あたまを使う 2026.1.20

非認知スキルを伸ばす家庭の3つの秘訣―総合型選抜3万人合格のプロが教えます

非認知スキルを伸ばす家庭の3つの秘訣―総合型選抜3万人合格のプロが教えます

教育現場にいまやすっかり浸透したのが、「非認知能力」、あるいは「非認知スキル」という言葉です。みなさんのほとんどが、その重要性については認識しているでしょう。では、子どもの非認知スキルを育むための具体的な方法とはどのようなものでしょうか。総合型選抜をはじめとした特別入試の指導実績を数多くもつ、日本アドミッションオフィサー協会理事/AOエキスパートPROの青木唯有さんが、子どもの非認知スキルを伸ばせる家庭の特徴を教えてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

「チーム」で子どもの成長を支える意識をもつ

子どもの好奇心や想像力、根気強さ、正直さといった、ペーパーテストでは測れない能力である「非認知スキル」を伸ばすことができる家庭には、どのような特徴があるでしょうか。これまでの研究・分析から、そのひとつとして「三世代同居」が挙げられると私は見ています。

その大きな要因は、おじいさん、おばあさんが「フォロー」をしてくれる点にあります。親御さんには、しつけという意味でも子どもを叱らなければならない場面も多々あります。そこに込められた親の思いが子どもにきちんと伝わればいいのですが、そうならないこともあるでしょう。もちろん叱り方にもよりますが、叱ることで親子関係がこじれてしまうこともあるはずです。

でも、その環境に、おじいさんやおばあさんがいたら話は変わってきます。祖父母にとって孫は無条件にかわいく思える存在ですから、親のように強く叱るということは滅多にありません。いわゆるアメとムチではありませんが、叱られて落ち込んでいる子どもを、フォローしてくれる役割を祖父母が果たしてくれます

さらには、「お父さんは、あなたに正直な人間になってほしくてあんなふうに叱ったんだよ」というように、親の本意を伝えてくれることだってあるでしょう。そのようにして、このケースであれば、親が望む「正直さ」という非認知スキルの向上につながるという流れが生まれるのです。

ただ、三世代同居の世帯数は、過去数十年にわたって減少し続けています。みなさんの多くも三世代同居ではないでしょう。でも、先に挙げた例のようなことは、三世代同居でない家庭でも、工夫次第で実践可能なのではないでしょうか。

パートナーや叱った子どものきょうだいに、「さっきはあの子をあんなふうに強く叱っちゃったけど、うまくフォローしておいて」とお願いするようなことはできるはずです。そのように、「チーム」で子どもの成長を支えていく意識が大切なのだと思います。

泣いている女の子を抱きしめる母親

親が自分の「職業観」を子どもに伝える

また、子どもとのかかわりでいえば、親御さんが自分の「職業観」をしっかりと伝えることも、子どもの非認知スキル向上につながります。職業観とは、職業や仕事に対する考え方、価値観、態度などのことです。

社会に出たあと、組織のなかで埋没し、「無難に定年まで過ごせればいい」「指示された最低限の仕事をこなして給料さえもらえればいい」といった意識ではなく、みなさんがふだんの仕事のなかで発揮している、「仕事の課題を見つけて改善策を探っていこう」「組織のなかであっても果敢に新しいチャレンジをしていこう」といった職業観が、子どもの非認知スキルを飛躍的に高めていくように感じています。

なぜなら、実社会は非認知スキルの実践の場にほかならないからです。そこで真っ向勝負し、よろこび、苦しみといったさまざまな思いを感じながら生きていくことは、非認知スキルを高めるプロセスそのものですから、親の職業観がわが子に影響を与えないわけがありません。

このことは、専業主婦(主夫)であってもできることだと思います。家事だって、家庭をうまく運営するためには絶対に欠かせない重要な仕事ですし、そこには、お金や時間などリソースの管理、コミュニケーションとチームワークの向上といった経営者視点すら必要になるものだからです。

日本では、親が自分の仕事について子どもにあまり話さない傾向もありますが、ぜひ、やりがいや苦労話、いま現在の悩みなども含め、みなさんの職業観をふだんの対話のなかで子どもに伝えてあげてほしいと思います。

オフィスで打ち合わせ中の4人

ひとりの独立した人間として子どもを見る

そして、非認知スキルを高めるためには、なによりも「子どもを、親とは異なる人格をもつひとりの独立した人間として見る」ことを強く意識してください。そのためのヒントとなるのが、「メンタリング」という、「対話を通じて成長を支援する人材育成手法」です。

私は、20年以上にわたって大学の総合型選抜をはじめとした特別入試の指導を行なってきました。その指導におけるメンタリングのポイントは、「指示や命令ではない対話」です。そうした対話によって学習者自身が気づき得ることこそが、その後の大きな成長につながるからです。

冒頭でも述べましたが、親であれば子どもを叱らなければならない場面もたくさんあるでしょう。でも、それが親の勝手な希望を押しつけるような、指示や命令のかたちになっていれば問題があるといわざるを得ません。

子どもを叱る場面は避けられませんが、親が「正解」を持ってしまうと、対話は指示や命令になりがちです。しかし、非認知スキルは正解を前提とする教育では育ちません。だからこそ、対話もなにかの結論を導くものではなく、親自身が対話のプロセスを楽しむことが大切です。子どもの興味関心を出発点に、ともに考え、問いを深める――。その積み重ねが、自ら学び、挑戦し続ける力を育むのです。

子どもの非認知スキルを伸ばす芽は、幼少期に興味関心をもっていたことにあります。その興味を出発点にさまざまな行動や経験を積むなかで、非認知スキルは育まれていきます(『わが子の「非認知スキル」を伸ばす親が、子どもとの会話で気をつけていること』参照)。しかし、子ども自身は成長するにつれ、かつて夢中になったことを意外と忘れてしまうもの。その記憶を最も鮮明に刻んでいるのは、親です。

たとえば、幼い頃に何時間も集中して遊んでいたもの、熱中して話していたテーマ。それらは、本人が気づかぬうちに思考の癖や価値観をかたちづくり、未来の選択に影響を与えています。にもかかわらず、大人の都合で「意味がない」「役に立たない」と否定されると、子どもは自分の関心を抑え、可能性を狭めてしまうのです。

だからこそ、親は子どもの「原点を知る存在」として、その関心や好奇心を尊重し、思い出させる役割を果たすことが求められます。子どもの好奇心は、大人が支え、育むことで、より大きな力へとつながるのです。

青木悠有先生

親が偏差値思考をやめれば、不思議なほどわが子は伸びる
青木唯有 著/幻冬舎 (2021)
親が偏差値思考をやめれば、不思議なほどわが子は伸びる

■ サマデイグループ統括プロデューサー・青木唯有さん インタビュー一覧
第1回:総合型選抜が増加中! 合格する子がもつ「ペーパーテストでは測れない能力」とは?
第2回:わが子の「非認知スキル」を伸ばす親が、子どもとの会話で気をつけていること
第3回:非認知スキルを伸ばす家庭の3つの秘訣―総合型選抜3万人合格のプロが教えます

【プロフィール】
青木唯有(あおき・ゆう)
サマデイグループ統括プロデューサー。民間教育機関で20年以上にわたり総合型選抜(旧AO入試)をはじめとする特別入試に特化した指導に携わり、早慶・国公立大学等、延べ3万人以上の合格指導実績を持つ。「非認知スキル」に関する東京大学との共同研究プロジェクトに参画。「大学受験で育む親子軸」や「偏差値では測れない不思議な学力」をテーマに、ブログや各種セミナーで受験生や保護者、教育関係者向けにオリジナルの見解を定期的に発信。現在は日本アドミッションオフィサー協会理事及び同協会が認定するAOエキスパートPROとして、企業・教育機関の研修プログラムの企画、開発を行っている。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。