教育を考える 2020.1.10

6~9歳は集中する時間が短い。「絶対的集中力」を育てる方法

編集部
6~9歳は集中する時間が短い。「絶対的集中力」を育てる方法

何かに一生懸命取り組んでいてもすぐに飽きてしまうわが子を見ては、「うちの子、ほかの子に比べて集中力がないような気がする……」と頭を悩ませている親御さんも多いのではないでしょうか。

今回は、集中力がある子とない子では、生活習慣や親の接し方に違いはあるの? 飽きっぽいわが子でも、集中力を身につけることはできるの? という疑問にお答えします!

集中できる時間はおよそ15分。短くても集中できれば問題ナシ!

そもそも集中力とはどのようなものなのでしょうか。

脳科学においては、年齢や学習の習熟度に関係なく、脳が集中力を持続できるのは “15分程度といわれています。ただし、脳科学者の篠原菊紀先生によると、いいことが起こる予感がすれば、どんな子どもでも集中力を発揮するそう。動物がエサを追いかけたら途中でやめないように、「いいことが起こりそう」と期待するだけでドーパミン神経系は活動し、集中力も高まるといいます。つまり、脳を集中した状態に導くには、ドーパミン神経系を活性化させる必要があるのです。

そのために必要なのが、「勉強するとほめられる」「宿題が終わればゲームができる」という報酬(ごほうび)や、「ここなら安心して勉強できる」という癒しの環境です。「うちの子、集中力がなくて……」と悩んでいるのなら、勉強する環境を整えたり、適度な報酬を与えたりすることを試してみてもいいかもしれません。

「子どもの集中力」について別の視点で解説するのは、全国で講演活動を行なっているスーパー保育士の早坂一郎先生です。早坂先生によると、親から見て「集中力がない、飽きっぽい」と感じる行動が多くても、必要以上に心配するべきではないとのこと。

たとえば、「ライオンを見たい!」という子を動物園に連れていったところ、10秒ほどライオンを見て違う動物を見ようとするわが子に対して、「え? あんなに見たがっていたのに?」とがっかりした経験がある人も多いはず。しかし早坂先生は、飽きっぽいのではなく、この時期(6~9歳くらい)の子は、短時間だけでも満足するのですと指摘しています。子どもは興味をもったものには必ず集中するため、たとえ集中する時間が短かったとしても、確実に集中力は養われているそうです。

子どもの集中力をつける02

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子どもの集中力がなくなる原因は親の声かけ!?

そうはいっても、ほかの子に比べて気が散りやすく、集中が持続しないわが子が心配……という親御さんも多いはず。ここでは、子どもの集中力がなくなる原因について考えていきましょう。

脳科学者の西剛志先生は、「子どものうちは集中力を司る脳の前頭前野という部分が未発達なので、子どもの集中力はなくて当たり前としながらも、電車好きの子が飽きずにずっと電車を眺め続けるなど、好きなことに対してものすごい集中力を発揮する子がいることも否定していません。

このように、前頭前野が未発達な子どもでも自分の好きなことならしっかり集中できることから、西先生は好きなことに集中するのが、集中力を育むのにもっとも良いトレーニングになると述べています。さらに、子どもの集中力を途切れさせているのは、むしろ親の声かけが関係しているとも指摘しています。

たとえば、せっかく集中して何かに取り組んでいるのに、親が「おもしろそうだね」と声をかけることで、その都度子どもの集中力は遮断されるそう。『子どもの成績を決める「習慣教育」』(PHP研究所)の著者である今村暁氏も同様に、「子どもの集中力を育てたいと願うなら、何かに没頭しているときは話しかけないことです。テレビやゲームであっても熱中しているなと思ったら、放っておいたほうがいいのです。集中力を養うことこそ最も大事なことなのです」と述べています。

子どもが黙りこくっていると「わからないのかな?」と気になるかもしれませんが、よかれと思って声をかけても逆効果になることもあるため、子どもが集中していたらそっと見守ってあげましょう。今こそわが子の集中力が養われているんだと信じて、手助けしないことが大切です。

ほかにも、親の声かけが子どもの集中力を低下させる例として、教育評論家の親野智可等先生はあなたは集中力がない。もっと集中しなきゃダメでしょと叱ることを挙げています。親から「集中力がない」と言われ続けることで、子どもは「自分は集中力がないんだ」と思い込みます。そしてそう思い込むことで、実際に集中力が失われていくというのです。子ども自身が「自分は集中力がある」と思えるような前向きな言葉がけを心がけるといいですね。

子どもの集中力をつける03

主体的に遊ぶ・メリハリをつける・余計なものを視界に入れない

次に、集中力をつけるための生活習慣について考えていきましょう。帝京短期大学教授の宍戸洲美先生は、前提としておなかが空いている、眠い、身体が疲れている、といった状況では、集中するどころかやる気も出ません」と指摘します。まずは規則正しい生活習慣を身につけること。そのうえで、集中できる環境づくりに着目していきます。

集中力と聞くと「学習への集中力」をイメージしがちですが、宍戸先生は夢中になってひとつのことに没頭できる力こそが集中力だといいます。しかし、その“夢中になれるもの”を見つけられない子どもが増えているらしいのです。

理由のひとつとして考えられるのが、子どもが主体的に遊ぶ環境が減っていること。宍戸先生は、「常に大人が遊びを支配していたり、禁止事項が多かったりすると、子どもは主体性を出せずに、自分が何をしていいのかわからなくなってしまう」と危惧しています。子どもの集中力を高めるにも、自分がやってみたいことに自由に挑戦できる環境を整えてあげましょう。

前出の篠原菊紀先生は、「何かに集中するということは、それ以外の時間とのメリハリをつけること」だと述べています。そして、こうした頭の切り替え能力は、遊びでも鍛えられるらしいのです。じっと座って手を動かすだけでも集中力は鍛えられるので、5歳くらいまでなら、迷路や間違い探しなどのゲームを楽しむのがおすすめです。またテレビゲームも、禁止するのではなく「集中してゲームをする」「休憩する」というメリハリを繰り返すことで集中力が身につきます。

『大人になってこまらない マンガで身につく自分コントロール』(金の星社)の著者で作業療法士の菅原洋平さんは、目から入ってくる誘惑の情報を振り切るのは、子どもにとって大きなストレスになるといいます。気になるものが視界に入ると途端に集中力が途切れてしまうのは、大人も同じですね。

菅原さんは、勉強中に机の上に複数の教材を置いたり、机の上のビニール製のシートの下にプリントなどを入れておいたりすると、余計な情報が脳に入ってくるので避けるべきだと説いています。今取り組んでいる教材以外に、ほかにもやらなければならないことが目に入ると、精神的な負担になり集中力を下げてしまうため、極力余計なものが目に入らないようにしてあげるといいでしょう。

子どもの集中力をつける04

好きなことにのめり込む「絶対的集中力」を育てよう!

これまでお伝えしてきたように、「集中力」とはなにも学習の場面だけを指しているわけではありません。進学塾VAMOSの代表・富永雄輔先生は、「親が考える『集中力』は、“机に向かってじっと勉強をする” というイメージが強いため、落ち着きがないわが子を見て『集中力がない!』と思うのでは?」と疑問を呈しています。

しかし、どんなに落ち着きがないように見える子でも、大好きなゲームやスポーツ、遊びなどには驚くべき集中力を発揮していることも。富永先生は、たとえゲームでも漫画でも自ら好きなことに没頭できる時間がどれだけあるかが大切だと説きます。

なぜなら、好きなことにのめり込む経験を多く積むほど、集中できる時間が延び、絶対的集中力として定着するから。そして絶対的集中力が身につけば、勉強などにも転化できます。つまり、今はまだ勉強以外のことでしか集中力を発揮できていなくても、いずれは勉強の場面でも発揮できる集中力の基礎を築けているということ。

前出の親野智可等先生によると、「自分には集中力がある」と信じている子どもほど、好きではないことや苦手なことをしているときも、集中力があるから、がんばれるはずだという気持ちが出てくるそう。まずはスポーツでも遊びでも、お子さんが「これが好き!」「やっていて楽しい!」と思えるものに集中して取り組める環境を作ってあげるといいでしょう。

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西剛志先生はインタビューで、「集中力がなく飽きっぽい子どもの中には、単純に頭がいいという可能性もある」と述べています。つまり、おもちゃにすぐ飽きるのも、頭がいいためにそのおもちゃでの遊び方をすぐに学習してしまうから、とも考えられるとのこと。そう考えると、「集中力がある・ない」ことに一喜一憂して悩む必要はないのかもしれませんね。

(参考)
洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』, 洋泉社.
JTBのMOOK(2019),『未来に役立つ8つの力が育つ週末体験あそび』,JTBパブリッシング.
Study Hacker こどもまなび☆ラボ|集中力がない、聞き分けがない、内気。子どもの性格の「困った」はどうする?
プレジデントムック(2019),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2020完全保存版』, プレジデント社.
ベネッセ教育情報サイト|子どもに集中力をつけるには?[教えて!親野先生]
Study Hacker こどもまなび☆ラボ|まなびの保健だより11月号|子どもの脳が集中力を発揮するメカニズム。脳がホッとする時間も必要です
洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』, 洋泉社.