9歳で「子どもの環境団体」に興味を持ち、12歳でリオデジャネイロの環境サミットに団体の代表として参加し、子どもの視点から環境問題についてスピーチをした少女、セヴァン・カリス=スズキを知っていますか?
1992年、「世界を5分間沈黙させた少女」として世界中で有名になり、その翌年にはUNEP(国際連合環境計画)の「世界の尊敬すべき500人」の勲章を受けました。物怖じせず、自分の考えを強く、はっきりと話す姿は、とても印象的でしたね。
彼女ほどでなくても、海外では、自分の意見を持ち、それを的確に周囲に伝える力が非常に重視されます。欧米の小学校では、生徒一人一人が特定のトピックについてスピーチをしたり、調べ学習をした上でプレゼンテーションをしたりする機会もたくさんあります。
そこで求められるのは、論の展開です。論理展開には、問題発見、現状分析、物語展開、問題解決など、その目的によって、いくつもの展開方法があります。幼少期から、効果的な論理展開ができるように練習しておくと、記述式の試験や、入試の面接、英語4技能試験のスピーキングテストなどでも有利になるでしょう。
ここでは、英語のプレゼンテーションを例にして、論の展開の仕方をご紹介します。今回注目するのは、冒頭部分。慣用表現を使って、プレゼンテーションにおける思考の流れをナビゲートするのがポイントです。
1. 開始のシグナル「はじめます」
日常会話では、「あのさあ」「ねえ、聞いて」「ほら」のような言葉を使って、話し出す前に相手の注意をひきますね。英語では “Hey” “Listen” “Now” “Look” “Well” などにあたります。
しかし、プレゼンテーションのような改まった状況では、これらは礼を失した表現と受け取られてしまいかねません。そこで、次のような表現で口火を切るのが普通です。
- では、そろそろはじめましょうか。
- そろそろはじめさせていただきます。
OK, now, shall we begin?
OK, I’d like to start now.
司会者がいる場では、司会者が使う言葉でもあります。
2. 謝辞「話をする機会をいただき、光栄です」
開始のシグナルの次に、感謝の意を表すことがあります。
- この会議にお招きいただき、感謝しています。
- ここでお話しする機会をいただき、光栄です。
Thank you so much for inviting me to this conference.
I’m honored to have an opportunity to talk here.
政治家の演説などでは、冒頭で謝辞を述べる場面がよく見られますね。
3. エピソードや有名な言葉の引用「……によると」
何かを発表する際に肝心なのは、プレゼンテーションの狙いを述べること。時にはいきなり目的が何なのかを明らかにすることもありますが、多くの場合、その背景について述べてから目的に入るでしょう。
そんな時は特に、聞き手を意識した語りをする必要があります。そのためには、聴者を巻き込むために、次のような表現を使います。
- (皆さん)ご存じのように。
- もちろん、皆さんお気づきのことですが……。
as you (all) know
I’m sure you are all aware of …
あるいは、エピソードから始めることもあります。第7代国際連合事務総長コフィー・アナンがノーベル平和賞受賞の際に行った有名な演説は、あるエピソードで始まりました。
その後に、貧困をはじめとする、アフガニスタンが直面する状況の厳しさについて語ったのです。
また、これから話したい話題の背景を述べる時に、有名な人物の言葉を引用する方法も、よく用いられます。
- ジョン・デューイによると、教育は人生のための準備ではなく、それは人生そのものである。
- ネルソン・マンデラは「教育は世の中を変える最も強力な武器である」と述べたことがある。
According to John Dewey, “education is not a preparation for life; it is life itself.”
Nelson Mandela once said, “Education is the most powerful weapon one can use to change the world.”
権威ある知識人や著名人の言葉を引用することで、説得力が増しますね。
4. 話の目的を述べる「今日の狙いは……」
ここで本題に入るわけですが、まずは話の目的を明らかにすることが大切です。聴衆は、最初に告げられた話の目的が、今後どう展開していくかに期待を寄せるのです。
- 今日私がここにいるのは、……について話すためです。
- 私のプレゼンテーションの目的は……です。
I’m here today to talk about ….
The purpose of my presentation is to ….
まずおおまかに、その後に細かく、目的を伝えることもできます。
- 大きなテーマとしては……についてお話ししたい。
- もっと具体的に言うと……に焦点を当てたい。
Generally, I’d like to discuss….
More specifically, I’d like to focus on….
どこに着目するつもりかをあらかじめ伝えることで、聞き手も重要なことを聞き逃さずに、話に集中できるようになりますね。
5. 話の順序を伝える「3つの話をします」
トピックの数や話の順番を事前にはっきり伝えることは、とても大切です。なぜなら、聞く側が話の道筋を予想でき、プレゼンテーション全体の内容を理解しやすくなるからです。
スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行った有名なスピーチにも、この手法が用いられています。
https://www.youtube.com/watch?v=iPseaH5r7RE
感謝の意を示し、簡単なエピソードを入れて、話の目的を述べた後、3つの話をすることを伝えています。
さて、このように「3つ」と述べたら、それが何であるかを明らかにしなければいけません。順序立てて話をするためにジョブズは、それぞれの内容をこのように一言で説明しています。
- 1つ目の話は、点と点をつなぐことです。
- 2つ目の話は、愛と喪失についてです。
- 3つ目の話は、死についてです。
The first story is about connecting dots.
My second story is about love and loss.
My third story is about death.
話のポイントと話す順序を明確に示すことで、話全体の「構造」が明らかになるのです。
トピックが2つであれば、“One is”(1つは) “The other is”(もう1つは)と、列挙するまでもありません。しかし3つになると、スティーブ・ジョブズのように、助数詞などを使って列挙する方法が有効です。
- まずはじめに
- 第1に
- 第2に
- 第3に
To begin(start)with
First / Firstly / First of all
Second / Secondly
And third / Thirdly
トピックが4つ以上ある時は、上記の表現に加え、「最後に」 “Finally” で締めくくるといいでしょう。
これらの5つの点を押さえれば、英語でのプレゼンテーションはぐっとわかりやすいものになるはずです。それだけでなく、様々な分野で活用できるポイントがたくさんあります。
特に、常に目的を意識することは、試験や学校の授業において、とても重要です。さらに、これからどんな話をするのかを事前にまとめて伝える力は、英語4技能テストや入試の面接でも、効果を発揮するでしょう。