あたまを使う/教育を考える/インタビュー/非認知能力 2025.10.4

「私、ダメな親かも。」その不安、『戦略的ほったらかし教育』著者・岩田かおりさんも同じでした

「私、ダメな親かも。」その不安、『戦略的ほったらかし教育』著者・岩田かおりさんも同じでした

7000人の子育て相談から生まれた『戦略的ほったらかし教育』岩田かおりさんに聞く【第1弾】
3人の子どもを育て上げ、それぞれが自分らしい道を歩んでいる岩田家。そんな輝かしい結果だけ見ると、「きっと最初から完璧な子育てをしていたのでは?」と思ってしまいます。

しかし、著書『自分から学べる子になる 戦略的ほったらかし教育』を読むと、岩田かおりさんもまた、多くの母親と同じように悩み、迷い、時には自分を責めながら子育てをしてきたことがわかります。

今回は、岩田さんの「完璧じゃなかった母親時代」について、本音で語っていただきました。

「私がいないと子どもたちが……」完璧主義だった過去

――本を読んで印象的だったのが、第3子の妊娠中に切迫早産で入院されたときのエピソードです。そのときは本当に「私がすべてをやらなければ」と思い込んでいらっしゃったんですね。

岩田さん: 全然完璧じゃないんですよ。でも、自分ひとりでこなすことが最善だと思い込んでいたんです(苦笑)。いまほど宅配やシッターさんのサービスが充実していなかったので、けっこう何でも自分でやっていました。私の場合は夫も愛知、私も大阪出身なので、気楽にお願いできる人が周囲に少なかったんですよね。

――当時は完璧を目指していたというより、状況的にやらざるを得なかったということでしょうか?

岩田さん: そうですね。お金がない、時間がないなかで、何でも自分でやろうとしていました。当時はお金で解決することが無駄使いしていると思っちゃって。お惣菜だって自分でつくればたくさんできるのに、ちょっとの量でけっこう高いじゃないですか(笑)。

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1か月の入院で見えた「子どもたちの本当の力」

――その入院生活で考え方が変わったのですね。

岩田さん: そうですね。実家の母や夫に家庭のことを完全にお任せせざるを得なくなって。でも、退院して家に帰ったときに「あ、子どもって、私がいなくても大丈夫なんだ」「私でなくても、この子たちを支えてくれる人は社会にたくさんいるんだ」って気づいたんです。

この体験から「子どもたちは自ら育つ力をもっている」ということも実感しました。これが、後の「戦略的ほったらかし教育」の原点になったんです。

7000人の相談で気づいた「みんな同じことで悩んでいる」現実

――その後、多くのお母様から相談を受けるようになったそうですね。

岩田さん: 最初は近所のママ友から「岩田家はあまり勉強させている感じがしないのに、なぜ子どもたちが一生懸命やるの?」と相談されることから始まりました。その頃はいまほど情報が多くなかったので、自然と相談を受けることが多くなっていったんです。

でも話していると「勉強しない」「服を着替えない」「ご飯を食べない」といった悩みが出てくるんですよね。お話を聞いているうちに気づいたことがあるんです。みんな、本当に同じようなことで悩んでいるということ。その後、子育て講座や講演会を運営する会社を設立しました。

――どのような悩みが多いのでしょうか?

岩田さん: 「ちゃんと子育てができていない気がして不安です」「ほかの子と比べてできていないのではないか」「やっぱり学力は必要だと思うのに、子どもが勉強をしません」……こういった相談が本当に多いんです。

そして、みなさん共通して「私の子育て、これでいいのかしら」という不安を抱えている。でもじつは、悩んでいるということ自体が「子どものことを真剣に考えている証拠」なんですよね。

岩田かおりさん

子育てで大切にしている「選択肢の与え方」

――具体的に、日々の子育てで心がけていることはありますか?

岩田さん: これは子どものお手伝いでも同じことが言えるんです。「靴揃えてくれる?」って言ったら、子どもには「揃える」と「揃えない」の両方の選択肢を与えていることになりますよね。

でも「靴揃えてくれる? それともお皿の準備してくれる? どっち?」って言ったら、子どもは「うん、こっち」って言って、やるという前提のなかから選択するんです。けっこうこれだけでお家のなかが回りやすくなります。

宿題も同じで「やる」「やらない」じゃなくて「朝やるのか夜やるのか」で選択肢を出す。やるって決めているのに「やるのやらないの? あなたの意思にかかってるのよ!」みたいにしてしまうと、子どもに全責任を押し付けることになりますから(苦笑)。

「すべき」を手放したら見えた新しい景色

――本のなかで、岩田さん自身の幼少期の家庭環境で心が休まることが少なかったと書かれていましたが、どうやっていまの考え方にたどり着かれたのでしょうか?

岩田さん若い頃に自分の環境を大きく変える体験をしたことが大きかったです。18歳でバックパッカーで海外に出て、価値観や文化の違う人や見たこともない景色と出会うことで、自分を見つめ直すことができました。

時間割やカリキュラムのない毎日のなかで、朝起きてから夜寝るまでのあいだ、自分で決めるという体験をして、何かを決めるときに他人に権限を委ねるのではなく、自分に主導権をもつことの大切さを学んだんです。

うまくいかない事を、家庭環境のせいにしていた時期もありますが、そういう考え方では目の前の現実は変わらないと考えられるようになってからは、自分の人生に主導権をもつようになりました。

これは子どもも同じで、何事にも小さいながらに主導権をもつことが重要だと思います。他人に無理やりやらされるのではなく、「やる前提」での選択肢のなかから選ばせる。これだけで、子どもの主体性が育ち家庭がずいぶん回りやすくなります。

「私だけじゃない」と気づくことから始まる

――最後に、いままさに子育てで悩んでいるお父さんお母さんたちへメッセージをお願いします。

岩田さん: まず伝えたいのは「悩んでいるのはあなただけじゃない」ということです。子育てに正解はなく、完璧な親なんて誰ひとりいません。私も同じように迷い、悩み、失敗しながら毎日を過ごしてきました。

なんかうまくいかない日も、自分を責めなくて大丈夫ですよ。だって、子育ては思い通りにいかないことの連続だから……。その「うまくいかない」ことこそが、思考力、表現力、自己受容力、行動力を育み、子どもも大人も成長する鍵だと捉えてみてください!

むしろ、「うまくいかない」ことがなくて思い通りに進んでいるようなら、親が主導権を握りすぎていて危険かもしれません。親が一歩引いて信じることは、子どもにとって何よりの応援なんです。

「戦略的ほったらかし教育」は、放っておくことではなく、子どもを信じ抜く勇気をもつこと。親がその勇気をもつだけで、子どもの未来は必ず輝きます。だから、親が全部正しく導こうと力まなくて大丈夫です。愛と勇気をもって突き進みましょう。

岩田かおりさん

【次回予告】 第2弾では、「戦略的ほったらかし教育」が生まれた裏側や、幼児教室での驚きの体験について詳しく伺います。このユニークなメソッドは一体どのようにして誕生したのか? そして、すべての家庭に有効なのか? 岩田さんの実体験に基づいた本音に迫ります。
★岩田かおり著『自分から学べる子になる 戦略的ほったらかし教育』好評発売中

■ 家庭教育コンサルタント・岩田かおりさん インタビュー一覧
第1回:「私、ダメな親かも。」その不安、『戦略的ほったらかし教育』著者・岩田かおりさんも同じでした
第2回:単純な放任とは違う「戦略的ほったらかし」はこうして生まれた|岩田かおりさんが語る、誕生秘話(※近日公開)
第3回:「うちの子、このままで大丈夫?」『戦略的ほったらかし教育』著者・岩田かおりさんが、実体験で語る(※近日公開)

【プロフィール】
岩田かおり(いわた・かおり)
家庭教育コンサルタント、株式会社ママプロジェクトJapan代表取締役。幼児教室勤務、そろばん教室の運営を経て、「子どもを勉強好きに育てたい!」という想いから、独自の教育法を開発。「子どもを学び体質に育てる」と「親を幸せ体質にする」ことを目指し、親がガミガミ言わずに勉強好きで知的な子どもを育てる作戦『戦略的ほったらかし教育』を全国へ展開中。また、3児の母親で、『戦略的ほったらかし教育』を実践した子どもたちは、中学生で起業、経団連の奨学生としてインドへ高校留学、学費全額奨学金で海外大学進学、塾なしで慶應義塾大学合格など、3人とも自分で自分の道を切り開いてきた。著書に『「天才ノート」を始めよう!』(ダイヤモンド社)がある。最新刊は『自分から学べる子になる 戦略的ほったらかし教育』(ディスカヴァー)。