親の関わり 2026.9.30

きょうだいゲンカ、親が「止めない」で育つ力。年齢別・NG対応5つとOK対応5つ

きょうだいゲンカ、親が「止めない」で育つ力。年齢別・NG対応5つとOK対応5つ

「お兄ちゃんなんだから譲りなさい」「また泣かせた!」「どっちが悪いのか、毎回わからない」

きょうだいゲンカが始まるたびに、親御さんは審判席に呼び出されます。駆けつけて、どちらが先に手を出したのかを聞き取り、判決を下して、「ごめんね」を言わせる。一日に何度も繰り返していれば、「もう勝手にして」と言いたくなるのも無理はありません。

じつは、この審判の仕事は、親がやればやるほど、子どもが自分で身につけるはずの力を奪います。きょうだいゲンカで育つのは、相手にも言い分があると知り、落としどころを探る「交渉力」。その育て方は、年齢差によって変わるのです。

きょうだいゲンカは、交渉力を毎日練習できる場所です

「子どものケンカは厄介なものではなく、むしろ学びの大きな成長のチャンス」――こう言いきるのは、保育コミュニケーション協会代表の松原美里氏。取り合い、ケンカ、仲直りの繰り返しのなかで、子どもは相手にも気持ちや事情があることを知り、自分の気持ちとの折り合いの付け方を学ぶと松原氏は言います。親が先走って止めると、この経験の機会そのものが奪われるのです。

友だちとのケンカなら、親が見ている場面はかぎられます。ところがきょうだいゲンカは、毎日、家のなかで、親の目の前で起きます。しかも相手は明日も一緒に暮らす相手ですから、「勝った」「負けた」で終わらせず、折り合いをつける必要があります。友だちとのケンカでの親の心得は「子どものケンカは止めない」で紹介していますが、きょうだいの場合は、そこに「年齢差がある」「親が毎回そばにいる」という2つの条件が加わるのです。筑波大学附属小学校元副校長の田中博史氏が「いまの親は子どもにかかわりすぎる傾向にある」と指摘するように、家のなかの小さなぶつかり合いは、親の目が届く場所で交渉を練習できる機会でもあります。

芝生の上でパパとこどもふたりがてをつないで走る様子

親が審判になるほど、ケンカは「親を動かす手段」に変わります

教育・子育て心理アドバイザーの雨宮奈月氏によると、大人はつい、泣いている子をなぐさめ、泣いていない子を責めがちです。ところが「同じ境遇でも『すぐに泣いてしまう子』『我慢強い子』『その場で泣けない子』がいる」と雨宮氏。反射的にわが子を責めると、親子の信頼関係を損ねる恐れもあるのだそうです。

きょうだいの場合、この「泣いたほうが勝つ」構造はもっとはっきり出ます。下の子は泣けば親が来ると学び、上の子は「どうせ自分が叱られる」と学ぶ。金沢学院大学人間健康学部の高賢一教授は、アドラー心理学の考え方をもとに、「適切な行為をしていても認められない子どもは、なんとか別の方法で注目を集めるような行動を始める」と説明しています。ちょっかいを出すたびに親が飛んでくるなら、ケンカは「親の注目を確実に手に入れる手段」になってしまうのです。

もうひとつ、年齢差で対応を分ける理由があります。カッとなった衝動に「待った」をかける脳のブレーキは、前頭前野という領域が担っていて、感情のアクセルよりずっとゆっくり育ちます。この働きを「実行機能」と呼びます(ブリティッシュコロンビア大学教授、アデル・ダイアモンド氏)*1。同じ「順番を待って」が、上の子には通じて、下の子には届かないのは、ブレーキの育ち具合が違うからなのです。

光る点と線が繋がり、複雑なネットワークを構築している様子を表現した人間の脳の3Dイラスト

NG対応5つを、OK対応5つに言い換えます

ただし、「止めない」には条件があります。白梅学園大学子ども学研究科教授の増田修治氏は、「3歳から小学校低学年くらいまでのケンカ体験は重要」としたうえで、「ケンカにもルールと教育が必要」と断言しています。「目を突かない」「噛まない」「爪を立てない」といった怪我につながる攻撃と、容姿などのコンプレックスをあげつらう言動は、最初から線を引いておく。増田氏いわく、「お互いに言い分があるのが『けんか』。一方的な攻撃が『暴力』」。この線を越えたら、親は迷わず止めに入ります。

線の内側のケンカで、審判を降りた親が何を言うか。つい口にしてしまう5つと、その言い換え5つを表にしました。

NG対応(つい言ってしまう) OK対応(こう言い換える)
NG1「お兄ちゃんなんだから譲りなさい」 OK1「それで遊びたかったんだね」
NG2「また泣かせた!」 OK2「何があったの? 順番に聞くね」
NG3「どっちが悪いの?」 OK3「どうしたら2人とも遊べる?」
NG4「ごめんねは?」 OK4「取っちゃったから、まず返そうか」
NG5「ケンカするならおやつ抜き」 OK5「次はどうするか、決めよう」

NG1「お兄ちゃんなんだから譲りなさい」は、OK1「それで遊びたかったんだね」に

年齢を理由に譲らせる声かけは、上の子に「自分の気持ちは聞いてもらえない」と伝わります。幼児教育の専門家・立石美津子氏が提案するのは、「共感→理由→選択肢」の順序。きょうだいの場面に当てはめると、「それで遊びたかったんだね(共感)。でもいきなり取ると弟がびっくりするから(理由)、『かして』って言ってみる? それとも終わるまで待つ?(選択肢)」となります。譲るかどうかを決めるのは、親ではなく上の子自身なのです。

NG2「また泣かせた!」は、OK2「何があったの? 順番に聞くね」に

泣いていないほうを叱りたくなるところで、ひと呼吸置いて、両方の話を順番に聞く。泣ける子と泣けない子がいるだけで、泣いていない子が悪いとはかぎりません。「先にお姉ちゃんの話を聞くね。次に〇〇ちゃんね」と順番を宣言すると、待っている側も自分の番があるとわかって落ち着きます。

NG3「どっちが悪いの?」は、OK3「どうしたら2人とも遊べる?」に

雨宮氏は、ケンカ自体を怒るのではなく、解決策を子ども自身に考えさせることをすすめています。「どっちが悪い」の問いは過去に向き、答えが出ても遊びは再開しません。「どうしたら2人とも遊べる?」は未来に向き、子どもが交渉を始めます。「10数えたら交代」「こっちは貸すからそっちを貸して」。親が思いつかない案が、子どもから出てくるのです。

NG4「ごめんねは?」は、OK4「取っちゃったから、まず返そうか」に

立石氏は、「『ごめんね』『いいよ』の言葉だけを子どもに強要し、『シャンシャン、めでたしめでたし』としないことが大事」と指摘します。頭ごなしに謝罪を強いると、その場では言うとおりにしても子どもは納得できず、同じことを繰り返すのだそうです。言葉の謝罪より先に、壊したなら直す、取ったなら返す。もとに戻す行動を先に置くと、子どもは「自分が何をしたか」を体で理解します。

NG5「ケンカするならおやつ抜き」は、OK5「次はどうするか、決めよう」に

ケンカとおやつには何の関係もなく、関連性のない罰は問題そのものを解決しません。海外の学校で広がる「修復的実践」では、罰の代わりに、壊したものをもとに戻させ、「今後はどうするか」を一緒に決めます。育児相談室「ポジカフェ」主宰の佐藤めぐみ氏も、罰は何が悪いのかが伝わらず、「嫌なことを避けたいから言うことを聞こう」と思わせるだけだと述べています。ケンカのあとに決めるのは罰ではなく、次のルールなのです。

笑顔で人差し指を立てる女性

年齢差で、親の立ち位置を変えます

5つの言い換えを、年齢差に合わせて配分し直します。区分は3つです。

  • 【年齢差1〜2歳】:審判を降りて、線だけ引く
    力も言葉も近く、対等なケンカになりやすい。「上だから」の理由づけは使わない。怪我につながる攻撃のルールだけ最初に示し、線の内側は見守る。OK1〜3を、2人に同じ量でかける。
  • 【年齢差3歳以上】:上の子の話を先に聞く
    力と言葉に差があり、下の子はブレーキが育っている途中。下の子には「取らないで、『かして』だよ」と短くひとこと。上の子には、我慢を求める前にOK1の共感を先に置く。OK4・OK5は上の子と一緒に決める。
  • 【上が小学生】:口を出さず、ヒントを渡す
    親の前でのケンカは減り、言葉のケンカが増える。「いやだ」「やめて」を自分の言葉で言えることが目標。「お母さんならこう言うかな」とヒントを渡し、決めるのは本人に任せる。体格差が大きいので、一方的な攻撃だけは暴力として即座に止める。

 

区分の根拠は、子どもの発達の段階です。スクールカウンセラーで医師の明橋大二氏によると、子どもは2〜3歳ごろからきょうだいや友だちに自己主張を始め、3〜5歳になると簡単なルールは守れるようになり、他人の気持ちへの理解も高まります。年齢差が1〜2歳なら、2人はほぼ同じ段階にいるので、親が上下をつける必要はありません。「お兄ちゃんなんだから」を持ち出すと、たった1歳の差で片方だけに我慢が積み上がるのです。

年齢差が3歳以上だと、上の子だけがルールを守れる段階にいるため、親は無意識に上の子にだけ「わかるでしょ」と我慢を求めます。我慢ばかり求められた上の子は、高氏の言う「別の方法で注目を集める」行動につながる場合もあります。上の子の話を先に、下の子には短く。順番を変えるだけで、上の子の「どうせ」が減っていくのです。

上が小学生になると、ケンカの主戦場は言葉に移ります。帝京短期大学元教授の宍戸洲美氏は、「いやだ」「そういうことはやめて」と、子ども自身の言葉で相手に伝えられるようになることが望ましいと述べています。親が結論を出す代わりに、「お父さんならこうやって乗り越えるかな」とヒントだけ渡す。上の子が下の子に一方的に手を上げる場面だけは、暴力として止めます。

きょうだいゲンカで育つのは、我慢する力ではなく、相手の言い分を聞いて落としどころを探る交渉力です。親が審判を降りた分だけ、その練習の回数が子どもに戻ってきます。

***

毎回うまくいかなくて構いません。次にケンカが始まったら、駆けつける前に一度だけ、「何があったの?」から入ってみてください。判決を出さずに、2人の話を順番に聞く。それだけで、交渉のテーブルは子どもたちのものになります。

よくある質問(FAQ)

Q. 下の子がまだ1歳で、上の子が3歳です。「止めない」なんて無理ではないですか?
A.
力の差が大きい時期は、安全の確保が先です。「止めない」は「審判にならない」という意味で、噛む・目を突くなど怪我につながる行動はその場で止めてください。そのうえで、上の子には「取られて嫌だったんだね」と共感を先に置き、下の子には「『かして』だよ」と短くひとこと。この時期は、上の子の話を聞くことが対応の中心になります。

Q. 毎回同じ子が泣きます。それでも両方の話を聞くべきですか?
A.
はい。雨宮奈月氏が言うように、同じ境遇でもすぐ泣く子と泣けない子がいます。泣く回数は、どちらに非があるかを示しません。泣いている子を先になぐさめてから、「じゃあ次は〇〇の話を聞くね」と、泣いていない子の言い分も必ず聞いてください。順番があるとわかるだけで、両方の子が落ち着きやすくなります。

Q. すぐに手が出る子には、どう対応すればいいですか?
A.
増田修治氏の線引きでは、お互いに言い分があるのが「けんか」、一方的な攻撃が「暴力」です。理由もなく一方的に叩く行動はケンカではないので、止めてください。そのうえで、「取られて悔しくて叩いちゃったのかな?」と、気持ちを言葉にする手伝いをします。増田氏によると、暴言や暴力の裏には「自分の感情をうまく言葉にできない」という問題が隠れていることがあり、大人の言語化のサポートで感情をコントロールできるようになっていきます。

Q. 忙しくて、毎回両方の話を聞く余裕がありません。
A.
毎回でなくて構いません。手が離せないときは、「ごはんのあとで2人の話を聞くね」と時間を決めて伝え、その約束を守ってください。日本メンタルアップ支援機構代表理事の大野萌子氏は、「あとでね」とはぐらかすのではなく、はっきり約束してそれを守ることが、子どもの親への信頼につながると述べています。聞くのは1人1分でも十分です。

(参考)
*1 Diamond, A. (2013)|Executive functions. Annual Review of Psychology, 64, 135-168.