場所も道具も要らない「手遊び歌」は、子どもとのコミュニケーションに欠かせないツールのひとつではないでしょうか。
病院での待ち時間や、電車やバスに乗っている間の退屈しのぎに何度も助けられたことあれば、子どもが園で教えてもらってきた手遊び歌がメロディーは同じでも歌詞が違っていて、世代を感じたり新鮮に感じたりしたこともあるかもしれません。
そんな手遊び歌は、ただ楽しむだけでなく、その歌や動作にさまざまな教育的な効果があるようです。歌いながら手を動かすのは幼い子どもにとって複雑な動きであり、脳への刺激も大きいと考えられます。
今回は、懐かしの手遊び歌や最近の手遊びをいくつか実例として挙げ、それらにどのような教育的効果が期待できるのか紹介します。
脳も身体もフルに動かす「手遊び歌」
手遊び歌と聞いて、園の先生や友だちと一緒に「げんこつ山のたぬきさん」や「トントントントンひげじいさん」などを歌いながら遊んだことを懐かしく思い出す人も多いことでしょう。もしくは、今まさに手遊び歌に付き合っている親御さまもいるかもしれません。
手軽で場所を問わずに楽しめる手遊び歌には、次に挙げるような「子どもが成長していく上で欠かせない要素」がぎゅっと凝縮されています。
■脳が手指からの刺激によって発達する
手指は「第二の脳」または「外部の脳」と言われるほど、刺激を与えれば与えるほど脳の発達を促すことができる重要な器官です。手遊び歌で動かす指の動きは、左右をどちらもバランスよく動かすものが多く、右脳左脳ともに活性化が期待できます。
■手指が器用になる
グーパーを繰り返す初歩的なものもあれば、左右の手指を別々に動かして向かい合わせの相手と遊ぶような複雑なものまで、多種多様な手遊び歌があります。子どもの発達段階に合わせて遊んでいると、徐々に技巧的な動きもできるようになり手先の器用さにつながります。
■リズム感や反射機能を養う
手遊び歌に使われる歌は、繰り返しが多いものや覚えやすいリズムものなど種類も豊富です。楽しく歌っているうちに子どものリズム感は養われ、手指や体をリズムに合わせて動かせる反射機能が鍛えられます。
このように、手遊び歌は教育効果が高いのです。親子で、お友だちと、1人でも、どんどん手遊び歌を楽しんでみましょう。
親子で一緒に! 「一本橋こちょこちょ」
親子で遊ぶなら、「一本橋こちょこちょ」のようなスキンシップが取れる歌がおすすめです。まだ自ら言葉でコミュニケーションを取ることが難しい、0~1歳の子どもたちでも楽しむことができるとされています。
子どもの手のひらを叩いたりつねったりする手の動き、手首から肩へ向かって指先でやさしくタッチする感触、最後の「こちょこちょ」でくすぐりながらスキンシップを図りましょう。子どもは、さまざまな手指の動きや強さを感じ、また父親や母親の歌声やスキンシップを通して楽しく心地良い気分や安心感を得られます。
「一本橋こちょこちょ」のほかには「ちょちちょちあわわ」「あたま・かた・ひざ・ポン」など長く歌い継がれているスタンダードナンバーがおすすめです。
想像力を養う! 「ぐーちょきぱーで なにつくろ」
子どもは2~3歳ごろから、想像力をはたらかせる手遊び歌が1人でできるようになります。おなじみの「ぐーちょきぱーで なにつくろ」は、特に「ちょき」を指でつくるのに四苦八苦する子もいると思いますが、複雑な指の動きによって脳に刺激が与えられます。
この歌は、ジャンケンに使うグー、チョキ、パーの手の形を覚えるのに便利な上に、この3つの形を両手で作るところがポイントです。あるときは左右一緒の形、またあるときは左右別々の形と変化に富み、手の動きでイメージを形づくることで想像力が養われます。
このほかに「トントントントン ひげじいさん」「キャベツのなかから」などが楽しく遊びながら指の複雑な動きで脳を鍛えることができておすすめです。
協調性を育む! 「アルプス一万尺」
お友だちとの関係が作られはじめると、2人で向かい合って遊ぶ「アルプス一万尺」のような手遊び歌が楽しくなります。
向かい合った相手の左右と自分の左右が違うことに気づきがありますし、リズムに合わせて一緒に同じ動作をすることで協調性が育まれます。
同様の手遊び歌には「茶摘み」「みかんの花咲く丘」などがあり、子どものころ友だちと一緒に遊んだ人も多いのではないでしょうか。2人で行なう手遊び歌は大きくなっても遊ぶ子が多いようで、小学生になってからも、雨の日の休み時間やちょっとした空き時間に楽しんでいることもあるようです。
2人で行なう手遊び歌は、同じ曲でも地域や年代によって手の動きが違っていたり、歌詞を替え歌にして遊んだりといったアレンジ版も増えます。子どもが園や学校で友だちから教えてもらってきた遊び方が、パパやママが子どものころに遊んでいたものとは違うことも。そのようなときは訂正するのではなく、子どもが覚えてきた遊び方で一緒に遊んでから「パパやママが子どものころはこんなふうにして遊んでいたよ」と当時の遊び方を教えてあげると、他の人の意見を受け止める許容性を学ぶことができるとともに、遊びにも多様性が生まれます。
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手遊び歌は、どんなところでも道具もなく遊べるので何曲かレパートリーを作っておくと便利です。最近は、手遊び歌の動画をアップしている保育関連施設や行政の子育てサイトなども出てきました。こうした動画サイトを参考にしてもいいですね。
(参考)
品川区公式チャンネル しながわネットTV|子どもと一緒に、手遊びしましょう!! 3歳児編
品川区公式チャンネル しながわネットTV|子どもと一緒に、手遊びしましょう!! 4・5歳児編
てあそび.com|手遊び歌
児嶋輝美(2012),『手遊び歌の種類と成り立ちについて』, 徳島文理大学研究紀要第84号
YOKOHAMA-YUME-NETWORK|手遊び歌研修 ~手遊び歌を楽しもう~