親の関わり 2026.10.27

子どもが嘘をつく本当の理由。4歳・6歳・9歳で「嘘」の意味は変わる

子どもが嘘をつく本当の理由。4歳・6歳・9歳で「嘘」の意味は変わる

「宿題やったって言ったのに、やってない」
「なんで嘘つくの!」
「正直に言えば怒らないのに」

わが子の嘘に気づいた瞬間、「うちの子が嘘をつくなんて」「どこかで悪い影響を受けたのかも」と胸がざわつく親御さんは少なくないでしょう。嘘は悪いことだと教えてきたからこそ、裏切られたような気持ちにもなりますよね。

じつは、4歳の「ぞうさんがうちに来たよ」と、6歳の「宿題やったよ」と、9歳の「みんな持ってるよ」は、同じ「嘘」でも中身がまったく違います。それぞれの嘘の裏側では、その年齢で育つ力がちょうど育っている最中。嘘の意味が年齢で変われば、親の受け止め方も変わってきます。この記事では、年齢別の一覧と、追い詰めない聞き方3つを例文つきでまとめました。

嘘がつけるのは、相手の頭のなかを想像できるようになったからです

嘘をつくには条件があります。「お母さんは、ぼくが宿題をやっていないことを知らない」とわかっていること。自分が知っていることと相手が知っていることは別だ、という区別が頭のなかでできていなければ、嘘は成り立ちません。発達心理学ではこの力を「心の理論」と呼び、こどもまなびラボの子どもがウソをつき始めたら「脳が育っている」サイン。発達心理学が明かす”ウソと知性”の意外な関係の記事でも、嘘は大切な認知能力が育っている証拠として紹介されています。*1

では、子どもは何のために嘘をつくのでしょう。子どもが嘘をつく原因として、「事実と空想の区別がつかない」「かまってほしい」「自分の身を守りたい」の3つを挙げています。(臨床心理士、井上序子氏)*2 幼い子は空想や願望を本当のことのように話し、本人に嘘をついている自覚はありません。痛くもないのに「お腹が痛い」と言うのは、かまってほしい気持ちの表れ。「宿題はやったよ」の裏には、叱られたくない気持ちがあります。

「かまってほしい」嘘は、アドラー心理学でいう「不適切な行動」とも地続きです。適切なことをしても認められない子は、別の方法で注目を集めようとする、とアドラー心理学では考えます。*3

この3つはどの年齢にも顔を出しますが、年齢によって主役が入れ替わります。心理学者エリク・H・エリクソンの発達段階説では、3〜5歳ごろを、好奇心のままに挑戦を繰り返して自発性や積極性を育てる「遊戯期」としています。5〜12歳ごろは、友だち関係のなかで勤勉性を育てる一方、ほかの子との優劣を意識すると劣等感も抱きやすくなる「学童期」。*4 嘘の主役が入れ替わるのも、こうした育ちの流れに沿ったものと考えられます。

白い背景に、青い線で結ばれた赤・黄・緑・青の点が脳の形を描く「神経ネットワーク」のイメージ図

4歳・6歳・9歳の嘘を1枚の表にすると、親の受け止めは年齢で変わります

先に一覧を置きます。年齢はあくまで目安で、育ち方には個人差があります。中身はこのあと順番に見ていきましょう。

時期 嘘の種類(よくある例) 育っている力 親の受け止め
1. 4歳ごろ〜
(幼児期)
空想の嘘・願望の嘘
「ぞうさんがうちに来たよ」「ぼくじゃない、くまさんがやった」「もう食べたよ」
想像力。相手の頭のなかを想像する力。ルールへの理解が始まる 「嘘」と呼ばない。空想には付き合い、事実だけ「お皿、まだ残ってるね」と確認する
2. 6歳ごろ〜
(小学校低学年)
身を守る嘘
「宿題やったよ」「こぼしたのは妹」「お腹が痛い」(かまってほしい)
悪いことをしたとわかる罪悪感。「叱られる」を先に読む見通しの力 嘘を暴かず、本当のことを言える出口をつくる。「言ってくれてありがとう」で締める
3. 9歳ごろ〜
(小学校中学年〜)
体裁を守る嘘・可能性を残す嘘
「みんな持ってるよ」「テストまだ返ってきてない」「時間がなかったからできなかった」
自分を客観視し、他人と比べる力。人からどう見られるかを気にする心 嘘の裏の「がっかりされたくない」を読む。白黒つけず、責任の割合を一緒に考える

1. 4歳ごろ「ぞうさんが来た」は嘘ではなく、想像力が育っている証拠です

「きょう、ぞうさんがうちに来たんだよ」「ぼくじゃない、くまさんがやった」。幼児期の嘘の多くは、井上氏の分類でいう「事実と空想の区別がつかない」嘘で、本人にだますつもりはありません。社会にはルールがあると理解し、まわりの人と仲良くしたいと思うようになるのは、4歳ごろからだといいます。(東京大学大学院教授・教育心理学者、遠藤利彦氏)*5 ルールを覚え始めたばかりのこの時期は、想像の世界もまだまだ広く、空想と現実が混ざったまま話すこともよくあります。

だから受け止め方は、「嘘」と呼ばないこと。「そうなんだ、ぞうさん来たんだ。何色だった?」と空想には付き合い、「もう食べたよ」のように事実と食い違うときだけ、「お皿、まだ残ってるね」と淡々と確認すれば充分です。「嘘つき!」と叱られ続けると、子どもは「想像したことを話すと怒られる」と受け取ってしまうかもしれません。

2. 6歳ごろ「宿題やったよ」は、叱られるとわかるほど育ったから出る嘘です

「宿題やったよ」「こぼしたのは妹」。小学校に上がるころから目立ってくるのが、「自分の身を守りたい」嘘です。協調性が身につき、罪悪感の感情をもち始めるのは6歳ごろからだと述べています。(京都大学こころの未来研究センター研究員〈当時〉、田村綾菜氏) この時期の嘘は、「悪いことをした」とわかり始めたからこそ出てくる嘘ともいえそうです。叱られる未来を先に読めるようになったぶん、その未来を避けようとして、つい口から出てしまうのでしょう。

受け止め方は、嘘を暴くことではなく、本当のことを言える出口をつくること。子どもの嘘にわざとだまされてみて、そのあと子どもが本当のことを言ったときにほめるのも有効だそうです。(白梅学園大学子ども学部教授、増田修治氏) 嘘の裏には、「自分を認めてほしい」という気持ちが隠れていることもあります。

3. 9歳ごろ「みんな持ってる」は、他人の目がわかるようになった嘘です

「みんな持ってるよ」「テストまだ返ってきてない」「時間がなかったからできなかった」。小学校中学年ごろになると、自分の体裁を守る嘘や、可能性を残しておく嘘も聞こえてくるようになります。文部科学省は、9歳以降の小学校高学年の時期を、自分のことも客観的にとらえられるようになる一方、「自己に対する肯定的な意識を持てず、劣等感を持ちやすくなる時期でもある」と説明しています。*6 他人の目から見た自分がわかってくるからこそ、「できない自分」は見せたくなくなるのかもしれません。

「時間がなかった」という言い訳には、「時間があればできたのに」という可能性を残しておきたい側面も考えられると指摘しています。(コーチングを取り入れた子育て講座を開く、やまだともこ氏)*7 9歳の嘘の裏にあるのは、「がっかりされたくない」という気持ち。受け止め方も、白黒をつけることから、責任の割合を一緒に考えることへと変わっていきます。

芝生の上でパパとこどもふたりがてをつないで走る様子

「正直に言いなさい」と追い詰めるほど、嘘は上手になります

年齢を問わず、親が避けたい対応がひとつあります。「なんで嘘ついたの!」「正直に言いなさい!」と正論で追い詰めることです。親が正論で責めれば責めるほど、子どもは逃れるために言い訳を考えると話しています。(日本キッズコーチング協会理事長・幼児教育家、竹内エリカ氏) そもそも親の「なんで○○なの!」は質問なので、「なんで」と聞かれた子は「だって」と理由を答えるもの。これこそが、子どもが言い訳をするいちばんの理由なのだとか。(コーチングを取り入れた子育て講座を開く、やまだともこ氏) 追い詰めるほど、子どもは嘘を減らすどころか、嘘を上手にする練習をしてしまうかもしれません。

「何回言ったらわかるの!」と感情的に叱り続けることは、子どもの脳を傷つけるおそれのある関わり(マルトリートメント)のひとつとされています。*8 とはいえ、まったくマルトリートメントの経験がない親などいない、とも語っています。(福井大学子どものこころの発達研究センター教授、友田明美氏) 大切なのは、嘘を1回暴くことより、「本当のことを言っても大丈夫な家だ」と子どもが感じられること。その安心感が、嘘を減らす近道になります。

追い詰めない聞き方は3つ。例文つきで置きます

聞き方1「なんで?」を「どうしたの?」に変える

「なんで嘘ついたの!」は理由を問い詰める質問で、返ってくる答えはどうしても言い訳になりがち。出来事に向けて聞き直してみましょう。

NG「なんで宿題やったって嘘ついたの!」
OK「宿題、どこまで進んだ? 一緒に見せて」
NG「なんで○○ちゃんを泣かせたの!」
OK「どうしたの? ○○ちゃんはなぜ泣いてるの?」

言い訳の言葉には子どもの不安や本心が隠されていることもあるので、「だって……」のあとを遮らず、最後まで耳を傾けることが大切とのこと。(一般社団法人子どものこころのコーチング協会代表理事、和久田ミカ氏)

聞き方2 嘘を暴かず、本当のことを言える出口をつくる

「本当は○○ちゃんがこぼしたんでしょ!」と暴くと、子どもは「違うもん!」と嘘を重ねるしかなくなってしまいます。嘘にいったん乗ってから、本当のことを言う道を用意してみてください。

NG「なんで嘘つくの!? 本当は○○ちゃんがこぼしたんでしょ!」
OK「こぼしたのは妹なのね。……もしこぼしたのが○○ちゃんなら、正直に言ってほしいな。失敗したことは仕方ないよ。次から気をつければいいんだから」

打ち明けてくれたら、「本当のことを言ってくれてありがとう」と返してあげてください。この最後の「ありがとう」が肝心。正直に言って受け止めてもらえた経験が、次に嘘をつきそうになったとき、子どもをそっと引き止めてくれるはずです。

聞き方3 責任の割合を一緒に数えて、「これから」を決める

9歳ごろからの嘘には、「自分だけが悪いわけではない」という言い分が混じっていることも少なくありません。30しかない責任を100負う必要はないとして、自分の責任がどこにどの程度あるのかを判断する習慣をつけ、子どもにも考えさせることをすすめています。(臨床心理士、福田由紀子氏)

NG「約束破って嘘までついて。今日はゲーム禁止!」
OK「ゲームの時間、守れなかったんだね。隠したのは、お母さんががっかりすると思ったから?」→「守れなかったのはどこまでが自分のせい?」→「じゃあ、明日からどうする?」

「ゲーム禁止」のように出来事と関係のない罰は、問題の解決につながりにくいもの。アメリカやイギリスなどの学校で取り入れられてきた「修復的実践」は、罰の代わりに対話で問題を解決しようとする考え方です。こどもまなびラボの「ダメでしょ!」と叱るのは意味がない。親子で問題解決をするための対話テクニックの記事では、家庭でできるステップとして、理由を聞く、気持ちや言い分を掘り下げる、「今後はどうするか」を話し合う、の3つが紹介されています。*9

子どもの困った行動への一番の対処法は「共感すること」だと強調しています。(日本アドラー心理学会・日本個人心理学会正会員、熊野英一氏) 伝えるときは、「あなた」ではなく「わたし」を主語にする「アイメッセージ」が効果的とされています。「どうしていつも嘘をつくの」ではなく、「本当のことを話してくれると、お母さんは安心するな」と伝えてみてください。

ソファに座って向き合う母親と小さな女の子

嘘をついた日は、頭と心がひとつ育った日です

4歳の空想の嘘は想像力が、6歳の身を守る嘘は罪悪感と見通しの力が、9歳の体裁を守る嘘は他人の目がわかる力が育ってきたしるし。嘘は「悪い子になった」サインではなく、その年齢で育つ力が育っているサインなのです。親の役目は、嘘を見逃さないことより、「本当のことを言っても大丈夫だった」という経験を子どもに少しずつ積ませてあげること。

***

だから、嘘に気づいた日に「育て方を間違えた」と落ち込まなくて大丈夫。次に「なんで嘘ついたの!」と言いそうになったら、「どうしたの?」に1度だけ変えてみてください。それだけで、子どもの答えは言い訳から本心に少し近づくはずです。

FAQ(よくある質問)

Q. 4歳の子の空想の話に付き合っていると、嘘をつく癖がつきませんか?

A. 心配しすぎなくて大丈夫です。幼児期の空想の話は、井上序子氏の分類でいう「事実と空想の区別がつかない」嘘で、本人にだますつもりはありません。成長とともに区別がついてくると、空想は「お話」として、事実は事実として話し分けられるようになっていきます。付き合うときは「そうなんだ、ぞうさん来たんだ」と空想として楽しみ、「もう食べたよ」のように事実と食い違う場面だけ「お皿、まだ残ってるね」と確認すれば充分です。

Q. 嘘をついたら、まったく叱らないほうがいいのですか?

A. 叱らないのではなく、正論で追い詰めないということです。人を傷つける嘘や、けがや危険にかかわる嘘には、「それは困る」とはっきり線を引いてください。そのうえで、理由を問い詰めるのではなく「どうしたの?」と出来事を聞き、本当のことを言える出口をつくる。正直に言えたときに「言ってくれてありがとう」と返すことが、次の嘘を減らす力になります。

Q. 「正直に言えば怒らない」と伝えているのに、嘘をつきます。なぜですか?

A. 子どもは言葉よりも、前回どうなったかをよく覚えているからかもしれません。以前に正直に話して怒られた経験があると、それを避けるために言い訳をするようになるといわれています。まずは、正直に話したときに本当に叱らず「言ってくれてありがとう」で終える回を、ひとつ積んでみてください。それが2回、3回と重なるうちに、「正直に言えば怒らない」が言葉ではなく経験になっていきます。

Q. 「いい子にしないとおまわりさんを呼ぶよ」のような親の言葉も、嘘になりますか?

A. 子どもからは、嘘と受け取られる可能性があります。シンガポールの若者379人を対象にした調査では、子どものころに親から嘘を多く言われていたと答えた人ほど、大人になってから親に嘘をつく傾向が見られました。「正直でいることが一番」と教えながら親が嘘をつくと、子どもに矛盾したメッセージを送ることになると注意を促しています。(シンガポール・南洋理工大学の研究者、ペイペイ・セトー氏)*10 「おもちゃ全部捨てるからね」のように実行しない脅しも、同じように受け取られるかもしれません。ただし、この調査は大人になってからの振り返りにもとづくもので、因果関係までは示されていません。

(参考)
*1 こどもまなびラボ|子どもがウソをつき始めたら「脳が育っている」サイン。発達心理学が明かす”ウソと知性”の意外な関係
*2 こどもまなびラボ|「子どもの嘘」の原因は「親の嘘」かも。子どもが親を信用しなくなる怖い嘘
*3 こどもまなびラボ|なぜ子どもは急に不機嫌になるの? その答えはアドラーの「不適切な行動の5段階」にある
*4 こどもまなびラボ|エリクソンの発達段階説とは? 8つの段階まとめ
*5 こどもまなびラボ|「ごめんなさい」が言えない子ども。「ごめんなさい」を言わせようとする親。
*6 文部科学省|3. 子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題
*7 こどもまなびラボ|子どもが言い訳をする意外な理由。“失敗した自分” を受け止めきれない子が多い!?
*8 こどもまなびラボ|脳が変形するって本当!? 子どもの脳を傷つける “親のNG行為”
*9 こどもまなびラボ|「ダメでしょ!」と叱るのは意味がない。親子で問題解決をするための対話テクニック
*10 Setoh, P., Zhao, S., Santos, R., Heyman, G. D., & Lee, K. (2020)|Parenting by lying in childhood is associated with negative developmental outcomes in adulthood. Journal of Experimental Child Psychology, 189, 104680.