かつてと比べて変化が激しく「正解がない」ともいわれる現代社会においては、ペーパーテストでは測れない能力である「非認知スキル」の重要性がますます高まっています。総合型選抜を行う大学や企業が求める人財として、非認知スキルが大きなポイントとなっていることを知っているでしょうか。そこでお話を聞いたのは、20年以上にわたり、総合型選抜をはじめとした特別入試の指導に関わってきた、日本アドミッションオフィサー協会理事/AOエキスパートPROの青木唯有さん。非認知スキルの重要性のほか、その育み方について解説してもらいました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)
目次
多種多様な「非認知スキル」
「正解がない」といわれる時代、社会が求めているのは、自らの好奇心や想像力、根気強さ、推進力といった、「ペーパーテストでは測れない能力」を発揮し、まだ誰も気づいていないような新しい価値を提供できる人財です。そのような時代の流れのなかで、大学も「総合型選抜」を通じてそういった学生を求めています(『総合型選抜が増加中! 合格する子がもつ「ペーパーテストでは測れない能力」とは?』参照)。
ペーパーテストでは測れない能力は、いまであれば「非認知スキル」と言ったほうがわかりやすいかもしれません。その能力はじつに多種多様ですが、それらを以下のような「25のソフトキル」というかたちで私たちは整理しています。
【25のソフトスキル】

非認知スキルと総合型選抜合格率は密接に相関している
ざっと目を通しただけでも、「こんな力をもっている人間なら、大学も企業も欲しがりそうだ」と思えるのではないでしょうか。実際、これらの非認知スキルと総合型選抜の合否とのあいだには、明確な相関関係が存在します。
本来、非認知スキルは数値化できないためにその名があるので矛盾するようですが、私たちは独自の手法によって、総合型選抜受験生の非認知スキルを可視化しました。そして、そのスコアと総合型選抜の合格率に強い相関関係があることがわかったのです。つまり、非認知スキルスコアが高ければ高いほど、総合型選抜の合格率も高いということです。

先の「25のソフトスキル」のなかでも総合型選抜の合格率ととくに相関関係が強いのは、「洞察力」「多角的な視点」「ユーモア」「判断力」「社会的な知」の5つです。総合型選抜合格者については、これら5つの指標が共通して高いことがわかり、私たちは「主要5指標」と名づけました。
これらの指標は独立したものではなく相互に影響し合っています。たとえば、主要5指標のひとつに「社会的な知」とありますが、これは、先の表にあるとおり、「社会のルールを基盤とした常識的な考え方ができる」力を意味します。偏った非認知スキルが高い、いうなれば個性的な人間は、一歩間違えれば、社会から逸脱した「ちょっと変な人」にもなってしまう可能性が高まります。
でも、常識的な考え方ができるという社会的な知が備わっていれば、変な人になる手前でとどまることができます。そして、ほかの秀でたスキルを自らの成長のため、あるいは社会のために、存分に発揮できるのです。
また、主要5指標には含まれていませんが、表のいちばん下にある「絆」も大事なものだと考えます。ここで言う絆とは、「自分が置かれている環境に対する敬意がある」ことを意味しますが、たとえば家庭や学校、会社などに対していつも文句ばかりいっている人が社会で活躍できるでしょうか。
ときには批判的な視点から改善点を見出すことも大切かもしれませんが、やはり自分が置かれた環境にまずは敬意をもち、そのなかで最大限に自分の力を発揮しようと考えられる人こそが大きな飛躍を果たすことができるはずです。

親は子どもにとっての「最強のトレーナー」であれ
ここまでを読めば、多くの人が「子どもの非認知スキルを伸ばしてあげたい」と思ったはずです。そうするためのポイントはたくさんありますが、まずお伝えしたいのは、親であるみなさんが、子どもにとっての「最強のトレーナー」になってほしいということです。
子どもの非認知スキルを伸ばす鍵は、幼少期になにに興味関心をもっていたのかという、「原形質」ともいえる部分にあります。その興味関心から端を発してさまざまな行動や経験を積むなかで非認知スキルが育まれていくからです。
そのプロセスでは、子ども自身が「すごい力を発揮したこと」に気づかない、あるいはその経験をすっかり忘れてしまうといったことも起きます。子どもがすごい力を発揮したとしても、当の子ども本人からすればそれを「あたりまえ」だととらえてしまうことがほとんどだからです。
そこで、親御さんの出番です。アスリート自身が気づかない自分の強みを客観的に評価して、それを最大限に活かせるようサポートするトレーナーのように、「あのときの経験って、あなたらしさがすごく発揮された場面だったよ」といったように子どもに気づきを与えてあげるのです。そのようにして、自分のもつ個性を子ども自身が自覚することで、その個性にかかわる非認知スキルがぐんぐん伸びていきます。
そして、トレーナーとしてしっかり役割を果たすためにも、日常のなかでの子どもとの対話を大事にしてください。実際、家庭での親子の対話の量や質が子どもの非認知スキルに大きく影響するという研究はいくつも存在しています。 子どもの考えや気持ちに耳を傾け、「なぜそう思ったの?」「どうしたらもっとよくなるかな?」といった問いかけをすることで、思考力や自己肯定感をも育むことができます。日々の何気ない会話こそが、非認知スキルを伸ばす土台となるのです。
たとえば、食事中や通学の途中で「今日はどんなことがあった?」「それをどう感じた?」といった問いかけをしてみてください。ただ「なにがあった?」と聞くだけではなく、「なぜそう思ったの?」「それをもっとよくするにはどうすればいいかな?」と掘り下げることで、子ども自身が考えを整理するきっかけになります。
また、非認知スキルには、好奇心、共感力、想像力、修正力などが含まれています 。たとえば、ニュースや社会問題について「このニュース、どう思う?」と問いかけるだけでなく、「もし自分がこの立場だったらどうする?」と想像させる問いを投げかけることで、想像力や共感力を育むことができるでしょう。
さらに、「ダメ!」ではなく「どうしたらいい?」と問いかけることで、子どもの主体性を育てることができます。たとえば、「宿題やったの?」ではなく、「今日はどんな宿題があるの?」と聞くことで、子どもが自分で考え、行動する力を養えます。さらに、「どこまで終わった?」や「もっと楽しくやる方法ってあるかな?」と掘り下げることで、問題解決力が育ちます。命令ではなく、一緒に考える姿勢が、子どもの成長を支えるのです。

『親が偏差値思考をやめれば、不思議なほどわが子は伸びる』
青木唯有 著/幻冬舎 (2021)

■ サマデイグループ統括プロデューサー・青木唯有さん インタビュー一覧
第1回:総合型選抜が増加中! 合格する子がもつ「ペーパーテストでは測れない能力」とは?
第2回:わが子の「非認知スキル」を伸ばす親が、子どもとの会話で気をつけていること
第3回:非認知スキルを伸ばす家庭の3つの秘訣―総合型選抜3万人合格のプロが教えます(※近日公開)
【プロフィール】
青木唯有(あおき・ゆう)
サマデイグループ統括プロデューサー。民間教育機関で20年以上にわたり総合型選抜(旧AO入試)をはじめとする特別入試に特化した指導に携わり、早慶・国公立大学等、延べ3万人以上の合格指導実績を持つ。「非認知スキル」に関する東京大学との共同研究プロジェクトに参画。「大学受験で育む親子軸」や「偏差値では測れない不思議な学力」をテーマに、ブログや各種セミナーで受験生や保護者、教育関係者向けにオリジナルの見解を定期的に発信。現在は日本アドミッションオフィサー協会理事及び同協会が認定するAOエキスパートPROとして、企業・教育機関の研修プログラムの企画、開発を行っている。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。









