教育を考える 2020.10.17

子供の勉強嫌いは親のせい? 「勉強嫌いの原因」と「勉強嫌いを克服する方法」を教えます

[PR] 編集部
子供の勉強嫌いは親のせい? 「勉強嫌いの原因」と「勉強嫌いを克服する方法」を教えます

「子供が勉強嫌い」「小学生になったのに全然勉強しなくて困っている」「うちの子はいつになったら勉強してくれるのか……」という悩みをもつ親御さまは少なくないはず。勉強しない子供にイライラするのも、「勉強しなさい!」と子供を叱り続けるのも、親としてつらいですよね。

この記事では、子供が勉強嫌いになってしまった原因や、勉強嫌いを克服する方法について説明しています。【最終更新日:2022年3月4日】

1. 「勉強嫌い」と「勉強好き」、なぜ分かれる?

東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学びに関する親子調査2015-2016」によると、「学習意欲(勉強の好き嫌い)」についての質問に対し、小学生の3割が「勉強が嫌い」と答えています。そして中学生になると、「勉強が嫌い」と答えた子どもの割合は5割以上に。年齢が上がるごとに、多くの子どもたちが「勉強嫌い」になっていくのです。なんだ、うちの子だけじゃなかった……と、少しほっとしたのではないでしょうか。

しかし、勉強嫌いな子供が増えていく一方で、勉強好きになる子供も一定数います。宇宙、元素、経済、歴史、芸術などをテーマにした独自の授業スタイルが評判となり、全国から入塾希望者が殺到している「探究学舎」代表の宝槻泰伸氏は、「勉強が嫌いな子」と「勉強が好きな子」の分岐点について以下のように言っています。

「勉強が嫌いな子」も「勉強が好きな子」ももともといません。
「嫌いにする勉強」と「好きにする勉強」があるだけです。

(引用元:宝槻泰伸(2015),『勉強嫌いほどハマる勉強法』, PHP研究所.)

どうやら、勉強嫌いな子どもは、「嫌いにする勉強」が原因で勉強が嫌いになってしまうようです。宝槻氏は、この「嫌いにする勉強」の内容について、勉強法のほかに、「親の声かけ」や「親の勉強に対するイメージ」なども含まれると言います。次項では「子供が勉強嫌いになる原因」をひとつずつ説明していきますね。

子供の勉強嫌いは親のせい?2

2. 子供が勉強嫌いになる原因

子供が勉強嫌いになる原因はいくつかあります。その主な原因は、「勉強がわからないから」「親が勉強を強制するから」「ほかの子供と比べられるから」。詳しく見てみましょう。

原因1:勉強がわからないから

子供が勉強を嫌いな理由のひとつは、ずばり「勉強がわからないから」。学習内容が理解できていないので、テストの点数もよいとは言えないでしょう。宿題に取りかかったとしても、わからないから進まない。そのうちに「早く宿題終わらせちゃいなさい」などと親に怒られる。子供はこうして勉強嫌いのスパイラルに陥ってしまうのです。

算数に特化した学習塾「RISU」の代表・今木智隆氏は、「わからない」を早めにつぶしていかないと、学年が上がるにつれてどんどんわからなくなってしまうと言っています。小学3年生ではかけ算の筆算を習いますが、小学2年生で習った「九九」を覚えきれていない子は、かけ算の筆算でつまずいてしまうのです。

しかし、この「わからない」を克服するのは子どもにとって至難の業。ウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員で、中学受験のプロである小川大介氏は、「わからないところを自分から勉強し、弱点克服できる子どもはほとんどいない」と話しています。小学校低学年の子どもであれば、親のサポートはまだまだ必要なのです。「わからないから勉強なんか嫌いだ」となる前に、「わからない」をつぶしていきたいですね。

原因2:親が勉強を強制するから

子どもの頃、親に「早く宿題やりなさい!」などと言われて、「いまやろうと思ってたのに、なんだかやる気が失せた」という経験はありませんか? じつはこの気持ちのゆれ、心理学で説明ができます。人間は「自分の行動や選択は自分自身で決めたい」という欲求をもっているので、誰かに「態度や行動の自由」を脅かされたり奪われたりすると、自由を回復しようとするのです。心理学では、この状態を「心理的リアクタンス」と言います。「〇〇しなさい」と言われると「〇〇したくなくなる」のは、この心理的リアクタンスが機能しているからです。

そしてもうひとつ、親にとって耳の痛い事実が――。社会心理学が専門の上野徳美教授(大分大学医学部)の研究では、「(メッセージの)送り手が母親で、高圧的な説得をしたとき、すなわち、自由への脅威が大きいとき、心理的リアクタンスが最も強く喚起されること」がわかっています。母親が「勉強しなさい」と強く言えば言うほど、子どもは「絶対にやるもんか!」と抵抗する気持ちをもってしまうのですね。

原因3:ほかの子供と比べられるから

「〇〇くんはもう九九を覚えたんだって」なんて、わが子の前で言っていませんか? 『12歳までに勉強ぐせをつけるお母さんの習慣』の著者で、こどもみらい塾®・塾長の楠本佳子氏によると、子どもが一番嫌いな言葉は「人と比べられる言葉」なのだそう。自分なりに頑張っているときに誰かと比較されるのは、大人の私たちだってつらいと思いませんか。比べる言葉は子供のやる気をくじいてしまいます。

また、きょうだいで比べるのもNGです。教育評論家の親野智可等氏は、「きょうだいを比べて叱るのは絶対にやめるべき」と強く主張しています。「〇〇ちゃんは100点なのに、お兄ちゃんは70点なのね」ときょうだいを比べていると、「お母さんは、僕より(勉強のできる)妹のほうが好きなのかもしれない……」と、親の愛情を疑うようになってしまうのです。もしすでに勉強嫌いの子であれば、「勉強なんて大大大嫌い!」となってしまうかもしれません。

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3. 勉強嫌いを克服する方法【勉強のやり方を工夫する】

勉強嫌いを克服するために、まず勉強のやり方を工夫してみましょう。前出の宝槻氏が言う「嫌いにする勉強」を、「好きにする勉強」に少しずつシフトしていく方法をいくつか紹介します。

「1日1問」「1日1分」の勉強からスタートしてみる

いままで宿題以外に勉強をしてこなかった子であれば、「1日プリント1枚」の家庭学習から始めてみましょう。1枚でも多すぎるようなら、5問でもいいですし、1問からでもOKです! 「教育の鉄人」とも呼ばれるカリスマ教師・杉渕鐵良氏は、「学習習慣がついたら増やせばいいのだから、1日1問、1日1分からのスタートでいい」と話します。子供に「もっとやりたい!」と思わせることが目的なので、子供がノッてきたあたりで勉強を終了させましょう。

「いつ勉強するか」を子供に決めさせる

「いつ勉強するか」は子供自身に決めさせましょう。人間は「自分で決めたい」という欲求をもっています。だからこそ、自分で決めたことには自発的に取り組めるのです。「自分で学習時間帯を決めた子どもは学習意欲が向上する」と言うのは、前出の親野氏。「いつになったら勉強するのよ!」といった詰問口調ではなく、「そういえば、今日は何時から勉強するんだっけ?」などの穏やかな声かけがよいでしょう。1週間の学習時間を前もって計画するのも効果的ですよ。

1回5分の細切れ学習で集中力をキープ!

すでに1日15分以上勉強を継続できるお子さまであれば、細切れ学習をおすすめします。杉渕氏いわく「子供の集中力は5分くらいしかもたない」とのこと。ですから、朝に5分、学校から帰ってきて5分、そして夕飯後に5分など、勉強時間を細切れにすることで、高い集中力をキープすることが可能です。漢字練習をするにしても計算問題を解くにしても、「5分後には終わる」というゴールが見えると、子どもはいつも以上に集中できるのだそうですよ。

勉強開始前の「ルーティン」をつくる

なかなか勉強を開始することができないお子さまは、「勉強前のルーティン」を決めてみてはいかがでしょう。元プロ野球選手・イチロー氏のバッティング前の動作は有名ですよね。ルーティンは一種の儀式のようなもの。脳科学によると、ルーティンには「面倒だな」「やめようかな」といった雑念を払う効果があります。机を拭く、深呼吸する、「やるぞ!」と声を出すなどのルーティンで、意識を勉強に向けましょう。

ドリルは7割正解できるものを選ぶ

難しい問題ばかりだと勉強が嫌になってしまいます。かといって、あまりに簡単すぎる問題ばかりでは、子供のやる気が出ません。家庭学習には、7割くらい正解できるレベルのドリルがおすすめです。また弱点克服のための勉強ならば、無理に「応用問題」まで解かず、「標準問題」で終わりにするのも手です。やる気の継続を優先させましょう。以下、お子さまの苦手克服におすすめのドリルを3冊紹介します。

『陰山ドリル漢字 小学1年生』

音読→なぞり書き→読みがな→漢字の成り立ちの解説→難しい漢字の書き取り(2回)→全漢字の書き取り(2回)で漢字を練習します。丁寧すぎるほどのスモールステップドリルなので、漢字が苦手なお子さまでも無理なく学習することができますよ。

『ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集[小学生版ベーシック]』

主な対象は小学1年生~3年生となっていますが、国語が苦手な中学生・高校生の購入者も多いようです。「言いかえる力」「くらべる力」「たどる力」という3つの力を軸に、国語力を鍛えていきます。「国語のテストの点数が上がった!」という声が多いドリルです。

『いっきに極める算数1 1~3年のたし算・ひき算』

学年を超えて「たし算」「ひき算」が一気に学べるので、先取り学習はもちろんのこと、復習にもかなり効果的です。つまずきの原因を徹底的につぶしていきましょう。

「わからない」の原因を見つける

お子さまの「わからない」の原因はどこにあるのでしょう? 算数であれば、小学生が一番苦手な単元は「位」です。『10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題』には、子供への教え方アドバイスが載っています。また、『「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法』に書いてあるように、文章題克服には算数検定の問題集がおすすめです。

とはいえ、子供の「わからない」に毎回親が対応するのは大変です。通信教育のタブレット学習を利用してみるのもひとつの手。進研ゼミ 小学講座のチャレンジタッチは、「間違えた直後に解き直し」「時間を空けて、忘れた頃に解き直し」と、同じ問題を時間差で2回解き直す「Wとき直しシステム」が搭載。二段階の解き直しシステムで、「わかったつもり」をなくし、「わからない」を確実につぶしていくことができます。

4. 勉強嫌いを克服する方法【親の意識・対応を変える】

子供の勉強嫌いを克服するには、もうひとつ大切なアプローチがあります。それは、親の意識と対応を変えることです。親の対応を変えるだけで、子供は劇的に変わります。子供によっては、勉強のやり方を工夫するよりも効果が高いかもしれません。

子供が勉強したらほめる!

脳科学者の篠原菊紀氏によると、勉強嫌いな子に「勉強したらほめる」を続けると、勉強好きになるのだそう。

勉強が苦手なお子さんは、勉強という行為の中で「できた!」「終わった!」「へー面白い」「なるほど」といった快楽が得られにくいお子さんです。
そういうお子さんでも、「ほめられた時」はたいがい「ワクワク」「ドキドキ」の快が生じます。

(引用元:篠原菊紀(2018),『子供が勉強にハマる脳の作り方』, フォレスト出版.)

人間は報酬を得ることでドーパミン神経系が働き、快楽を感じるのだそう。勉強をする子供にとっての報酬とは「親からほめられること」ですよね。すると、子供の脳では以下のようなことが起こります。

★勉強すると親にほめられる

ドーパミン神経系が働き、脳が快楽を感じる

「勉強をすればほめられるのでは?」と脳が予測

快楽を得たいがために勉強をする

★勉強すると親にほめられる

「勉強しようかな」と考えただけで、脳が反応してしまう

☆気がついたら勉強が好きになっている

ただし、ほめ方に注意点があります。「100点なんてすごいね」「頭がいいね」など、結果や素質をほめるのはNG。子供の勉強にまつわるすべての行動をほめましょう。行動をほめることで、子供の脳が「行動=快楽」と認識するからです。

「20分もイスに座っていたね」
「10分も勉強したね!」
「よく頑張っているね」
「問題を5問も解いたんだね」

また篠原氏は、「子どもが勉強に慣れてきたら、親が気が向いたときにほめればよい」と言っています。「勉強したら必ずほめてもらえる」が当たり前になってしまうと、ほめ効果のありがたみがなくなってしまうのだそう。ほめる頻度は、10回に5~7回がベストです。

子供の勉強嫌いは親のせい?4

「勉強しなさい!」を封印する

前述したように、親が「勉強しなさい」と言えば言うほど、子どもの心理的リアクタンスが機能し「やりたくない」と抵抗します。とはいえ、親が「勉強しなさい」と言わなくなったら、いよいよ子どもは勉強しなくなるのでは……? いいえ、じつは逆なのです。3,500人以上の生徒への指導経験がある教育評論家・石田勝紀氏いわく、「勉強に関する声かけをしなければ、子どもは自分から勉強に取り組むようになる」とのこと。

「そんなことをしたら一切勉強もせず、成績は地に落ちてしまう」と思われる方も多いかもしれません。しかし、30年以上塾や学校の経営に携わってきた筆者の経験上、多くの場合はそうなりません。むしろ成績が上がったと、驚きの声をたくさんいただいてきました。直接そうした結果を報告いただいただけでも数十人以上に上ります。

(引用元:東洋経済オンライン|「口うるさい親」が子どもの成績を下げる”必然”

親が子供に対して「勉強しなさい」と言うときは、無意識に上から目線になっているのだそう。強制的な言葉で命令しても、子供が動かないことは、もうみなさんご存じでしょう。

石田氏は、勉強について口を出すよりも「雑談」をすすめています。親子対等な会話ができる雑談を通じて、親子の信頼関係をつくることが大切です。その信頼関係さえあれば、いざ勉強で困ったときに「お母さん(お父さん)、算数の問題で悩んでいるんだけど……」などと子供から相談してくれるようになりますよ。お子さまの勉強嫌いを克服するために、「勉強しなさい」は今日で封印してしまいましょう。石田氏は、親が「勉強しなさい」を封印すると、1ヶ月ほどで効果が出てくると話していますよ。

***
「勉強なんか大嫌い!」と子供が言い出す前に、なんとかしたいものですよね。今回は、「子供が勉強嫌いになる原因」と「勉強嫌いを克服する方法」をお伝えしました。1、2ヶ月後――「勉強? 別に嫌いじゃないよ!」と、お子さまが感じてくれますように。

(参考)
ベネッセ教育綜合研究所|子どもの生活と学びに関する親子調査20152016
宝槻泰伸(2015),『勉強嫌いほどハマる勉強法』, PHP研究所.
J-stage|子どもの学習意欲に関する実証的研究
CORE|自由への脅威と送り手の特性がリアクタンス現象に及ぼす効果ならびにその持続性
CiNii|きょうだいのストレスに関する基礎的研究
東洋経済オンライン|他人と「比べる病」が親子にもたらす深刻な影
ぎゅってweb|お母さんから言われて一番嫌いな言葉は何?
今木智隆(2019),『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』, 文響社.
プレジデントムック(2018), 『小学生からの知育大百科』, プレジデント社.
AERA with Kids 18夏号(2018), 『自分で考える・動ける子になる! 今必要なのは「自発力」』, 朝日新聞出版.
石川尚子(2019), 『言葉ひとつで子どもが変わる』, 柘植書房新社.
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「間違った褒め方」していませんか? 子どものやる気を維持させる「褒め方」メソッド
篠原菊紀(2018),『子供が勉強にハマる脳の作り方』, フォレスト出版.
東洋経済オンライン|「口うるさい親」が子どもの成績を下げる”必然”