「うちの子は集中力がない」と悩んでいませんか? 「集中して宿題をやりなさい!」と言っても、聞いているのか聞いていないのか……。テレビやおもちゃに気をとられて、なかなか食事が終わらない……。そんな悩みを抱えるご家庭も少なくないのではないでしょうか。
もし、ちょっとしたことで、子どもの集中力を高められるとしたら、試したいと思いませんか? 今回は、子どもの集中力をいますぐ上げる簡単な方法を3つご紹介します。
お子さんは「集中タイプ」「拡散タイプ」どっち?
集中力について、一般社団法人教育デザインラボ代表理事で教育家の石田勝紀氏は、「人間は『集中タイプ』と『拡散タイプ』の2つに分かれている」とし、以下のように説明しています。
お子さんはどちらのタイプだと思いますか? もしお子さんが「拡散タイプ」傾向が強かったとしてもご安心を。石田氏によると、「なかなか集中モードに入れず、どうしても気が散ってしまうタイプの人も多い」とのことですし、集中力はつくり出せるようですよ! 次にご紹介するのは、集中力を高めることができる簡単な方法です。さっそく、見ていきましょう。
集中力を高める方法1:水を飲む
なんと、水を飲むと集中力がアップします! イースト・ロンドン大学心理学部とウェストミンスター大学心理学部の研究から、「知的作業に集中する前に約0.5リットルの水を飲んだ人は、飲まなかった人と比べて、14%反応時間が速くなる」ということが証明されたのです。そして子どもの場合は、水を飲むことによって「集中力」だけでなく「記憶力」も向上することがわかりました。
逆に、水分不足になると脳の働きが悪くなることもわかっています。コネチカット大学のローレンス・アームストロング氏らが発表した研究では、「体内の水分量がわずか1.5%減少しただけでも、集中力や学習能力、反応速度などの認知能力テストの成績がマイナスになる」との研究結果が出ているのです。脳の80%は水分でできているため、わずかな水分不足でも、脳のパフォーマンスが落ちてしまうとのこと。
であれば、お子さんが水分不足を感じる前に、水を飲ませたほうがよさそうです。東北大学加齢医学研究所所長で脳医学者の川島隆太氏も、子どもの集中力を上げるには「のどが渇く前にこまめに水分を補給する習慣」をつけるべきだと話しています。勉強に取り掛かる前、習い事の前など、まずは水分補給を。水を飲むだけで集中力がアップするだなんて、簡単な方法だと思いませんか?
集中力を高める方法2:(親が)話しかけない
親が子どもに話しかけないだけでも集中力が上がります。たとえば、宿題がまだ終わってないのに、遊びに夢中のわが子……。そんなとき、「先に宿題をやってからにしなさい!」と叱っていませんか? じつは、この声かけはNG。どんなことをやっているにせよ、時間を忘れて集中しているという点に目を向けましょう。集中力は学習のためだけではなく、「夢中になってひとつのことに没頭できる力」だと、帝京短期大学生活科学科元教授の宍戸洲美氏は指摘します。「好きなことだと夢中になれる」ということが、特に幼児期から小学生の子どもにとっては、とても大切なのだそう。
脳科学者の西剛志氏も、子どもの集中力の育ちを妨げる「親のNG行為」として、子どもが集中しているときに親がその集中を断ち切ってしまうことを挙げています。ひとり遊びをしている子どもに、「おもしろそうだね」などと話しかけるのもよくありません。西氏は、せっかく子どもが集中しているのに、親が話しかけることで、子どもの「脳の集中」が途切れてしまうと話します。
とはいえ、つい口を出したくなってしまう親御さんも少なくないのでは? 積み木や木のおもちゃなどの「童具」を使い、長年、子どもの創造教育・知的障害児教育に力を入れている童具館の館長・和久洋三氏は、「集中力を豊かにするためには、子どもの好きなことをたっぷりやらせて」とアドバイス。そこで、次のような親の心得についても語っています。
(集中力をつけるためには)やっぱり
大人たちが待ってあげること
それを見て
見守って、待ってあげる
そうすると子どもは
(集中力は)しぜんと深化していく
(中略)
「待つ」ことは「受け入れる」こと
子どもを受け入れる
受け入れて待ってあげると
子どもは安心して
やりたいことに没頭できる
(引用元:YouTube|【童具館公式】和久洋三のYouTubeチャンネル|【子どもの集中力を育むために】待つ・見守ることの大切さ ※動画内のテロップを引用)
また、和久氏は親御さんに向けて、「見守ることのおもしろさを感じてほしい!」とも述べています。和久氏によると、「次に何をさせようか」と考えながら見守るのはNGとのこと。そうではなく、「この子は何をしているんだろう?」という目線で見守ってほしいと提案しています。すると、「こういうふうに考えるのか」「こんなこともするのね」といったことが見えてくるそうです。
子どもが何かに熱中しているときは、親は口を挟まず、「いまは集中力を養う時間だ」と、温かく見守ってあげましょう。
集中力を高める方法3:ぼーっとする
ぼーっとするだけで、集中力が上がります。噓のような本当の話です。ハーバード・メディカル・スクール精神医学臨床准教授のスリニ・ピレイ氏は、このぼーっとする時間を「非集中」と呼んでいます。
「集中」と「非集中」を懐中電灯の2種類のスイッチと考えてほしい。「集中」は目の前の道を照らし出す狭くて細い光。「非集中」は遠くまで届いてあたりを広く照らし出す光。(中略)ふたつをうまく使い分ければ、電池が長持ちするうえ、暗闇でもずっと効率的に道が探せるのだ。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|ハーバード×脳科学でついに判明!頭がよくなる「○○スイッチ」とは?)
脳を疲れさせる「集中」スイッチをオフにして、ぼーっとしているあいだに、脳はエネルギーチャージ! その時間があるからこそ、また集中力が発揮できるというわけなのです。
とはいえ、「非集中」のあいだにも脳は働いているようです。この無意識下で脳が活動している「デフォルト・モード・ネットワーク」を、精神科医の樺沢紫苑氏は「脳のスタンバイ状態」と説明しています。デフォルト・モード・ネットワークが活発に稼働しているときは、経験や記憶を整理・統合したり、状況を分析したりしているとのこと。
加えて樺沢氏は、ぼーっとする時間が足りないと、脳の機能が低下すると指摘しています。
デフォルトモード・ネットワークが稼働する時間が少ないと、前頭前野の物事を深く考える機能が低下します。結果として、注意力、集中力、思考力、判断力、記憶力、ひらめきなどの想像力などがすべて低下し、脳の老化も進みやすくなります。
(引用元:樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.)
ぼーっとしているときに、アイデアがふと湧くことがあるのは、このデフォルトモード・ネットワークが働いているおかげだったのですね。脳のエネルギーチャージと集中力・創造力アップを一気に叶える、ぼーっとする時間。お子さんを見ていて「集中力が切れているかな?」と感じるときは、ぼーっとする時間を意識的につくってあげましょう。
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「水を飲む」「子どもが集中しているときは話しかけない」「ぼーっとする時間をつくる」――3つとも、すぐにできることばかり。ぜひ今日から試してみてください。1か月後には、お子さんの集中力がびっくりするほどアップしているかもしれませんよ!
(参考)
樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.
東洋経済オンライン|子どもの集中力はこうやって作り出せる! 気が散りやすい子を変える簡単な「仕掛け」
WIRED|水を飲むと脳が活性化する:研究結果
Frontiers|Subjective thirst moderates changes in speed of responding associated with water consumption
Active Brain CLUB|水分摂取で集中力がアップする!?
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