(この記事はアフィリエイトを含みます)
我が子はいったいどんなことが得意なのだろう? 子を思う親ならば誰もが感じることかもしれません。子どもの才能がどこにあるのかを見抜くのは本当に難しいものです。特に、スポーツなどの早期教育が必要とされるジャンルでは、子どもが物心つくまで悠長に待っていたら、かなりの遅れを取ることもあるかもしれません。我が子の才能を見つけ出して伸ばすには、どうすればいいのでしょうか。2018年2月に『世界最高の子育て――「全米最優秀女子高生」を育てた教育法』(ダイヤモンド社)を出版し話題となったボーク重子さんに、聞いてきました。
構成/岩川悟 文/大住奈保子(Tokyo Edit) 写真/玉井美世子
「出る杭」こそ、これからの社会に必要な人材
「自分らしい人生」「やりたいことで生きていく」……そんなコピーがメディアを賑わす現在。「才能を生かして生きる」という人生の門戸は、一部の天才だけでなく一般の人たちにも開かれつつあるようです。わたしはこのことを、とてもよろこばしく思っています。才能の源泉は、パッション(情熱)です。寝食を忘れて打ち込んでも苦にならないし、いつまでも続けていたい。本来、そういうものが誰にでも必ずあるはずなのです。
アメリカをはじめとする先進国では、ずいぶん前から、テストの点数だけで子どもの能力を判断する「点数至上主義」は終わっていました。日本でもAO入試を採用する大学が増えるなど、教育関係者の意識が徐々に変化しているのを感じます。
そのような変化からもわかるように、これからの多様性が求められる社会に必要なのは、正解のある問題に早く正確に答えられる人材ではなく、ひとつでもいいから「これなら自信がある」「自分はこんなことをしたい」という強いパッションを持つ「出る杭」的な人材です。子どもをそんな人に育てるためには、とにかく長所を徹底的に伸ばすことに尽きます。そのためには、毎日の観察のなかで子どものパッションがどこにあるのかを見極めることが大切なのです。
子どものパッションを見つける4つのポイント
子どものパッションの在り処を探り当てられるかは、親の観察力にかかっています。観察するときのポイントは、次の4つです。
- 時間を忘れて最高に集中している
- 「努力している」という自覚がない
- その話題についてよく話す
- 親や先生に言われなくても自分からやる
特に1は大切で、心理学ではこのような状態を「フロー状態」と呼びます。大人のわたしたちでも、好きな本に夢中になって食事を忘れていた、なんていうことはありますよね? 夢中になる対象は、人によってちがいます。それはつまり、その人だけのパッションが存在しているという証拠です。パッションを感じるものごとに対しては、どれだけ時間や労力を費やしても「努力している」という感覚もありません。誰かに言われなくても自分からやりますし、興味があるぶん、それについて話す機会も多くなるでしょう。
お子さんを見ていて、「いつもはいくら言ってもやらないのに、○○だけはやるのね」「そういえば、最近○○の話が多いなあ」と感じることはありませんか? それこそが、お子さんのパッション、才能の源泉かもしれません。子どもに、「こんな簡単なことを、どうしてみんなはできないの?」と思うことはないか、聞いてみるのもいいと思います。才能は、本人のなかでは「才能」と認識されていないことがほとんどです。それよりも、「簡単だな」というのが本人の感覚に近いのです。
子どものパッションは、あたたかく見守ってあげてください。たとえそれが勉学の支障になると思えても、否定してはいけません。パッションを否定されるのは、自分自身を否定されるのと同じことだからです。否定すれば、子どもの心には深い傷が残るでしょう。子どもを「型」にはめるのではなく、その子の「好き」が花開くように応援する。それこそが、親の最大の仕事です。
適度な介入が子どもの才能をゴールに導く
パッションを発見できたら、子どもがそれに没頭し続けられる環境を整えてあげましょう。いくら好きなことでも、うまくいかなければ投げ出してしまうのが子どもです。才能をゴールに導くためには、当然ながら親が適切に介入することが必要なのです。わたしが心がけていたのは、次の3つです。
- 失敗してもがっかりしない
- すぐにフィードバックする
- 将来より「いま」にフォーカスする
1は簡単なようで、なかなか難しい。でも親ががっかりしてしまうと、子どもは「成功しなければ認められないんだ」と思うようになります。次第に失敗を怖がり、挑戦しなくなるでしょう。一番がっかりしているのは本人なのですから、そこに親のがっかりも加わると失望の度合いがものすごく上がってしまいます。
また、期待の方向性を間違えないことも大切。たとえば、「次のコンクールで入賞できるといいね」というのはよくありません。「入賞」は人に選ばれないとできず、本人の頑張りが反映されないことも多々あります。「次のコンクールまでに○○ができるようになるといいね」など、子どもが自力で到達できる範囲の期待をかけるべきだと考えます。
とはいえ、簡単過ぎることばかりに取り組んでいては、なかなか力がつきません。大事なのは、子どもをよく観察し、いまのスキルのレベルを把握しておくこと。簡単過ぎず難し過ぎない挑戦が、子どもを成長させます。「もうこのレベルは大丈夫だ」と思ったら「こんなこともやってみない?」と、次のステップに進ませてあげればいいのです。
2のフィードバックは、子どもの努力の過程を認めるためのもの。親が自分の行動に興味を持ってくれていると思うと、子どもはがぜんやる気が出るものです。ひいてはそれが、「好き」を続けるための力になります。フィードバックでは、よかったところと同時に具体的な改善点も伝えましょう。
3は親が行き過ぎた介入をしないように、肝に銘じておくべきこと。たとえば、子どものパッションが絵を描くことにあるとしたら、ついつい将来を考えて「そんなんじゃ食べていけないからやめなさい」と言いたくなるかもしれません。
でも、そこは我慢のしどころ。大切なのは、その子がパッションを持っているということ。パッションがあるということは、朝目を覚ましたときに「今日も頑張るぞ!」と思える理由でもあるのです。そんな人生ってとっても素敵だし、パワーがあります。「パッションがあれば、他のやらなければいけないこともきちんとやるようだ」とわたしの多くのママ友たちも言っていますからね。将来の心配をするよりも、今日お子さんが元気であるその源を応援してあげてくださいね。子どもが本当に望む人生は、「いま」の積み重ねの末にあるのですから。
また、好きなことのなかには、イヤなこと、大変なことも含まれているものです。どんなに楽しいことも、突き詰めていくと「楽しい」ばかりではないのです。親が自分の経験談を話すなどして、そのこともぜひ伝えてあげてください。そんなこともまた、お子さんのパッションを支えるために親ができる大切な環境づくりだと思います。
***
子どもは才能の塊です。その才能を花開かせられるかどうかは、毎日の接し方次第。子どものパッションを見つけ育てていく過程で、親子の絆も自然と強くなるはずです。ボーク重子さんが重要視するポイントを、今日からさっそく実践してみましょう。
『世界最強の子育てツール SMARTゴール 「全米最優秀女子高生」と母親が実践した目標達成の方法』
ボーク重子 著/祥伝社(2018)
■ ボーク重子さん インタビュー一覧
第1回:叱らなくても、子どもの「自主性」はどんどん育っていく
第2回:グローバル社会を生き抜く「プレゼン力」は自信から生まれる
第3回:子どもの才能はその子の「パッション」に隠されている
第4回:誰でもベストな親になれる「SMARTゴール」とは?
【プロフィール】
ボーク重子(ぼーく・しげこ)
ライフコーチ、アートコンサルティング。福島県出身。30歳の誕生日1週間前に「わたしの一番したいことをしよう」と渡英し、ロンドンにある美術系の大学院サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートに入学。現代美術史の修士号を取得後、留学中にフランス語の勉強に訪れた南仏の語学学校でのちに夫となるアメリカ人と出会い1998年に渡米、出産。「我が子には、自分で人生を切り開き、どんなときも自分らしく強く生きてほしい」との願いを胸に、全米一研究機関の集中するワシントンDCで、最高の子育て法を模索。科学的データ、最新の教育法、心理学セミナー、大学での研究や名門大学の教育に対する考え方を詳細にリサーチし、アメリカのエリート教育にたどりつく。最高の子育てには親自身の自分育てが必要だという研究データをもとに、目標達成メソッド「SMARTゴール」を子育てに応用、娘・スカイさんは「全米最優秀女子高生 The Distinguished Young Women of America」に選ばれた。同時に、子育てのための自分育てで自身のキャリアも着実に積み上げ、2004年、念願のアジア現代アートギャラリーをオープン。2006年アートを通じての社会貢献を評価されワシントニアン誌によってオバマ大統領(当時上院議員)やワシントンポスト紙副社長らとともに「ワシントンの美しい25人」に選ばれた。2009年、ギャラリー業務に加えアートコンサルティング業を開始。現在はアート業界でのキャリアに加え、ライフコーチとして全米並びに日本各地で、子育て、キャリア構築、ワークライフバランスについて講演会やワークショップを展開している。
【ライタープロフィール】
大住 奈保子(おおすみ・なほこ)
編集者・ライター。金融・経済系を中心に、Webサイト・書籍・パンフレットなどのコンテンツ制作を手がける株式会社Tokyo Editの代表を務める。プライベートでは、お菓子づくりと着物散策、猫が好きな30代。
これまでの経歴は、http://www.lancers.jp/magazine/29298から。
Twitterアカウント(@tokyo_edit)
Facebook(https://www.facebook.com/nahoko.osumi)