとの比較で大きく揺れる頃です。教育学博士のアグネス・チャン氏は、子どもは学校で常に比べられる生活だからこそ、親だけは子どもと誰かを比べないでほしいと強調しています。9歳の自己肯定感は、家が「比べられない場所」であることで守られるのです。
1. 「前より、できるようになったね」
「〇〇ちゃんはもっと上手なのに」。家庭教育の専門家である田宮由美氏によると、こう言われた子どもは、比べられた相手より自分は劣っていると解釈し、自己肯定感が下がってしまうそう。比べる相手を、他人から「過去のその子」に変えます。「1学期は10回だったのに、今日は30回跳べたね」。田宮氏は、以前よりできるようになったという実感が、子どもの自信につながるとも話しています。*6
2. 「そう思ったんだね」
「今日、〇〇ちゃんに嫌なこと言われた」。そんな報告に、つい「たいしたことないよ」「言い返さなきゃ」「えっ、そんなことしたの?」と返していないでしょうか。ジャーナリストでキャスターの岸田雪子氏は「子どもの話を聞くことは、子どもの自己肯定感を育てること」だとし、「評価しない・否定しない・遮らない」を聞き方のポイントに挙げています。「そう思ったんだね」と、子どもの言葉をそのまま繰り返す。短くても集中して聞けば、子どもは「まるごと受け止めてもらえた」と感じるのです。
3. 「今日あったいいこと、3つ教えて」
「どうせ私なんて」が出てきたとき、「もっと自信を持たないとダメでしょう」と返すのは避けたいところです。教育評論家の親野智可等氏によると、こうした言葉をかけると、子どもには「自分は、自信のないダメな子なんだ」という意識が残り、否定的な自己イメージができあがってしまうそう。こどもまなびラボの「泣いたって仕方ないでしょう」は子どもから自信を奪うでも紹介しています。
かわりに、寝る前に「今日あったいいこと、3つ教えて」と聞いてみてください。アメリカの心理学者マーティン・セリグマン氏が提唱した「スリー・グッド・シングス」です。大人を対象にした氏の研究では、1週間続けたあと、1か月後の時点で幸福度が上がり、抑うつ度が下がって、その状態が半年後まで続いたと報告されています。*7 こどもまなびラボでも、小学2年生が「スリー・グッド・シングス」を実践したレポートを紹介しています。*8
| 9歳のNG | 9歳に効く声かけ |
|---|---|
| 「〇〇ちゃんはもっと上手なのに」 | 「前より、できるようになったね」 |
| 「たいしたことないよ」「言い返さなきゃ」 | 「そう思ったんだね」 |
| 「もっと自信を持たないとダメでしょう」 | 「今日あったいいこと、3つ教えて」 |

12歳は「自分で決める」を手渡す3つの声かけ
「べつに」「どうでもいい」。エリクソンの区分では青年期に入る境目で、課題は「アイデンティティー 対 アイデンティティーの混乱」。「自分ってなんだろう」を考えはじめる時期に親が答えを先に出すと、子どもは自分で確かめる機会を失います。12歳の自己肯定感は、「決めさせてもらえた」で育つのです。
1. 「どうしたい?」
「サッカーよりも、将来のために塾にしなさい」。進路や習い事の判断が増える12歳に出やすいNGです。武蔵野大学ウェルビーイング学部長で幸福学研究者の前野隆司氏は「子どもがワクワクしてやりたいと思えること、得意なことをどんどんやらせてあげて」と言います。「どうしたい?」と聞いて、答えが出るまで待つ。「決まったら教えて」で1度引くだけで、決めたのは自分だという感覚が残るのです。
2. 「集中してやってたからだね」
「それでこそうちの子」「お母さんも鼻が高いわ」。結果だけに注目するほめ方には、6歳の項で触れた「条件つきのほめ方」と同じ落とし穴があります。反対に、外でわが子をほめられて「うちの子なんて全然」と返すのもNG。前野氏は「親の謙遜は子どもの自己肯定感を下げる」と言います。結果は子どものもの。「集中してやってたからだね」と取り組みに目を向けて、一緒に喜ぶだけに留めます。
3. 「信じてるよ」
「ちゃんとやってるの?」。米国NLP協会認定マスタープラクティショナーでプロコーチの田嶋英子氏によると、子どもを心配しすぎることは「信頼していない」と伝えているのと同じ。親が心配するから「心配な子ども」に育ち、親が信頼するから「信頼される子ども」が育つのだそう。「信じてるよ」「決めたなら、任せる」。12歳には、口出しより「見ている」が届くのです。
| 12歳のNG | 12歳に効く声かけ |
|---|---|
| 「将来のために塾にしなさい」 | 「どうしたい?」 |
| 「それでこそうちの子」「うちの子なんて全然」 | 「集中してやってたからだね」 |
| 「ちゃんとやってるの?」 | 「信じてるよ」 |
***
12の声かけに共通するのは、決める側を子どもに置いていること。そして、どの年齢帯のNGにも「比べる」「先回りする」「結果だけ見る」が入っていること。こどもまなびラボで紹介した「自己肯定感の高い子ども」の親が絶対にやらない5つのことは、年齢が変わっても変わらないのです。
これまでの声かけを全部入れ替える必要はありません。物差しが変わったぶん、言葉を一段だけ変えればいい。今日の寝る前に、お子さんの年齢の3つのうち、ひとつだけ試してみてください。
FAQ(よくある質問)
Q. 5歳など、年齢帯の境目にいる子には、どちらの声かけを使えばいいですか?
A. エリクソンの区分も「およそ」の幅で示されていて、境目の年齢では前後の段階が重なっています。5歳なら3歳の3つと6歳の3つの両方を試して、子どもの反応がよいほうを残してください。目安は年齢そのものより「いま子どもが何で自分を測っているか」です。「自分で!」が多ければ3歳の声かけ、「〇〇ちゃんは」が増えてきたら9歳の声かけが合います。
Q. 「すごいね」はもう言わないほうがいいのですか?
A. 言ってかまいません。ただ、「すごいね」だけで終わらせず、「最後まで積めたね、すごいね」と事実を先につけると、能力への評価ではなく行動への言葉になります。脳科学者の篠原菊紀氏によると、毎回ほめ続けると「ほめられ慣れ」が起きて、ほめられたありがたみが薄れてしまうそう。毎回ではなく、半分から7割くらいの確率でほめるのが理想だといいます。*9
Q. きょうだいで年齢帯が違うとき、声かけを使い分けると不公平になりませんか?
A. 使い分けて問題ありません。「上の子には任せて、下の子には手伝う」は、それぞれの年齢の課題に合わせた対応です。避けたいのは声かけの違いではなく、「お姉ちゃんはできたのに」という比較のほうです。どちらの子も「前のその子」と比べる言葉にそろえれば、公平さは保てます。
Q. 12歳の子が、何を聞いても「べつに」としか答えません。
A. 青年期の入り口では、答えを急がせないことがそのまま声かけになります。「決まったら教えて」「信じてるよ」で1度引いて、答えが出るまで待ってください。話しはじめたら評価も否定もせず、「そう思ったんだね」で受け取ってください。そうするうちに、話す回数は少しずつ戻ってきます。
(参考)
*1 こどもまなびラボ|海外に学ぶ、子どもの自己肯定感を育てる言葉「アファメーション」20選
*2 こどもまなびラボ|「自己肯定感の高い子ども」の親が “絶対にやらない” 5つのこと
*3 こどもまなびラボ|エリクソンの「発達段階」を知ろう。年齢別「発達課題」はクリアできてる?
*4 こどもまなびラボ|子どもの自己肯定感を下げる「〇〇な親」。親の声かけで子どもは変わる!
*5 Zhao, L., Heyman, G. D., Chen, L., & Lee, K. (2017)|Praising young children for being smart promotes cheating. Psychological Science, 28(12), 1868-1870.
*6 こどもまなびラボ|「泣いたって仕方ないでしょう」は子どもから自信を奪う。「自信を与える」3つの方法
*7 Seligman, M. E. P., Steen, T. A., Park, N., & Peterson, C. (2005)|Positive psychology progress: Empirical validation of interventions. American Psychologist, 60(5), 410-421.
*8 こどもまなびラボ|寝る前に3つ聞くだけ! 1週間で子どもの自己肯定感が上がる “幸福習慣”
*9 Popyful|脳科学者が教える! ほめると子どもにどんな影響がある? ほめる際の3つのポイント









