教育を考える 2022.10.24

子どもの知的好奇心レベルを上げる親の特徴3つ。「没頭力」は幼少期に育つ!

編集部
子どもの知的好奇心レベルを上げる親の特徴3つ。「没頭力」は幼少期に育つ!

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小さいうちから「没頭力」を身につける重要性が注目されています。「熱中しているわが子に声をかけても、反応がないことが多い」「学校の成績はいまひとつだけど、好きなことに没頭しているときのわが子は輝いている!」など、お子さんはなにかに没頭することがありますか?

専門家によると、没頭力を伸ばすのに適している時期は幼児期~小学校低学年なのだとか。今回は、幼少期に伸ばしたい没頭力について詳しく解説していきます。

92%の東大生が幼少期に「没頭体験」をしている

「没頭力」について、東京大学名誉教授で前白梅学園大学学長の汐見稔幸氏は、「没頭体験があれば、たとえ失敗したり行き詰まったりしても、自分が本当にやりたいことを見つけたら、また没頭していくことができる」と話しています。没頭したことで得られる成果よりも、「没頭できた体験」こそがその後の人生に大きな影響を与えるようです。

脳医学者・瀧靖之氏が監修する書籍『東大脳の育て方』(主婦の友社)では、「幼い頃に打ち込んでいたものや熱中していたものはあった?」という問いに、92%もの東大生が「はい」と回答したこととあわせて、東大生による幼少期の没頭体験を紹介しています。

「夏休みになると毎朝4~5時に起きて一人で近くの林に虫とり。網を持って追いかけて、とった虫は家に持ち帰って図鑑で調べました。そのおかげで、何かを調べる集中力と体力、運動神経・反射神経もついた気がします」(農学部卒Kくん)
「時間も忘れて絵を描くことに没頭していました。いまはそれがプレゼンの図示などに役立っています」(医学部Kさん)
「ゲームが好きで、毎日のように友だちと競って、“ニンテンドウ64”をやっていました。1時間という制限時間があったので、そこでグッと集中して。それで試行錯誤すること、筋道立てて考えることを学んだ気がします」(理学系研究科Tくん)

(引用元:瀧靖之監修(2017),『東大脳の育て方』, 主婦の友社.)

ポイントは、幼少期に「時間も忘れて」「毎日のように」どっぷりと “ハマる” 体験が、その後の勉強や仕事にも活かされているという点です。瀧氏は書籍のなかで、熱中体験はまさに「東大生の一番の共通点」であり、「非常に知的好奇心のレベルが高いことのあらわれ」だと指摘します。

瀧氏によると、「熱中体験のある子は、国語や算数、理科といった教科であっても、知らないことを知るためにはどうすればいいか、どういう人に聞けばいいのかということをよくわかっている」のだそう。さらに大人になってからも、 “勉強・仕事” と “それ以外” という線引きをしないので、どんなこともおもしろがって突き詰めたくなると言います。このように、自分の好奇心に従って物事に没頭する経験こそが、やがては将来の勉強や仕事の成果につながっていくのです。

没頭力を育てる02

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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没頭力は幼少期に育てるべし!

次に、没頭力が育つ時期について考えてみましょう。

「脳が物事に集中するためには、神経伝達物質のひとつであるドーパミンの放出が欠かせない」と瀧氏。ドーパミンは快感や幸福感、やる気を生み出します。また、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)も集中力をサポートするのだそう。

これらのホルモンは、行動したことが報酬(=ごほうび)につながることがわかると分泌しやすいため、楽しいことや好きなことには高い集中力が発揮されるのです。さらに瀧氏は、好奇心が芽生えやすく楽しいと感じることが多いほどドーパミンが放出されて、前頭葉まで達し、脳を大いに刺激すると述べています。

この「脳を刺激する」ことが没頭力を育てるのに重要であると同時に、脳の発達時期に合わせて適切な刺激を与えれば、脳の働きをより効果的に伸ばすことができるのだそう。瀧氏の解説によれば、生まれてから2歳頃までは読み聞かせなど親子のふれあい、3~5歳は運動や音楽、8~10歳は語学、10歳以降は思考力を養ったり人とコミュニケーションをとったりと、脳の発達段階に応じてタイミングよく刺激を与えるのがいいとのことです。

脳は、その発達段階に合わせて  “脳のネットワーク”  と呼ばれるさまざまな道路がつくられます。刺激を受けるほどに道路の数は増えていきますが、ある段階になると使われない道路はどんどん壊され、よく使う道路はより強靭な道路に進化していきます。だからこそ、脳の発達がピークを迎えるまでに、より多くの刺激を脳に与えて道路をたくさんつくっておくことが重要なのだと瀧氏は指摘します。

そして、この “脳のネットワーク” をつくるときに一番重要なのが「好奇心」です。子ども自身から湧き出る好奇心があるからこそ、「もっと知りたい」「もっとやりたい」と物事を探究する熱中体験を生み出します。その結果、脳のネットワークをさらに広げ、脳をぐんぐんと伸ばす原動力になっていくのです。

瀧氏は、 幼児期~小学校低学年あたりまでに好奇心を刺激されるようなさまざまな経験をすることで、没頭力が伸びる素地が育まれると話していますよ。

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幼少期に没頭力をつけるために親ができること3つ

最後に、幼少期に没頭力をつけるために親ができることについて考えていきましょう。すぐに結果が表れるような即効性はありませんが、意識して日常生活を送ることで、しだいにお子さんの没頭力がアップしていくはずです。

1. 「没頭できる環境」を用意する

元帝京短期大学教授の宍戸洲美氏は、「子どもの集中力を高めるには、やってみたいことを自由に挑戦できる環境がとても大切」と述べています。具体的には、子どもが熱中しているときは極力邪魔しない」「途中でやめさせようとしないことを意識するといいようです。

「興味の方向は子どもによって違うが、没頭できるような世界に上手に導いてやれば、親が放っておいてもどんどん伸びていく」と、学習塾・花まる学習会主宰の高濱正伸氏が述べるように、親はできるだけ手や口を出さずに見守ってあげましょう。

物事に没頭している、いわゆる「ゾーンに入っている」状態は、効率よく学ぶチャンスなので、中断させずに放っておきます。もし大事な予定があったり、食事や寝る時間が極端にずれたりしそうなら、「『よく描けているね』とほめてから、『ご飯を食べてから続きをやろう』と言うだけでも違う」という、教育評論家の親野智可等氏のアドバイスを参考にしてください。

親野氏によると、「好きなもの、合うものが見つかったら、まずは『集中していること』を認めてあげる。そしてたくさんほめることで『自分は集中力があるんだ』と思えるようになるのだそう。その思考が根づけば、苦手なことに直面したときも「僕(私)はできる。頑張ることができる」と前向きに取り組めるようになります。

2.  バーチャルとリアルをつないで「本物」に触れさせる

子どもはなにかに興味をもつと、「もっともっと」と情報を欲したり、次々に浮かぶ疑問を解消したくなったりします。そのとき親がすべきことは、放っておくことでも適当に流すことでもありません。瀧氏は、親が子どもの疑問に対して自分とは関係ない、興味もない、という態度をとると、せっかく芽生えた子どもの好奇心を摘むことになると厳しく指摘します。

子どもに「○○ってなに?」「これってどういうこと?」と聞かれても、すべてに答えるのは不可能でしょう。しかし瀧氏によると、そんなときが “チャンス” とのこと。「お母さんはわからないな。一緒に図鑑で調べようか!」「お父さんも知らないなあ。どういうことだろう? インターネットで一緒に調べよう」と提案してみましょう。

そして瀧氏は、「子どもの興味を見極めたら、図鑑や本を与え、どんどん外に連れ出して本物を見せてあげるといい」ともアドバイスしています。なぜなら、バーチャルとリアルをつなぐことで世のなかの広がりや奥深さを知り、さらに「おもしろいから次に進みたい」「どうやったら次に進めるのか」と子ども自身が考えるようになるからです。

電車に興味をもったら鉄道博物館や各地の駅を見に行く、魚に興味がありそうなら、水族館や魚釣りに連れていく、など無理のない範囲で積極的に子どもの好奇心を満たす場所へ連れ出してあげましょう。瀧氏は、その体験こそが「子どもの知的好奇心の土台になる」と断言していますよ。

3. 親自身が「なにかに打ち込む姿」を見せる

そして最後に、忘れてはいけないのが親自身もなにかに打ち込むこと。千葉大学教育学部附属小学校教諭の松尾英明氏は、「生きたお手本を見た子どもは、自分もなにかに打ち込もうと思う」と述べています。どんなに子どもに「没頭することの大切さ」を説いたとしても、親がダラダラと一日中テレビやスマートフォンばかり見ていたり、「面倒くさい」「わからないけどまあいいか」と、物事を深く追求せずにすぐに諦めてしまったりすれば、その姿を見た子どもも「それでいいのだ」と思ってしまうでしょう。

瀧氏も同様に、子どもの好奇心を育むためには、まずは親自身が好奇心をもって、趣味や勉強を楽しむことが大事と述べています。脳には「ミラーニューロン」というまねすることに特化している領域があり、言語の習得もスポーツの上達も、模倣から始まります。ぜひお子さんの前で、親御さん自身の趣味に没頭してみてください。もし打ち込める趣味がなくても、たとえば夕飯のメイン料理に合うソースを何種類も試作するなど、日常生活のなかで没頭してのめり込めるきっかけはたくさんあります。

また、「子どもにやらせたい習い事があれば、まずは親がやってみるのも手」と瀧氏が言うように、親子で一緒に楽しめる趣味を見つけるのもいいですね。しかし、「いまの時代は選択肢がたくさんあるので、没頭できるものを見失う子どもが増えている」と松尾氏が指摘するように、昔に比べて情報があふれているからこそ、夢中になれるものを見つけるのが困難でもあります。

松尾氏によると、なにがわが子を没頭させるきっかけになるかわからないので、なにも提示しないよりも選択肢を示してあげるべきとのこと。みなさんは誰よりもお子さんのことを知っているはずです。だからこそ、「うちの子は○○よりも△△のほうが好きそう」「このなかから選べなくても、また別の選択肢を見つけてあげよう」と、お子さんに合いそうなものがわかるのはないでしょうか。ぜひ、親子一緒に没頭体験をしましょう!

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そういえば私も小さい頃は没頭していたものがあったな……と、幼少期の思い出がよみがえった親御さんもいるでしょう。大人になると没頭できる時間も余裕もなくなってしまいますが、お子さんがなにかに没頭している姿を見ると、むくむくと新しいことを始めたくなるはず。親子でよい影響を与え合って、充実した日々を過ごしていきたいですね。

(参考)
リセマム|これからの教育キーワードは「没頭力」汐見稔幸・高濱正伸対談
瀧靖之監修(2017),『東大脳の育て方』, 主婦の友社.
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの脳が集中力を発揮するメカニズム。脳がホッとする時間も必要です
City Life News|誰もが持っている没頭力「見つける」ことが第一歩
プレジデントオンライン|超集中! 我が子を「没頭体質」に育てる親の共通点5