幼少期から気軽に楽しめて、将来我が子の英語教育に大いに役立つことがあったら知りたいと思いませんか? その代表的なものが「マザーグース」。幼稚園生・小学生でもすぐに歌える、英語の童謡です。
家庭で簡単に楽しめるマザーグースは、中学校・高校の英語の教科書でも多く見られます。例えば中学1年のNew Crown(三省堂)では”Humpty Dumpty”が登場し、高校のNEW LEGEND ENGLISH I ではナーサリーライムや英語の早口言葉として紹介されています。
幼少期から楽しく始められて、中・高の英語の授業に直接役立つ。「お勉強」しているつもりは一切ないのに、一生にわたって我が子を支えるであろう英語の基礎を体得できる。それがマザーグース童謡なのです。
親子の遊びの中に取り入れるだけで、子どもの英語教育に大きな効果を得られるのならば、ぜひ実践したいもの。
そこで、マザーグース童謡の研究者である、大阪府立大学名誉教授の安藤幸江先生による『マザーグース――親子で楽しめる英語の童謡――』を連載形式でお届けします。
安藤先生は大学や様々な講座で教え、マザーグース学会賞を受賞し、テキスト『ビデオで楽しむマザーグース』を出版している、マザーグース童謡のエキスパート。その魅力と教育的効果を語ってくれました。
実は誰もが知っている? 「マザーグース」とは
マザーグース童謡は、とても昔から、イギリスやアメリカなどの英語を話すたくさんの国で、幼い子どもたちから大人まで、多くの人たちに歌われてきました。
みなさんがよく知っている「メリーさんのひつじ」も、実はマザーグース童謡です。この歌は、190年ほど前に、アメリカで生まれました。英語で歌うとこうなります。
Mary had a little lamb,
Its fleece was white as snow.
英語の歌詞とは違う部分もあるのですが、日本語では、メロディに合うように簡単な歌詞になっています。
この歌の始まりは、アメリカのマサチューセッツ州のボストンに住んでいたヘイル夫人が、1830年の初めに『少年少女のための文集』に歌詞を発表したこと。当時はまだ、学校に行く子どもが少なかったので、「女の子も学校に行けるとよいな」という願いをこめました。
メロディをつけたのは、アメリカの教会音楽と公立学校の音楽教育に大きく貢献した、作曲家のローウェル・メイソン。彼が下線部の「繰り返しの部分」を歌詞に付加して、「メリーさんのひつじ」は生まれました。
では、この歌を聞いたことがありますか?
まばたきしては みんなをみてる
きらきらひかる おそらのほしよ
皆さんもご存知の「キラキラ星」ですね。これも、もう一つの有名なマザーグース童謡です。英語ではこう歌います。
How I wonder what you are!
Up above the world so high,
Like a diamond in the sky.
Twinkle, twinkle, little star,
How I wonder what you are!
この歌の歌詞は、イギリスの女性の詩人、ジェイン・テイラーによるもの。「星」と題されて、姉のアンとの合作の詩集、『子ども部屋の詩』に1806年に初めて発表されました。
メロディはフランスのシャンソンの曲からもらっています。200年以上も、子どもから大人まで多くの人々に愛され、現在もよく歌われている歌の一つです。
親子で英語の童謡を歌い、お子さんの英語への興味を引き出そう
この連載では、お子さんと親御さんが、マザーグース童謡を一緒に楽しく歌って遊べる「道しるべ」になることを目指します。歌を一つ一つ取り上げて、英語の歌のおもしろさや楽しさをご紹介します。
マザーグース童謡には、子どもの足の指を、親指から小指まで一本ずつ指して歌う「指遊び歌」や「せっせっせーのよいよいよい」のような「手遊び歌」もあります。このような「指遊び歌」や「手遊び歌」では、遊び方も説明します。
歌いながら遊んで楽しめますので、英語の表現力が、自然に身につきます。マザーグース童謡を遊びの中に取り入れることで、英語の歌を歌うことの楽しさが肌身で感じられ、英語への興味が引き出されるでしょう。
親子でマザーグースを楽しむことで、お子さんの英語への関心が高まるのはもちろんのこと、人として生きる力が養われることを願います。
文字や数まで楽しく覚えられる! マザーグースの教育的効果
イギリスやアメリカでは昔から、マザーグース童謡は、まだ言葉を知らない赤ちゃんの頃から、乳母たちや親たちによって、歌われてきました。赤ちゃんたちは、それらの歌を聞いて、言葉を覚えました。現在でも、その伝統は続いています。
マザーグース童謡には、赤ちゃんや子どもをあやす歌など、子どもを楽しませる歌が多くあります。また、「指遊び歌」や「手遊び歌」のように、幼い子どもでも、体を使って、楽しく学べる歌があります。
日本の「とおりゃんせ」のように、背の高い二人の子どもが作るアーチの下を、他の子どもたちが歌いながらくぐって遊ぶ歌もあります。これは年齢の違う子どもたちも楽しめます。
さらに、「アルファベットの歌」や「数を数える歌」もあります。歌いながら、楽しく、自然に、文字や数を覚えられます。そのため、マザーグース童謡は、教育的効果が高いものだと言えましょう。
マザーグースで英語特有のリズムを自然に身につけられる
加えて、英語の詩や歌には、日本語にはない、特有のリズムがあります。また、同じ語のくり返しや同じ音のくり返しの工夫が、とても昔から、今日までよく行われてきています。
この同じ音のくり返しの工夫は、詩や歌だけでなく、英語の歌などのタイトルや英語のことわざにもよく使われます。例えば英語の教科書にも使われている、この歌。
語の終わりの部分の“umpty”が同じ音のくり返しとなっています。ことわざなら、こんなものも。
“in need”と“indeed”は n と d だけが違い、それ以外は同じ音のくり返しですね。
英語のネイティブスピーカーは、これらのリズムや同じ音のくり返しの工夫を、赤ちゃんの頃からマザーグース童謡や詩や歌を通して学び、肌身につけています。
もちろん日本人でも、マザーグース童謡を通して、英語のリズムや同じ音のくり返しの工夫を、口で言ったり、歌ったり、体で表現することで、自分のものにできます。
英語を頭で理解するのではなく、全身で理解し、表現する力を、日本に住む日本人のご家庭のお子さんも、手に入れることができるのです。
英語という言葉の魅力を肌身で感じ、自然に、楽しんで、自分のものにできること。これが幼少期からマザーグース童謡にふれるメリットだと言えます。
お子さんと一緒に歌ってみよう
まずはお子さんと一緒に、童謡を楽しむことから始めてみましょう。「キラキラ星」の英語の歌詞に合わせ、日本語訳をメロディに合わせて歌えるように作ってみました。日本語でも英語でも、ぜひ歌ってみてくださいね。
How I wonder what you are!
Up above the world so high,
Like a diamond in the sky.
Twinkle, twinkle, little star,
How I wonder what you are!
あなたは だぁれ
おそらで たかく
ダイヤの ように
キラ キラ ほしよ
あなたは だぁれ
(参考)
三省堂 NEW CROWN 1年
開拓社|高等学校英語教科書のご案内|New Legend I