あたまを使う/サイエンス 2020.4.16

10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題

10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題

小学生の苦手教科に挙げられることも多い算数ですが、その苦手意識の強さは単元によって異なります。はたして、どんな単元を子どもたちはとくに苦手としているのでしょうか。算数に特化した学習塾「RISU」の代表である今木智隆先生が収集した10億件ものデータから、小学生がとくに苦手としている単元とその例題を教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

親の態度と発言が子どもに苦手意識を植えつける

わたしは2019年に10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方(文響社)という著書を出しました。その本を読んだ読者のブックレビューには、「こんな問題は簡単です」というものもありますが、それはあたりまえのことです。小学生向けの問題を大人が間違っていては、それこそ問題です。でも、大人には簡単に思えても、多くの子どもたちが間違う問題があるのです。たとえば、以下の問題もそういうもののひとつです。

今木智隆先生インタビュー_多くの子どもが苦手な算数の単元02

大人なら、すぐにどちらも「6cm」だとわかるでしょう。ところが、子どもたちが学校の授業で「円」の単元を習うときには、円はひとつしか出てきません。こういうふうに複数の円が組み合わさった問題を見たことがないために、子どもは戸惑うわけです。

30年も40年も生きている大人からすれば簡単に思えることも、8歳や9歳の子どもにとってはそうではありません。ですから、こういう問題に取り組む子どもに対して、「どうしてこれくらいの問題ができないの?」なんていうことはご法度です。そういう親の態度や言葉が、算数に対する苦手意識を子どもに持たせかねません

今木智隆先生インタビュー_多くの子どもが苦手な算数の単元03

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小学生が苦手な単元として頭ひとつ抜けている「位」

ここから、多くの小学生が苦手としている単元とその例題をふたつ取り上げます。ひとつ目は「位」で、ふたつ目が「時計」です。まず位ですが、わたしが収集した10億件のデータからも、小学生が苦手としている点で頭ひとつ抜けています。では、位の例題を紹介しましょう。

今木智隆先生インタビュー_多くの子どもが苦手な算数の単元04

「あ」の問題の答えは「2100」ですが、多くの子どもが「2001」と答えます。小学生は普段使っている定規を見て、目盛りは1、2、3、4……と進んでいくものだと思っている。そのため、この問題でもひとつの目盛りが1だと思ってしまうのです。

ひとつの目盛りが1であるというのは、習慣からくる思い込みです。だとしたら、このようなちょっと立ち止まってきちんと考えなければならない変則的な問題を経験させてあげることが大切です。そうして、思い込みをなくしてあげれば、その後は問題なく解けるようになるでしょう。そして、そういったしっかりと考えなければならない問題こそが良問といえます。

「時計」を苦手としないためにはアナログ時計を使う

続いては、「時計」の例題です。

今木智隆先生インタビュー_多くの子どもが苦手な算数の単元05

答えは「7時間15分」ですね。それこそ大人には解けて当然の問題ですが、これが小学生には本当に難しい。午前・午後の概念や、1分は60秒なのに時間は12や24だとか、24時間たったらゼロになるなど、子どもにとっては複雑なことのオンパレード。正直、この単元がなぜ低学年のカリキュラムにあるのかと疑問を持つくらいです。

ただ、もし子どもが中学受験をしないのならば、時計に関してはスルーしてしまっても問題ありません。というのも、小4以降の算数にも中学以降の数学にも時計の単元は一切ないからです。大人になれば誰もが時計を読めるようになりますから、なんの問題もありません。

一方、子どもが中学受験をするというなら、きちんと勉強する必要があります。中学受験では時計の問題は頻繁に登場します。なぜなら、「○時○分のときの長針と短針のあいだの角度は?」「1年のうちで長針と短針は何回交わるか」といった嫌がらせのような問題をつくりやすいからです。

では、苦手意識を払拭するためにはどうすればいいでしょうか? そのためには、つねにアナログ時計に触れることをおすすめします。いまは子どもたちも多くがスマホを持っていますから、日常的に目にする時計はほとんどがデジタル時計でしょう。でも、算数の問題では必ず丸いアナログ時計が使われる。そうでないと、先に例に挙げたような受験問題がつくれないからです。

だからこそ、日常的にアナログ時計を使うべきです。そうすれば、「長針が30分を指しているときには、短針は文字盤の数字のあいだにある」といったことも自然に理解するようになる。実物があるのに、「勉強だから」と紙のうえだけで学ぼうとするのはおかしなことですよね? リアルの体験から得た知識や体感ほど強いものはありません

今木智隆先生インタビュー_多くの子どもが苦手な算数の単元06

10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方
今木智隆 著/文響社(2019)
今木智隆先生著書

■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧
第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方
第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない
第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題
第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法

【プロフィール】
今木智隆(いまき・ともたか)
RISU Japan株式会社代表取締役。京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、ユーザー行動調査・デジタルマーケティング専門特化型コンサルティングファームの株式会社beBitに入社。金融、消費財、小売流通領域クライアント等にコンサルティングサービスを提供し、2012年より同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した小学生の算数の学習教材で、延べ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーのハイレベルなアフタースクール等からも算数やAIの基礎を学びたいとオファーが殺到している。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。