からだを動かす/スイミング 2018.2.28

元・水泳日本代表選手、萩原智子さんに聞いた「習い事としての水泳をオススメしたい5つの理由」

元・水泳日本代表選手、萩原智子さんに聞いた「習い事としての水泳をオススメしたい5つの理由」

2017年、「今やっている子どもの習い事ランキング」(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ)において未就学児から小学校高学年まで1位を獲得し、さらに「今後やらせたい習い事」でも2位だったのが水泳です。毎年、子どもにやらせたい習い事ランキング上位に入る理由とは一体どこにあるのでしょうか。

現役時代は日本代表選手として活躍し、シドニーオリンピックにも出場。現在は、「笑顔」をキーワードに水泳指導はもちろん、講演活動なども精力的に行う一児の母でもある萩原智子さんに、自らが水泳を通じて経験したことや学んだことを振り返ってもらいながら、習い事としての水泳の魅力、オススメしたい理由を教えてもらいました。

1. 健康な身体づくり&体力づくりにとても良い!

水泳は全身を使って行うスポーツですから、健康な身体づくりに大いに役立ちます。それだけではなく、水のなかは無重力ですから普段の陸の上の感覚とはちがうはずです。よって、バランスを取る能力も鍛えられていきます。身体のバランス能力は、他のスポーツにもとても役立ちます。本当は水泳をずっと続けてもらいたいのですが……(笑)、身体のバランス能力があれば、確実に他のスポーツにも役立つでしょう。水泳以外のスポーツで活躍する選手たちも、「子どものころは水泳をやっていました」という人はかなり多いですし、そういう意味ではすべてのスポーツにおける“ベース“となる身体づくりに役立つのが、水泳なのだと思います

そして、水のなかでは怪我をすることがほとんどありません。怪我が少なければ、それだけ身体を動かすことを長く続けられます。単に運動をして体力がつくというだけではなく、怪我なく安心して体力づくりができるというメリットも大きいと感じています。また、プールという囲われた環境で行いますので、大人の目も行き届きやすいこともいい。安全面でも管理しやすいという安心感も、習い事として最適な理由なのではないでしょうか。

2. 水に対する「楽しさ」と「怖さ」を学べる

水泳をやっていると楽しいこともたくさんありますが、その一方で水の怖さというものも存在します。水の怖さに対する身の守り方を学べるのも、水泳が習い事としてオススメしたい理由のひとつなのです。わたしが水泳をはじめた理由は、じつは……海で溺れかけたから。大人になってからも、海で怖い思いをしたこともありました。楽しいこともたくさん経験しましたが、同時に水がどれだけ怖いものなのかをわたしに教えてくれたのも泳ぐことだったのです。

怖さがあることを子どものころから学べれば、危険を事前に回避する力もきっと身につくでしょう。たとえば、服を着たまま水に入るとどれだけ動きにくくなるか、ということを経験できる着衣泳を実施しているスイミングスクールや学校もあります。鈴木大地スポーツ庁長官もおっしゃっていましたが、水泳は身を守ることができるスポーツでもあるのです

3. 子どもの世界がどんどん広がっていく!

わたし自身の子どももそうですが、保育園や幼稚園、小学校の低学年の間は行動範囲が狭く、接する大人の数も限られています。ですが、スイミングスクールに行くと自分の知らない大人の方がたくさんいますし、いろいろな学校から子どもたちも集まっています。ですから、子どもの交友範囲や世界が広がっていくのです。子どもの世界を広げるというのは、多くの学びを得られるチャンスを広げるということにつながり、社会性を養ってくれます

知っている間柄の大人からなにかを教えられるよりも、まったく知らない大人から注意を受けたりアドバイスをもらったりするほうが心に残りやすいと思います。それは、わたし自身もそうでした。わたしが子どものころ、最初は通っていたスイミングスクールで知っているコーチにしか挨拶ができなかった。でも、当時指導してくださっていたコーチから「スイミングスクールは全員が同じ仲間でやっているのだから、みんなに挨拶できないとダメだよ。知らなくても関係者だから、ちゃんと挨拶をしよう」と教えられたことで、どこに行っても挨拶ができるようになっていったのです。すると、学生になって部活動の合宿ではじめて会った選手やコーチとも仲良く話せましたし、他の競技の方とも意識せずに話せるようになりました。挨拶は、「自分の世界や視野を広げるための教えだったな」と思えますし、人間関係を広げる基礎になりました。

もちろんこれは一例ですが、幼稚園や学校の先生だけではなく、スイミングスクールという場所でたくさんの大人の方と接して教わるということは、人間性を育むという意味ではとても良いことだと思います。

4. 夢や目標をつくって頑張ることができる

水泳は、自分が頑張った成果がとても分かりやすいという特徴を持っています。スイミングスクールには「級」が設けられていて、それはなんメートル泳げるようになったとか、新しい種目が泳げるようになったとか、段階を経て成長していく過程が見えやすいもの。わかりやすい目標があって、結果もわかりやすくて、自分が成長していることも実感しやすいのです。だからこそ、目標を立てること、それに向かって努力すること、成功体験をもとに新たな目標を立ててまた努力することができるのです。たった数センチでも前の日より泳ぐことができたら、それは明らかな進歩であり成果。だからこそ、目標も立てやすいとうわけです。

その目標が、仮に「日本代表になる」「五輪に出場する」というようにだんだん大きくなったとしても、やることはもちろん同じですよね。目標をつくり、そのためになにをすればいいかを考え実行する――。チャレンジしてみて成功すれば「また次も頑張ろう!」と思えますし、たとえ失敗したとしても、なぜ失敗したのかをしっかりと考え、また新しい目標に向かって頑張ることができる。そういった力は、スポーツだけでなく、一般の社会人になってからも非常に重要なことです。その基礎を、子どものころからわかりやすいかたちで学ぶことができます。

わたしもまったく泳げない状態から水泳をはじめましたが、その日に「けのび」(壁を蹴った勢いだけで進む)で5メートル進むことができました。たったそれだけでうれしかったですし、自信にもなりました。まったく知らない、はじめて会う大人にほめてもらえたうれしさも覚えています。

そういった成功体験を得られたと同時に、悔しい思いもたくさんしました。みんなが進級テストで合格するのに、わたしだけ合格できなかったとか……。一つひとつは小さなものかもしれませんが、夢や目標を持つこと、それに向かって頑張ることをわたしは水泳で教えてもらいました

5. 仲間と支え合う気持ちが芽生える

悔しい思いをしたときに、仲間に支えられるよろこびも味わいました。スイミングスクールの進級テストでなかなか合格できなかったとき、親から「大丈夫、できるよ!」と応援してもらえたり、仲間から「頑張れ!」と応援してもらえたり。そういったことが本当にうれしかった。たくさんの仲間から応援してもらえたから、「頑張ろう」「チャレンジしよう」と思えたのです。

応援されるうれしさ、支えてもらえるよろこびを知っているからこそ、反対に頑張っている仲間を応援したいという気持ちも芽生えました。励まし合い、支え合いながら、お互いを高め合う。そんな社会性、人間性を育んでくれる機会も、水泳という習い事が与えてくれたのです。

【プロフィール】
萩原智子(はぎわら・ともこ)
1980年4月13日生まれ、山梨県出身。山梨学院大学付属高校~山梨学院大学~山梨学院大学院。小学校2年生のときに、海で溺れたことがきっかけで水泳をはじめる。2000年のシドニーオリンピックには200メートル背泳ぎと200メートル個人メドレーで出場し、ともに決勝進出を果たし入賞。2004年に一度は引退するも、2009年に現役復帰を果たし2010年には日本代表に返り咲く。2012年のロンドンオリンピック選考会後に2度目の引退。現在は、一児の母として子育てをしながら日本水泳連盟理事を務める他、テレビ・ラジオ出演や水泳の解説、講演活動、ライターとしても活躍中。また、水泳教室に加えて「水の大切さ」 や「水の教育」にも取り組む、水でエデュケーション・コミュニケーションする『水ケーション』の活動にも注力している。また、山梨県、福島県、愛知県で水泳大会『萩原智子杯」も開催している。

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水泳がなんとなく子どもの習い事に良いことは分かっていても、これまでハッキリと「これが良い」と明確にならないことも多かったと思います。萩原さんのお話で、その理由が理解できたのではないでしょうか。身体の発育を助けつつ、挨拶や支え合うという人間関係の基礎も自然と身につけられる水泳。きっと、子どもの世界を大きく広げていってくれるでしょう。

【ライタープロフィール】
田坂友暁(たさか・ともあき)
1980年生まれ、兵庫県出身。バタフライの選手として全国大会で優勝や入賞多数。その経験を生かし、水泳雑誌の編集部に所属。2013年からフリーランスとして活動。水泳の知識とアスリート経験を生かして、水泳を中心に健康や栄養などの身体をテーマに、幅広く取材・執筆。また映像撮影・編集も手がける。『スイミングマガジン』で連載を担当する他、『DVDレッスン 萩原智子の水泳 基礎からチャレンジ!』、『DVDレッスン 萩原智子のクロール 基礎からチャレンジ!』(ともにGAKKEN SPORTS BOOKS)、『呼吸泳本』、『明日に向かって~病気に負けず、自分の道を究めた星奈津美のバタフライの軌跡~』(ベースボール・マガジン社)などの書籍も多数執筆。