「やらせると時間が3倍かかる」「何歳から包丁を持たせていいの?」「結局、私がやったほうが早い」。そんな本音から、つい「今度ね」と言ってしまうことはありませんか?
じつは、この「今度ね」で見送っているのは、段取り力や計算力を育てる機会かもしれません。料理は手順を順序立てて考える訓練。2人分のレシピを4人分に直せば、計算の練習にもなります。
問題は「させるかどうか」ではなく、「何歳に、何を任せるか」。
そこで3〜12歳を5つの年齢帯に分け、任せていいお手伝い30項目を、育つ力と一緒に一覧にしました。
目次
「私がやったほうが早い」の先に、段取り力と計算力が待っている
「お手伝い」が「時間の感覚」を、「時間の感覚」が「生活習慣」を身につけさせ、「生活習慣」が「高い学力」をもたらす。この考え方の背景には、文部科学省「平成29年度全国学力・学習状況調査」の分析があります。家庭環境が不利でも高い学力を示した子に、毎日朝食を食べるといった習慣が共通していたのです。(国立青少年教育振興機構理事長〈当時〉、鈴木みゆき氏)
お手伝いをしてきた人には、「段取りがいい」「指示をされなくても自分で仕事をつくることができる」「自分で考えてトラブルに対応しようとする」といった特長が見られ、就職や仕事への向き合い方にまで違いが出るそうです。(『お手伝い至上主義でいこう!』著者、三谷宏治氏)
育脳の記事によれば、7〜10歳ごろに育つ「こころ脳」には、勉強や習い事より責任を持って家事をするほうが効果を期待できるとのこと。家事は注意力、同時処理能力、段取り力、処理速度を鍛えるからです。
子どもの「伸びしろ」を育てるのは、それぞれの家庭だといいます。(進学塾VAMOS代表、富永雄輔氏)*1 伸びる子の親の傾向にも、「お手伝いをしっかり任せる」が挙がっています。「させる」ではなく「任せる」。だからこそ、年齢に合った役割選びが大切です。(参考: こどもまなびラボ|「伸びしろのある子ども」の親がしている3つのこと)

3歳から12歳まで、年齢別に「任せていいお手伝い」30項目
年齢は目安です。初めての仕事なら、上の年齢帯の子でも下の帯から始めてください。刃物と火を使う項目は、年齢にかかわらず大人が隣にいることが前提です。
3〜4歳は「数える」「運ぶ」「拭く」で数の感覚が芽生える
モンテッソーリ教育では、生活のなかの「数」に興味を示す「数の敏感期」を3歳半〜5歳ごろとしています。その入り口にあたる3〜4歳には、「コップを3つとって」のように数を声に出せる仕事を。(参考: こどもまなびラボ|モンテッソーリ教育5つのメリット。世界のリーダーに “モンテ育ち” が多いって本当!?)
5〜6歳は手先を使う仕事で集中力が伸びる
育脳の記事によると、3〜7歳は手先を使った細かい動きの発達が期待できる時期。卵を割る、米をとぐ、洗濯物をたたむなど、指先を使う家事を取り入れましょう。
小1〜2年は「理由を考える」家事で問題解決力が育つ
干した洗濯物が傾いたら、「どのバランスなら傾かない?」と聞いてみる。重さの原理を体で学ぶ場面に変わります。上履き洗いも「どうすればもっと汚れが落ちる?」の試行錯誤に。
小3〜4年はレシピと分量で国語と算数がつながる
レシピを読んで工程を理解するのは、広い意味での国語力。2人分を4人分に直したり、大さじ1(15cc)と小さじ1(5cc)の関係を使ったりと、算数も台所でそのまま役立ちます。
小5〜6年は「最初から最後まで」を任せて段取り力を仕上げる
「指示をされなくても自分で仕事をつくる」力に近づけるなら、献立から買い物、調理、片づけまで、一連の流れを任せてみましょう。
「育つ力」の欄には、「数の感覚」「段取り力」「時間の感覚」が何度も出てきます。お手伝いは、机とは別の場所で、勉強の土台づくりにつながっているといえそうです。

任せたお手伝いを「もうやらない」で終わらせない3つのコツ
お手伝いが続かないときは、子どものやる気より、始めるタイミングと道具を見直してみましょう。
1. 「やりたい!」と言ったその日に始める
始めどきは、子どもが「やりたい!」と言ったとき。「あぶないから、あっちへ行ってて」と遠ざけてしまうと、できるようになる頃には「面倒くさい」「やりたくない」に変わってしまうそうです。(NGO「ピースボート」の船上にあるモンテッソーリ保育園「ピースボート子どもの家」代表〈当時〉、小野寺愛氏)*2
2. 道具は子どもの手のサイズにして、手の届く場所に置く
娘さんが2歳のとき、小さな手に合うミトン型のふきんをつくり、手の届く「いつもの場所」に置いたところ、牛乳をこぼしても、叱る代わりに「あのふきんで拭こうよ!」と声をかけられるようになったといいます。(前出・小野寺愛氏)*2
片づいて周囲が「気持ちよい」と感じるとき、自分の行為が「役立った」という感覚が生まれ、「できた!」という自己肯定感が育つのだそうです。(シュタイナー教育を実践する「ぎんのいずみ子ども園」〈東京都調布市〉園長〈当時〉、山本ひさの氏)
3. うまくいかない日は「どうしてだと思う?」と聞き役に回る
お手本はゆっくり見せる。失敗した日は、直すより先に「どうして傾いたと思う?」と聞いてみる。
雑誌『プレジデントFamily』が東大生を対象に行なった調査では、東大生の親の9割が「子どもの話を聞く」ことを習慣にしていたそうです。(参考: こどもまなびラボ|東大生の親の9割が実践している「子どもの話を聞く」習慣。あなたは本当にできてますか?)
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「私がやったほうが早い」のは、今日の夕食に限れば事実です。けれどその先には、子どもが1回ずつ積み重ねる練習の場があります。30項目を全部やる必要はありません。今夜の食卓で、コップを人数分運んでもらう。それだけで、1番は終わりです。
よくある質問(FAQ)
Q. 包丁は何歳から持たせていいですか?A. 決め手は年齢より「大人が隣にいて、子どもが落ち着いて手元を見ていられるか」。一覧では5〜6歳で柔らかい食材から始め、小1〜2年で味噌汁の具、小3〜4年で火を使う一品と、段階を上げています。
Q. やらせると時間がかかって、平日は無理です。どうすればいいですか?A. 平日は「運ぶ」「戻す」など1分で終わる項目だけにし、包丁や火は週末に。週1回の上履き洗いだけでもかまいません。大切なのは、任せた仕事が「その子の担当」になっていることです。
Q. 1度はやったのに、もうやりたがりません。A. ふきんが大人サイズ、食器が届かない位置にある、「今度ね」で機会を逃した、のどれかではないでしょうか。子どもサイズの道具を手の届く場所に置き直し、「やりたい」と言ったらすぐ始めてみてください。
Q. 小学5年生ですが、下の年齢帯の項目もできていません。どこから始めますか?A. 年齢は目安です。初めての仕事なら、小5でも靴下のペアや配膳など下の帯から始めてかまいません。土台がそろってから上の帯に進むと、無理なくつながります。
*1: 富永雄輔『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』(文響社、2017年)
*2: 『できる子になる!0歳からのお手伝い』クーヨンBOOKS12(クレヨンハウス、2015年)









