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こんにちは。文章力養成コーチの松嶋有香です。前回は、連載を始めていきなり、読書感想文指導のたった一つのコツを大公開してしまいました。覚えていらっしゃいますか? そうですね。
親ができることは、たった1つ。「子どものすることを否定しないこと」
これにつきます。実はこのことは、子育て全般に言えることですね。
さあ、今回から、いよいよ、実際の読書感想文の書き方についてガイドします。
まずは、その方法をざっと見てみましょう。
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0. 計画を立てる
1. 本を選ぶ
2. 心が動いた文やシーンがあるページに付箋を貼る
3. 質問シートを作る。答える。
4. 近い内容をまとめて文にする
5. 4を組み立てる
6. 書いてみる
7. 時間を置いて、見直す
8. 書き直す
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どうでしょう?
3の「質問シートを作る。答える」、4の「近い内容をまとめて文にする」以外は、なんとなくできそうですよね? 今回からひとつずつ説明していきます。順番に取り組んでみてください。
0. 計画を立てる
まず、読書の計画と作文の計画を立てます。お子さんの性格にもよりますが、普通は、一日中読書をしたり、一日中原稿用紙に向かったりすることは難しいと思います。計画を立てる時には、お子さんの時間の使い方をよく知っているお母さんが一緒に考えてみましょう。
- ひとつのことを一日何時間ぐらい集中してできますか?
- 本は一日何ページぐらい読めるでしょうか?
それをまず簡単で良いので計算しておいてください。
また、一日のうち、1~2時間ぐらいを感想文の時間に費やせるとすると、本選びから完成まで、だいたい2週間かかると思ってください。この2週間という数字は、今までの経験から私が判断した、だいたいの期間です。「読書感想文週間」とでも申しましょうか。途中、読書感想文に触れない日もあります。本を選んでから、読書感想文の完成まで2週間の期間がある、そんなイメージです。
正味で考えると、もっと短い期間で済むのでは? と感じるでしょう。例えば、これをもし、3日で終わらせようと思う場合は、その3日間、読書感想文のことだけに取り組めばいい、そんな計算になります。しかし、どうでしょう? そんな3日間は最悪だと思いませんか? 本が好き、文章も書き慣れている、そんなお子さんなら3日くらいでできるでしょう。そうでないのなら、特に、本を読むのも文章を書くのも苦手なお子さんにとっては、集中して取り組むのは酷です。2週間の長い期間があり、その期間は、読書感想文に集中はするけれど、遊びに行ってもいい、プールに入ってもいい、昼寝をしてもいい、そんな感じが良いと思います。
まずは、本を買いに行く日を決めましょう。
そして、感想文を仕上げる日を決めましょう。
1. 本を選ぶ
なるべく大きな本屋に親子で行ってください。今はインターネットでも本が買えますが、なるべくリアルの本屋に行ってください。インターネットの本屋では、本を触ることができません。あの独特の紙の感触と匂い、背表紙が並んだカラフルな棚、平積みの圧倒感、他の人、特に大人が本を選んでいる雰囲気、静かな緊張感のある空気、そのような本屋の「気」が大切です。
インターネットの本屋とリアルの本屋。たとえて言うならば、テレビでディズニーランド特集を見るのと、実際にディズニーランドに出かけるのぐらい違うはずです。また個人経営の小さな本屋ではなく、できるだけ大きい本屋に行ってください。本の選択肢を拡げるためです。
節約の為に、図書館や古本屋に行くこともありますが、この読書感想文指導は、本気で心と向き合う機会となるはずです。自分だけの本を買ってあげてくださいね。
運命の本との出会いがありますように。
そこで、3冊か4冊、気になる本を購入します。
本の選び方
お子さんが、最近、好きなこと、興味があることは何ですか?
魔女? ペット? 宇宙? 虫?
残念ながら、私にはそれが分かりません。
お子さんの今夢中になっていることを一番感じているのはお母さんです。
「好きなものなんかない」
お子さんがそう言ったとしても、どうしてそういう言い方をするのか、分析できるのも、お母さんだけです。もし、お腹が空いてぐずるタイプなら、本屋は後回しにして、美味しいものでも食べに行きましょう。決定に時間がかかるタイプなら、急かさずに、ゆっくり探しましょう。最近では、飲み物を飲みながら購入する本を選べる本屋もありますしね。
「好きな本を選んでいいよ」そう言ったあと、お子さんが「これがいい!」と本を持ってきました。さて、ここで、一番、一番大切なことを申し上げます。
「子どもが選んだ本を絶対に否定しない」
例えばです。あなたが「よし、この夏はこの本を読んでみようかな!」と決意して、人に見せたとします。そこで、その人にこんなことを言われたらどう感じますか?
「えー、そんな本読むの?」
「ちゃんと最後まで読めるの?」
「どうせ途中で『積ん読』になっちゃうんじゃないの?」
「あなたには難しすぎるんじゃないの?」
「あなたには易しすぎるんじゃないの?」
「もう少しちゃんとした本選びなさいよ」
どうですか?
絶対にハッピーな気持ちにはなれませんよね?
「人にされてイヤなことは人にしない」人間の鉄則です。
夏休み、本屋に行くと、かなりの確率で、こんな言葉を子供に投げかけている親を見かけます。私はいてもたってもいられず「子供には好きな本を読ませてあげるといいですよ」と、お節介なおばさんと化して話しかけることさえあります(笑)。
子供が本を持ってきたら「あら! 面白そう!」「わぁ! 素敵な表紙ね!」「楽しみね!」できるだけ多くの良いところを見つけて、その本を選んだ子供をまるごと「肯定」してください。子供はそれだけで自信を付けます。嬉しい気持ちになります。やる気になります。
以前、虫の写真集を選んだ小学校1年生の男の子がいました。
『アリから みると』
桑原 隆一 (著), 栗林 慧 (写真) /福音館書店
「さすがにこれで読書感想文は書けませんよねえ?」
そんなお母さんを説得し、その本を買ってもらいました。
そしてその子は、虫から見た世界の、いきいきとした感想を、原稿用紙2枚に書きました。賞も取りましたよ。
課題図書か、自由図書か
学校にもよりますが、読書感想文と言えば、公益社団法人全国学校図書館協議会・毎日新聞社主催、内閣府・文部科学省後援の『青少年読書感想文全国コンクール』の課題を指します。小学生の部は、低学年の部、中学年の部、高学年の部の3部に分かれ、それぞれ、課題図書が決まっています。詳細についてはこちらをご覧ください。
また、学校ごとに〆切りや、作文の書き出し部分など、個別の決まりを設けている場合もありますので、まずは学校のお便りを基準にしてくださいね。
さて、ここで毎年、保護者の方から受ける質問があります。
「課題図書から選んだ方がいいですか?」
私の答えはいつも決まっています。
「お子さんが好きな本が、たまたま課題図書で選ばれた本なら、その本で良い」
たしかに、書店に行くと、圧倒的な威圧感で、課題図書コーナーが鎮座ましましております(笑)。同じ帯を付け、平積み、いえ、山積みになっています。どうしても気になりますよね。でも、読書感想文というものは、好きな本を読んで、感想を書くものですから、本来、そこから選ばなくても良いのです。
子供が本当に読みたい本を読む。私はそれで良いと思います。
以下、2018年の課題図書の解説を【ワンポイントアドバイス】として載せますね。もし、お子さんがとっても興味を持ちそうな内容が書かれているようでしたら、課題図書の中から選んでも良いと思います。また、対象学年が違う課題図書を自由図書として選ぶことも可能です。
次回予告
第3回『読書感想文を前提にした本の読み進め方』
内容:素通りできないところにこそ運命が待っている。
2018年課題図書の紹介・解説
低学年の部
『ルラルさんのだいくしごと』
いとうひろし 作/ポプラ社
【内容】
ルラルさんのだいくしごとのうでまえは、なかなかのものです。あまもりするやねのしゅうりだって、おてのもの。ところが、おもわぬことがおきてしまい…!?「ルラルさんのえほん」シリーズ、第8作目のおはなし。
【ワンポイントアドバイス】
第8作!国語教師としてはここがポイントですね。子供は、シリーズものが大好きです。この世界観が好きなら、このシリーズを全部読んでみても良いでしょう。動物もたくさん出てきます。時の流れも違います。せっかちなお母さんにも読んでほしい1冊(笑)ゆっくりゆっくりページをめくりましょう。
『きみ、なにがすき?』
はせがわさとみ 作/あかね書房
【内容】
森のおくにすむあなぐまが、にわのはたけでともだちのすきなものを作りたいと思いつきます。でもともだちは、あなぐまの考えるものをもっていました。きもちが空まわりしてしまったあなぐまは、いったいなにを作るのでしょう…!?だれかにわかってもらえることがうれしくなるお話。
【ワンポイントアドバイス】
心の優しいあなぐまが主人公。本当に本当に優しい。子どもたちは、かわいい絵からさそわれて、新しい価値観を見つけるかもしれませんね。読書は新しい世界への入り口。そういう意味で、この本に限らず「絵が好き!」という選択もありです。
『なずずこのっぺ?』
カーソン・エリス さく、アーサー・ビナード やく/フレーベル館
【内容】
「なずず このっぺ?」といちばんベーシックな昆虫語の問いかけからストーリーは始まります。虫たちのおしゃべり昆虫語のえほん。2017年コルデコット賞オナーブック。
【ワンポイントアドバイス】
この本に出てくる昆虫語には、ルールがあるようですから、何のことを話しているのか、分析しながら読むのも確かに楽しいでしょう。でも私は、あえて、昆虫語を昆虫語として受け入れ、親子で叫びながら読んでみることをお薦めします。
「ルンバボン!」
「めりごめりごルンバボン!」
昆虫語で書いた読書感想文、出ないかしら……?(笑)
『がっこうだってどきどきしてる』
アダム・レックス 文、クリスチャン・ロビンソン 絵、なかがわちひろ 訳/WAVE出版
【内容】
学校はどきどきしていました。なにしろ、ついこのあいだできあがったばかりでしたし、だれかの家になるのだと思っていたら、なんと学校として、たくさんの子どもをうけいれなくちゃいけないというのですから。ついに、学校がはじまる日。おおぜいの子どもたちがわんさとやってきましたが―。ワシントン・ポスト紙パブリッシャーズ・ウィークリー誌カーカス・レビュー誌が選ぶ2016年ベスト絵本。
【ワンポイントアドバイス】
ピクサー・アニメーション・スタジオ、セサミ・ストリート・ワークショップの経歴があるクリスチャン・ロビンソン絵。絵の細かいところを楽しんで。アメリカの学校と日本の学校の違いに注目しても面白そうです。「学校なんてきらい」この言葉が学校を傷つけているかもしれないという発想は新鮮です。個人的に好きなシーンは「鼻から牛乳」(笑)
中学年の部
『レイナが島にやってきた!』
長崎夏海 作、いちかわなつこ 絵/理論社
【内容】
始業式にちこくして、ガジュマルの木の上で歌っていた転校生はケイヤク子どもなんだって…!?長崎夏海がえがく風と光と子どもたち。南の島で新しい生活をはじめたレイナと島の子どもたちのすてきな出会い。
【ワンポイントアドバイス】
「転校生」がキーワードのようですが、児童養護施設から里子としてやってきた、ちょっと変わったレイナを取り巻く小さな島の物語。あなたのお子さんは、優愛、レイナ、どちらの気持ちでこの本の世界に入るでしょうね。イラストもとても素敵で、心がぐんと伸びる夏休みにはぴったりの本。
『森のおくから:むかし、カナダであったほんとうのはなし』
レベッカ・ボンド 作、もりうちすみこ 訳/ゴブリン書房
【内容】
これは、いまから100年ほど前に、カナダでほんとうにあった話です。アントニオは、深い森にかこまれた、みずうみのほとりにすんでいました。近くに子どもがいなかったので、アントニオの友だちは、はたらくおとなたち。動物をさがして、ひとりで森を歩くことも好きでした。ある夏、おそろしい山火事がおきました。にげる場所は、ただひとつ―みずうみです。人間も、動物も、必死に生きのびようとしたそのとき、アントニオの目の前で、思いもよらないことがおこったのです…。
【ワンポイントアドバイス】
これはとても不思議な本。じわじわ来ます。自然と人間、動物、共存、生態系、自然への畏怖、そういうお話が好きなお子さんに。
『最後のオオカミ』
マイケル・モーパーゴ 作、はらるい 訳、黒須高嶺 絵/文研出版
【内容】
孫娘からパソコンの使い方を教わったマイケル・マクロードは、インターネットで自分の家系を調べることにした。やがて遠い親戚からメールが届き、ひいひいひいひいひいおじいさんのロビー・マクロードがのこしたという遺言書を見せてもらう。それは「最後のオオカミ」と題された回想録で、むごい戦争の時代を、ともに孤児として生きぬいた少年とオオカミの物語だった。小学中級から。
【ワンポイントアドバイス】
3、4年生でもぐいぐい引き込まれる中長編の物語。読書は見知らぬ世界への扉を開いてくれます。日本にいながらスコットランドへ、現在にいながら戦争の時代へ、そして両親が居て学校と家とを往復するだけの私が、孤児の大冒険へ。読書感想文を書くとしたら、どんな点で心を揺さぶられたのか、何が気になってしかたがないのか、じっくり自分と向き合う良い機会になると思います。
『すごいね!みんなの通学路』
ローズマリー・マカーニー 文、西田佳子 訳/西村書店
【内容】
世界中の子どもたちが通学する姿をとらえた写真絵本。ノーベル平和賞受賞者、マララさんの写真を追加収録。
【ワンポイントアドバイス】
ほぼ写真集です。さきほど例にも挙げましたが、写真集でも読書感想文は書けます。世界の子どもたちの困難極まる、けれどとても凜々しい通学風景。自分の通学路と比較し、自分と対話してみてください。子どもたちはそこから何かを確信するでしょう。
高学年の部
『奮闘するたすく』
まはら三桃 著/講談社
【内容】
最近、佑のおじいちゃんの様子がおかしい。近所で道に迷ったかのように歩いていたり、やかんをコンロにかけっぱなしにしてボヤ騒ぎを起こしたり…。「行きたくない」としぶるおじいちゃんをなだめすかして、佑はデイサービス(通所介護)に連れていくことになった。しかも、佑が逆らうことのできない早田先生は、そこで見たこと、聞いたことをレポートして夏休みの自由研究として提出しなさいって…。友だちの一平と“ケアハウスこもれび”に通うことになった佑は、お年寄りと接しながら、介護される人と介護する人、それぞれの気持ちに気づいていく。坪田譲治文学賞受賞作家が描く、子どもにとっての「介護」とは?
【ワンポイントアドバイス】
勢いがついたら、本当に自由研究にもいいかもしれません(笑)実際の介護の世界に飛び込んだ主人公が、介護を通じて、人々の温かさや冷たさ、人間の生死観にも触れていきます。夏休み、この本の中のたすくくんと共に成長できるかもしれません。パラリンピックや24時間テレビというような、大きなイベントではなく、身近な「介護」をテーマにした方が、子どもたちにも分かりやすいのではないかと思います。福祉のことが気になるタイプのお子さんにもお勧めです。もちろん、おじいちゃんっ子にも。
『こんぴら狗(いぬ)』
今井恭子 作、いぬんこ 画/くもん出版
【内容】
飼い主・弥生の病気が治るようお祈りするため、ムツキは、江戸から讃岐の金毘羅さんまでお参りに出された。京都までは、知り合いのご隠居さんといっしょに旅ができるはずだったが…。ムツキの、往復340里(約1340km)にもおよぶ旅路と、道中での出会いや別れをえがく。「こんぴら狗」というかつて実在した風習をもとにした、江戸時代の歴史物語。
【ワンポイントアドバイス】
犬を飼っているお子さんなら絶対に興味を持つはずの本。「犬がたった一匹、飼い主も一緒に行かず、東京(江戸)から讃岐の金毘羅さんまでお参りに行ったんだって。」そんなふうに話してみて下さい。食いついたら即買ってあげてください。どうやって犬一匹、1340kmも離れたところへの旅を続けられたのでしょう。義理人情? いいえ、良い人とも出会いますが、悪い人とも出会うのです。ムツキと一緒に金比羅まで旅をしましょう。犬が主役ですが犬視点で書かれていないことも興味深い本です。子供はどのように感じるのでしょうね。
『ぼくとベルさん:友だちは発明王』
フィリップ・ロイ 著、櫛田理絵 訳/PHP研究所
【内容】
「みんなにはできて、ぼくにはできない…」読み書きができない少年エディ。発明家・ベルとの出会いが、彼を大きく変えていく。
【ワンポイントアドバイス】
今だったら彼には「識字障害」というラベルが貼られるのでしょう。ふと不思議に感じませんか? 私が子供の頃は例えば「発達障害」という障害はありませんでした。きちんと診断を付け、正しいフォローをすることももちろん大切ですが、何か新しい壁を次々とこさえている気がするのです。私自身、本当に変な子でした。特に言葉の発達が遅く、両親に心配をかけていることを、5、6歳の時に心苦しく感じていました。ところが今は文章力養成コーチです。笑っちゃいますよね。この本を読むと、「あれ? 識字障害って何が悪いんだ?」とさえ感じます。自分には少しできないことがある、ちょっとしんどいな、そんなふうに感じている子供に贈りたい本ですが、そういうことを気にしすぎて混乱してしまっている大人にも読んでほしい本です。
『クニマスは生きていた!』
池田まき子 著/汐文社
【内容】
奇跡の魚・クニマスが私たちに問いかける「命のつながり」とは…。最後のクニマス漁師だった三浦久兵衛さんと、久さん親子の姿を通して描いた、感動の物語。
【ワンポイントアドバイス】
クニマス漁師の久兵衛さんは残念ながら亡くなっています。ぜひこの本を届けたいですね。写真も多く、ノンフィクションの入門編にはとても良いです。教科書にもこのようなノンフィクション系の話が時々教材として扱われますが、そういうのが好きだという生徒も結構多いものです。親は自分の子供の傾向を知っているかしら? 本屋でこの本をじっと手に取る子供がいたら、背後から「その本、キミにめっちゃお薦めよー」と声をかけたい。