「ごほうびで釣るのはよくないって聞くけど」
「ほめても響かない」
「お兄ちゃんには効いた方法が、下の子には効かない」
「90点とったらゲームの時間を増やそう」と声をかけたら、上の子は張り切ったのに、下の子には「別にいらない」と返されてしまった。そんな経験はありませんか。
子どもの「やる気」は一本のスイッチではありません。何に反応して動き出すかという「やる気のタイプ」が、子どもによって違うと考えると、こうしたすれ違いの理由が見えてきます。
ベネッセ教育総合研究所の調査(2015年、対象は小学4年生〜中学2年生)では、内発的な動機づけが高く、ごほうびや罰による外的な動機づけが低い子どもの成績が、もっともよかったと報告されています。*1
また、心理学者のライアンとデシは、自律性・有能感・関係性という3つの欲求が満たされると、内発的なやる気が育ちやすいと論じています。*2
この知見をもとに編集部で整理したのが、4つの「やる気のタイプ」です。学術的な分類ではなく、編集上の目安です。
目次
「ごほうびで釣る」が効く子と、効かない子がいる理由
ごほうびのために動く「外発的動機づけ」と、好きだから動く「内発的動機づけ」の違いは、こどもまなびラボの子どもが「本当に褒めてほしいこと」。やる気スイッチをONにする言葉とはの記事でも紹介しています。*3
128の研究をまとめた分析では、興味をもって取り組んでいる活動に、事前に約束した物のごほうびをつけると内発的なやる気が下がりやすく、その傾向は大学生より子どもで強く見られました。*4
ほめ言葉も毎回だと「ほめられ慣れ」が起きるため、半分から7割くらいがちょうどいいといいます。(脳科学者・公立諏訪東京理科大学特任教授、篠原菊紀氏)*5 ごほうびもほめ言葉も、効くかどうかは「子どものタイプ」と「渡し方」しだいです。
🌟 ほめられたい子
「見てくれた」が原動力。具体的にほめられると動く
🏁 競いたい子
「勝ちたい」が原動力。記録やタイムで動き出す
🔍 知りたい子
「なんで?」が原動力。わかる過程を楽しむ
🤝 役に立ちたい子
「ありがとう」が原動力。誰かのためだと力が出る
こどもまなびラボの子どものタイプ別・自己肯定感が本当に伸びる褒め言葉。「すごいね」だけじゃ響かない!?の記事で紹介している「性格統計学」でも、タイプによって響くほめ言葉は変わると考えるとのこと。(人間関係研究家、稲場真由美氏)*6

8問で、わが子の「やる気のタイプ」を見つける
4つのタイプに2問ずつ、当てはまるものに印をつけてください。
1. 「ほめられたい」タイプを見る2問
🌟 【ほめられたい】
- □ できたものを「見て見て」と、真っ先に見せにくる
- □ ほめられなかった日は、次の日に同じことをやらない
2. 「競いたい」タイプを見る2問
🏁 【競いたい】
- □ 「何秒でできる?」「誰が先?」と言うと、急に本気になる
- □ 負けると悔しがるが、すぐに「もう一回」と言ってくる
3. 「知りたい」タイプを見る2問
🔍 【知りたい】
- □ 「なんで?」に答えると、さらに「なんで?」が返ってくる
- □ 好きなこと(虫、電車など)なら何時間でも続ける
4. 「役に立ちたい」タイプを見る2問
🤝 【役に立ちたい】
- □ 「自分でやりなさい」では動かないのに、「手伝ってくれる?」だと動く
- □ 「助かった」と言われると、頼んでいないことまでやってくれる
当てはまった数で、「メインのタイプ」と「サブのタイプ」を読む
タイプごとに、印のついた数を数えてください。
| そのタイプで当てはまった数 | 読み方 |
|---|---|
| ◎ 2つ | メインのタイプ。一番動きやすい入口 |
| ○ 1つ | サブのタイプ。場面によって効く |
| △ 0 | いまは入口になりにくいタイプ |
タイプは性格のラベルではなく、「この場面で、どこを押せば動き出すか」を知るための地図です。

タイプ別、効く声かけと逆効果になる声かけ
ほめられたい子には、「何が」を具体的に言う
「すごいね!」より、「洋服もたたんでくれたんだね」のように、見たものをそのまま言葉にすると届きやすくなります。
避けたいのは、能力そのものをほめる言葉です。小学5年生を対象にした実験では、「頭がいいね」と知能をほめられた子は、努力をほめられた子に比べ、難しい問題を避けやすく、失敗のあとに成績が落ちる傾向が見られました。*7 ほめる先は人ではなく、やったことに向けましょう。
競いたい子には、相手を「昨日の自分」にする
特定の人と比べると、競争心がその人に向き、勉強や競技に集中しにくくなると述べています。(NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事、菅原裕子氏)*8 競う相手は「昨日の自分」にしてあげてください。
知りたい子には、答えを渡さず、問いを返す
ハマる体験をした子は、知らないことを知る方法がわかっていて、勉強にもその力が生きると話しています。(脳医学者・東北大学加齢医学研究所教授、瀧靖之氏)*9 「なんで?」には「なんでだと思う?」と返し、本人が考える時間をつくると、やる気はさらに深まっていきます。
役に立ちたい子には、「えらいね」より「助かった」
ほめる行為には上下関係が前提にあるため、結果を評価するより、「うれしいよ、ありがとう!」と親の気持ちを伝えることが最高の勇気づけになると指摘しています。(株式会社子育て支援代表取締役、熊野英一氏)*10
ただ、ほめられてばかりいると、繊細な子ほど「本当にしたいこと」と「ほめられるからすること」の区別がつきにくくなるそうです。(医師・臨床心理士、田中茂樹氏)*11 感謝は伝えても、手柄は子どものものとして返してあげましょう。
ごほうびは「子どものタイプ」と「渡し方」で、効き方が変わる
ごほうびが入口になりやすいのは「ほめられたい子」と「競いたい子」です。シール1枚程度で充分で、ごほうびのあとに「やってみて、どうだった?」とひとこと添える方法も紹介されています。*12
ほめられてばかりで育つと、打たれ弱くなったり、頑張れなくなったりすると警鐘を鳴らしています。(臨床心理学者・MP人間科学研究所代表、榎本博明氏)*13 「100点とれてすごい」より「集中して勉強してたね」と、取り組んだことに言葉を向けてみてください。
タイプがわかれば、「響かない」の正体が見える
「響かない」のは、ほめ方が足りないからではなく、タイプに合わない声かけだったからかもしれません。親の声かけが下手だったわけではありません。
***
8問の結果を一文にしてみると、「やる気がない子」に見えていたわが子が、「別のところにスイッチがある子」に見えてきます。今週は、一番当てはまったタイプの「効く声かけ」を、ひとつだけ試してみてください。
FAQ(よくある質問)
Q. 何歳くらいの子どもから使えますか?
A. 幼児の後半から使えます。幼児は「役に立ちたい」「知りたい」の4問から見ると判断しやすくなります。
Q. 4つとも1つずつ当てはまって、メインのタイプが決まりません。
A. 一番困っている場面に絞って、もう一度見てください。それでも決まらなければ、「助かった」「ありがとう」から始めてみましょう。
Q. すでにごほうびで動く習慣がついています。やめたほうがいいですか?
A. 急にやめなくて大丈夫です。ごほうびのあとに「やってみて、どうだった?」と添えて、少しずつ減らしていきましょう。
Q. 「競いたい子」に、負けを経験させてもいいのでしょうか?
A. かまいません。「〇〇君に負けた」で終わらせず、「昨日の自分より何がよくなった?」と、比べる相手を自分に戻してあげましょう。
(参考)
*1 外山美樹 (2015)|研究レポート2「自律的な理由で勉強することが適応的である」. ベネッセ教育総合研究所「小中学生の学びに関する調査報告書」.
*2 Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000)|Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78.
*3 こどもまなびラボ|子どもが「本当に褒めてほしいこと」。やる気スイッチをONにする言葉とは
*4 Deci, E. L., Koestner, R., & Ryan, R. M. (1999)|A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation. Psychological Bulletin, 125(6), 627–668.
*5 こどもまなびラボ|自己肯定感は3歳・6歳・9歳・12歳で育て方が変わる。年齢別「効く声かけ」12選
*6 こどもまなびラボ|子どものタイプ別・自己肯定感が本当に伸びる褒め言葉。「すごいね」だけじゃ響かない!?
*7 Mueller, C. M., & Dweck, C. S. (1998)|Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance. Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33–52.
*8 こどもまなびラボ|子どもの「負け」をどう褒める? 成長スピードの速い子の親がしている2つのこと
*9 こどもまなびラボ|子どもの知的好奇心レベルを上げる親の特徴3つ。「没頭力」は幼少期に育つ!
*10 こどもまなびラボ|子育てでは“ほめないこと”が大切なわけ。アドラー流・子どもを「ほめずに勇気づける」方法
*11 こどもまなびラボ|「褒められ依存症」になってない? ズルをする・本番に弱くなる子どもたち
*12 こどもまなびラボ|「ごほうびで動いてもらう」育児、悪くないんです。あのひとことを足すだけで最強になる
*13 榎本博明 (2015)|『ほめると子どもはダメになる』, 新潮新書.









