「わが子が意地悪されている」「もしかしてうちの子が誰かをいじめてる?」——そんな不安を感じたことはありませんか。
令和5年度の文部科学省調査によると、小学校では1,000人あたり96.5件のいじめが認知されており、いじめ認知件数は68万件超と過去最多を記録。さらに衝撃的なのは、そのピークが「小学2年生」という事実です。
しかし、希望もあります。欧米の最新研究によると、科学的根拠に基づいた予防プログラムが確実な効果を上げているのです。さらに、意地悪する子とされる子には、意外な共通点があることをご存じですか?
今回は、意地悪する子・される子の共通点と、科学的に正しい予防法をお伝えします。
目次
意地悪する子・される子の共通点は「自己肯定感の低さ」
意地悪する子とされる子ーー一見正反対に思えるこの2つのタイプには共通点があります。それは「自己肯定感の低さ」です。
する側:「認められたい」気持ちがゆがむ
自己肯定感が低い子どもは、どこかで「認められたい」という気持ちをもっています。しかし、それが健全なかたちで満たされないと、友だちへの意地悪などゆがんだかたちで表れてしまうことがあるのです。
東京都市大学人間科学部教授の井戸ゆかり氏によると、自己肯定感が低い子どもは、人からどう見られているかという評価を気にして自分に自信をもてません。すると、友だちに対するジェラシーもあって、大人が見ていないところで友だちに対して意地悪をするといった問題行動を起こすこともあります。
4〜6歳になると、子どもは「自分と同じように相手にも気持ちがある」ということに気づき始めます。それでもあえて意地悪するのは、「優位に立ちたい」「支配したい」「負けたくない」という気持ちから。
意地悪の背景にある子どもの気持ち
- 命令する → 思い通りに物事を進めたい
- ズルをする → 自分が不利になるのがイヤ
- 嘘をつく → みんなに注目されたい
- 仲間はずれをする → 独占したい
- 強い言葉で批判する → 相手を支配したい
- 力ずくで従わせる → 負けたくない
こうした行動の背景には、自分への自信のなさが隠れています。
される側:「どうせ」が口癖に
一方、意地悪される側の子どもも、自己肯定感の低さが問題です。自分に自信が持てず、「人からどう見られているか」という評価ばかり気にしてしまいます。
特に注意したいのが、子どもが「どうせできない」「どうせ無理」といった言葉を使い始めたとき。だいたい4歳後半くらいから出てくるこの言葉は、自己肯定感低下の危険信号です。
井戸氏は、「どうせ」という言葉が出たら、子どもを認めたりほめたりするような言葉かけを増やす必要があると指摘しています。自信がないため友だちの輪に入っていけず、結果的に意地悪の対象になりやすくなってしまうのです。
年齢別:意地悪の特徴
子どもの意地悪は、年齢によってその質が変わっていきます。
【2〜3歳】故意ではない
故意に「意地悪してやろう」と企むことはほとんどありません。語彙力が少ないため「イヤ!」「きらい!」などの強い言葉で相手を否定しますが、これは成長過程で仕方がないケースがほとんどです。
【4〜6歳】意地悪が本格化
意地悪に子どもなりの理由がつくようになります。優位に立ちたい、独占したい、思い通りにしたいなど、自己中心的な欲求から意地悪が本格化。成長が早いほど巧妙になり、見えないところで意地悪する姿も見られるようになります。
【小学生】友だち関係の複雑化
友だち関係への関心が高まり、特に女の子は「誰と誰が仲良し」といった微細な人間関係の変化に敏感になります。言葉での攻撃や仲間はずれが起こりやすい時期です。文部科学省調査では、小学2年生がいじめ認知件数のピークとなっています。
いじめの科学的予防法「3つの柱」
では、わが子を意地悪の加害者にも被害者にもしないために、親は何ができるのでしょうか。子どもの発達科学研究所が提唱する「いじめ予防プログラムTRIPLE-CHANGE」をもとに、具体的な方法をご紹介します。
柱1:考え方を変える──シンキング・エラーを正す
「失敗したから」「悪いことをしたから」「変わった子だから」などの理由で「人を傷つけてもいい」と思ってしまうのは「シンキング・エラー」、つまり間違った考えです。
このシンキング・エラーは加害者だけでなく、被害者自身ももっていることがあります。「自分はいじめられても仕方がない」とひとりで抱え込んでしまうのです。
まずは、この考え方が間違っていると子どもに伝えましょう。理解できる年齢なら、いじめは法律(いじめ防止対策推進法)に違反する行ないで、どんな理由があってもやってはいけないことだと教えます。
親が伝えるべきこと
- 「どんな理由があっても、人を傷つけていい理由にはならない」
- 「あなたが悪いからいじめられても仕方ない、なんてことは絶対にない」
- 「いじめは法律に違反する行ない」(理解できる年齢なら)
柱2:スキルを教える──「や・は・た」行動
いじめに遭ったときに取るべき行動が「や・は・た」行動です。被害に遭う前に知っておくことで、実際に遭遇したときの被害を最小限に抑えることができます。
【「や・は・た」行動とは】
「や」= やめて
「やめて」と最初に言えれば、いじめが深刻化しづらいことがわかっています。本人または傍観者が危険にならない範囲で、「やめて」と言うよう伝えましょう。
「は」= はなれる
いじめをもっとも早く終わらせる方法です。加害者に立ち向かう必要もなく、互いに冷静になることができます。傍観者の立場であれば、被害を受けている子を連れて一緒に「はなれる」を行ないます。
「た」= たすけて
「たすけて」と言えるスキルは、誰もが身につけなければならないものです。信頼できる大人や友だちに「たすけて」と言うよう伝えましょう。助けを求めるのは卑怯なことではなく、勇気ある行動なのだと教えてください。
この「や・は・た」は、意地悪を目撃した傍観者の立場でも使えます。「やめてあげて」と声をかけたり、被害を受けている子と一緒にその場を離れたり、大人に助けを求めたり。子どもたちみんなが知っておくべきスキルなのです。

柱3:自己肯定感を高める──日常の関わり方
意地悪の予防には、日頃から自己肯定感を高める関わりが欠かせません。
◾️役割を与えて褒める機会をつくる
家のお手伝いなど役割を子どもに与えてあげることが効果的です。ポイントは、その子どもの力では「簡単ではないけどなんとかできる」という無理のないハードルの役割にすること。そして、そのお手伝いを子どもがしてくれたなら、「頑張ったね!」「すごいね!」「ありがとう!」とたくさん褒めてあげましょう。
子どもは「自分は必要とされている」と自信を持つとともに、自己評価が上がり、自然と自己肯定感も高まっていきます。
◾️プロセスを認める
結果だけでなく、プロセスをしっかり褒めることも大切です。たとえば図工の課題で、要領のいい子はささっと終わらせるのに、丁寧な子はどうしても時間がかかります。その子が居残りまでして作品をつくり上げ、ひとりできちんと片づけまでしたとしましょう。
最後まで手を抜くことなく頑張れたこと、みんなで使う教室をきちんと片づけたことは、間違いなくその子の「良さ」です。完成した作品の評価だけでなく、むしろ完成するまでのプロセスをしっかり褒めて、「お母さんがちゃんと見ていてくれた」と子どもに思わせ、自信を持たせてあげてください。
◾️「自分の良さ」に目を向けることを教える
子どもは4歳頃から「あの子は足が速い」「この子は絵が上手」といったものさしで友だちと自分を比べるようになります。小学生になると勉強やテストもはじまるので、つい「できる・できない」のものさしで自分を見てしまうものです。
そこで親の出番です。誰もが万能ではないし、得意なことも苦手なこともあってあたりまえだということを子どもに教えてほしいのです。そして、なによりも「自分の良さ」に目を向けることを教えてあげてください。
自己肯定感を高める声かけ例
- 結果ではなく存在を認める:「あなたがいてくれてうれしい」
- 失敗したときこそ味方に:「失敗してもあなたの価値は変わらないよ」
- プロセスを褒める:「最後まであきらめずに頑張ったね」
- その子らしさを認める:「丁寧に仕上げたね。それがあなたのいいところだよ」
◾️大人がお手本を見せる
子どもたちは、恐ろしいほど真剣に大人の行動を観察し、それを真似します。もしかしたらいま、日本でこれだけ多くのいじめが起こっているのは、大人たちが子どもたちを傷つける行動をとったり、大人の世界にいじめに似た出来事が蔓延し、黙認されたりしているからかもしれません。
どんな理由があっても、傷つけられていい子どもは存在しません。大人が子どもを一人の大切な個人として尊重する姿勢を見せれば、子どもも周囲の人を大切に扱うようになります。
もしトラブルが起きたら
それでも、子どもから「意地悪された」という報告があったときは、どうすればいいでしょうか。
わが子への対応:共感とアドバイス
まず大切なのは、事実関係や状況把握よりも先に、子どものイヤだった気持ちを信じて共感してあげることです。いつでも味方でいる姿勢を見せることは、子どもにとって大きな力になります。
また、同じように意地悪しないわが子のことを存分にほめることも大切です。どうしてそんなことをするのか、相手の気持ちを想像するのもよい学びになるのではないでしょうか。
これから先も、成長とともに意地悪な子と接する場面が増えていきます。「やめて」と言う力を身につけること、そして困ったときは臆せず大人に相談してもいいということを伝え続けたいですね。
学校・園への相談:事実のみを共有する
子どもからの話は、語彙力が足りなかったり、場面を切り取って話したりしているため、支離滅裂です。そのため、報告があった出来事のすべては鵜呑みにせず事実のみを共有しましょう。
「イヤな気持ちになって登園を怖がっている」「持ち物や本人の体にあきらかな被害がある」など、事実をベースに相談します。
保育園や学校では、イヤな思いをした子どもの心のケアはもちろん、意地悪してしまった子どもにも丁寧に寄り添います。あまりに一方的で危険な行為が見られる場合は、具体的な対策を念押ししましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. いじめと一時的なトラブルの見極め方は?
A. 文部科学省の「いじめ」の定義では、「本人が精神的苦痛を感じているか」が判断材料になります。子どもが「仲間外れにされた」「無視された」と訴え、精神的苦痛を感じている(泣く、落ち込む、学校に行きたがらないなど)なら、学校に相談すべきタイミングです。一方、子ども自身が「気にしていない」「大丈夫」と明言し、普段通りに学校生活を送れているなら、少し見守ってもよいでしょう。
Q2. 「どうせ」が口癖になったらどうすればいい?
A. 「どうせ」という言葉は自己肯定感低下の危険信号です。子どもを認めたり褒めたりする言葉かけを増やす必要があります。家のお手伝いなど役割を与え、「頑張ったね!」「ありがとう!」と褒める機会を意識的につくりましょう。また、結果だけでなくプロセスを認めることも大切です。
Q3. わが子が意地悪してしまっている場合は?
A. 意地悪する子どもも、自己肯定感の低さが原因のことが多いです。頭ごなりに叱るのではなく、「認められたい」という気持ちを健全なかたちで満たせるよう、日常的に自己肯定感を高める関わりを心がけましょう。役割を与えて褒める、プロセスを認める、無条件の愛情を伝えるなど、この記事で紹介した「柱3」の実践が効果的です。
Q4. 「や・は・た」行動は何歳から教えられる?
A. 5歳頃から理解できるようになります。絵本などを活用しながら、日常的に繰り返し伝えることが大切です。「やめて」「はなれる」「たすけて」という3つの選択肢があることを知っているだけで、いざというときに子どもが適切に行動できる可能性が高まります。
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意地悪する子もされる子も、根っこには自己肯定感の低さがあります。だからこそ、予防は可能です。科学的根拠に基づいた方法で、日常の関わりを少し変えるだけで、わが子を加害者にも被害者にもしない子育てができるのです。
「や・は・た」のスキルを教え、シンキング・エラーを正し、そして何より自己肯定感を高める関わりを続けること。それが、子どもたちが安心して過ごせる世界をつくる第一歩になります。
(参考)
文部科学省|令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
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