教育を考える/親の関わり 2025.8.26

「すごいね」は逆効果!? 専門家6人が明かす【子どもが伸びるほめ方|完全ガイド】

野口燈
「すごいね」は逆効果!? 専門家6人が明かす【子どもが伸びるほめ方|完全ガイド】

子どもは、親や周囲の大人からかけられる言葉に敏感です。特に「ほめられた経験」は、自己肯定感やチャレンジ精神の土台となります。しかし、ほめ方を間違えると「ほめられないと動けない」「結果だけを求める」子になってしまうことも。

大切なのは、子どもの個性や状況に合わせて、タイミングや言葉を工夫することです。この記事では、教育や心理学の専門家6名の知見をもとに、自己肯定感を育み、将来の自立につながるほめ方のコツを解説します。

才能ではなく「努力と過程」をほめる【本山勝寛氏】

教育イノベーターの本山勝寛氏は、子どもをほめるときに「才能やセンス」ではなく「努力や過程」に焦点を当てるべきだと主張します。「頭がいいね」「運動神経がいいね」といった才能ベースのほめ方は、一見励みになるようでも、子どもに「できない自分はダメ」という固定観念を植えつけるリスクがあるため注意が必要です。

代わりに「毎日練習していたね」「諦めずに工夫していたのがよかったよ」と、行動や思考のプロセスを具体的に言葉にしましょう。これにより、子どもは「頑張れば成長できる」と何事も前向きに取り組うようになります。

本山氏はまた、過程をほめることで「結果が出なかったときにも価値を見いだせる」点も指摘します。結果依存型のほめは短期的なモチベーションにはなりますが、長期的には挑戦を避ける傾向を生むことがあるため、子どもの将来にとってどちらがよいかは明らかですね。努力や工夫を日常的に評価することで、子どもは失敗も学びとして受け入れ、挑戦を続けられるようになるのです。

【子どもをほめるときのポイント】

  • 才能ではなく行動や工夫を具体的に認める
  • 成果が出なくても努力に価値を見いだす
  • 成長は「努力の積み重ね」であることを伝える

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できたことより「存在そのもの」を認める【石川尚子氏】

コーチングの専門家であるの石川尚子氏は、子どもをほめる際には「何ができたか」という評価だけでなく、「そこにいてくれること」そのものを認める姿勢が大切だと説きます。

「あなたがいてくれるだけで嬉しい」「一緒に過ごせて幸せ」という言葉は、結果や能力に依存しない自己肯定感を育みます。これにより、子どもは「条件付きの愛情」ではなく「無条件の承認」を感じることができるのです。

石川氏は、特に結果や競争のプレッシャーが強い環境にいる子ほど、この存在承認が必要だと指摘します。成果をほめることも大切ですが、それだけでは「成果がなければ価値がない」という誤解を招きかねません。それよりも日常のなかで、何気ない瞬間に存在そのものを肯定する言葉をかけ続けてあげれば、子どもは安心感と自信をもって新たな挑戦に臨めるようになるでしょう。

【子どもをほめるときのポイント】

  • 成果や能力ではなく存在そのものを認める
  • 条件付きではない愛情を言葉にする
  • 何気ない日常で肯定的な言葉をかける

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「翌日」や「数日後」にほめる!【田中博史氏】

子どもをほめるとき、ついその場で「えらいね!」「よくできたね!」と口にしてしまいがちです。しかし筑波大学附属小学校元副校長の田中博史氏は、あえて少し時間を置くことが、“ほめの効果” を何倍にも高めると指摘します。

たとえば、叱ったあとに改善が見られた場合、その瞬間ではなく翌日や数日後に「この前のあの行動、よかったよ」と伝えてみましょう。それにより、子どもは「自分の努力をちゃんと見てくれていたんだ」という安心感を抱きます。

さらに、子どものいないところで、第三者に向けてほめる「間接ほめ」も効果的です。それを耳にした子どもは「親が自分を誇りに思ってくれている」と実感し、自信や自己肯定感が深まります。
重要なのは、子どもの行動や態度を観察し、ほめるべき場面を“貯金”しておくこと。その貯金をタイミングを見計らって渡すことで、ほめは単なる承認ではなく「成長の証」となるでしょう。

【子どもをほめるときのポイント】

  • ほめるまでの時間を意図的にあける
  • 第三者を通じてほめる「間接ほめ」を取り入れる
  • 変化や成長を観察し、ベストタイミングで言葉にする

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「ほめすぎ」に注意する【篠原菊紀氏】

脳科学者の篠原菊紀氏は、ほめるときの「距離感」と「タイミング」が子どもの心への響き方を大きく左右すると述べます。篠原氏によると、近すぎる距離で頻繁にほめすぎると、子どもはそれを当たり前と感じ、効果が薄れてしまうことがあるのだそう。

篠原氏は、日常会話のなかでさりげなくほめることをすすめます。たとえば、家事をしている横で「さっき、妹の遊び相手をしてくれていたね。ありがとう」と何気なく伝えると、子どもは過度なプレッシャーを感じずに受け止められます

また、ほめるタイミングは「行動直後だけ」とは限りません。数時間後や翌日に「昨日のあの気配り、嬉しかったよ」と振り返る形で伝えると、記憶のなかでよい行動が定着しやすくなります。距離感とタイミングを少し意識することで、ほめ言葉は子どもの心に自然に残り、自発的な行動の継続にもつながっていくでしょう。

【子どもをほめるときのポイント】

  • ほめすぎはNG。適度な頻度でほめることを意識して
  • 日常会話のなかでさりげなく、自然にほめる
  • 行動直後だけでなく時間を置いてほめる

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その子にピッタリのほめ方がある【稲場真由美氏】

“子どもの性格やタイプに合わせたほめ方” の重要性を説くのは、人間関係研究家の稲場真由美氏です。全員に同じほめ言葉をかけても受け取り方や響き方が異なるというのは、兄弟を育てている親御さんや、複数の子どもと接する機会がある人なら実感しているのではないでしょうか。

たとえば、慎重で控えめなタイプの子には「あなたの丁寧な作業がみんなの役に立っているよ」と具体的な価値を伝えるのが効果的です。一方、行動的でチャレンジ精神旺盛な子には「思い切って挑戦したね!」と勇気を認める言葉が響きます。

稲場氏がアドバイスするのは、日頃から子どもの反応や行動パターンを観察し、「何をほめられると嬉しそうか」を把握しておくこと。これにより、ほめ言葉が表面的なものではなく、本人にとって意味のあるメッセージになります。タイプ別にほめることで、子どもは自己理解を深め、「自分はこういう強みをもっている」という自信を育むきっかけにもなるでしょう。

【子どもをほめる時のポイント】

  • 子どもの性格や行動パターンを観察しておく
  • 慎重派なのか積極的なのかなど、タイプに合った言葉を選ぶ
  • ほめ言葉に具体性と本人らしさを盛り込む工夫を

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「ほめる」より「勇気づける」アドラー流声かけ【熊野英一氏】

株式会社子育て支援代表取締役の専門家・熊野英一氏は、「ほめる」よりも「勇気づけ」に重点を置くことが、子どもの真の成長につながると説きます。アドラー心理学に基づく「勇気づけ」とは、子どもが失敗や挫折をしても前を向けるよう、存在や努力を肯定する声かけのことです。

たとえば、子どもが試合でミスをして落ち込んでいるとき、単に「大丈夫だよ」「次は頑張ろうね」と励ますだけでは、子どもは状況を深く理解できません。熊野氏は、まず「最後まで諦めなかったね」「挑戦したこと自体が素晴らしいよ」と、行動そのものを認める言葉をかけることをすすめます。これにより、結果の善し悪しに左右されない自己肯定感が育まれるのです。

勇気づけは「短期的な成功」よりも「長期的な自信」を育てる効果があります。重要なのは、過保護な励ましではなく、子どもが自ら考え、立ち上がる力を引き出すこと。そのためにも、親が失敗や挑戦をポジティブに受け止める姿勢を見せることが欠かせません。子どもが困難に直面したときに、「挑戦してよかった!」と思える心の土台が築かれるのは、勇気づけの習慣がある家庭です。

【子どもをほめるときのポイント】

  • 失敗や挫折の後こそ行動や姿勢を認める
  • 結果ではなく挑戦そのものに価値を置く
  • 親が失敗をポジティブに捉える姿を見せる

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子どものほめ方05

よくある誤解と疑問を解消! 子どものほめ方Q&A集

Q1. 「すごい!」ばかりだと子どもは飽きませんか?

A. 同じ言葉を繰り返すと、子どもにとっては意味が薄れてしまいます。何がすごいのか具体的に伝えると効果的です。たとえば「最後まで諦めずにやったのがすごいね」のように、行動や努力のポイントを示しましょう。

Q2. できなかったときはほめないほうがいいですか?

A. 結果が出なくても、過程や努力をほめることは大切です。「毎日少しずつ練習していたね」「工夫してやっていたね」と声をかければ、挑戦を続ける意欲につながります。

Q3. 兄弟で差が出ないほめ方はありますか?

A. 比較は避け、それぞれの成長や得意分野を見つけてほめるのがコツです。「○○は説明がわかりやすいね」「△△は手先が器用だね」のように、個別の強みを言葉にしましょう。

Q4. 間違ったことをしたあとにほめてもいいですか?

A. 間違いを注意したあとでも、その後の改善や努力を見逃さずにほめて大丈夫です。「さっきのことをちゃんと直せたね」「気持ちを切り替えられたね」と、行動の変化を評価しましょう。

Q5. 日常的にほめると子どもが図に乗るのでは?

A. 過剰なおだては逆効果ですが、事実に基づいたほめ言葉は子どもの自己効力感を高めます。感情的なおだてではなく、「○○ができた」という具体的な行動を認める形なら安心です。

***
子どもをほめるときは、「がんばった過程」や「工夫した点」に目を向けることが大切です。ほめ言葉は、子どもの成長を後押しする “応援のエネルギー”。毎日のなかで意識的に取り入れて、子どもの未来につながる力を伸ばしていきましょう。

(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|自己肯定感がぐんぐん高まる最高の褒め方。「やればれきる」のマインドはこう育てる!
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「認める」ことが、子どもの健全な自己肯定感を育む第一歩
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもを「褒めて伸ばす」には、ときに親がずる賢くなることも必要!?
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「間違った褒め方」していませんか? 子どものやる気を維持させる「褒め方」メソッド」
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どものタイプ別・自己肯定感が本当に伸びる褒め言葉。「すごいね」だけじゃ響かない!?
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