岩田家の3人の子どもたちが語る「戦略的ほったらかし教育」の真実【第3弾】
それぞれが自分らしい道を歩んでいる岩田家の3人のお子さんたち。一見華々しい結果ばかりが目につきますが、子育て中は本当に順風満帆だったのでしょうか?
そして、大きくなった子どもたちは、この「戦略的ほったらかし教育」をどう評価しているのでしょうか? 最終回となる今回は、子どもの将来を心配する親御さんの不安に、岩田さんがリアルな体験談で答えてくださいました。
目次
「この子、大丈夫かな?」と思った瞬間もあった
――お子さんたちの現在の活躍を見ると、子育て中も順調だったように思えますが、実際はいかがでしたか?
岩田さん: いえいえ、心配になったことは何度もあります(笑)。特に印象的だったのが、長男の吃音ですね。先生に呼び出されて「これは一生治りません」と言われたんです。
帰り道はすごく落ち込んで「私が厳しく育てすぎたのかな」「下の子が早くに生まれてるから、無理させてるのかな」って。吃音で調べると、いろいろ原因が出てくるじゃないですか。そうすると全部当てはまるように見えるんですよ(苦笑)。
――そんなときはどう対応されたのですか?
岩田さん:友達にその話をしているうちに、「私はできるかぎりのことはやってきたし、彼を苦しめようと思ってやってるわけじゃないから、もうとりあえずいま、話すときにそのキーワードを避けて話してるんであれば、それでいいや」って思えたんです。
私は悩む期間が、ほかの人と比べるとべらぼうに短いんだと思うんですよ。2日間で立ち直りました(笑)。
長男はアメリカの大学に学費全額奨学金で進学し、いまは英語圏にいるんですけど、英語でも話しにくい言葉は、日本語でやっているときと同じようにリズムをとって喋ったりするらしいです。本人はそんなに困ってないみたいなんですよね。
学校からの「お叱り電話」にどう対応したか
――学校で問題があった時などはどう対応されましたか?
岩田さん: 3番目の子が隣の子の筆箱を使ってしまったことがあって、先生から連絡がきたことがありました。家に帰って状況を聞いたら「だって貸してって言ったら、いいよって言ったからそのまま使ってた」って言っていました。
うちは兄妹3人だから「誰かのやつ使いなさい」みたいなふうに日々伝えていたからだ、とそのときは思いましたね(笑)。
あと、真ん中の子が友達のお弁当を見て「まずそう」って言ったら、その子がショックを受けて、お母さんから先生に連絡がいった、ということもありました。
――そんな時はどう対応されるのですか?
岩田さん: そのときも「あんた、なんでそんなこと言ったの!」じゃなくて「まあ、あるよね」って。私も傷つけるつもりなく不用意な言葉を言っちゃうときがあるから、子どもなんてあるよねっていう感じで笑ったあとに、しっかり他人の気持ちやわが家とは違う考え方を話し合いました。
こういう出来事をめんどうくさいと思わずに、楽しむのが子育てだと思いますし、いまはもう全部笑い話になってるんです。子どもが20歳前後になったいま、全ての出来事が笑い話エピソードになっています。
反抗期は「成長のサイン」として受け止めた
――反抗期はありましたか?
岩田さん: 反抗期っていう言葉は、私はあまり使わないのですが、子どもはずっと反抗期なんですよ(笑)。多くの大人が「反抗」と感じる瞬間は、じつは子どもが自分の気持ちを主張しているときなんです。
たとえば、「いまお風呂に入ってほしい」と思っていても、子どもが「いまは入りたくない」と言ってくることがありますよね。これを「反抗」と捉えるかもしれませんが、私は「自己主張」だと思っています。
だから「何時なら入る?」「何を食べながらだったら入れる?」と工夫して、実際にお風呂のなかでアイスを食べながら入浴したこともありました。つまり「反抗期」というより、「自己主張が強い時期」と捉えていて、うちの子たちはずっと反抗期なんですよ(笑)。
子どもたちはいま、この教育をどう評価しているか
――大きくなったお子さんたちは、ご自分が受けた教育についてどう言っていますか?
岩田さん: 長男がこの本を読んで「いい本だ!」って絶賛してくれました。うちの子たちは本当にびっくりするくらい自立していて、いまでは私の負担がほとんどないんです。
「親がやらなきゃ」と手取り足取り、全部口出ししていたら、私はきっといまでも子どもに縛られて、仕事も中途半端になって疲れ切っていたと思います。戦略的ほったらかし教育で育った子どもたちは自分で考えて動けるようになりました。
その結果、子どもはそれぞれ自分の好きな世界に飛び出していきました! 学習基盤ができる時期の「自然に学びたくなる家庭環境」が本当によかったと3人共が言っています。
――「もっとこうしてほしかった」という要望はありますか?
岩田さん: ありますよ(笑)。でもそのときは平謝りです。「ごめんね、そのときそういうつもりじゃなかったんだけど」って。
どんなにいい会社に勤めていても、どんなにいい料理店に食事に行ったとしても、絶対に自分の気に入らなかったことってあると思うんですよね。それを一旦受け止める。愛をもって全てやったけど、そういうふうに感じちゃったんだったら、ごめんねって伝えるようにしています。
親子関係はいまでも良好? リアルな現状
――現在の親子関係はいかがですか?
岩田さん: めちゃくちゃいいですね。私や夫のことを「困ったときは相談できる存在」として認識してくれているようです。子どもの頃からあまり干渉しすぎなかったから、大人になっても「親がうるさい」という感覚がないんでしょうね。
よくある心配事への回答
――読者の方からよく寄せられる「勉強しない」という悩みについてお答えいただけますか?
岩田さん: 年齢にもよりますが、環境設定がすごく重要です。私たちも、いつでも好きなときに仕事してもいいよって言われたら、なかなか進まないですよね。納期やスケジュールを決めて取り組むからやれるんですよね。
家庭内でも「何時でもいいよ」ってなると、主体的にやらないので、「この時間からこの時間は勉強タイム」っていう環境設定をする。そのあいだ、大人もスマホを横に置いて、読書するとか、仕事するとか、その場をデザインするっていうことが大切です。
――「ほかの子より遅れている」という不安については?
岩田さん:「対象年齢」というものがありますが、正直、それほど気にする必要はないと思っています。あくまでそれは外が決めた目安にすぎません。大事なのは、その子がいま何ができて、何ができないかをしっかり見てあげることです。
日本では学年ごとに子どもが同じように進級していくため、「うちの子はまわりの子に比べてここが苦手だ」と、どうしてもできないところに目が向きがちです。でも、苦手な部分があっても、一旦気にせず置いておくのもひとつの方法です。いまはYouTubeなどでもいろいろな解説が見られますから、あとからいくらでも追いつくことができます。
おやつで釣ることの効果
――ドリル学習などで、おやつで釣るのはいかがでしょうか?
岩田さん: おやつで釣るのはいいですよ(笑)。1枚やったら何かを1粒食べるとか。「ごほうびはよくない」という説もありますけど、結局習慣として身につけば、私はいいと思ってます。報酬って大事で、子どもなんかちょっとしたものでもすごく喜ぶじゃないですか。だったら、こっちが食べさせたいものを報酬にしてしまえばいいんです。
子育てで一番大切なこと
――子育てで一番大切なことは何だと思われますか?
岩田さん: 子育て=己育てだと、私は思っていて、子どもを「育てよう」とすると、すごく肩に力が入っちゃうので、子どもという教材を通じて、自分がどれだけバージョンアップしていけるかっていう感覚が分かれめです!
たとえば、「自分の子どもがほかのおうちの子と比べて遅れているかもしれない」という不安があるとします。その場合は「私ってなぜそう思うんだろう」「他者比較が強いのかもしれない」とか、そういうふうに自分自信を見つめない限り、子どもが何歳になっても同じような不安から抜け出せません。
最後に――子どもの「突っ込んでいく力」を奪わないで
――最後に、子どもの将来を心配している親御さんにメッセージをお願いします。
岩田さん: 子どものことを心配する前に自分のことを心配した方がいいですね(笑)。
書籍の終わりにも書いたのですが、私が目指す将来は「いつでも好きなときにどこでも好きな場所へ行って、何でも好きなことやって、誰でも好きな人を愛して、自分のことは自分で決めて、自分の力と責任で勝手に幸せになる」ということです。
子育てで大事なのって、子どものその「突っ込んでいく力」を奪わないことだと思うんですよね。従来型の考え方が、それがはたして邪魔になってないのかな? と少し止まって考える。
子育てがしんどい、毎日ガミガミ言っている、漠然とした不安が消えない時は、「深刻」になっているサインです。そんなときは、ちょっと愛とユーモアが足りなくなっているだけ。
そんなに子育ては深刻にやってうまくいくことではないので、愛とユーモアを大切にしていけば、すばらしい子が育つと思います。
【シリーズ完結】 3回にわたってお届けした岩田かおりさんのインタビュー、いかがでしたか? 「完璧じゃない親でも大丈夫」「子どもを信じる力」「長期的な視野の大切さ」――きっと多くの気づきがあったのではないでしょうか。
もっと詳しく学びたい方は、ぜひ著書『自分から学べる子になる 戦略的ほったらかし教育』を読んでください。具体的な実践方法や、親自身の「沼」から抜け出すワークなど、今日からできることがたくさん詰まっています。
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■ 家庭教育コンサルタント・岩田かおりさん インタビュー一覧
第1回:「私、ダメな親かも。」その不安、『戦略的ほったらかし教育』著者・岩田かおりさんも同じでした
第2回:単純な放任とは違う「戦略的ほったらかし」はこうして生まれた|岩田かおりさんが語る、誕生秘話
第3回:「うちの子、このままで大丈夫?」『戦略的ほったらかし教育』著者・岩田かおりさんが、実体験で語る
【プロフィール】
岩田かおり(いわた・かおり)
家庭教育コンサルタント、株式会社ママプロジェクトJapan代表取締役。幼児教室勤務、そろばん教室の運営を経て、「子どもを勉強好きに育てたい!」という想いから、独自の教育法を開発。「子どもを学び体質に育てる」と「親を幸せ体質にする」ことを目指し、親がガミガミ言わずに勉強好きで知的な子どもを育てる作戦『戦略的ほったらかし教育』を全国へ展開中。また、3児の母親で、『戦略的ほったらかし教育』を実践した子どもたちは、中学生で起業、経団連の奨学生としてインドへ高校留学、学費全額奨学金で海外大学進学、塾なしで慶應義塾大学合格など、3人とも自分で自分の道を切り開いてきた。著書に『「天才ノート」を始めよう!』(ダイヤモンド社)がある。最新刊は『自分から学べる子になる 戦略的ほったらかし教育』(ディスカヴァー)。