あたまを使う/国語 2018.10.3

作文能力を伸ばすことで得られる5つのメリット――「書く楽しさ」と「書く喜び」が自信につながる

山口 拓朗
作文能力を伸ばすことで得られる5つのメリット――「書く楽しさ」と「書く喜び」が自信につながる

お子さんの「作文力」のことで、お悩みではありませんか? 「どうすれば子どもは作文を上手に書けるようになる?」「なかなか作文が書けない我が子。なにかいい方法はない?」

StudyHackerこどもまなび☆ラボでは、そんな親御さんのお悩みを解消する新連載『「書くのが好き」な子どもに育つ! 作文力の伸ばし方講座』が始まります。

解説してくださるのは、伝える力【話す・書く】研究所所長山口拓朗さん。『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』(日本実業出版社)や『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(同)など多くの著書を持ち、文章作成に関する講演も多数手がける、まさに“文章術のプロ”です。

これから全10回に渡り、山口拓朗さんが、子どもの作文力を伸ばしたいと考える親御さんに向け具体的なアドバイスをしてくださいます。ぜひご期待ください。

日本の学校教育では「作文の書き方」を教えてくれない?

「子どもの作文能力を伸ばしてあげたい」

そんなふうに思っている親は少なくないでしょう。一方で、作文が書けない子どもに対して「どうアドバイスすればいいかわからない……」という人がほとんどではないでしょうか。それもそのはず。親自身も、学校教育を通じて、ほとんど作文の書き方を学ばずにきたからです。

学校の先生の指導は、あまりアテになりません。なぜなら、先生もまた作文の書き方を学んでいないことが多いからです。そもそも日本の国語教育は文章の内容について考える「読解力」にウエイトを置いており、「どう書けば伝わるのか」「どう書けば興味をもたれるのか」という作文技術にはほとんど触れません。残念ながら、作文というのは「会話」と同じように“自然と身に付けていくべきもの”であり、“体系的に学ぶものではない”というスタンスなのです。

事実、作文の評価・採点基準は先生ごとにまちまちで、子どもたちに対するアドバイスも、驚くほどあいまいで感覚的です。「もっと自分の気持ちを書きましょう」。この言い方などは、アドバイスのようでアドバイスではありません。なにしろ「自分の気持ち」がどんなものかも、わかっていない子どもが多いのですから。

「書く楽しさ」や「書く喜び」を知っている子は伸びる!

筆者は、本やメディア原稿の執筆と並行して、文章の書き方の講師としても活動しています。そう書くと、まるで「もともと書く才能がある人なんですね」と思うかもしれません。しかし、それは勘違いです。筆者の文章力が伸びたのは、社会人になってからです。大学卒業後に入社した出版社で、編集長やデスクから山ほどダメ出しを受けながら(泣きそうになりながら)、書き方の基本とコツを学びました。いま私が人に文章の書き方を教えることができるのも、「書けなかった自分が、書けるようになった経験」があるからなのです。

とはいえ、出版社時代に学んだ文章術を、そのままこの連載でお伝えするつもりはありません。なぜなら、小学1〜3年生頃の時期に伸ばすべき作文能力は、大人が伸ばすべきそれとは少し異なるからです。正直、10歳に満たない子どもたちに身につけてもらいたい「書き方テクニック」はほとんどありません

その代わり、感じてもらいたいことならあります。それは「書く楽しさ」と「書く喜び」です。楽しさや喜びを知った子は、書くことが好きになります。「好きこそものの上手なれ」とはよく言ったものです。書くことが好きになった子の作文能力は、その後もぐんぐん伸びていきます

逆に言えば、作文が苦手な子や嫌いな子が多いのは「書くつらさ」や「書く苦しさ」ばかり味わわされているからです。それにもかかわらず、現実には、多くの大人が、傷口に塩を塗るかのように、子どもに「書くつらさ」や「書く苦しさ」ばかり味わわせています。本末転倒と言わざるを得ません。このあたりは次回、詳しくお話をします。

作文能力の向上が、その子にもたらす多種多様なメリット

ところで、そもそも子どもの作文能力を伸ばす必要がなぜあるのでしょうか? 国語の成績が良くなるから?——それは数あるメリットのうちの一部にすぎません。以下の【1】〜【5】は、筆者が考える作文能力を伸ばすことで得られるおもなメリットです。

【1】論理的思考力がつく
論理的思考力とは、物事を筋道立てて考える能力のことです。この能力が身につくと、情報を伝える力はもちろん、物事の道理を見極める力、さらには、判断力決断力も磨かれます(根拠や原因を特定する能力が高まるため)。

【2】表現力が身につく
文章・会話を問わず、自分の思いや考えを表現する力や、“自分らしさ”を表現する能力が高まります。ひいては、パーソナリティ(個性)オリジナリティ(独創性)も磨かれていきます。

【3】自分を知る力がつく
自分の感情や意思、価値観などを客観的に把握できるようになります(専門用語では「メタ認知能力」といいます)。その結果、そのときどきの状況に応じて自分の感情や意思、行動をコントロールできるようになります。

【4】伝える力が身につく
他人に情報や気持ちを的確に伝えられるようになります。意思疎通を含むコミュニケーション能力が高まるほか、授業中の発言レベルや、テストの記述式問題の回答レベルも高まります。

【5】理解力&読解力がつく
人の話や文章を理解する力が高まります。「先生の話」や「テストの設問」を理解する力も磨かれるため、学力・成績のアップがもたらされます。理解力が磨かれると、人に共感する能力も高まっていきます。

以上の【1】〜【5】はそれぞれ無関係に存在している能力ではありません。それどころか、ひとつの壮大なネットワークを形成するかのように密接に絡み合いながら相乗効果を生み出しています

仮に【1】〜【5】の能力をひとまとめに表現するなら情報編集力という言葉が適切かもしれません。作文を書くことは「情報を収集する → 情報を取捨選択する → 情報を再構成する → 情報を伝える」という情報編集プロセスを踏むことです。このプロセスのなかに【1】〜【5】の能力を高めるエッセンスが多分に含まれているのです。

この「情報編集力」が鍛えられた子は、遅かれ早かれ “自信”という最大の宝物を手に入れることになります。なぜなら“能力アップを自覚する快感”と“他者から評価される快感”の両面から「自分はできる!」と感じる機会が増えるからです。「書く楽しさ」や「書く喜び」を知ることは、取りも直さず、「生きること」や「学ぶこと」への自信を深めていくことにほかなりません。

このように、作文能力を伸ばすメリットは、単に国語の成績をよくすることだけにとどまりません。社会生活に必要なさまざまな能力を高め、人間を大きく成長させてくれます。親がすべきは、子どもが作文を書くことに「楽しさ」や「喜び」を見い出せるよう、的確に導いてあげることです。次回以降、その導き方を、マインドと方法論の両面からお伝えしていきます。